
先に結論:CALMEは思春期前〜早期の女児の片側の大陰唇が痛みなく腫れる良性の病態。超音波では境界のある腫瘤がなく、MRIではT1低信号・T2低〜等信号に高信号の隔壁が混じり、羽毛状に造影される。腫瘍と誤らないことが大切で、治療は保存的な方針が勧められている
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな子に | 3.9〜13.2歳の14例。片側(ときに両側)の大陰唇の腫大(Vargas 2005) |
| 超音波 | 非対称な大陰唇の腫大で、境界のある腫瘤ははっきりしない(Gokli 2016) |
| MRI | 境界不明瞭。T1低信号、T2低〜等信号に高信号の隔壁、斑状・羽毛状の造影(Gokli 2016) |
| 治療と経過 | 切除後の再発50%、切除しなかった1例は自然に縮小(Vargas 2005)。保存的な方針が勧められている(Gokli 2016) |
CALMEとは
CALMEは、2005年に14人の女児の大陰唇の病変としてまとめて報告された病態です。年齢は3.9〜13.2歳で、全員が片側、ときに両側の大陰唇の腫大で受診しました。画像でも手術でも境界のない大陰唇の膨らみで、標本は2〜8cmの線維脂肪組織でした。顕微鏡では外陰部の軟部組織にふつうにある成分からなり、線維の部分が増えて脂肪・血管・神経の小葉を取り囲んでいました(Vargas 2005)。
増えた線維芽細胞はエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体が陽性で、調べた3例の染色体は正常でした。乳房がふくらみ始める時期と重なること、自然に縮むことがあること、外陰にもともとある組織からなることから、著者らは思春期前後のホルモンの変化に対する非対称な生理的反応と考えています(Vargas 2005)。一方、腫瘍(良性の新生物)とみる考え方もあり、成り立ちはまだ議論されていますが、ホルモンによる大陰唇の間質の増生とする見方が有力とされています(Sechi 2021)。
まれな病気というわけではなく、ボストンの小児病院の11年間で、小児の外陰部の軟部腫瘤の22%、生検された外陰部病変の3%を占めていました(Vargas 2005)。日本からも3例が報告され、「思春期前の片側性大陰唇線維性過形成(PUFHLM)」という名前が提案されています(Suenaga 2022)。37歳の女性に組織が似た病変が報告された例もあります(Prokurotaite 2022)。
症状と診察での特徴
CALMEは、思春期前から早期の女児に起こる、痛みがなく、押しても痛まない、ふわふわと形の変わる大陰唇の腫れで、表面の皮膚は正常です(Salvatori 2018)。日本の3例は、どれも健康な女児の片側の大陰唇の無症状の膨らみで、数年前から気づかれていました(Suenaga 2022)。画像検査を受けた3人の女児(5〜7歳)は、右2例・左1例の片側の腫大で、外傷などのきっかけはなく、数週間から1年前から気づかれていました(Gokli 2016)。
症状がない一方で、外見から腫瘍や鼠径ヘルニアを心配して受診することが多く、画像の役割は「腫瘤やヘルニアがないこと」を示すことにあります。
超音波・MRIの所見
放射線科の立場からCALMEの画像をまとめた3例の報告では、超音波で非対称な大陰唇の腫大はあるものの、境界のある腫瘤ははっきりしませんでした。MRIは3例とも同じような見え方で、比較的境界不明瞭なT1強調像の低信号、T2強調像で低〜等信号の中に高信号の隔壁が混じる像、造影後の不均一で斑状・羽毛状の筋状の造影が特徴でした。生検ではいずれも良性の線維組織と成熟した線維脂肪組織、血管、神経で、炎症や腫瘍の所見はありませんでした(Gokli 2016)。
| 検査 | CALMEの所見 | 確かめること |
|---|---|---|
| 超音波 | 大陰唇の非対称な腫大。境界の不明瞭な不均一なエコー | 嚢胞・腸管・血流の多い腫瘤がないか |
| MRI T1強調像 | 境界不明瞭な低信号 | 脂肪だけの腫瘤(脂肪腫)ではないか |
| MRI T2強調像 | 低〜等信号に高信号の隔壁が混じる | 嚢胞や液体、鼠径管との連続がないか |
| 造影MRI | 不均一な斑状・羽毛状の造影 | 塊状に強く染まる充実部がないか |
