増殖性外毛根鞘腫瘍 頭皮の腫瘤の石灰化とT2低信号

70歳代の女性の後頭部の頭皮に、何年もかけて大きくなった腫瘤があります。CTでは皮下の境界のはっきりした腫瘤で、中に石灰化があります。粉瘤(表皮嚢腫)でよいでしょうか?
高齢女性の頭皮で、石灰化を含み、大きく育った腫瘤なら、外毛根鞘嚢腫(trichilemmal cyst)と、そこから生じる増殖性外毛根鞘腫瘍(proliferating trichilemmal tumor、PTT)を考えます。PTTは切除後に再発することがあり、まれに悪性化して転移もします。CT・MRIで何が分かり、何が分からないかを文献で整理します。

先に結論:増殖性外毛根鞘腫瘍は高齢女性の頭皮に多い腫瘍。CTでは石灰化、MRIではT2の低信号の縁と内部の線状・網状の低信号が手がかり。境界不明瞭・壊死・リンパ節腫大は悪性化を考える

項目 ポイント
どんな腫瘍か 外毛根鞘嚢腫から生じると考えられる腫瘍。60歳以上の女性の頭皮に多い(Satyaprakash 2007)
CT 頭皮の腫瘤で石灰化を伴うことが多い(Kawaguchi 2021)
MRI T2で低信号の縁と内部の低信号、線状・網状の低信号。T1の内部高信号は外毛根鞘嚢腫で見られ、PTTでは見られなかった(Kawaguchi 2021)
悪性化 悪性例では境界不明瞭、壊死、強い造影効果、リンパ節転移の報告(Kim 2001)
経過 単純な切除では再発が多く、長期の経過観察が勧められる(Satyaprakash 2007)

増殖性外毛根鞘腫瘍(PTT)とは

毛包の外毛根鞘(がいもうこんしょう)は、毛根を包む上皮の層です。この層に似た角化(外毛根鞘性角化、trichilemmal keratinization)を示す嚢腫が外毛根鞘嚢腫(trichilemmal cyst、毛髪嚢腫・pilar cystとも)で、頭皮に多い良性の嚢腫です。

増殖性外毛根鞘腫瘍(proliferating trichilemmal tumor、PTT。proliferating pilar tumorとも)は、外毛根鞘性角化を組織の特徴とするまれな腫瘍で、外毛根鞘嚢腫から生じると考えられています。悪性化する可能性があり、悪性化したものは悪性増殖性外毛根鞘腫瘍(malignant proliferating trichilemmal tumor、MPTT)と呼ばれます(Satyaprakash 2007)。

どんな人に、どこにできるか

PTTは一般に60歳以上の女性の頭皮に、表皮の下の腫瘤として現れます(Satyaprakash 2007)。大きさは2〜15cmで、24cmに達した報告もあります。単発のPTTの多くは散発性で、多発するものは家族内で遺伝する傾向があり、関わる遺伝子としてPLCD1が挙げられています(Sheikh 2025)。画像検査で検討された19病変(外毛根鞘嚢腫12、PTT 7)でも、16病変(84%)が頭皮にありました(Kawaguchi 2021)。頭皮以外では、下口唇や後頸部の毛のある部分にできた報告もあります(Kim 2001)。

良性・境界・悪性の考え方

PTTは組織の見た目だけで良悪性を決めにくい腫瘍です。76例を検討したYe(2004)は、組織像から3群に分け、経過と比べました。

群 組織の特徴 再発・転移
1群(良性) 境界明瞭で押し広げる辺縁、軽い核異型、病的核分裂・壊死・神経や脈管への浸潤なし 48例中0例
2群(局所で浸潤性) 1群に似るが、真皮深層や皮下に不規則に浸潤 20例中3例(15%)が局所再発
3群(転移の可能性) 浸潤性の発育、強い核異型、病的核分裂、地図状の壊死 8例中4例(50%)が再発または所属リンパ節転移

著者らは、2群と3群をそれぞれ低悪性度・高悪性度の悪性に相当すると提案しています(Ye 2004)。画像で見たい「境界」「周囲への浸潤」「壊死」は、この組織の分け方と対応しています。

