
先に結論:眼窩は「壁→外眼筋→視神経→筋円錐の内と外」の順に見て、病変の区画を決める
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 区画で絞る | 眼球・視神経鞘・筋円錐内・筋円錐外・骨と副鼻腔に分けると、各区画で頻度の高い病変が決まっている |
| 外眼筋 | 冠状断で左右を比べる。甲状腺眼症は筋腹が腫れて腱の付着部は保たれやすく、腱まで腫れるときは炎症性疾患なども考える |
| 視神経 | 冠状断で左右差と周囲の脳脊髄液腔を見る。視神経そのものが太いか、鞘に沿って腫瘤があるかで分ける |
| 眼窩壁 | 紙のように薄い内側壁と下壁が骨折しやすい。外傷は冠状断の再構成で骨折・外眼筋・脂肪の脱出を確認する |
| 検査の選び方 | 骨・石灰化・異物はCT、軟部組織や視路はMRIが得意。目的に合わせて使い分ける |
眼窩の画像診断で、解剖から入る理由
眼窩は眼球、外眼筋、視神経、脂肪、涙腺、血管などが狭い骨の枠に収まった空間です。病変の種類は多くても、それぞれ好発する場所があるため、「どこにあるか」が分かると鑑別が一気に絞れます。眼窩病変の評価では、区画に分けて考える方法が診断に不可欠とされています(Purohit 2016)。眼窩を筋円錐内・筋円錐・筋円錐外に分け、視神経鞘複合体と涙腺を別の区画として整理する実践的な方法も報告されています(Gotti Naves 2024)。
検査の使い分けも先に押さえておきます。眼窩腫瘤の評価ではMRIが第一選択とされ、CTは骨病変や石灰化、金属異物が疑われるとき、MRIが撮れないときに使うという考え方が一般的です(Purohit 2016)。救急の場面でも、骨折・異物・腫瘤内の石灰化にはCT、軟部組織や視路の評価にはMRIが向くとされています(Nguyen 2017)。
| 知りたいこと | 向く検査 | 理由 |
|---|---|---|
| 骨折・骨の破壊・異物 | CT(骨条件、冠状断の再構成) | 骨の細かい変化と金属異物を見やすい |
| 腫瘤の石灰化 | CT | MRIでは石灰化が分かりにくい |
| 外眼筋・視神経・脂肪の変化 | MRI | 軟部組織のコントラストが高い |
| 頭蓋内への進展、視神経炎 | MRI(脂肪抑制、造影) | 脂肪の高信号を抑えて病変を見やすくする |
(Purohit 2016、Nguyen 2017)
見る順番①:眼窩壁(骨の枠)
眼窩は7つの骨(前頭骨、蝶形骨、上顎骨、頬骨、口蓋骨、涙骨、篩骨)でできたソケット状の構造です。ここで読影の手が止まりやすいのは、壁の厚さがばらばらという点です。
| 壁 | 主な骨 | 画像で意識すること |
|---|---|---|
| 上壁 | 前頭骨、蝶形骨小翼 | 上は前頭蓋窩に接する |
| 内側壁 | 上顎骨、涙骨、篩骨(紙様板) | 紙様板がとても薄く、篩骨洞との境。骨折しやすい |
| 下壁(眼窩底) | 上顎骨、頬骨、口蓋骨 | 上顎洞との境。薄く、吹き抜け骨折の好発部位 |
| 外側壁 | 蝶形骨大翼、頬骨 | 厚く丈夫。蝶形骨大翼は転移性骨腫瘍の好発部位の一つ |
内側壁の紙様板は、生まれつき骨が欠けていて眼窩の脂肪が篩骨洞側に出ていることがあります。外傷の既往がなければ、吹き抜け骨折と間違えないようにします。内側壁にある前篩骨孔と後篩骨孔は、内視鏡手術の目印になる構造です。
眼窩の奥には視神経管、上眼窩裂、下眼窩裂という「出入り口」があり、腫瘍や炎症が頭蓋内へ進む通り道になります。どの神経・血管がどの孔を通るかは視神経管・上眼窩裂・下眼窩裂を通るもの一覧にまとめています。
見る順番②:外眼筋
6本の外眼筋と上眼瞼挙筋
眼球を動かす筋肉は、上・下・内側・外側の4つの直筋と、上斜筋・下斜筋の合計6本です。これに上まぶたを持ち上げる上眼瞼挙筋が加わります。下斜筋以外は、視神経管と上眼窩裂の入口を囲むZinn腱輪から始まります。直筋は眼窩壁に沿って走って強膜に付き、上斜筋は眼窩の上内側にある滑車(trochlea)で向きを変えて、上直筋の下を通って付着します。下斜筋は眼窩下縁の内側から始まり、下直筋の下を通って外側後方の強膜に付きます。
