片側の肺が黒い 回旋・乳房切除・異物・気胸の見分け方

胸部レントゲンで、右の肺だけが左より黒く写っていると言われました。肺に穴が開いているのでしょうか?
片側が黒く見えても、肺に穴が開いているとは限りません。まず撮り方(回旋)や、乳房切除・胸の筋肉の欠損といった肺以外の原因を除き、そのうえで、肺の血管の細さ、空気の逃げにくさ、気胸の有無で原因を絞っていきます。読み方の順番を整理します。

先に結論:片側が黒いときは「肺以外の原因 → 肺の血管の少なさ → 空気の逃げにくさ → 気胸」の順に考える

見分けの順番 原因の例 手がかり
1. 撮り方 回旋(体が斜め) 棘突起と鎖骨内側端の位置のずれ。撮り直しで消える(Marais 2023)
2. 胸壁・軟部組織 乳房切除後、Poland症候群(胸筋の欠損) 肺の血管影は左右同じ。腋窩のひだ・胸筋の左右差、手術歴(Urschel 2009)
3. 肺の血管が少ない Swyer-James(-MacLeod)症候群、肺塞栓など 黒い側の肺血管が細く少ない(Donnan 2024)。肺門が小さいこともある
4. 空気が逃げにくい 気道異物、気管支閉鎖など 呼気でも黒い側が膨らんだまま(閉塞性の気腫が最も特異的なサイン、Hitter 2011)
5. 肺の外に空気 気胸 肺の血管影が外側まで届かず、肺の縁の線が見える

白い側が異常なこともあります。「黒い側」と「白い側」のどちらが異常かを、先に決めることが大切です。

最初に決める:どちらが異常か

片側の肺が黒く見えるとき、黒い側が異常なのか、白い側が異常なのかを最初に決めます。白い側に浸潤影や無気肺、胸水があれば、反対側が相対的に黒く見えることがあります。白く見える側の原因は、縦隔の位置(押されているか、引かれているか)を手がかりに調べます。

黒い側が異常と判断できたら、肺の血管影(肺紋理)を見ます。

黒い側の肺の血管影 考えること
左右同じように見える 肺は正常で、肺以外(撮り方、乳房切除、胸筋の欠損)の影響
細く少ない 肺の血流が減っている。Swyer-James症候群、肺塞栓、気管支閉鎖、気腫性変化など
見えない(肺の縁の線がある) 気胸

回旋:まず撮り直しで消える黒さを除く

体が斜めを向いて撮られた写真では、片側の肺が黒く見えます。仰向けで撮った新生児の胸部写真で回旋の影響を整理した総説では、回旋した向きの側が黒く(透過性が高く)見え、上になった側が大きく見えて、縦隔が回旋した向きへずれて見えるとされています(Marais 2023)。この総説では、回旋によって、空気の閉じ込め(エアトラッピング)や無気肺、心拡大、胸水と間違えて診断することがあると警告しています。

確認のしかたは、胸椎の棘突起が左右の鎖骨の胸骨側の端から等しい距離にあるかを見ることです。ずれていれば、撮り直しをするか、回旋の影響を考えて読みます。

胸壁・軟部組織:乳房切除とPoland症候群

乳房や大胸筋は、下の方の肺野の濃度を上げています。このため、乳房切除術を受けた方や、先天的に大胸筋がない方では、手術側(欠損側)の肺野が反対側より黒く(透過性亢進)見えます。肺の血管影は左右で同じように見え、腋窩のひだの左右差、乳房の影の欠損が手がかりです。手術歴を確認し、反対の乳房の影と比べます。

症例 60歳代女性 右乳房切除後

右乳房切除後の右肺野の透過性亢進 胸部X線
引用:Radiopaedia(Right hyperlucent hemithorax – mastectomy)

右の乳房切除後で、右の胸が左より黒く見えています。症例ページでは、右乳房切除と腋窩のひだの左右差が記載され、右の胸全体の透過性亢進は乳房切除によるものと説明されています。

Poland症候群

Poland症候群は、生まれつき片側の胸の筋肉などが欠損する先天異常で、約3万人に1人とされています(Wojtyś 2024)。乳房や乳頭の低形成または欠損、大胸筋の胸肋部と小胸筋の欠損、第2〜4肋骨または第3〜5肋骨の肋軟骨や肋骨の欠損がみられ、常に片側のみ(一側性)と記されています。胸壁の欠損部に肺が出る肺ヘルニアを伴うことが多いとも述べられています(Urschel 2009)。手の指の癒合や短縮(symbrachydactyly)を伴うことがあります(Wojtyś 2024)。胸部レントゲンでは、欠損側の肺野が黒く見えるため、気づかれるきっかけになります。確認には、CTやMRIが役立ちます(Wojtyś 2024)。Poland症候群のCT所見はポーランド症候群(Poland症候群)とはを参照してください。