CT所見

CTでは頭皮(皮下)の腫瘤として写り、石灰化が手がかりになります。CTで検討された10病変(外毛根鞘嚢腫6、PTT 4)では、200HUを超える石灰化が7病変(70%、うちPTT 2)、80〜200HUの高吸収域が6病変(60%、うちPTT 3)、80HU未満の軟部組織の吸収域が9病変(90%、うちPTT 4)にありました(Kawaguchi 2021)。辺縁が分葉状だったのは全19病変中5病変(26%)です(Kawaguchi 2021)。

外毛根鞘嚢腫から生じたPTTの症例では、CTで被膜のはっきりした嚢胞性の腫瘤で、厚さのまちまちな壁に点状の石灰化が多数あり、内壁から盛り上がる軟部組織が見えました。この盛り上がりが、組織学的に増殖している部分に対応していました(Kim 2001)。

症例 40歳代女性 頭皮の増殖性外毛根鞘腫瘍

増殖性外毛根鞘腫瘍 頭部CT 矢状断 後頭部頭皮の石灰化を伴う腫瘤
引用:Sheikh BY, et al. A Case Report and Literature Review of a Proliferating Pilar Tumor (PPT) of the Scalp. Cureus 2025;17(8):e90621 (Figure 1). CC BY 4.0。PMC12449169

造影なしの頭部CTの矢状断です。左後頭部の頭皮に、境界明瞭な円形の病変(矢印)があり、一部に石灰化を伴います。頭蓋骨への浸潤はありません。この症例は頭皮に多発・再発する腫瘤で、良性のPTTと診断されました(Sheikh 2025)。

MRI所見

MRIで検討された13病変(外毛根鞘嚢腫8、PTT 5)では、T2強調像の低信号の縁と内部の低信号が全例(100%)に見られ、線状・網状の低信号が10病変(77%、うちPTT 4)に見られました(Kawaguchi 2021)。

T1強調像の内部の高信号は外毛根鞘嚢腫の8病変すべてで見られ、PTTでは1病変もありませんでした(100% vs 0%、P<0.01)。著者らは、T1の内部高信号が外毛根鞘嚢腫とPTTを分ける手がかりになりうると述べています(Kawaguchi 2021)。

所見 外毛根鞘嚢腫 PTT
頭皮にあった病変 10/12 6/7
CTの石灰化(200HU超) 5/6 2/4
T1の内部高信号 8/8で見られた 0/5
T2の低信号の縁・内部の低信号 8/8 5/5
T2の線状・網状の低信号 6/8 4/5

(表の数字はKawaguchi 2021。病変数が少ないため、目安として使います)

CTとMRIの役割

ここまでの文献では、CTで石灰化の有無と頭蓋骨への浸潤の有無が(Sheikh 2025、Kim 2001)、MRIで内部の信号、境界、壊死と造影のされ方が評価されています(Kawaguchi 2021、Kim 2001)。知りたいことが石灰化や骨との関係ならCT、内部の性状や広がりならMRI、という使い分けになります。

悪性化を疑う所見

悪性化し所属リンパ節に転移した下口唇の症例では、MRIで境界のはっきりしない軟部腫瘤で、T1で等信号、T2で高信号、内部に壊死によるT2の広い高信号域があり、造影で強く増強されながら大きく増強されない部分が残りました(Kim 2001)。良性例の「境界明瞭・石灰化・T2低信号の目立つ腫瘤」とは見た目が違います。

頭皮の悪性例65人をまとめた系統的レビューでは、典型的な経過はゆっくり大きくなる痛みのない頭皮の腫瘤でした。10人(15.4%)が所属リンパ節への進展、さらに6人(9.2%)が遠隔転移を伴って見つかり、経過を追えた45人中11人(24.4%)に局所・リンパ節・遠隔の再発がありました(Osto 2021)。悪性例の文献レビューでは、最初の臨床・病理の誤診が再発の10.4倍、死亡の2.18倍の増加と関連していました(Hanson 2025)。

