
先に結論:月経の前後に、右側に繰り返す気胸や血痰があれば、胸腔子宮内膜症を疑う
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 月経に関連して起こる気胸。胸腔子宮内膜症候群(TES)の中で最も多い形(Visouli 2014) |
| 起こる時期 | 多くは月経開始の前後。月経開始から72時間以内が目安(Visouli 2014)。毎回起こるとは限らない |
| 起こる側 | 右側に多い。報告された592例では病変の79.9%が右肺のみ(Nikolettos 2024) |
| CTの見え方 | 気胸のほか、すりガラス影の結節や嚢胞。横隔膜の病変が見つかることもあるが、CTだけでは診断しにくい(Rousset 2014) |
| 治療 | 胸腔鏡手術とホルモン療法を組み合わせることが多い。婦人科との連携が大切 |
月経随伴性気胸・胸腔子宮内膜症とは
子宮内膜症は、子宮の内側にある内膜に似た組織が、子宮の外にできて、月経のたびに出血や炎症を起こす病気です。多くは骨盤の中にできますが、胸の中にできることがあり、胸腔子宮内膜症候群(thoracic endometriosis syndrome、TES)と呼ばれます。肺、胸膜(肺を包む膜)、横隔膜に病変ができ、骨盤外の子宮内膜症の中では最も多い形です(Rousset 2014)。臍・鼠径部・肺など子宮内膜症が起こる場所は異所性子宮内膜症とはで解説しています。
TESは次のような形で現れます(Rousset 2014、Visouli 2014)。
| 形 | 内容 |
|---|---|
| 月経随伴性気胸 | 月経に合わせて気胸を繰り返す。最も多い |
| 月経随伴性血胸 | 月経に合わせて胸腔に血液が溜まる |
| 月経随伴性喀血 | 月経に合わせて血痰・喀血が出る |
| 肺の結節 | 肺に子宮内膜症の結節ができる |
| 月経に合わせた胸の痛み | 気胸などを伴わない、周期的な胸痛 |
2024年にまとめられた系統的レビュー(202件、592例)では、診断時の年齢の中央値は33.8歳でした。最も多い症状は月経随伴性気胸(68.4%)で、病変は主に右肺に片側のみ(79.9%)に見られました(Nikolettos 2024)。
なぜ気胸が起こるのか
原因はまだ十分にはわかっていません。有力な考え方の1つは、月経血が卵管を通って骨盤や腹腔に流れ(逆流月経)、横隔膜の周りで子宮内膜の組織が増えたり壊れたりを繰り返して、横隔膜に小さな穴(横隔膜の孔)ができるというものです。そこを通って子宮内膜の細胞が胸膜側に入り、肺胞を傷めて気胸が起こると考えられています(Damps-Konstańska 2024)。ほかに、子宮内膜の細胞が血管やリンパ管を通って肺に運ばれるという考え方もあります。
どんなときに疑うか:症状とタイミング
最も大切な手がかりは、症状と月経の関係です。
| 手がかり | 内容 |
|---|---|
| 時期 | 月経の前後。月経開始の約24時間前から48〜72時間後に多い(Damps-Konstańska 2024) |
| 側 | 右側に多い(Rousset 2014) |
| 年齢 | 30〜40歳代に多いが、10歳の少女や閉経後の女性での報告もある(Visouli 2014) |
| 繰り返し | 気胸が何度も再発する。月経のたびに起こるとは限らない(Damps-Konstańska 2024) |
| 症状 | 胸の痛み、息苦しさ、血痰。肩の痛みを伴うこともある(Nezhat 2024) |
| 背景 | 子宮内膜症の既往(骨盤の痛み、月経痛など) |
月経のたびに起こるとは限らないため、「月経と関係ない」と思われやすい点に注意が必要です。月経の時期と症状の日付を並べて確かめることで、はじめて関係がわかることがあります。
画像検査:レントゲンとCT
胸部レントゲン
最も多い所見は気胸です(Nikolettos 2024)。右側の気胸のほか、肺の濃度上昇や胸水がみられることがあります。右の気胸に腹腔内の遊離ガス(気腹)を伴っている場合には、横隔膜に孔があることを示唆します(Damps-Konstańska 2024)。気胸そのものの見方は気胸の画像診断(レントゲン・CT)、気胸と間違えやすい線の見分け方は気胸に見える線で解説しています。
CT
CTは、胸の中の状態を調べる最初の画像検査です。ただし、CTだけでは特異性が低いため、主な役割はほかの肺の病気を除外することです。典型的な病歴があれば、いくつかの所見が診断を後押しします(Rousset 2014)。
