
先に結論:MRIを置き換える検査ではなく、MRIでは足りない場面を補う検査
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何をする検査か | 腰などから針を刺し、硬膜嚢の中(くも膜下腔)に造影剤を入れてX線透視で撮る。続けてCTを撮るのがCTミエログラフィ(CTM) |
| MRI時代の位置づけ | MRIで見えるものはMRIが第一。MRIが禁忌・不十分なときの評価に残っている(Patel 2020、Pomerantz 2016) |
| 得意なこと | 体を前後に曲げた動態の観察、髄液漏れの部位の特定、CTで任意の断面を作れること |
| 合併症 | 穿刺後の頭痛が代表的。まれに出血など重い合併症もある |
| 避ける・慎重になる状況 | 血が止まりにくい状態、穿刺部位の感染、造影剤のアレルギーなど。検査前の薬は主治医・検査施設の指示に従う |
脊髄造影・CTミエログラフィとは
脊髄や神経根は、脳脊髄液(髄液)に浮かんだ状態で硬膜嚢という袋に包まれています。脊髄造影は、この髄液の中に造影剤を入れ、硬膜嚢の形を白く浮かび上がらせて撮る検査です。造影剤が脊髄や神経根を押し込む病変があると、白い造影剤の流れがくびれたり途切れたりします。つまり、病変そのものを直接見るのではなく、硬膜嚢の変形から間接的に圧迫を知る検査です。
検査では通常、腰椎の高さで針を刺して造影剤を入れ、X線透視でいくつかの方向から撮影します。その後にCTを撮ると、細い断面が得られ、冠状断や矢状断など好きな断面に作り直せます。これがCTミエログラフィです(MPR・MIP・VRの考え方はMPR・MIP・VRとはも参考になります)。
MRI時代になぜ残っているのか
MRIは軟部組織のコントラストに優れ、針を刺さずに脊髄そのものや腫瘍の内部まで見られます。そのため脊髄造影の出番は大きく減りました。総説でも、MRIの登場で役割は劇的に減り、現在はMRIが禁忌の人で硬膜嚢の評価が必要なときによく行われるとされています(Patel 2020)。一方で、脊柱管狭窄などの従来の適応でMRIが禁忌・診断困難なとき、また髄液漏れの評価では今も重要な検査と位置づけられています(Pomerantz 2016)。
| 場面 | なぜ脊髄造影・CTMが選ばれるか |
|---|---|
| MRIが撮れない | 体内の機器・金属でMRIの安全性が確認できない、閉所に耐えられない、などで硬膜嚢を評価したい |
| MRIで原因が分からない | 神経症状はあるのにMRIやCTで責任病変が特定できない |
| 姿勢で変わる圧迫を見たい | 前屈・後屈など、体位を変えたときの硬膜嚢の変化を観察できる |
| 髄液漏れを探す | 造影剤が硬膜の外へ漏れ出す部位を確認できる |
| 通過障害や連続性の確認 | 髄液の流れの途絶や、病変とくも膜下腔のつながりを調べる(くも膜嚢胞・癒着性くも膜炎など) |
古い画像診断誌の解説でも、脊髄造影が役立つのは、神経症状があるのにCT・MRIで病態が確認できない例や、MRIで見逃されうる小さな病変、髄液の通過障害の確認、前後屈の動態観察が必要な例などとまとめられていました。なお、動態観察や髄液の動きの評価はMRIでも可能になってきています。選ぶ検査は施設の装置や状況によって変わります。
読み方の基本:造影剤の流れをどう見るか
脊髄造影の画像は、白い造影剤が硬膜嚢の中をどう流れ、どこで欠けるかを見ます。病変の位置によって、欠け方に特徴があります。
| 病変の位置 | 造影剤の見え方 |
|---|---|
| 硬膜外(椎間板ヘルニア・骨棘・靱帯の肥厚など) | 硬膜嚢が外から押され、片側または前後からくびれる。神経根の袖(造影剤で満たされた部分)が途切れることもある |
| 硬膜内・髄外(神経鞘腫・髄膜腫など) | 腫瘍の周りに造影剤が三日月状に回り込み、腫瘍の上端・下端でキャップのような欠損(cap defect)ができる |
| 脊髄内(髄内腫瘍・脊髄空洞症など) | 脊髄が全体に太くなり、両側の造影剤が細くなる。ただし内部の性状はMRIのほうが分かる |
| 通過障害(強い狭窄) | 造影剤がそこで止まり、上下に流れない。病変の範囲を知るには別の高さからの穿刺やCTMが必要になることがある |
硬膜内髄外の腫瘍の位置を知る場面は教科書的な脊髄造影の例ですが、解像度の高いMRIが普及した今は、ほとんどの症例でMRIで区別できるようになっています。検査は、MRIや単純CTで説明がつかないときに行うものと考えると理解しやすくなります。
姿勢で変わる圧迫:動態の評価
腰部脊柱管狭窄症では、体を後ろに反らすと黄色靱帯がたるんで硬膜嚢を圧迫し、前に曲げると広がります。MRIは寝た姿勢で撮るため、この変化を捉えにくいことがあります。