画像では、腫瘤の境界、皮下・筋膜・頭蓋骨への進展、内部の壊死、頸部などの所属リンパ節の腫大を確認し、悪性を否定できないときはそのことをレポートに残します。

鑑別と読影のポイント

高齢者の頭皮の腫瘤は、粉瘤(表皮嚢腫)として扱われがちです。表皮嚢腫(類表皮嚢胞)の拡散強調像を含むMRIの見え方は類表皮嚢胞の記事、頭皮が厚く見えるときの考え方は頭皮肥厚の記事で説明しています。頭皮の腫瘤が頭蓋骨を溶かしている場合は、頭蓋骨の溶骨性病変の鑑別も合わせて考えます。

読影では、次の点を書いておくと治療方針の相談に役立ちます。

  • 頭皮(皮下)にある腫瘤か、骨との関係はどうか
  • 石灰化の有無(CT)、T2の低信号の縁と線状・網状の低信号(MRI)
  • T1の内部高信号の有無(外毛根鞘嚢腫寄りか)
  • 境界不明瞭、壊死、強い造影効果、リンパ節腫大など悪性を疑う所見

悪性例65人のレビューでは93.8%が手術を受けており、切除断端を確かめながら切るモース手術を強く考慮すべきだと著者らは述べています。放射線治療や化学療法は、進行した例や再発例で補助的に使われていました(Osto 2021)。

治療は腫瘍を取り残さない外科的切除が勧められ、浸潤性が強い病変では放射線治療や化学療法を加えることがあります。組織像と臨床経過が一致しないことがあるため、切除後も長く経過を見ることが勧められています(Satyaprakash 2007)。治療の選び方は主治医と相談します。

頭皮の腫瘤が急に大きくなる、崩れて出血する、首のリンパ節が腫れるといったときは、早めに医療機関で診てもらいましょう。

よくある疑問(Q&A)

Q. 画像だけで外毛根鞘嚢腫とPTTを区別できますか?
A. 手がかりはあります。T1の内部高信号は外毛根鞘嚢腫で見られ、PTTでは見られませんでした(Kawaguchi 2021)。ただし病変数は少なく、診断は組織で決まります。

Q. 石灰化があれば良性と考えてよいですか?
A. 石灰化は外毛根鞘嚢腫にもPTTにも見られる所見で(Kawaguchi 2021)、良悪性を決めるものではありません。悪性の判断には境界・壊死・リンパ節の所見を合わせます(Kim 2001)。

Q. 良性と診断されれば再発しませんか?
A. 組織学的に良性の群では再発がありませんでしたが、局所で浸潤性の群では15%が局所再発しました(Ye 2004)。経過観察が勧められています(Satyaprakash 2007)。

Q. 悪性のPTTはどのくらい転移しますか?
A. 頭皮の悪性例65人では、15.4%が所属リンパ節、9.2%が遠隔転移を伴って見つかりました(Osto 2021)。

参考文献

  1. Kawaguchi M, Kato H, Suzui N, et al. Imaging findings of trichilemmal cyst and proliferating trichilemmal tumour. Neuroradiol J. 2021;34(6):615-621. PubMed
  2. Kim HJ, Kim TS, Lee KH, et al. Proliferating trichilemmal tumors: CT and MR imaging findings in two cases, one with malignant transformation. AJNR Am J Neuroradiol. 2001;22(1):180-3. PubMed
  3. Satyaprakash AK, Sheehan DJ, Sangüeza OP. Proliferating trichilemmal tumors: a review of the literature. Dermatol Surg. 2007;33(9):1102-8. PubMed
  4. Ye J, Nappi O, Swanson PE, et al. Proliferating pilar tumors: a clinicopathologic study of 76 cases with a proposal for definition of benign and malignant variants. Am J Clin Pathol. 2004;122(4):566-74. PubMed
  5. Osto M, Parry N, Rehman R, et al. Malignant Proliferating Trichilemmal Tumor of the Scalp: A Systematic Review. Am J Dermatopathol. 2021;43(12):851-866. PubMed
  6. Hanson N, Farmer W, Andres M, et al. Clinical Characteristics and Genomic Profile of Malignant Proliferating Trichilemmal Tumor: A Systematic Review of the Literature. J Surg Oncol. 2025;131(6):1074-1080. PubMed
  7. Sheikh BY, Aljohani AA, Khoja MM, et al. A Case Report and Literature Review of a Proliferating Pilar Tumor (PPT) of the Scalp. Cureus. 2025;17(8):e90621. PubMed

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