| CTの所見 | ポイント |
|---|---|
| 気胸 | 右側に多い。胸水(血液)を伴うこともある |
| 横隔膜の病変 | 横隔膜の結節や孔。造影CTで見えやすくなる(Damps-Konstańska 2024) |
| 肺の結節・すりガラス影 | すりガラス影を伴う結節や嚢胞が、CTで最も多い所見(Nikolettos 2024)。肺胞の小さな出血を反映すると考えられている(Lojanica 2026) |
| 肺の嚢胞・ブラ | 嚢胞状の病変やブラ様の変化が報告されている(Nikolettos 2024、Lojanica 2026) |
| 胸膜の肥厚 | 限られた範囲の肥厚が見られることがある(Lojanica 2026) |
| 腹腔内の遊離ガス | 右気胸と一緒にあれば、横隔膜の孔を考える |
肺の子宮内膜症の結節は、月経の状態によって見え方が変わります。気管支肺の子宮内膜症の症例報告では、結節(空洞を伴うこともある)や周りのすりガラス影が主な所見で、月経の状態により所見が変わると述べられています(Sanada 2018)。月経の時期に撮れば出血を反映した影が見えやすく、月経と月経の間には吸収されて見えにくくなることがあるため、撮影した時期を記録することが診断のうえで重要です(Lojanica 2026)。
症例 30歳代女性 月経随伴性気胸

引用:Radiopaedia(Menstruation-related spontaneous pneumothorax)
右の胸腔に大きな気胸があり、右肺が縮んで、背側に虚脱した肺が見えます。症例ページでは、35歳の女性で、月経に関連した4回目の気胸(いずれも右側)であり、CTでは右気胸と一部の無気肺があると記載されています。
CTを読むときのチェックリスト
- 病歴を先に確認する:月経の時期、過去の気胸、子宮内膜症の既往。画像だけで判断すると見逃しやすくなります(Lojanica 2026)
- 横隔膜を見る:特に右側の横隔膜の結節や孔。胸の下のほうまで範囲に含めて確認します(Rousset 2014、Damps-Konstańska 2024)
- 肺の結節とすりガラス影を探す:気胸の背後の肺や縮んだ肺にも注意します(Nikolettos 2024)
- 腹腔内のガスを確認する:右気胸と気腹の組み合わせは手がかりになります(Damps-Konstańska 2024)
- 撮影した時期を記録する:月経の時期かどうかで、所見の見え方が変わります(Lojanica 2026)
- 再発のときは前回と比べる:同じ場所に結節や孔がないかを確認します
MRI
MRIは、出血を含む横隔膜や胸膜の病変の診断を助けます。脂肪抑制T1強調像で、出血を反映する高信号が見えることがあります(Rousset 2014、Lojanica 2026)。ただし、薄い病変や小さな横隔膜の孔は、MRIでも見つけにくいことがあります(Lojanica 2026)。
診断と治療
診断は、月経との関係を含む病歴が出発点です。画像だけでは決められない場合があり、確定には胸腔鏡(VATS)で病変を見て、病理で確かめることがあります(Visouli 2014)。画像所見は、月経の周期、婦人科の病歴、症状の特徴と合わせて判断することが勧められています(Lojanica 2026)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 急性期 | 気胸の治療(必要に応じて胸腔ドレナージ) |
| 再発予防 | 胸腔鏡手術とホルモン療法(GnRHアナログ、プロゲスチン、ピルなど)を組み合わせる(Nikolettos 2024) |
| 婦人科との連携 | 手術した32例では、TESが40.6%、骨盤の子宮内膜症が37.5%に見つかった(Ciriaco 2022) |
| 再発 | 治療後の再発は、系統的レビューで10.1%(Nikolettos 2024)、手術した32例で18.8%(Ciriaco 2022) |
TESは、重い子宮内膜症の目印と考えられています。できるだけ保存的に管理し、手術は難治の場合に考えるという方針が示されています(Nezhat 2024)。呼吸器内科・呼吸器外科・婦人科が連携して方針を決めます。具体的な薬の種類や量は、主治医の指示に従ってください。
こんなときは受診を
- 急に息苦しくなった、胸が痛い場合は、早めに医療機関を受診してください
