冠動脈解離と冠動脈瘤 原因とCT・カテーテル像

心臓CTで「冠動脈が瘤のように膨らんでいる」と言われました。川崎病にかかったことはありません。また、若い女性の心筋梗塞は冠動脈解離が原因になると聞きましたが、どんな病気ですか?
冠動脈瘤は、子どもでは川崎病の後に見つかることが多く、大人では動脈硬化が最も多い原因です。冠動脈解離(SCAD)は、動脈硬化とは別のしくみで血管の壁が裂ける病気です。どちらも「内腔だけでなく、血管の壁を見る」のがCTの得意なところなので、見え方と注意点を整理します。

先に結論:冠動脈瘤は「原因」、冠動脈解離は「壁の中の血腫」を意識して見る

項目 ポイント
冠動脈瘤 冠動脈造影の0.15〜5.3%に見られる。成人では動脈硬化、小児では川崎病が最も多い原因
川崎病後 治療をしないと約25%で冠動脈の拡張・瘤が起こる。CTでは瘤の大きさ、壁在血栓、石灰化を見る
冠動脈解離(SCAD) 動脈硬化とは別の原因による心筋梗塞。女性に多く、血管の壁の中に血腫ができて内腔が狭くなる
CTの見え方 急な内腔の狭窄、壁内血腫、先細りの狭窄。壁内血腫は非石灰化プラークに似るため注意
診断のよりどころ 急性期の確定はカテーテルの冠動脈造影が中心。CTは補助、経過観察で役立つ

冠動脈瘤とは

冠動脈は心臓の筋肉に血液を送る血管です。この血管が部分的にふくらんだものが冠動脈瘤です。冠動脈造影を受けた人の0.15〜5.3%で見つかるとされています(Woźniak 2024)。

用語 定義の目安(Woźniak 2024)
冠動脈瘤(CAA) 血管の一部が局所的にふくらんだもの。形は紡錘状(長軸方向に長い)と嚢状(横に張り出す)がある
冠動脈拡張(CAE) 正常部分の少なくとも1.5倍の太さで、20mmを超える、または血管の3分の1を超えて広がるもの
巨大冠動脈瘤 血管径が4倍以上になったもの。まれ(0.02%)

原因は年齢で傾向が変わります。成人では動脈硬化が最も多く、小児では川崎病が最も多いとされています。そのほか、結合組織の病気、感染症、血管炎、先天性、原因不明のものがあります(Woźniak 2024)。合併症には、冠動脈の攣縮(けいれん)、局所の血栓、末梢への塞栓、破裂、大きな瘤による周囲の圧迫があります(Woźniak 2024)。

川崎病のあとの冠動脈瘤

川崎病は主に5歳未満の子どもに起こる発熱を伴う病気で、治療をしない場合には約25%で冠動脈の拡張や瘤が起こるとされています(Jone 2024)。診断基準や全身の画像は川崎病の診断基準と画像診断にまとめてあります。この記事では、成人になってからCTで出会う場面を中心に見ていきます。

CTで見るところ

所見 なぜ大切か
瘤の大きさ・形・数 どの枝に何個あるか。経過で拡大・縮小することがある
壁在血栓 瘤の中の血栓がはがれると塞栓症、瘤が血栓で詰まると心筋虚血につながる
石灰化 川崎病の瘤は石灰化を伴うことがある
狭窄 瘤の出口・入口や、瘤のない部分の狭窄。虚血の原因になる
心筋の評価 瘤の先の心筋に梗塞のあとや血流低下がないか

川崎病のあとの経過観察では、冠動脈瘤がある人では心筋の血流を調べる検査、冠動脈造影、CT血管撮影などが使われています。放射線の負担を減らす目的で、MRIや低線量のCT、石灰化スコアを組み合わせる方法も検討されています(Dietz 2015)。冠動脈CTの撮り方やMPR・MIP・VRの違いはMPR・MIP・VRの記事も参考になります。

症例 1歳代女児 川崎病の冠動脈瘤

川崎病の冠動脈瘤 冠動脈CT血管撮影 VR像・MIP像
引用:R JP, et al. Cureus 2023;15(8):e44425 (Figure 2)(CC BY)

発熱が続いた21か月の女児で、非典型的な川崎病が疑われました。冠動脈CT血管撮影のボリュームレンダリング像とMIP像では、右冠動脈の近位部〜中間部と左主幹部の遠位部に複数の瘤があり、左前下行枝の近位部〜中間部に巨大な瘤があると記載されています。