腰部脊柱管狭窄症の100人で、脊髄造影のあとに前屈位・後屈位でCTを撮った研究では、硬膜嚢の前後径も断面積も、すべての椎間レベルで後屈位のほうが前屈位より有意に小さくなりました。たとえばL3/4の断面積は前屈位96.3mm²、後屈位73.6mm²でした。変化の割合はL2/3とL3/4でL4/5より大きく、手術前にこの動態の評価が有用と報告されています(Kanbara 2014)。
この「姿勢で変わる」という見え方は、静止画のMRIだけでは分かりにくい所見です。ただし、造影剤の層が分かれる(重力で下にたまる)ことなど、検査特有の見え方もあるため、読影には慣れが必要です。
髄液漏れの評価
脊髄の髄液が硬膜の外に漏れると、頭蓋内の圧が下がり、立つと悪化する頭痛などが起こります(自発性頭蓋内低圧症)。漏れの場所を特定するには、脊髄造影やCTMが使われます(関連する硬膜の異常は脊柱管内の硬膜の欠損や異常(duropathies)で解説しています)。
- 漏れを見つけにくいタイプでは、造影剤が硬膜外へ出る最初の瞬間を連続して撮る動態CTミエログラフィが役立ちます。74人の患者で、それまでの検査で漏れの場所が分からなかった14人で正確な漏れの位置が分かり、原因は石灰化した小さな突起(マイクロスパー)10人、神経根の付け根の硬膜の裂け目4人でした(Dobrocky 2018)。
- 漏れの位置は胸椎上部に多く、肩幅が広い人では見えにくいことがあります。MRIで硬膜外の髄液貯留を示した人のうち、5人に1人ほどで動態CTMが追加で必要だったと報告されています(Lützen 2023)。この方法は被ばく線量が高くなりやすい点が欠点とされ、撮影範囲や回数を減らす工夫が検討されています。
- 硬膜下血腫で見つかった60人にCTMを行った研究では、80%(48人)で脊髄の髄液漏れが見つかりました(Kim 2021)。血腫の背景に髄液漏れが隠れていることがあります。
症例 髄液漏れ(硬膜下血腫の患者さんのCT・CTミエログラフィ)

引用:Kim HJ, Lee JW, Lee E, et al. Diagnostics (Basel) 2021;11(12):2278 (Figure 1). CC BY 4.0(PMC)
上段中央(B)と右(C)がCTミエログラフィで、頸椎の高さ(C1/2)の左の硬膜外に造影剤が漏れています(矢印)。同じ症例の頭部CT(A)、治療の透視像(D)、3か月後の頭部CT(E)も並んでいます。
合併症:頭痛を中心に
脊髄造影は髄液の入った袋に針を刺す検査なので、腰椎穿刺と同じ種類の合併症があります。最も多いのは穿刺後の頭痛です。診断のための腰椎穿刺・脊髄造影・脊椎麻酔を受けた人へのアンケート(537人が回答)では、53.8%に何らかの不快な症状があり、診断目的の腰椎穿刺と脊髄造影のあとに特に多くみられました。細い針や先端が丸い針で不快感が減ると結論されています(Flaatten 1998)。頭痛は横になると軽くなるのが特徴で、検査後は安静や水分の指示が出ます。
まれですが、検査後に硬膜外血腫が起きた報告もあります。抗血小板薬や抗凝固薬を続けたまま検査を受けた高齢の2人で起き、いずれも早期の手術で神経症状が回復しました。早く気づいて対応することが大切とされています(Suto 2025)。検査後に足の力が入らない、しびれが強くなる、頭痛が続くなどがあれば、すぐに連絡してください。
避ける・慎重になる状況
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 血が止まりにくい(抗血栓薬・出血しやすい病気) | 穿刺後の出血のリスクがあり、薬の扱いは主治医・検査施設の指示に従う |
| 穿刺する場所の感染 | 針を刺す経路に感染があるときは避ける |
| 頭蓋内の圧が高い疑い | 腰椎穿刺が危険になりうるため、先に頭の画像で確認することがある |
| 造影剤のアレルギーの既往 | 事前に申告する(使える造影剤か、別の検査にするかを判断) |
| 妊娠の可能性 | X線やCTを使うため、事前に申告する |
これらは検査の一般的な注意点で、実際の判断は施設の基準で異なります。持病や飲んでいる薬があれば、検査前に伝えてください。
MRとの組み合わせ方:何を見たいかで決める
脊髄そのものの病変(脊髄内の腫瘍や炎症など)は、MRIのほうがよく分かり、脊髄造影の適応はほとんどありません。外側型の椎間板ヘルニアのように、髄液が少ない場所の病変も脊髄造影では評価しにくいとされています。脊椎の画像全体の流れは脊椎MRI・CT画像診断まとめ、腕神経叢のようにMRIの冠状断STIRとMRミエログラフィで評価する領域は腕神経叢損傷に適したMRI撮像方法も参考になります。
CTMでは、どの高さの椎体かを正確に言えることも大切です。椎体の数え方や移行椎は椎体の数え方と第12胸椎(Th12)はどこ?で整理しています。