- 気胸を経験した方は、月経の日付と症状が出た日を記録しておくと、診断の助けになります
- 月経に合わせて血痰が出る場合も、呼吸器内科や婦人科に相談してください
気になる症状があれば、医療機関にご相談ください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 気胸は月経と関係ないときもありますか?
A. あります。気胸の多くは月経と関係なく起こります。月経の前後に繰り返す場合に、月経随伴性気胸を考えます。子宮内膜症と関連するが、月経と時期が一致しない気胸もあります(Rousset 2014)。
Q. CTで正常と言われたら、子宮内膜症の可能性はなくなりますか?
A. いいえ。画像所見は時期によって変わり、特異性も低いため、画像で見えなくても否定はできません(Rousset 2014、Lojanica 2026)。
Q. 手術をすれば再発しませんか?
A. 再発を減らせますが、ゼロにはなりません。報告では、治療後の再発は10.1%(Nikolettos 2024)、手術した32例では18.8%でした(Ciriaco 2022)。
Q. 何科を受診すればよいですか?
A. 急な息苦しさや胸痛は呼吸器内科や救急外来です。月経との関係が疑われる場合は、婦人科とも連携できる施設が適しています。
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参考文献
- Rousset P, Rousset-Jablonski C, Alifano M, et al. Thoracic endometriosis syndrome: CT and MRI features. Clin Radiol. 2014;69(3):323-30. PubMed
- Visouli AN, Zarogoulidis K, Kougioumtzi I, et al. Catamenial pneumothorax. J Thorac Dis. 2014;6(Suppl 4):S448-60. PubMed
- Nikolettos K, Patsouras A, Kotanidou S, et al. Pulmonary Endometriosis: A Systematic Review. J Pers Med. 2024;14(11):1085. PubMed
- Ciriaco P, Muriana P, Carretta A, et al. Catamenial Pneumothorax as the First Expression of Thoracic Endometriosis Syndrome and Pelvic Endometriosis. J Clin Med. 2022;11(5):1200. PubMed
- Damps-Konstańska I, Szukalska A, Janowiak P, et al. Catamenial Pneumothorax-Still an Unveiled Disease. Medicina (Kaunas). 2024;60(12):2029. PubMed
- Sanada T, Park J, Hagiwara M, et al. CT and MRI findings of bronchopulmonary endometriosis: a case presentation. Acta Radiol Open. 2018;7(10):2058460118801164. PubMed
- Nezhat C, Amirlatifi N, Najmi Z, et al. Thoracic Endometriosis Syndrome: A Comprehensive Review and Multidisciplinary Approach to Management. J Clin Med. 2024;13(24):7602. PubMed
- Lojanica MV, Ivanovic S, Milic N, et al. Thoracic Endometriosis and Catamenial Pneumothorax: Imaging Pitfalls and an Integrated Diagnostic Approach. J Clin Med. 2026;15(12):4517. PubMed
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