動脈硬化などによる冠動脈瘤

成人の冠動脈瘤で最も多いのは動脈硬化によるものです(Woźniak 2024)。分厚いプラークが壁に付くと、血管の内腔だけを見る検査では内腔が正常に見えることがあり、瘤の存在そのものを見落とすことがあります。CTは内腔だけでなく、壁・プラーク・血栓を同時に描出できるので、この種の瘤に向いています。

なお、冠動脈と他の血管がつながる異常は冠動脈瘻(冠動静脈瘻)で扱っています。瘤のように拡張した冠動脈が見えるときは、瘻の可能性も頭に置いて、流出先を探します。

冠動脈解離(SCAD)とは

冠動脈解離(spontaneous coronary artery dissection:SCAD)は、動脈硬化やけがとは関係なく、冠動脈の壁の中に裂け目や血腫(壁内血腫)ができて、内腔が狭くなったり詰まったりする病気です。急性冠症候群(心筋梗塞や不安定狭心症)の原因になります。

米国心臓協会の科学的声明(2018年)では、SCADは急性冠症候群・心筋梗塞・突然死の重要な原因で、若い女性や、従来の動脈硬化の危険因子が少ない人に多いとされています。また、これまで思われていたより多く、動脈硬化による心筋梗塞とは評価・治療を分けて考える必要があると述べられています(Hayes 2018)。

項目 内容
頻度 急性冠症候群の約1〜4%。50歳未満の女性では最大35%とされる(Kovacevic 2023)
患者像 327例の追跡で、平均52.5歳・90.5%が女性、56.9%が閉経後(Saw 2017)
きっかけ 感情的ストレス48.3%、身体的ストレス28.1%(Saw 2017)
合併しやすい病気 線維筋性異形成(FMD)62.7%、結合組織疾患4.9%、全身の炎症性疾患11.9%(Saw 2017)
再発 追跡中央値3.1年でSCADの再発10.4%(Saw 2017)

SCADは若い女性の病気というイメージがありますが、上の研究のように平均年齢が50代前半で閉経後の方も半数以上でした(Saw 2017)。妊娠・出産にともなう発症もあります。「胸の痛みと心電図の変化があるが、動脈硬化の危険因子が乏しい女性」では、SCADを思い浮かべることが大切です。

カテーテル検査での見え方:3つのタイプ

冠動脈造影は血管の内腔を写す検査で、壁の中までは見えません。造影だけでは診断が難しい症例では、血管内の画像が役立ちます(Kovacevic 2023)。造影での見え方は、Saw分類(Yip-Saw分類)でタイプ1〜3に分けられます。

タイプ 見え方 割合の目安(Kovacevic 2023)
タイプ1 真腔と偽腔がわかる。造影剤が偽腔に染まり、内腔に線状の欠損(フラップ)が見える 約3分の1
タイプ2 急に血管の太さが変わり、長くなめらかに先細りする狭窄。壁内血腫が原因。中間部〜遠位部の前下行枝に多い 約3分の2で最多
タイプ3 限局した狭窄で動脈硬化に似る。血管内の画像がないと診断が難しい 5%未満

最も多いタイプ2は「なめらかで長い、動脈硬化らしくない狭窄」と覚えると、目に留まりやすくなります。一方で、動脈硬化による血栓、たこつぼ心筋症、冠動脈塞栓、冠攣縮、造影剤の流れなどがSCADに似て見えることもあり、診断が難しい症例では血管内画像が役立ちます(Kovacevic 2023)。

冠動脈CTでの見え方

SCADの急性期に冠動脈CT血管撮影を撮った14例(16血管)の検討では、次の所見が見られました(Tweet 2019)。

CTの所見 頻度(Tweet 2019)
急な内腔の狭窄(abrupt luminal stenosis) 64%
壁内血腫(intramural hematoma) 50%
先細りの狭窄(tapered luminal stenosis) 36%
解離(dissection) 14%
心外膜脂肪の毛羽立ち(fat stranding) 42%
冠動脈の蛇行 29%
冠動脈の筋肉内走行(bridge) 14%
心筋の灌流低下 50%

この検討では、最も多かったのは急な狭窄と壁内血腫でした。壁内血腫は非石灰化プラークに似て見えるため、CTの感度・特異度がはっきりするまでは、急性期の診断にはカテーテルの冠動脈造影が重要だと述べられています(Tweet 2019)。冠動脈CTは、造影カテーテルによる解離の進展の危険を避けられること、解像度が向上したこと、治療が保存的になりやすいことから、非侵襲的な評価法として有用とされています(Gupta 2020)。

症例 30歳代女性 妊娠関連の冠動脈解離

妊娠関連の冠動脈解離 冠動脈CT血管撮影 左主幹部から左前下行枝
引用:Sheikh K, et al. Cureus 2025;17(10):e95615 (Figure 2)(CC BY)