よくある疑問(Q&A)
Q. 脊髄造影はMRIの代わりになりますか?
A. 多くの場面ではMRIが第一で、脊髄造影はMRIが使えない・不十分なときに行います(Patel 2020、Pomerantz 2016)。
Q. 検査のあと頭痛が出ました。普通のことですか?
A. 穿刺後の頭痛は比較的よくあるとされています(Flaatten 1998)。横になると楽になる頭痛が典型ですが、強い頭痛が続く、足の力が入らないなどの症状があれば、検査を受けた施設に連絡してください。
Q. 金属が体に入っていてもCTミエログラフィはできますか?
A. MRIが使えない人で硬膜嚢の評価が必要なときに選ばれる検査です(Patel 2020)。金属の近くは画像が乱れることがあるため、見え方は個人で異なります。施設で相談してください。
Q. 髄液漏れが疑われるとき、最初からCTミエログラフィをするのですか?
A. 一般にはMRIで髄液の貯留などを確認したうえで、漏れの場所を探す検査へ進みます。デジタル差分の透視検査で分からないときに動態CTMを追加する流れが報告されています(Lützen 2023)。気になる症状があれば医療機関に相談してください。
参考文献
- Patel DM, Weinberg BD, Hoch MJ. CT Myelography: Clinical Indications and Imaging Findings. Radiographics. 2020;40(2):470-484. PubMed
- Pomerantz SR. Myelography: modern technique and indications. Handb Clin Neurol. 2016;135:193-208. PubMed
- Kanbara S, Yukawa Y, Ito K, et al. Dynamic changes in the dural sac of patients with lumbar canal stenosis evaluated by multidetector-row computed tomography after myelography. Eur Spine J. 2014;23(1):74-9. PubMed
- Dobrocky T, Mosimann PJ, Zibold F, et al. Cryptogenic Cerebrospinal Fluid Leaks in Spontaneous Intracranial Hypotension: Role of Dynamic CT Myelography. Radiology. 2018;289(3):766-772. PubMed
- Lützen N, Barvulsky Aleman E, Fung C, et al. Prone Dynamic CT Myelography in Spontaneous Intracranial Hypotension: Diagnostic Need and Radiation Doses. Clin Neuroradiol. 2023;33(3):739-745. PubMed
- Kim HJ, Lee JW, Lee E, et al. Incidence of Spinal CSF Leakage on CT Myelography in Patients with Nontraumatic Intracranial Subdural Hematoma. Diagnostics (Basel). 2021;11(12):2278. PubMed
- Flaatten H, Kråkenes J, Vedeler C. Post-dural puncture related complications after diagnostic lumbar puncture, myelography and spinal anaesthesia. Acta Neurol Scand. 1998;98(6):445-51. PubMed
- Suto K, Kawabata A, Kaku T, et al. Epidural Hematoma Following Computed Tomography (CT) Myelography With Continued Antithrombotic Therapy: Two Cases Demonstrating Full Neurological Recovery. Cureus. 2025;17(5):e84463. PubMed
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