滑車はしばしば石灰化しますが、変性による変化で病的な意味はありません。石灰化の見え方は眼窩内の生理的石灰化のCT画像診断のポイントで詳しく説明しています。高齢者のものが二重に見える症状で外眼筋の位置や形を見る場面は、サギングアイ症候群の記事も参考になります。
どの断面で見るか
| 断面 | 得意なこと |
|---|---|
| 冠状断 | 筋の太さの評価と左右比較。まずこれで全体を見る |
| 横断像 | 内側直筋・外側直筋・上斜筋の全長 |
| 斜矢状断 | 上直筋・下直筋・下斜筋の全長 |
筋が腫れているとき:腱まで腫れるか
外眼筋の腫大で最も多い原因は甲状腺眼症です(Rana 2022)。甲状腺眼症は両側の筋腹が腫れ、前方の腱は比較的保たれるのが典型です。伝統的には下直筋、内直筋、上直筋、外直筋の順に侵されるとされていますが、上直筋と上眼瞼挙筋の複合体の腫大も多いことが分かってきています(Rana 2022)。バセドウ病の患者の約25%で眼窩の軟部組織に炎症(グレーブス眼症)が起こり、そのうち約60%は脂肪の増加と上眼瞼挙筋の炎症による軽症です。残りは外眼筋の腫大が目立ち、複視や視神経の圧迫に進みます(Debnam 2021)。
これに対して、特発性眼窩筋炎(特発性眼窩炎症の一型)は片側・1つの筋に起こることが多く、内直筋か外直筋が多いとされます。前方の腱まで腫れる所見は甲状腺眼症との鑑別に役立ちますが、特発性眼窩筋炎でも約半数、甲状腺眼症でも約6%にみられるため、これだけで決めないよう注意が必要です(Rana 2022)。中国の44例の検討でも、腫れた筋の40.9%で腱の関与がありました(Yan 2014)。リンパ腫や転移でも筋が腫れることがあり、筋の腫れ方、片側か両側か、涙腺や眼窩脂肪の変化を合わせて考えます(Rana 2022)。
| 項目 | 甲状腺眼症 | 特発性眼窩筋炎 |
|---|---|---|
| 左右 | 両側が典型(非対称もある) | 片側・1つの筋が多い |
| 腫れる場所 | 筋腹。腱の付着部は比較的保たれる | 筋腹から腱まで腫れることがある |
| 多い筋 | 下直筋・内直筋・上筋群 | 内直筋・外直筋 |
(Rana 2022)
症例 40歳代男性 甲状腺眼症

引用:Radiopaedia(Thyroid eye disease)
症例ページでは、両側の眼球突出と、内直筋・下直筋・上直筋を中心とした外眼筋の腫大(信号は筋の浮腫を示す)が記載されています。腱の付着部が保たれるため「コカ・コーラ瓶」のような形になると説明され、視神経は眼窩尖でも脂肪に囲まれています。
見る順番③:視神経と視神経鞘
視神経は眼内、視神経管内、頭蓋内の3つの区域に分けられ、眼窩内では蛇行するため、横断像や矢状断では1枚に描出しにくいという特徴があります。左右を並べて比べられる冠状断が評価しやすい断面です。視神経炎や脱髄の評価には脂肪抑制像が有用で、造影T1強調像では脂肪抑制が必須とされています。
視神経の周りの脳脊髄液腔は視神経鞘(硬膜の延長)に包まれており、病変の出方は2つに分けると整理できます。
| 所見 | 考える病変 |
|---|---|
| 視神経そのものが紡錘状に太く、神経と腫瘤の境が分からない | 視神経膠腫 |
| 造影される腫瘤が神経の両側に沿い、線路のような「tram-track」の形 | 視神経鞘髄膜腫 |
| 神経や周囲の脳脊髄液腔に左右差がある(脂肪抑制像や造影で確認) | 視神経炎・視神経周囲炎などの炎症(臨床と合わせて判断) |
(Tailor 2013、Purohit 2016。炎症の行は一般的な読影の考え方)
視神経鞘髄膜腫は視神経鞘の髄膜細胞から発生する良性でゆっくり育つ腫瘍で、30〜70歳の女性に多く、原発性の眼窩腫瘍の約5%を占めます(Purohit 2016)。視路全体(視交叉から後頭葉まで)の解剖は視路のMRI画像解剖で確認できます。