一方、症例によっては超音波で「腫瘤」として計測されることもあります。11歳の女児では右の大陰唇に境界不明瞭な約2cmの腫れがあり、超音波で23×18×12mmの腫瘤として見えました。6歳の女児では、境界不明瞭で不均一なエコーの26×15×10mmの腫瘤として見え、MRIでも同じ所見でした(Salvatori 2018)。境界がはっきりしないことと、外陰の正常な組織と連続していることが読影の手がかりです。日本の3例でも、超音波とMRIで軟部組織が増えているだけで、腫瘤はありませんでした(Suenaga 2022)。
症例 10歳未満の女児 CALMEの超音波

引用:Salvatori C, Testa I, Prestipino M, et al. Childhood Asymmetry Labium Majus Enlargement (CALME): Description of Two Cases. Int J Environ Res Public Health 2018;15(7):1525(Figure 3)(CC BY 4.0)
左の大陰唇の腫れに対する超音波で、26×15×10mmの不均一なエコーの領域として見えています。のちの生検で、外陰部の正常な軟部組織の成分からなるCALMEと診断されました。
鑑別すべき病気
CALMEと診断する前に、鼠径ヘルニア、血管奇形、脂肪腫、神経線維腫、横紋筋肉腫、血管線維芽細胞腫、バルトリン腺の嚢胞・膿瘍、陰唇肥大などが検討されています(Salvatori 2018)。CALMEは形が変わるため鼠径ヘルニアと間違えやすいものの、その変わり方はヘルニアより目立たず、画像所見で区別されました。血管奇形は皮膚の青み、痛みや血栓の既往、画像の静脈瘤・嚢胞状の腔がないことで除外され、脂肪腫・神経線維腫は触診で境界のはっきりした腫瘤であることが合わないとされています。バルトリン腺の病気は思春期前にはきわめてまれで、陰唇肥大は両側で思春期後期以降に起こる点がCALMEと違います(Salvatori 2018)。
| 鑑別 | 画像の手がかり |
|---|---|
| 鼠径ヘルニア | 鼠径管から続く腸管・脂肪・液体。いきみで大きさが変わる(鼠径ヘルニアのCT画像所見) |
| ヌック管水腫 | 鼠径管から大陰唇に沿う嚢胞(ヌック管水腫の超音波・MRI) |
| 血管奇形 | 拡張した静脈腔、静脈石、嚢胞状の腔 |
| 横紋筋肉腫などの悪性腫瘍 | 境界のある充実性の腫瘤で、拡散制限や強い造影を示す |
| 前思春期外陰線維腫 | 思春期前の女児の片側の大陰唇などに、2〜8cmの境界不明瞭な病変として報告(Iwasa 2004) |
前思春期外陰線維腫は、思春期前の女児の外陰に起こる片側性で境界不明瞭な間葉系の病変として11例が報告され、11例中8例が大陰唇から発生していました。顕微鏡では、外陰の正常な血管・脂肪・神経の間に紡錘形の細胞が広がり、経過がわかった9例のうち3例が局所再発しています(Iwasa 2004)。年齢・場所・境界不明瞭という点がCALMEと重なり、画像だけで分けることはできません。大人の外陰部・会陰部の腫瘤の画像鑑別は外陰部・会陰部の腫瘤のMRI鑑別、侵襲性血管粘液腫のMRI所見にまとめています。
治療と経過観察
2005年の14例はすべて切除されていましたが、7例(50%)が再発し、再発を切除しなかった1例は自然に縮小しました(Vargas 2005)。その後の報告では、保存的な方針が好まれるとされ(Gokli 2016)、広い切除は勧められず、生検は診断に迷う場合に限って考えるべきとされています(Salvatori 2018)。日本の3例は見た目の希望で切除されましたが、1例が1年後に再発し、著者らは良性であることと小児期・思春期早期の再発の多さから、整容目的の切除は勧めないとしています(Suenaga 2022)。保存的な方針がとれるかを論じた報告や(Soyer 2009)、これまでの報告が永続的な後遺症を残しうる侵襲的な処置を避ける必要を強調してきたことをまとめた総説もあります(Sechi 2021)。
画像で腫瘤やヘルニアがなく、外陰の正常な組織が非対称に増えている像であれば、CALMEを報告書に挙げておくことで不要な生検や切除を避ける手助けになります。経過中に急に大きくなる、痛みや皮膚の変化が出る、充実性の腫瘤が見えるといった場合は、医療機関で改めて評価を受けてください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. CALMEは腫瘍ですか?
