
先に結論:膝のX線で脂肪と血液の境目(液面)が見えたら、骨折線が見えなくても関節内骨折を疑う
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 関節内骨折で骨髄の脂肪と血液が関節内に出て、脂肪が上に浮いて液面ができた状態(脂肪血関節症) |
| どう写るか | 寝た姿勢でX線を水平に入れた側面像で、膝の上の袋(膝蓋上嚢)に水平な線として見える。これがFBI sign(fat-blood interface sign) |
| 意味 | 液面があれば関節内骨折。ただし液面がなくても骨折は否定できない |
| 落とし穴 | 液面が1本でも、血液が分かれただけで脂肪を含まないことがある。2本ならより特異的 |
| 次の一手 | 骨折線が見えなければCTやMRI、エコーを追加する |
脂肪血関節症とは
関節の中に骨折で出た骨髄の脂肪と血液が混ざった状態を、脂肪血関節症(lipohemarthrosis)といいます。骨の中の骨髄には脂肪が多く、骨折が関節の中(関節面)に及ぶと、その脂肪が関節の袋の中に漏れ出します。脂肪は血液より軽いため、時間がたつと脂肪が上、血液が下に分かれて液面(fat-fluid level)ができます。
膝の関節内骨折でよく知られていて、代表は脛骨高原骨折(脛骨高原骨折)や大腿骨遠位部の骨折、膝蓋骨骨折(膝蓋骨骨折)です。X線では、水平方向に入れたビームでこの液面が1本の水平線として写るため、FBI sign(fat-blood interface sign)とも呼ばれます。
X線の見え方と撮り方
液面を写すには、X線を地面と平行に入れる(水平ビーム)必要があります。上向きに寝た姿勢で、膝の外側から水平にビームを入れる「クロステーブル側面像」が代表的です。液面は膝蓋骨の上、大腿四頭筋腱の下にある膝蓋上嚢に、境のはっきりした水平線として見えます。
| 見るところ | ポイント |
|---|---|
| 場所 | 膝蓋上嚢(膝蓋骨の上のふくらみ) |
| 形 | 地面と平行な、境目のはっきりした線。上が脂肪(黒め)、下が血液(灰色) |
| 写る向き | 水平ビームの側面像が基本 |
| あわせて見る | 関節液の貯留、関節面の段差、骨のわずかな陥没 |
どれくらい頼りになるサインか
膝の外傷268人のX線を見直した研究では、関節内骨折のうち15人に液面があり、液面のない関節内骨折の28人は関節液の貯留だけでした。液面があった人はすべて骨折があり、液面がなくても関節内骨折は否定できなかったと報告されています(Lee 1989)。
撮り方についての研究もあります。CTで脂肪血関節症が確認された61人で比べたところ、立って撮った側面像での検出は95.5%、寝て撮った側面像では38.5%でした(Tosun 2024)。この研究は「CTで脂肪血関節症があった人」を対象にした後ろ向きの検討で、撮影の条件や画質にも左右されます。検査施設の撮影方法に従うのが基本ですが、「寝て撮ればいつも液面が写る」とは限らない点は覚えておくとよいでしょう。
前向きに調べた別の研究(48人)では、CTで関節内骨折が確認された31人のうち30人(97%)に脂肪血関節症があり、膝のX線で脂肪血関節症を示せたのは感度55%でした(Bonnefoy 2006)。X線だけで液面を拾いきれない人もいる、ということです。
液面が1本でも脂肪とは限らない
脛骨高原骨折41人のうち、X線で液面があり、CTまたはMRIを受けた12人を調べた研究があります。このうち8人は上の層に脂肪がなく、血液が血球成分と血清に分かれただけでした。脂肪血関節症があったのは4人で、そのうち1人は、X線を見直すと液面が2本(二重の液面)でした(Lugo-Olivieri 1996)。結論は「1本の液面は脂肪血関節症とは限らず、2本の液面のほうがより特異的」です。
| 見え方 | 中身の可能性 | 対応 |
|---|---|---|
| 液面1本 | 脂肪血関節症、または血液が血球と血清に分かれたもの | 外傷後なら関節内骨折を疑い、CT・MRIで確認する |
| 液面2本(二重) | 脂肪、血清、血球の3層。脂肪血関節症を示しやすい | 関節内骨折の可能性が高い。骨折の部位をCTで探す |
| 液面なし | 関節液の貯留だけの骨折もある | 骨折の否定にはならない。痛みや腫れが強ければ追加検査 |
MRIでは、関節内出血だけでも血球成分と血漿成分に分かれて液面(fluid-fluid level)ができることがあります。液面の数と、上の層が脂肪かを信号で確認します。
患者さんの側から見た検査の流れ
膝をぶつけたり、ひねったりして強く腫れたとき、医療機関ではまずレントゲンを撮ります。骨折の線が見えるかを調べるだけでなく、上のような液面がないかも確認します。痛い膝を無理に動かさずに、寝たまま膝の横からビームを入れる撮り方が選ばれることがあります。これは液面を地面と平行な線として写すための工夫です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 問診・診察 | けがの原因、体重をかけられるか、腫れ方を確認する |
| 2. レントゲン | 正面・側面に加えて、必要に応じて水平ビームの側面像で液面を探す |
| 3. 液面や関節液の貯留あり | 骨折線が見えなくても、CTやMRIで関節面の骨折を確認する |