見る順番④:筋円錐の内と外で鑑別を絞る
筋円錐は、4つの直筋とそれをつなぐ筋間膜でつくられる円錐状の空間で、眼窩を区画に分けるときの基準になります。筋間膜そのものは画像ではほとんど見えないため、直筋の位置を目印に「筋の内側か外側か」を判断します。眼窩は筋円錐内、筋円錐、筋円錐外の3つに分け、さらに視神経鞘複合体と涙腺を別の区画として扱うと、各区画で多い病変を考えやすくなります(Gotti Naves 2024)。
| 区画 | 主な病変の例 |
|---|---|
| 眼球 | 網膜芽細胞腫(小児)、脈絡膜悪性黒色腫(成人) |
| 視神経鞘複合体 | 視神経鞘髄膜腫、視神経膠腫 |
| 筋円錐内 | 海綿状血管腫(海綿状静脈奇形) |
| 筋円錐外 | 類皮嚢胞・類表皮嚢胞、涙腺腫瘍、リンパ腫、横紋筋肉腫(小児) |
| 骨と副鼻腔 | 線維性異形成、骨腫、骨転移など |
| 区画をまたぐ | 静脈リンパ管奇形、叢状神経線維腫、特発性眼窩炎症、IgG4関連疾患、転移 |
(Purohit 2016)
成人で頻度の高いもの
成人で最も多い良性の眼窩腫瘍様病変は海綿状血管腫で、境界明瞭な卵円形の腫瘤として筋円錐内にみられるのが典型です(Tailor 2013)。女性にやや多く、若年から中年で見つかることが多く、ゆっくり進む眼球突出や複視で気づかれます(Purohit 2016)。60歳以上の高齢者では、リンパ腫が眼窩腫瘍として最も多いとされています(Tailor 2013)。転移では乳癌が最も多く、続いて前立腺癌、悪性黒色腫、肺癌の順です。女性で両側の眼球陥凹(enophthalmos)があるときは、硬癌型の乳癌転移も鑑別に入れます(Tailor 2013)。
症例 60歳代女性 眼窩海綿状血管腫

引用:Radiopaedia(Orbital cavernous hemangioma)
左眼窩の筋円錐内に、境界明瞭な卵円形の腫瘤があります。症例ページでは、眼球の後面と下直筋に接し、視神経が上方に圧排されていること、T1強調像で中等度から高信号、T2強調像で不均一な高信号を示し、偽被膜を伴うと記載されています。
外傷は冠状断で骨・筋・脂肪を見る
顔面外傷では、眼窩壁の骨折、外眼筋、頭蓋底の損傷を確認します。骨の評価はCTが得意で、冠状断の再構成で下壁(眼窩底)と内側壁を順に追うのが基本です。吹き抜け骨折では、骨折片と眼窩脂肪が上顎洞や篩骨洞に出ているか、下直筋や内直筋が骨折部へ落ち込んでいないかを見ます。眼窩の骨折の種類は顔面骨折の種類と症状・CT画像診断も参考にしてください。
見落としやすい点は「挟まっているのは筋だけではない」ことです。眼窩底骨折で組織が骨折部に挟まる(entrapment)45例では、術中に下直筋が挟まっていたのは約6割で、残りは眼窩脂肪でした。また、CTの読影レポートに挟まりの可能性が書かれていたのは47%にとどまり、CTでの判断は微妙で見逃されやすいと指摘されています(Silverman 2017)。複視や眼球運動の制限があるときは、挟まりの有無を意識して下直筋の形と位置を確認します。
眼窩を読む手順のまとめ(チェックリスト)
- 検査の確認:CTかMRIか、冠状断はあるか、脂肪抑制や造影はあるか。
- 眼球:形、大きさ、内部の腫瘤、眼球突出の有無(左右差)。
- 眼窩壁:内側壁(紙様板)と下壁の連続性、前頭蓋底、孔・裂の幅。
- 外眼筋:冠状断で6本と上眼瞼挙筋の太さを左右で比較。腫れるのは筋腹か腱まで含むか。
- 視神経と鞘:太さ、周囲の脳脊髄液、鞘に沿う造影。
- 筋円錐の内と外:病変の中心はどの区画か。複数の区画にまたがるか。
- 涙腺・眼瞼・副鼻腔・頭蓋内:隣接する構造への進展。
よくある疑問(Q&A)
Q. 筋円錐の内か外かは、画像でどう見分けますか?
A. 筋円錐の膜は画像では分かりにくいため、4つの直筋を目印にします。病変が直筋に囲まれた内側にあれば筋円錐内、直筋より外側(眼窩の骨に近い側)にあれば筋円錐外と考えます。冠状断で位置関係を確認すると分かりやすくなります。
