
先に結論:画像は「疑う」ためのもの。梗塞・血管・血管壁を順に見て、RCVSと動脈硬化を除く
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 分類 | 脳・脊髄に限って起きる原発性(PACNS)と、膠原病・全身性血管炎・感染・薬剤などによる二次性 |
| MRIの典型 | 両側・複数の血管領域・末梢側の急性梗塞が最多(42%)。出血性の変化も55%(Boulouis 2017) |
| 血管画像 | MRAで狭窄が見つかることが多い(77%が異常)。ただし画像のパターンに特異的なものはない(Boulouis 2017、Pascarella 2023) |
| 血管壁MRI | 同心円状の壁肥厚と造影が手がかり。動脈硬化は偏った(偏心性)壁肥厚(Mossa-Basha 2017、Karaman 2021) |
| RCVSとの違い | 雷鳴頭痛・誘因・初期の脳画像が正常・数週間で改善。ただしRCVSでも壁が造影されることがある(Chen 2018) |
中枢神経血管炎とは
中枢神経血管炎は、脳や脊髄の血管に炎症が起きる病気です。血管が狭くなったり詰まったりして、脳梗塞や脳出血のような症状が出ます。まず原因で、次のように分けて考えます。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 原発性(PACNS) | 脳・脊髄の血管に限って炎症が起きる。ほかの臓器に血管炎がない |
| 全身性血管炎に伴うもの | ANCA関連血管炎、巨細胞性動脈炎、高安動脈炎など、全身の血管炎が頭蓋内にも及ぶ |
| 二次性(膠原病) | 全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどに伴う |
| 二次性(感染・その他) | 細菌・ウイルス・真菌などの感染、薬剤、腫瘍、放射線などに伴う |
全身性血管炎が頭蓋内に及ぶ例は、頭蓋内の多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)の画像診断や、ANCA関連血管炎のCT所見(肺)と合わせて読むと理解しやすくなります。関節リウマチの中枢神経病変はリウマチ性髄膜炎の記事を参照してください。
原発性の血管炎(PACNS)は、とても多様な病気です。フランスの60人の画像検討では、平均年齢は45歳で、最初の症状は、局所の神経症状が83%、頭痛が53%、認知機能の低下が40%、けいれんが38.3%でした(Boulouis 2017)。症状だけでは脳梗塞や脱髄疾患と区別しにくく、画像・髄液・血液検査・生検を組み合わせて診断します。
MRIで見る所
MRIの基本の見方は頭部MRIの読み方にまとめています。血管炎を疑うときは、次の所見を拾います。
| 所見(使う画像) | 読み方 | 頻度(Boulouis 2017、60人) |
|---|---|---|
| 多発する急性梗塞(拡散強調像) | 両側・複数の血管領域・末梢側。時期が異なる梗塞が混在する | 42% |
| 出血(T2*強調像・SWI) | 出血性梗塞、脳実質内出血 | 55%(出血性梗塞・脳実質内出血) |
| くも膜下出血(FLAIR・T2*) | 脳表(円蓋部)のくも膜下出血 | 26% |
| 軟膜(髄膜)の造影(造影T1・造影FLAIR) | 脳表に沿った造影。生検で確かめられた群に多い | 42%(生検群60%、非生検群28%) |
| 腫瘤のような病変(造影T1) | 腫瘍と区別がつかないことがある | 7人 |
系統的な報告では、PACNSのMRI異常は、生検で診断された例の97%、血管造影で診断された例の98%にありました(Beuker 2021)。つまり、MRIがまったく正常であることは少なく、MRIで異常がないときは、血管炎の可能性を下げる材料のひとつになります。一方で、梗塞が1か所だけの場合や、腫瘤のような見え方の場合は、他の病気との区別が難しくなります。造影の使い方は頭部の造影が必要なときを参考にしてください。
血管画像:MRA・CTA・血管造影
MRAでは、PACNSの77%で異常があり、近位の狭窄が57%、遠位の狭窄が61%にありました(Boulouis 2017)。「狭窄と拡張が交互に出て数珠状に見える(ビーズ状)」ことが典型像として知られています。MRAとCTAの得意・不得意はCTAとMRAの違いに整理しています。
| 検査 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| MRA | 造影剤なしで頭蓋内の主幹動脈の狭窄をとらえられる | 細い血管(小血管型)は見えにくい |
| CTA | 短時間で血管の狭窄・閉塞を調べられる | 血管壁そのものは評価できない |
| 血管造影(DSA) | 細い血管まで描出できる | 侵襲がある。陰性でも血管炎は否定できない |
注意したいのは、血管造影と生検の結果があまり重ならない点です。系統的レビュー(46研究・911人)では、血管造影が陽性だったのは生検で診断された例の33%で、生検が陽性だったのは血管造影で診断された例の8%でした(Beuker 2021)。血管造影と生検は、異なるタイプの血管炎を見ている可能性があり、補い合う検査と考えられています。欧州脳卒中学会(ESO)の2023年ガイドラインも、非侵襲的な血管画像は妥当性が確かめられておらず、血管造影や病理との感度の違いがあることから、解釈に注意を求めています。PACNSに特異的な神経画像のパターンはない、とも述べています(Pascarella 2023)。