妊娠35週で突然の胸痛を起こした37歳の女性です。冠動脈CT血管撮影では、左主幹部に偏心性で長い線状の低吸収域と壁の不明瞭さがあり、左前下行枝の近位部へ続いていると記載されています。

見分けるポイント

見るところ 動脈硬化性の狭窄 冠動脈解離(SCAD) 冠動脈瘤
患者さん 危険因子のある中高年 女性に多く、危険因子が乏しいことがある 小児期の川崎病、または動脈硬化
血管の形 局所の狭窄・プラーク 長く、なめらかな狭窄。蛇行を伴うことがある 局所のふくらみ(正常の1.5倍以上)
壁 石灰化・混合プラーク 壁内血腫(非石灰化プラークに似る) 血栓・石灰化・厚いプラーク
注意 典型的な像なら診断しやすい 壁内血腫がプラークに似る 内腔だけを見ると見落とす

心臓CTの正常な見え方は心臓CTの正常解剖で確認できます。冠動脈を追うときは、正常の走行を知っていることが、蛇行や急な口径変化に気づく土台になります。

治療の考え方

SCADでは、追跡した327例の83.1%が初めは薬による治療で、カテーテル治療を受けたのは16.5%、冠動脈バイパス術は2.2%でした(Saw 2017)。動脈硬化による心筋梗塞とは治療の考え方が違うため、SCADが疑われる段階で診断を確かめることが重要です(Hayes 2018)。冠動脈瘤は、症状、瘤の場所と大きさ、血栓や狭窄の有無から、経過観察か治療かを決めます(Woźniak 2024)。胸の痛みや息苦しさがあるときは、迷わず医療機関を受診してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 川崎病にかかっていないのに冠動脈瘤があると言われました。原因は何ですか?
A. 成人の冠動脈瘤は、動脈硬化が最も多い原因です。そのほか、結合組織の病気、感染症、血管炎、先天性、原因不明のものがあります(Woźniak 2024)。

Q. 冠動脈解離はどんな人に起こりますか?
A. 女性に多く、327例の検討では90.5%が女性でした。感情的・身体的なストレスがきっかけのことがあり、線維筋性異形成の合併も多いとされています(Saw 2017)。

Q. 冠動脈CTでSCADは診断できますか?
A. CTでも壁内血腫や狭窄が見えますが、壁内血腫は非石灰化プラークに似て見えるため、急性期の診断はカテーテルの冠動脈造影が中心です(Tweet 2019)。CTは経過の確認などで役立ちます(Gupta 2020)。

Q. SCADは再発しますか?
A. 327例の追跡(中央値3.1年)で、SCADの再発は10.4%に見られました(Saw 2017)。再発の予防や生活の注意は、循環器内科の主治医と相談してください。

あわせて読みたい:カテーテル検査後の穿刺部合併症

参考文献

  1. Hayes SN, Kim ESH, Saw J, et al. Spontaneous Coronary Artery Dissection: Current State of the Science: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2018;137(19):e523-e557. PubMed
  2. Saw J, Humphries K, Aymong E, et al. Spontaneous Coronary Artery Dissection: Clinical Outcomes and Risk of Recurrence. J Am Coll Cardiol. 2017;70(9):1148-1158. PubMed
  3. Kovacevic M, Jarakovic M, Milovancev A, et al. Contemporary review on spontaneous coronary artery dissection: insights into the angiographic finding and differential diagnosis. Front Cardiovasc Med. 2023;10:1278453. PubMed
  4. Tweet MS, Akhtar NJ, Hayes SN, et al. Spontaneous coronary artery dissection: Acute findings on coronary computed tomography angiography. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2019;8(5):467-475. PubMed
  5. Gupta S, Meyersohn NM, Wood MJ, et al. Role of Coronary CT Angiography in Spontaneous Coronary Artery Dissection. Radiol Cardiothorac Imaging. 2020;2(6):e200364. PubMed
  6. Woźniak P, Iwańczyk S, Błaszyk M, et al. Coronary Artery Aneurysm or Ectasia as a Form of Coronary Artery Remodeling: Etiology, Pathogenesis, Diagnostics, Complications, and Treatment. Biomedicines. 2024;12(9). PubMed
  7. Jone PN, Tremoulet A, Choueiter N, et al. Update on Diagnosis and Management of Kawasaki Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2024;150(23):e481-e500. PubMed
  8. Dietz SM, Tacke CE, Kuipers IM, et al. Cardiovascular imaging in children and adults following Kawasaki disease. Insights Imaging. 2015;6(6):697-705. PubMed

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