肺の血管が細く少ない:Swyer-James症候群・肺塞栓

Swyer-James(-MacLeod)症候群

Swyer-James-MacLeod症候群は、幼いころの感染症のあとに、細い気管支が閉塞性の細気管支炎で傷害されて起こるまれな疾患で、肺の発育が止まることで生じます。レントゲンでは片側の肺野の透過性亢進(黒い)を示し、CTでは、透過性亢進、血管の減少、呼気でのガス閉じ込め(エアトラッピング)がみられます(Donnan 2024)。患側の肺は、容積が小さいか正常で、肺血管が細く少なく、肺門が小さく見えます。成人になってから見つかる例もあり、症例報告では、レントゲンでは過小評価されることがあるため、診断には高分解能CTが必要とされています(Sharma 2024)。

画像では、レントゲンで片側の肺が小さめで黒く、CTで同じ側の血管が細く少なく、肺血流シンチで同じ側の血流が少ない、という組み合わせが手がかりになります。CTの空気の閉じ込め(エアトラッピング)は閉塞性細気管支炎(BO)とエアトラッピングで説明しています。

症例 20歳代女性 Swyer-James症候群

Swyer-James症候群 胸部X線
引用:Radiopaedia(Swyer-James syndrome)

胸部X線では、左の中〜下肺野で肺血管の陰影が少なくなっています。症例ページのCTでは、左下葉に気管支拡張と容積の減少があり、左下葉の軽い透過性亢進と細い血管が確認されています。

肺塞栓

肺塞栓で、血流が途絶えた肺の領域が黒く見える所見(Westermark sign)が知られています。しかし、肺塞栓が疑われた1,063人の胸部レントゲンを調べたPIOPEDの研究では、肺塞栓があった383人のうち、レントゲンが正常だったのは12%だけでした。最も多かったのは無気肺や濃度の上昇でしたが、肺塞栓のない人と差はなく、Westermark sign、Hampton hump、肺動脈の拡大などの個々の所見も、肺塞栓の予測には乏しいと報告されています。著者は、胸部レントゲンの主な価値は、肺塞栓に似た別の病気を除くことにあるとしています(Worsley 1993)。「片側が黒い」ことだけで肺塞栓と決めたり、除外したりせず、症状とD-ダイマー、造影CTなどで判断します(肺血栓塞栓症のCT画像診断)。

空気が逃げにくい:気道異物・気管支閉鎖

気管支の中の異物が弁のように働くと、吸うときは空気が入るのに、吐くときに出られず、その先の肺が膨らんだまま黒く見えます。これがエアトラッピングです。呼気の写真では、正常な側が縮んで白くなる一方、異物のある側は膨らんだままで黒く、縦隔が反対側へ寄って見えます。

ただし、レントゲンだけでは見逃すことがあります。子どもの気道異物の診断を整理した総説では、吸気と呼気の胸部写真は、最初に行う画像検査として行われることが多いものの、感度も特異度も低く、X線に写る異物がない場合は、閉塞性の気腫が最も特異的なサインとされています。確定には、気管支鏡検査が最も感度と特異度が高く、CTも有用とする報告があります(Hitter 2011)。気道異物が疑われた293人の小児の気管支鏡を調べた研究では、異物が見つかった265人のうち、レントゲンが正常と判断された子が110人いました。むせ込みなどの窒息のエピソードの記録があったのは、異物のあった265人のうち228人でした(Zerella 1998)。レントゲンが正常でも、むせ込みの病歴があれば異物を否定できません。異物の詳しい見方は気管支異物とは?症状・原因・レントゲン画像を参照してください。

そのほか、生まれつき気管支が途中で途切れる気管支閉鎖や、新生児の先天性大葉性気腫でも、片側(または一部)の肺が膨らんで黒く見えます。

肺の外に空気:気胸

気胸では、肺が縮み、その外側に空気が溜まります。黒い側の肺に血管影が見えず、縮んだ肺の縁を示す細い線(臓側胸膜線)が見えます。仰向けでは、空気が胸の前に集まり、肺尖部ではなく心臓の脇や横隔膜の上が黒く見え、肋骨横隔膜角が深く見えます。気胸の見方は気胸の画像診断(レントゲン・CT)を参照してください。縦隔が反対へ押されて、急に息苦しくなったときは、緊急の対応が必要です。

