
先に結論:骨化中心の「順番」と「あるはずのものがない」に注目する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| CRITOE | 上腕骨小頭(C)→橈骨頭(R)→内側上顆(I)→滑車(T)→肘頭(O)→外側上顆(E)の順に出現する |
| 年齢 | おおよそ1・3・5・7・9・11歳が目安。個人差と男女差があり、幅がある |
| 見落とさない所見 | 滑車が見えているのに内側上顆がない場合は、内側上顆の剥離・関節内への嵌入を疑う |
| 骨折に見える正常 | 滑車や肘頭は分かれて(多核で)骨化することがあり、骨折に見えることがある |
| 補助線とサイン | fat pad sign、前上腕骨線、橈骨頭と上腕骨小頭を結ぶ線(radiocapitellar line)。迷ったら左右を比べる |
なぜ子どもの肘は難しいのか
大人の肘ではひと続きの骨に見える部分が、子どもでは軟骨の中に小さな骨(骨化中心)が1つずつ現れて育っていきます。X線では軟骨が写らないため、骨化中心が「ぽつんと浮いた骨片」に見えます。骨化の進み方は一人ひとり違い、骨化中心は同時でなく、不規則な形で現れ、重なりながら癒合するとされています(Tran 2026)。骨折と正常の骨化中心の区別は、小児の肘のX線で繰り返し問題になります。
肘全体の骨の名前や関節の構成は肘関節の骨の解剖図を、骨のX線全体の読み方は骨のレントゲンの見方を参照してください。
CRITOEと、骨化中心が出る年齢
CRITOEは、capitellum(上腕骨小頭)、radial head(橈骨頭)、internal(medial)epicondyle(内側上顆)、trochlea(滑車)、olecranon(肘頭)、external(lateral)epicondyle(外側上顆)の頭文字です(Tran 2026)。
| 順番 | 骨化中心 | 出現の目安(Tran 2026) | 報告された幅(Miyazaki 2017) |
|---|---|---|---|
| C | 上腕骨小頭 | 1歳 | 0〜1歳 |
| R | 橈骨頭 | 3歳 | 2〜6歳 |
| I | 内側上顆 | 5歳 | 2〜8歳 |
| T | 滑車 | 7歳 | 5〜11歳 |
| O | 肘頭 | 9歳 | 6〜11歳 |
| E | 外側上顆 | 11歳 | 8〜13歳 |
年齢は文献によって異なり、国や集団、調べ方でもずれます。左の「目安」は教育用によく使われる年齢で、右は約440人のブラジルの小児の肘X線(544枚)で骨化中心が見られた年齢の範囲です(Miyazaki 2017)。この研究では、順番はおおむね文献と同じでしたが、女児では橈骨頭と内側上顆が同時に出現し、肘頭が滑車より先に出る傾向もありました。骨化は女児のほうが1〜2年早いとされています(Tran 2026)。「何歳だから、この骨があるはず」と決めつけず、順番と左右差で考えるのが現実的です。
症例 13歳男児 正常な肘(6つの骨化中心の注釈つき)

引用:Radiopaedia(Elbow ossification centers)
正常な肘の正面像で、6つの骨化中心に色が付けられています。症例ページでは、6つすべてが出そろっていて、CRITOEで確認できると記載されています。
滑車が見えたら、内側上顆があるはず
CRITOEの順番を知っていると、「あるはずの骨化中心がない」ことに気づけます。滑車の骨化中心が見えているのに、内側上顆の骨化中心が本来の場所にないときは、内側上顆が剥離して、どこかに動いている可能性があります(Lahfafa 2020)。
内側上顆の剥離骨折は子どもの肘の外傷で多く、約10%が内側上顆で、骨片が関節内に挟まる、肘の脱臼を伴う、尺骨神経を痛めることもあります。症例報告では、7歳の男児が転倒後に肘の痛みで受診し、側面像で関節液(fat pad sign)があり、内側上顆の骨化中心が鉤状突起と滑車の間に嵌まり込んでいました。手術で骨片を戻し、尺骨神経も関節内から外しています(Lahfafa 2020)。症例報告では、骨化の順番が診断の鍵と述べられています。
症例 12歳男児 内側上顆の剥離(関節内への嵌入)

引用:Radiopaedia(Medial epicondyle avulsion)
正面像の注釈つき画像です。T(滑車)、L(外側上顆)、C(小頭)、R(橈骨頭)の骨化中心が見えているのに、本来の位置にM(内側上顆)の骨化中心がなく、下方に移って鉤状突起のすぐ内側にあります(矢印)。症例ページでは、内側上顆の剥離で、骨端核が関節の中に入り込んでいると記載されています。