Q. 外眼筋が腫れていたら、すぐ甲状腺眼症と考えてよいですか?
A. 外眼筋の腫大で最も多い原因は甲状腺眼症ですが、炎症、感染、腫瘍、血管性の病気でも筋は腫れます(Rana 2022)。片側か両側か、腱まで腫れるか、他の筋や涙腺、眼窩脂肪の所見と甲状腺の検査結果を合わせて判断します。
Q. 眼窩のMRIとCT、どちらを先に撮りますか?
A. 外傷や異物、骨の評価が目的ならCT、腫瘤や視神経、外眼筋の評価が目的ならMRIが向きます(Purohit 2016、Nguyen 2017)。目的を主治医に伝えて検査を選びます。
Q. 目の症状があるときは、何科を受診しますか?
A. ものが二重に見える、視力が落ちる、目が出てきた感じがするなどの症状があれば、眼科など医療機関に相談してください。画像検査の種類は症状と診察所見で決まります。
あわせて読みたい:副鼻腔レントゲン(Waters法)と頸部軟部X線の見方
参考文献
- Purohit BS, Vargas MI, Ailianou A, et al. Orbital tumours and tumour-like lesions: exploring the armamentarium of multiparametric imaging. Insights Imaging. 2016;7(1):43-68. PubMed
- Gotti Naves G, José de Oliveira Cabral H, de Oliveira HR, et al. Practical Approach to Orbital Lesions by Anatomic Compartments. Radiographics. 2024;44(10):e240026. PubMed
- Tailor TD, Gupta D, Dalley RW, et al. Orbital neoplasms in adults: clinical, radiologic, and pathologic review. Radiographics. 2013;33(6):1739-58. PubMed
- Rana K, Juniat V, Patel S, et al. Extraocular muscle enlargement. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2022;260(11):3419-3435. PubMed
- Yan J, Wu P. Idiopathic orbital myositis. J Craniofac Surg. 2014;25(3):884-7. PubMed
- Debnam JM, Koka K, Esmaeli B. Extrathyroidal Manifestations of Thyroid Disease: Graves Eye Disease. Neuroimaging Clin N Am. 2021;31(3):367-378. PubMed
- Nguyen VD, Singh AK, Altmeyer WB, et al. Demystifying Orbital Emergencies: A Pictorial Review. Radiographics. 2017;37(3):947-962. PubMed
- Silverman N, Spindle J, Tang SX, et al. Orbital floor fracture with entrapment: Imaging and clinical correlations in 45 cases. Orbit. 2017;36(5):331-336. PubMed
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