見分けのまとめ

原因 黒い側の肺血管影 呼気の写真 その他の手がかり
回旋 左右同じ ― 棘突起と鎖骨内側端のずれ
乳房切除・Poland症候群 左右同じ 差が出ない 腋窩のひだ、乳房の欠損、肋骨の欠損
Swyer-James症候群 細く少ない、肺門が小さい 黒い側が膨らんだまま 小児期の感染歴。CTで空気の閉じ込め
気道異物 大きな差はない 黒い側が膨らんだまま むせ込みの病歴。レントゲンが正常のこともある
肺塞栓 細くなることがあるが一定しない ― 突然の息苦しさ・胸痛。レントゲンは正常なことも多い
気胸 見えない ― 肺の縁の線、臥位では肋骨横隔膜角が深い

読影のチェックリスト

  • 撮影条件(回旋・吸気・体位)は適切か
  • 黒い側と白い側のどちらが異常か
  • 黒い側に、肺の血管影は見えるか(左右で同じか)
  • 乳房切除・胸筋の欠損・腋窩のひだの左右差はないか
  • 縦隔や気管が、どちらへずれているか
  • 呼気の写真で、黒い側が膨らんだままになっていないか
  • むせ込みや異物の病歴、小児期の感染症、息苦しさの急な出現はないか
  • 迷うときは、高分解能CT(吸気と呼気)、肺血流シンチなどを検討する

よくある疑問(Q&A)

Q1. 片側が黒いと言われました。病気でしょうか?

撮り方(回旋)や乳房の手術後など、病気ではない理由で黒く見えることがよくあります。手術の既往があれば、その旨を伝えてください。気になる症状や、息苦しさ、咳が続く場合は、医療機関に相談してください。

Q2. Swyer-James症候群は治療が必要ですか?

症状がなく、偶然見つかることも多い疾患です。感染を繰り返す場合や、息苦しさがある場合は、症状に応じた治療が検討されます。成人の症例報告では、気管支拡張薬や抗菌薬が使われました(Sharma 2024)。方針は主治医と相談してください。

Q3. Poland症候群は治療が必要ですか?

症状の出方は人によって大きく異なり、治療方針に決まった指針はなく、専門医の経験に基づいて決められることが多いとされています。胸部外科、形成外科、手の外科、心理面の支援を含めた多職種での相談が行われます(Wojtyś 2024)。

Q4. 子どもが何かを飲み込んだかもしれません。レントゲンが正常ならば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。小児の気道異物では、レントゲンが正常のことが多く、むせ込みや咳が続くなどの病歴が大切です(Zerella 1998)。疑われるときは早めに医療機関を受診してください。

あわせて読みたい:胸部レントゲンで片側の肺が白い、胸部レントゲンの撮影条件の確認

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参考文献

  1. Marais J, Venkatakrishna SSB, Calle-Toro JS, et al. Patient rotation chest X-rays and the consequences of misinterpretation in paediatric radiology. Paediatr Respir Rev. 2023;47:41-50 PubMed
  2. Urschel HC Jr. Poland syndrome. Semin Thorac Cardiovasc Surg. 2009;21(1):89-94 PubMed
  3. Wojtyś ME, Kordykiewicz D, Wójcik J, et al. Consultations for Poland Syndrome: The Essentials for a Thoracic Surgeon. Medicina (Kaunas). 2024;60(7)PubMed
  4. Donnan MT, Dabscheck E, Miller BR, et al. Delayed diagnosis of Swyer-James-MacLeod syndrome. Respirol Case Rep. 2024;12(5):e01382 PubMed
  5. Sharma PK, Subramonian SG, R K K, et al. Unilateral Hyperlucent Lung in Adulthood: A Case Report of Swyer-James-Macleod Syndrome. Cureus. 2024;16(2):e54107 PubMed
  6. Hitter A, Hullo E, Durand C, et al. Diagnostic value of various investigations in children with suspected foreign body aspiration: review. Eur Ann Otorhinolaryngol Head Neck Dis. 2011;128(5):248-52 PubMed
  7. Zerella JT, Dimler M, McGill LC, et al. Foreign body aspiration in children: value of radiography and complications of bronchoscopy. J Pediatr Surg. 1998;33(11):1651-4 PubMed
  8. Worsley DF, Alavi A, Aronchick JM, et al. Chest radiographic findings in patients with acute pulmonary embolism: observations from the PIOPED Study. Radiology. 1993;189(1):133-6 PubMed

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