注意点もあります。順番や年齢には個人差があり、滑車と内側上顆の幅は重なっています(Miyazaki 2017)。内側上顆がまだ出ていない年齢なのか、剥離なのかは、症状や軟部組織の腫れ、反対側との比較を合わせて判断します。
骨折に見えて正常:多核の骨化と変異
骨化中心の中には、小さく割れて、あるいは複数の核から骨化し、骨折に見えるものがあります。
| 部位 | 正常でみられる変異 |
|---|---|
| 滑車 | 複数の核から骨化したり、不整で硬く(骨硬化)見える。離断性骨軟骨炎や骨折に見えることがある(Tran 2026) |
| 肘頭 | 2つに分かれて見える(二分)、偏った形、断片状になることがある。特に思春期 |
| 上腕骨小頭・橈骨頭 | 小頭は偏って(偏心性に)骨化し、成長とともに中心に寄る。橈骨頭も偏心性が多く、MRIの66人の検討では68〜71%だった。年齢とともに中心に寄るとは限らない(Tran 2026) |
| 外側上顆 | 複数の部分に分かれて見えることがある |
| 内側上顆 | 辺縁の不整や癒合の遅れはあるが、分かれて見える場合は外傷を考える |
X線の研究が、内側と外側の違いを示しています。0〜17歳の1,210人・4,282枚の肘X線を調べた研究では、骨折歴のない人では内側上顆が複数に分かれて見えることはなかったのに対し、外側上顆は9%で複数に分かれていました。骨折の現在・既往があると、どちらも分かれて見える割合が増えました(内側+9%、外側+24%)。内側上顆の多分割は外傷によるものと考え、外側上顆の多分割は生まれつきの変異の可能性がある、と結論されています(Schmid 2022)。
つまり、「分かれて見える」ことは、外側では正常のことがあっても、内側では骨折を疑うのが基本です。一方、滑車の断片状の骨化は正常でみられます。症例を見ると、8歳の男児の上腕骨X線で、滑車が2つの骨化中心を持ち、関節に突き出して断片のように見えていました。症例ページ(Radiopaedia:Normal trochlear ossification – 8-year-old)では、滑車の断片を関節内遊離体と間違えないよう注意が書かれています。
骨折に似た別の「余分な骨」の例は過剰骨(副骨)とはで解説しています。
補助線とサイン:fat pad sign・前上腕骨線・radiocapitellar line
骨化中心が出そろっていない年齢では、骨の位置関係の線とサインが診断の助けになります。
| ツール | 正常 | 異常が示すこと |
|---|---|---|
| fat pad sign(側面像) | 前方の脂肪体は正常でも見える。後方の脂肪体は通常は見えない | 後方の脂肪体が見えるか、前方が帆のように持ち上がると、関節内の液体(血腫)を示す。骨折の手がかり(DeFroda 2017) |
| 前上腕骨線(側面像) | 上腕骨の前縁に沿った線が、上腕骨小頭の中央1/3を通る | 伸展型の顆上骨折では小頭が線より後ろにある(DeFroda 2017) |
| radiocapitellar line | 橈骨の軸の中心線が、どの方向の撮影でも小頭の中央付近を通る | ずれていれば橈骨頭の脱臼(Monteggia骨折など)を考える |
fat pad signは、骨折が見えなくても関節内の病変を示します。肘の外傷でfat pad signが陽性のとき、10の研究・250人のまとめでは、fat pad signが陽性だった子のうち44.6%(95%信頼区間30.4〜59.7%)に見えない骨折(occult fracture)があり、最も多かったのは上腕骨顆上骨折(43%)でした(Kappelhof 2022)。ただし、内側上顆の剥離は関節の外の骨折なので、fat pad signが出ないことがあります(DeFroda 2017)。「fat padがないから骨折はない」とは言えません。
radiocapitellar lineは、側面像では信頼できますが、正面像では橈骨頭が骨化の偏りで外側へずれて見えるのが普通とされています(Tran 2026)。正常の肘でも、この線が小頭に当たらないことが8.6%にあり、橈骨頭の中心で引くほうが正確で、年齢が低いほど外れやすいと報告されています(DeFroda 2017)。顆上骨折と前上腕骨線は小児の骨折の特徴と上腕骨顆上骨折で詳しく解説しています。
左右を比べる
骨化中心の出現は、年齢・性別・成熟度で変わり、同じ人でも左右の腕で違うことがあるため、反対側の肘のX線が診断に役立ちます(DeFroda 2017)。外側顆骨折や内側上顆骨折では、骨化中心の位置や軟骨の幅の違いを確認するために、反対側の撮影(比較像)が有用とされます(DeFroda 2017)。