症例 25歳男性 中枢神経血管炎(血管造影)

引用:Radiopaedia(CNS vasculitis)
血管造影の正面像です。図中の矢印は、症例ページの図に付いているものです。症例ページでは、血管造影で、左M2上枝の限局性の狭窄、より末梢の左M2/3下枝の閉塞、右M3/M4分枝の閉塞が記載され、CTAでも同様の所見とされています。MRIでは、複数の血管領域に時期の異なる梗塞があると記載されています。
血管壁MRI(vessel wall MRI)
血管壁MRIは、造影前後の高解像度T1強調像で、血管の壁そのものの厚さと造影を見る方法です。内腔(MRA・CTAで見える部分)だけでは区別できない狭窄の原因を、壁の様子から推測します。
| 原因 | 壁の見え方の目安 |
|---|---|
| 血管炎 | 同心円状(全周性)の壁肥厚、均一な造影 |
| 動脈硬化(頭蓋内) | 偏心性(片側に偏る)の壁肥厚、不均一な造影 |
| RCVS | 壁肥厚や造影が乏しいことが多いが、造影される例もある |
動脈硬化・RCVS・炎症性の血管病変を持つ54人(201病変)で、内腔の画像だけの場合と血管壁MRIを加えた場合を比べた研究では、診断の正確さが、病変ごとで36.1%から88.8%に、患者ごとで43.5%から96.3%に上がりました(Mossa-Basha 2017)。PACNSが疑われた23人では、同心円状の壁肥厚と造影がPACNS群で有意に多く、治療後の追跡で壁の造影が9人中7人で薄くなりました(Karaman 2021)。
ただし限界もあります。RCVS 48人の検討では、45.8%(22人)で血管壁が造影され、追跡できた14人のうち5人で造影が残りました。著者らは、壁の造影だけでは、RCVSと中枢神経血管炎や動脈硬化を区別する決め手にならないことがあると述べています(Chen 2018)。壁の所見は、臨床経過と合わせて読みます。
RCVSとの違い
RCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)は、脳の動脈が数時間から数日のあいだに多発して収縮し、数週間で戻る病気です。「繰り返す雷鳴頭痛(突然の激しい頭痛)」が典型で、女性に多く、画像の血管像は血管炎に似ます(Singhal 2023)。血管炎との区別は、治療に直結します。RCVSではステロイドが転帰を悪くすることがあるためです(Singhal 2023)。
| 項目 | RCVS | 中枢神経血管炎(PACNS) |
|---|---|---|
| 頭痛 | 繰り返す雷鳴頭痛が典型 | 持続する頭痛・認知機能の低下・局所症状が多い |
| 誘因 | 血管収縮を起こす誘因がしばしばある | 誘因は目立たない |
| 初期の脳画像 | 正常のことが多い。進むと円蓋部くも膜下出血、脳葉出血、分水嶺梗塞 | 多発梗塞や髄膜造影が最初からあることが多い |
| 血管の変化 | 数時間〜数日で、末梢から近位へ進む。数週間で改善 | 狭窄が持続しやすい。再燃は約3割(Beuker 2021) |
| 血管壁の造影 | 約半数にあり得る(Chen 2018) | 同心円状の造影が多い(Karaman 2021) |
RCVSの診断を助ける点数表として、RCVS2スコアがあります。雷鳴頭痛、頸動脈の関与、血管収縮の誘因、性別、くも膜下出血の5項目から、−2〜+10点で評価します。5点以上で特異度99%・感度90%、2点以下でRCVSの除外に特異度100%・感度85%でした。PACNSとの区別でも同様の成績が確かめられています(Rocha 2019)。点数が3〜4点の場合は、臨床経過や画像の変化を追って判断します。
二次性の血管炎で気をつけること
二次性の血管炎は、背景の病気を探すことが診断の中心です。全身性エリテマトーデスやANCA関連血管炎などの膠原病・全身性血管炎では、ほかの臓器の症状や血液検査の異常が手がかりになります。感染症では、髄液や血液の検査で原因を調べます。二次性でも原発性と似た画像になることがあり、画像だけで原発性か二次性かを決めることはできません。
画像診断の側では、「若年・多発梗塞・出血・髄膜造影・血管の狭窄」が揃ったときに、血管炎を鑑別に加え、背景の全身疾患や感染の有無を臨床に確認してもらう、という役割が大切です。
読影のチェックリスト
| 順番 | 確認すること | 疑うこと |
|---|---|---|
| 1 | 拡散強調像で梗塞が複数の領域・両側・異なる時期にあるか | 血管炎、心原性塞栓などの塞栓症 |
| 2 | T2*・SWIで出血・微小出血があるか | 出血性梗塞、血管炎、RCVS |
| 3 | FLAIR・造影で、くも膜下出血や軟膜造影があるか | 血管炎、RCVS、髄膜炎 |
| 4 | MRAで狭窄・数珠状の変化があるか | 血管炎、RCVS、動脈硬化 |
| 5 | 血管壁MRIがあれば、同心円状の造影か偏心性か | 血管炎(同心円状)、動脈硬化(偏心性) |
| 6 | 臨床:雷鳴頭痛、誘因、年齢・性別 | RCVS2スコアの項目を確認 |
| 7 | 全身所見(関節炎、皮疹、腎機能、発熱、感染) | 二次性血管炎、感染 |
よくある疑問(Q&A)
Q1. MRIが正常なら、血管炎は除外できますか?
