先に結論:腕神経叢のMRIは冠状断STIRが基本
- 腕神経叢(首から腕へ向かう神経の束)は斜めに走るため、冠状断で全体を見るのが基本で、STIR像などのT2強調像で神経の腫れや信号上昇をとらえます
- 外傷ではMRミエログラフィで神経根の引き抜き損傷(外傷性偽性髄膜瘤)を確認し、CIDP・遺伝性ニューロパチーでは神経の太まり・信号上昇を評価します
- 引き抜き損傷のMRIでは、神経根が見えないこと(欠損)が偽性髄膜瘤より特異的な所見です
腕神経叢損傷に適したMRI撮像方法
・神経叢は冠状断像(鎖骨より上)と横断像(鎖骨より下)で評価しやすく、3D撮像が有用(Szaro 2021)。
・T2強調像・STIR像での神経の信号上昇は冠状断で評価しやすい(Szaro 2022)。
・慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)では神経の太まりと造影増強がみられ(Szaro 2021)、遺伝性の末梢神経疾患(Charcot-Marie-Tooth病1A型など)でも神経根の肥大が報告されている(An 2017)。外傷とあわせて、MRIの冠状断像で評価する。
腕神経叢損傷で使われる主な撮像
- 冠状断のSTIR(3D撮像を含む):神経根から神経幹・神経束までを連続して観察でき、損傷部の腫脹や信号上昇をとらえやすい。
- MRミエログラフィ(高分解能の強いT2強調像):外傷による神経根の引き抜き損傷でみられる外傷性偽性髄膜瘤(くも膜が袋状に飛び出した液体貯留)や、前根・後根の欠損の評価に有用。なお、偽性髄膜瘤を伴わない引き抜き損傷もあり、MRIでは偽性髄膜瘤よりも神経根の欠損の方が引き抜き損傷に特異的とされる。成人の外傷性腕神経叢損傷11研究のメタ解析では、神経根単位でのMRIの引き抜き損傷に対する感度は93%、特異度は72%で、診断能は中等度にとどまり、手術での確認が標準とされている。分娩麻痺(小児)では感度68%・特異度89%で、偽性髄膜瘤は引き抜き損傷の信頼できる指標ではなかった。
- 横断像・矢状断像:斜角筋間・鎖骨下など、どの高さで神経が圧迫・損傷されているかの確認に用いる。
目的別のシーケンス一覧
| シーケンス | 主な目的 |
|---|---|
| T2強調像・STIR(冠状断・3D) | 神経の腫れ・信号上昇・左右差 |
| T1強調像 | 解剖の把握(T2強調像とともに基本の撮像) |
| MRミエログラフィ(強いT2強調像)+頸椎MRI | 硬膜内の神経根、引き抜き損傷・偽性髄膜瘤 |
| 造影T1強調像 | 腫瘍・感染・放射線治療後の変化の区別 |
(Szaro 2021、Szaro 2022)
引き抜き損傷(節前損傷)のMRI所見
急性の節前損傷(引き抜き損傷)では、外傷性偽性髄膜瘤、神経根の欠損、神経根鞘の変形、脊髄の偏位、脊柱管内の出血、背筋の脱神経などが組み合わさってみられます(Szaro 2022)。
腕神経叢損傷は、交通外傷(特にバイク事故)などで頭が反対側へ強く倒される、腕が頭の上へ強く引かれるといった力で起こり(Szaro 2022)、神経根の引き抜き損傷か、それより末梢の損傷かで治療方針(神経移行術など)が変わるため、MRIによる損傷部位の評価が重要である。
あわせて読みたい:脊髄造影(ミエログラフィ)・CTミエログラフィとは
参考文献
- Szaro P, McGrath A, Ciszek B, et al. Magnetic resonance imaging of the brachial plexus. Part 1: Anatomical considerations, magnetic resonance techniques, and non-traumatic lesions. Eur J Radiol Open. 2021;9:100392. PubMed
- Szaro P, Geijer M, Ciszek B, et al. Magnetic resonance imaging of the brachial plexus. Part 2: Traumatic injuries. Eur J Radiol Open. 2022;9:100397. PubMed
- Silbermann-Hoffman O, Teboul F. Post-traumatic brachial plexus MRI in practice. Diagn Interv Imaging. 2013;94(10):925-43. PubMed
- An H, Li J, Wang LM, et al. A Rarely Concerned Magnetic Resonance Image Sign of Spinal Nerve Root Hypertrophy in Type 1A Charcot-Marie-Tooth Disease. Chin Med J (Engl). 2017;130(22):2767-2768. PubMed
- Wade RG, Takwoingi Y, Wormald JCR, et al. MRI for Detecting Root Avulsions in Traumatic Adult Brachial Plexus Injuries: A Systematic Review and Meta-Analysis of Diagnostic Accuracy. Radiology. 2019;293(1):125-133. PubMed
- Brooks J, Hardie C, Wade R, et al. Diagnostic accuracy of MRI for detecting nerve injury in brachial plexus birth injury. Br J Radiol. 2025;98(1165):36-44. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
