先に結論:脾炎症性偽腫瘍

  • 脾炎症性偽腫瘍は線維芽細胞と炎症細胞が集まってできる腫瘤で、偶然見つかることが多い良性病変です
  • 画像はT2で低〜高信号とさまざまで、造影でゆっくり遅れて染まる(遷延性濃染)ことが多いですが、悪性リンパ腫や転移との区別は難しいです
  • EBウイルス陽性のものは炎症性偽腫瘍様の濾胞樹状細胞肉腫という低悪性度の腫瘍として扱われるようになっており、診断と治療を兼ねて脾臓を摘出することがあります
  • 炎症性偽腫瘍とは、腫瘍のように見える炎症性の腫瘤の総称です

脾炎症性偽腫瘍(splenic inflammatory pseudotumor)

・様々な臓器に発生(肝、脾、消化管、腸間膜、膀胱、リンパ節、気道、肺、髄膜、 軟部組織、眼窩など)

・無症状、偶然発見例も多い。

・腹痛、発熱、白血球増多、貧血、脾腫などを認めることあり。

・原因は不明であるが、ウイルス感染(EBVなど)や循環不全、限局性の壊死、出血、特殊な細胞性免疫、脾静脈血栓などが考えられている。

・悪性腫瘍を含めた他の腫瘍との鑑別が難しい。特異的な画像所見がなく、脾臓摘出が診断的治療として推奨されている。

・病理:
・線維芽細胞あるいは筋線維芽細胞を含む間質に、形質細胞、リンパ球、組織球といった炎症細胞が浸潤したもの。
・膠原線維バンドを伴うことあり。小さな壊死部を伴うこともあり 。

画像所見

・線維性間質の性状の違いなどに起因して、様々な画像所見を呈しうる。

▶MRI所見:T1WIで等信号〜わずかに高信号、T2WIで低信号〜高信号。

▶造影CT/MRI所見:
・軽度から中等度の濃染あるいは不均一に濃染。

※造影CTで線維化プラークに一致する中心satellite areaが存在すれば、本疾患が示唆されるとの報告あり。

・遷延性、遅延性濃染を示すことが多い。※EBV陽性の炎症性偽腫瘍様濾胞樹状細胞肉腫(IPT-like FDCS)の脾病変11例では、全例単発で、造影CT動脈相で境界明瞭となり被膜様の低吸収縁を伴い、T2強調像でも全例に低信号の被膜様辺縁がみられた。この辺縁は病理で線維性の被膜に対応していた。

参考)肝胆膵の画像診断 P504-505

症例 10歳代女性

脾炎症性偽腫瘍 MRI 冠状断
引用:Georgia M et al. Hematol Rep 2015 (Figure 2)

腹部MRIの冠状断です。脾臓の上極に、周囲の脾臓とは信号の異なる腫瘤があります。腹腔鏡下で脾臓を摘出し、病理で脾炎症性偽腫瘍と診断されました(EBウイルスは陰性)。(出典:Georgia M et al. Hematol Rep 2015, Figure 2, CC BY-NC 3.0)

脾臓の腫瘤で鑑別にあがる病気

病気 画像の手がかり
悪性リンパ腫 多発・びまん性が多く、リンパ節腫大を伴うことがある
過誤腫 遅い相で周囲の脾臓と同じ程度に染まりやすい
SANT(硬化性血管腫様結節性変化) 遅れて染まり、車輪状(spoke-wheel)の造影を示すことがある
脾梗塞 被膜に接するくさび形の造影されない領域

脾炎症性偽腫瘍でよくある疑問(Q&A)

Q. 炎症性偽腫瘍とは何ですか?
A. 炎症細胞と線維芽細胞などが集まった腫瘤の総称です。肺と眼窩に多く、肝臓を含むほぼ全身に起こり、悪性腫瘍に似て見えます(Narla 2003)。

Q. 造影CTで脾臓がまだらに染まるのは異常ですか?
A. 動脈相では正常の脾臓もまだらに染まることがあり、遅い相で均一になれば多くは正常です。遅い相でも残る低吸収域は腫瘤や梗塞を考えます。腹痛や発熱が続く場合は医療機関に相談してください。

参考文献

  1. Prasad AS, Chua SS, Ramani NS, et al. Stroma-derived neoplasms and pseudoneoplastic lesions of the spleen: a select review of pathologic and CT/MRI findings. Abdom Radiol (NY). 2025;50(1):480-495. PubMed
  2. Kutok JL, Pinkus GS, Dorfman DM, et al. Inflammatory pseudotumor of lymph node and spleen: an entity biologically distinct from inflammatory myofibroblastic tumor. Hum Pathol. 2001;32(12):1382-7. PubMed
  3. Cheuk W, Chan JK, Shek TW, et al. Inflammatory pseudotumor-like follicular dendritic cell tumor: a distinctive low-grade malignant intra-abdominal neoplasm with consistent Epstein-Barr virus association. Am J Surg Pathol. 2001;25(6):721-31. PubMed
  4. Liu C, Li YY, Zhu XD, et al. CT and MRI characteristics of inflammatory pseudotumor-like follicular dendritic cell sarcoma of the spleen: a report of 11 patients with pathological correlation. Abdom Radiol (NY). 2025;50(6):2686-2693. PubMed
  5. Narla LD, Newman B, Spottswood SS, et al. Inflammatory pseudotumor. Radiographics. 2003;23(3):719-29. PubMed

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