| 場面 | 比較で見ること |
|---|---|
| 内側上顆が見えない | 反対側に骨化中心があるか、同じ年齢で同じ大きさか |
| 骨片か正常の骨化中心か | 反対側にも同じ形の骨化中心があるか(左右対称か) |
| 成長線の幅が広い | 反対側と比べて成長線が開いていないか |
ただし、肘の外傷では反対側の撮影を、撮影の被ばくや子どもの負担と照らして判断します。症状・腫れ・圧痛の場所の診察とあわせて決めます。
チェックリスト
- 年齢と性別から、出ているはずの骨化中心を順番(CRITOE)で数える
- 順番に反して「あるはずのものがない」場合(特に滑車があって内側上顆がない)は、関節内への嵌入を探す
- 側面像でfat pad sign(特に後方)を確認する。ただし内側上顆の剥離では出ないことがある
- 前上腕骨線が小頭の中央1/3を通るか、radiocapitellar lineが小頭を向くか(側面像で重視)
- 骨化中心が分かれて見える場合は、部位を確認する(内側=外傷を疑う、外側・滑車・肘頭=変異のことがある)
- 迷ったら反対側と比べる。軟部組織の腫れと圧痛の場所も合わせる
よくある疑問(Q&A)
Q. CRITOEは何歳でも同じ順番ですか?
A. おおよその順番は共通ですが、出現の年齢には幅があり、男女差や個人差があります。女児では橈骨頭と内側上顆が同時に出る、肘頭が滑車より先に出る傾向がみられた報告もあります(Miyazaki 2017)。
Q. 骨化中心が分かれて見えます。骨折ですか?
A. 部位によります。滑車や肘頭、外側上顆では正常の変異のことがあります。内側上顆が分かれて見える場合は、外傷を考えます(Schmid 2022)。骨折かどうかは、痛みや腫れ、反対側との比較を含めて判断します。
Q. fat pad signがなければ骨折はありませんか?
A. いいえ。内側上顆の剥離のように関節の外の骨折では、fat pad signが出ないことがあります(DeFroda 2017)。
Q. 子どもの肘のレントゲンで、骨折がはっきりしないときはどうしますか?
A. 腫れや痛みがあれば、骨折がある可能性を考えて対応することが多く、追加の撮影や経過観察が行われます。気になる症状があれば、整形外科などの医療機関に相談してください。
参考文献
- Tran TH, Chi H, Liu TC, et al. Ossification of the Pediatric Elbow with a Focus on Radial Head Ossification Patterns. Curr Rev Musculoskelet Med. 2026;19(1):50. PubMed
- Miyazaki CS, Maranho DA, Agnollitto PM, et al. Study of secondary ossification centers of the elbow in the Brazilian population. Acta Ortop Bras. 2017;25(6):279-282. PubMed
- DeFroda SF, Hansen H, Gil JA, et al. Radiographic Evaluation of Common Pediatric Elbow Injuries. Orthop Rev (Pavia). 2017;9(1):7030. PubMed
- Lahfafa A, Dermesropian F. Medial Epicondyle Avulsion Fracture with Joint Entrapment in Children. J Belg Soc Radiol. 2020;104(1):53. PubMed
- Schmid A, Lois AM, Metz C, et al. Not all that looks fractured is broken-multipartite humeral epicondyles in children. Eur Radiol. 2022;32(8):5045-5052. PubMed
- Kappelhof B, Roorda BL, Poppelaars MA, et al. Occult Fractures in Children with a Radiographic Fat Pad Sign of the Elbow: A Meta-Analysis of 10 Published Studies. JBJS Rev. 2022;10(10). PubMed
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