| 4. 治療方針 | 骨折の部位とずれの程度をもとに、整形外科で決める |
膝の強い痛みや腫れが続くときは、医療機関を受診してください。
CT・エコーでの見え方
CTでは、膝蓋上嚢の脂肪(黒め)が液体(灰色)の上に層をなして見えます。骨折の部位や関節面の段差もCTで評価します。
症例 脛骨高原骨折(Schatzker VI型) 脂肪血関節症

引用:Radiopaedia(Tibial plateau fracture: Schatzker type VI)
膝の矢状断CT(骨条件)です。症例ページでは、脛骨の内側・外側高原の粉砕骨折があり、膝蓋上嚢に脂肪血関節症の液面を認めると記載されています。写真では、膝の前上方の膝蓋上嚢に、黒い脂肪の層とその下の灰色の液体が見えます。
エコーでも見つけることができます。救急外来で膝蓋上嚢をエコーで見て、脂肪血関節症に特徴的な「三層構造(triple layer sign)」から関節内骨折を疑い、CTで確認できた症例が報告されています(Aponte 2013)。前向き研究(48人)では、エコーによる脂肪血関節症の検出は感度97%、特異度100%で、X線の感度55%を上回りました。エコーでは骨折線そのものは見えませんでしたが、潜在骨折5例のうち4例を脂肪血関節症から拾えたと報告されています(Bonnefoy 2006)。
見落としを防ぐチェックリスト
- 外傷後の膝は、側面像で膝蓋上嚢を最初に確認する
- 水平ビームの像かどうかを確認する(立位でも臥位でも、地面に平行に入っているか)
- 液面があれば、1本か2本かを見る
- 液面がなくても、関節液の貯留や関節面の段差を探す
- 骨折線が見えない場合でも、「液面がある=関節内骨折」として、CTかMRIを提案する(潜在骨折(occult fracture))
- 脛骨高原・大腿骨遠位・膝蓋骨の関節面を順に見直す
骨のレントゲン全体の見方は骨のレントゲンの見方も参考になります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 膝のレントゲンで「骨折は見えない」と言われたのに、液面があると言われました。
液面は関節内骨折のサインで、液面があった人はすべて骨折があったと報告されています(Lee 1989)。骨折線が写っていなくても、CTやMRIで確認することがあります。強い痛みや腫れが続くときは医療機関に相談してください。
Q. 液面がなければ骨折ではないのですか?
いいえ。関節内骨折でも液面がなく、関節液の貯留だけのことがあります(Lee 1989)。
Q. 膝以外でも脂肪血関節症はありますか?
関節内骨折があれば、膝以外の関節でも同じ仕組みで起こり得ます。ただ、この記事で取り上げた研究は膝を対象にしています。
Q. 立って撮るのと寝て撮るのとで、どちらが液面が見えますか?
CTで脂肪血関節症があった61人の検討では、立位の側面像のほうが検出率が高いと報告されています(Tosun 2024)。ただし、痛みで立てない人もいます。実際の撮り方は、けがの状態に合わせて医療機関が決めます。
Q. エコーで液面がわかりますか?
膝蓋上嚢の三層構造として見える場合があります(Aponte 2013、Bonnefoy 2006)。ただし骨折線そのものはエコーでは見えないため、確定にはCTなどが使われます。
あわせて読みたい:関節炎のレントゲンの見方、有鉤骨鉤骨折とは
参考文献
- Lee JH, Weissman BN, Nikpoor N, et al. Lipohemarthrosis of the knee: a review of recent experiences. Radiology. 1989;173(1):189-91. PubMed
- Lugo-Olivieri CH, Scott WW Jr, Zerhouni EA. Fluid-fluid levels in injured knees: do they always represent lipohemarthrosis? Radiology. 1996;198(2):499-502. PubMed
- Bonnefoy O, Diris B, Moinard M, et al. Acute knee trauma: role of ultrasound. Eur Radiol. 2006;16(11):2542-8. PubMed
- Aponte EM, Novik JI. Identification of lipohemarthrosis with point-of-care emergency ultrasonography: case report and brief literature review. J Emerg Med. 2013;44(2):453-6. PubMed
- Tosun O, Sinci KA, Bacaksiz T, et al. The utility of standing knee radiographs for detection of lipohemarthrosis: comparison with supine horizontal beam radiographs. Eur Radiol. 2024;34(2):1104-1112. PubMed
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