系統的レビューでは、PACNSのMRI異常は生検診断例の97%、血管造影診断例の98%にありました(Beuker 2021)。MRIが正常のときは可能性が下がりますが、これだけで除外はできません。症状や髄液所見が強く疑わせるときは、造影や血管の検査を追加します。
Q2. 血管の狭窄があれば血管炎ですか?
いいえ。頭蓋内の狭窄の原因には、動脈硬化、RCVS、血管炎などがあります。内腔の画像だけで原因を当てるのは難しく、血管壁MRIを加えると正確さが上がります(Mossa-Basha 2017)。年齢、頭痛の性質、経過、ほかの画像所見と合わせて考えます。
Q3. 血管造影が正常でも、血管炎はありえますか?
あり得ます。血管造影が陽性だったのは、生検で診断された例の33%でした(Beuker 2021)。小さな血管の炎症は、血管造影でも見えないことがあります。診断は、臨床・髄液・MRI・血管画像・生検を組み合わせ、専門施設の多職種チームで検討することが勧められています(Pascarella 2023)。
Q4. RCVSと血管炎を、画像だけで見分けられますか?
画像だけでは難しいことがあります。RCVSでも、約半数で血管壁の造影がありました(Chen 2018)。雷鳴頭痛、誘因、性別、くも膜下出血の有無などの臨床情報を加えたRCVS2スコアが、見分けに役立ちます(Rocha 2019)。経過をみて、数週間で血管の狭窄が改善すればRCVSに合います。
ご自身や家族に、突然の激しい頭痛、手足の麻痺、ろれつが回らないなどの症状があるときは、すぐに医療機関を受診してください。
あわせて読みたい:椎体後面の陥凹(posterior scalloping)の原因
参考文献
- Boulouis G, de Boysson H, Zuber M, et al. Primary Angiitis of the Central Nervous System: Magnetic Resonance Imaging Spectrum of Parenchymal, Meningeal, and Vascular Lesions at Baseline. Stroke. 2017;48(5):1248-1255. PubMed
- Beuker C, Strunk D, Rawal R, et al. Primary Angiitis of the CNS: A Systematic Review and Meta-analysis. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021;8(6):e1093. PubMed
- Pascarella R, Antonenko K, Boulouis G, et al. European Stroke Organisation (ESO) guidelines on Primary Angiitis of the Central Nervous System (PACNS). Eur Stroke J. 2023;8(4):842-879. PubMed
- Mossa-Basha M, Shibata DK, Hallam DK, et al. Added Value of Vessel Wall Magnetic Resonance Imaging for Differentiation of Nonocclusive Intracranial Vasculopathies. Stroke. 2017;48(11):3026-3033. PubMed
- Karaman AK, Korkmazer B, Arslan S, et al. The diagnostic contribution of intracranial vessel wall imaging in the differentiation of primary angiitis of the central nervous system from other intracranial vasculopathies. Neuroradiology. 2021;63(10):1635-1644. PubMed
- Chen CY, Chen SP, Fuh JL, et al. Vascular wall imaging in reversible cerebral vasoconstriction syndrome – a 3-T contrast-enhanced MRI study. J Headache Pain. 2018;19(1):74. PubMed
- Singhal AB. Reversible cerebral vasoconstriction syndrome: A review of pathogenesis, clinical presentation, and treatment. Int J Stroke. 2023;18(10):1151-1160. PubMed
- Rocha EA, Topcuoglu MA, Silva GS, et al. RCVS(2) score and diagnostic approach for reversible cerebral vasoconstriction syndrome. Neurology. 2019;92(7):e639-e647. PubMed
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