腫瘍ではなく、思春期前後のホルモンに反応した生理的な増生とする考えが有力です。線維芽細胞にホルモン受容体があり、染色体が正常で、自然に縮むことがある点が根拠とされています(Vargas 2005)。ただし成り立ちはまだ議論があります(Sechi 2021)。
Q2. 画像でCALMEと言えますか?
境界のある腫瘤がなく、MRIでT1低信号・T2低〜等信号に高信号の隔壁が混じり、羽毛状に造影される像はCALMEを強く疑う手がかりです(Gokli 2016)。ただし前思春期外陰線維腫など似た病変もあり、経過や診察と合わせて判断します。
Q3. 切除すれば治りますか?
切除しても再発が多く、14例中7例(Vargas 2005)、3例中1例(Suenaga 2022)で再発しています。そのため現在は経過観察を基本とする考え方が示されています(Gokli 2016、Salvatori 2018)。
Q4. 大人にも起こりますか?
基本は小児の病態ですが、37歳の女性で大陰唇の片側の肥厚があり、組織がCALMEに最も似ていた例が報告されています。部分切除後2年で再発はありませんでした(Prokurotaite 2022)。
参考文献
- Vargas SO, Kozakewich HP, Boyd TK, et al. Childhood asymmetric labium majus enlargement: mimicking a neoplasm. Am J Surg Pathol. 2005;29(8):1007-16. PubMed
- Gokli A, Neuman J, Lukse R, et al. Childhood asymmetrical labium majus enlargement sonographic and MR imaging appearances. Pediatr Radiol. 2016;46(5):674-9. PubMed
- Salvatori C, Testa I, Prestipino M, et al. Childhood Asymmetry Labium Majus Enlargement (CALME): Description of Two Cases. Int J Environ Res Public Health. 2018;15(7):1525. PubMed
- Suenaga S, Matsumoto F, Kondo F, et al. Unilateral Fibrous Hyperplasia of the Labium Majus in Pre- and Early Pubertal Girls: A Report on 3 Cases. J Pediatr Adolesc Gynecol. 2022;35(2):174-176. PubMed
- Iwasa Y, Fletcher CD. Distinctive prepubertal vulval fibroma: a hitherto unrecognized mesenchymal tumor of prepubertal girls: analysis of 11 cases. Am J Surg Pathol. 2004;28(12):1601-8. PubMed
- Sechi A, Patrizi A, Vara G, et al. Keep CALME (childhood asymmetry labium majus enlargement) and follow up. J Dtsch Dermatol Ges. 2021;19(9):1276-1281. PubMed
- Prokurotaite E, Sirtaine N, Buxant F. Asymmetric labium majus enlargement in an adult: A case report. Case Rep Womens Health. 2022;33:e00369. PubMed
- Soyer T, Hançerlioğullari O, Pelin Cil A, et al. Childhood asymmetric labium majus enlargement: is a conservative approach available? J Pediatr Adolesc Gynecol. 2009;22(2):e9-11. PubMed
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