
先に結論:副腎皮質シンチは副腎皮質の「働き」を見る検査。左右差の読み方が大切で、副腎静脈サンプリングを補う位置づけ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何を見るか | コレステロールに似た薬が副腎皮質に取り込まれる様子を撮る。形ではなくホルモン産生の働きを反映する |
| 対象 | 原発性アルドステロン症、クッシング症候群・サブクリニカルクッシング症候群など |
| 工夫 | 原発性アルドステロン症ではデキサメタゾン抑制下に撮像する。投与から数日後に撮る |
| 読み方 | 一側だけの集積・反対側の抑制は、その側の自律的なホルモン産生を示唆する。両側の集積は過形成などを考える |
| 限界 | 感度が高くない(集積しない腺腫がある)。副腎静脈サンプリングが基準で、シンチは補助 |
副腎皮質シンチ(アドステロールシンチ)とは
副腎皮質は、コレステロールを材料にして、コルチゾールやアルドステロンなどのホルモンを作っています。副腎皮質シンチは、このコレステロールに似た放射性医薬品(131I-アドステロール、一般にNP-59=131I-6β-iodomethyl-19-norcholesterolと呼ばれる薬)を注射し、副腎皮質に取り込まれた様子を専用のカメラで撮る検査です。形を見るCT・MRIとは違い、副腎皮質の自律的な機能(ホルモンを作る働き)を反映します(Spyridonidis 2013)。
副腎のCT・MRIの読み方は、副腎腺腫のCT・MRIによる画像診断と副腎腫瘍(副腎腺腫)とは?CT値10HUの意味と経過観察で解説しています。形の検査で腫瘍の場所と良悪性を、シンチでその腫瘍が「働いているか」を、というように役割を分けて使います。
撮像の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 薬の取り込み | 投与してから日数をかけて副腎皮質に取り込まれるため、撮像は投与の数日後(研究では5日後・7日後の測定) |
| 撮像方法 | 腹部を後ろから撮る後面像が中心。SPECT/CTを併用する施設もある |
| デキサメタゾン抑制 | 原発性アルドステロン症の評価で用いる。ACTHに反応して取り込まれる正常部分の集積を抑え、自律的に働く部分を見やすくする |
| 前準備 | 検査前に控える薬・続ける薬は、主治医・検査施設の指示に従う |
薬の影響を受けることもあり、スピロノラクトンが副腎皮質シンチの正確さを妨げた症例が報告されています(Shapiro 1994)。服用中の薬は、自己判断で変えずに、検査施設に伝えてください。
原発性アルドステロン症での使い方
原発性アルドステロン症は、副腎がアルドステロンを出しすぎて高血圧などを起こす病気です。片側の腺腫(アルドステロン産生腺腫)なら手術、両側の過形成なら薬物治療が中心になるため、片側か両側かの区別が重要です。
片側か両側かを調べる基準の検査は副腎静脈サンプリング(AVS)ですが、侵襲があり、正確に行える施設は限られます。CT・MRI・デキサメタゾン抑制下のNP-59シンチなどの非侵襲的な検査が使われますが、AVSと比べた正確さは十分ではなく、治療方針を誤る恐れがあるとされています(Spyridonidis 2013)。
どのくらい当たるのか
デキサメタゾン抑制下のシンチを49人で評価した研究では、手術を受けたアルドステロン産生腺腫33人のうち、片側に集積があったのが27人、集積がなかったのが6人でした。そして25人(76%)では、シンチが示した側を手術して改善していました。両側過形成と考えられた14人のシンチは正常でした。結論は、感度は限られるが、片側に集積があれば正確性は高いで、AVSで結果がはっきりしないときの補助として使える、というものでした(Volpe 2008)。
クッシング症候群・サブクリニカルクッシング症候群での使い方
クッシング症候群は、コルチゾールが過剰になる病気です。症状が目立たないのに、検査でコルチゾールの自律的な過剰が見つかるものを、サブクリニカルクッシング症候群といいます。副腎偶発腫の評価でも問題になります(副腎腫瘍(副腎腺腫)とは?)。
コルチゾールを自律的に作る腺腫があると、ACTHが抑えられて、反対側の副腎の取り込みが下がります。これが対側の抑制で、シンチでは「腫瘍側は集積、反対側は抑制」という像になります。
片側の副腎腺腫の90人を調べた研究では、サブクリニカルクッシング症候群の人は、腫瘍側の集積は非機能性腺腫と同じ程度でしたが、反対側の集積が低く、左右の比が高くなっていました。この左右の比は、デキサメタゾン抑制試験後のコルチゾール値と相関し、腫瘍側の集積だけではそうした相関はありませんでした。つまり、腫瘍側が強く集積するかどうかよりも、反対側が抑えられているかが、コルチゾール過剰の証拠として有用です(Katabami 2016)。
クッシング症候群とサブクリニカルクッシング症候群の24人(7人と17人)の比較では、投与後7日の取り込み率が0.47%と0.30%で、取り込み率で両者をある程度区別できたと報告されています(Okada 2021)。ただし人数が少なく、シンチだけで診断するのではなく、ホルモン検査と合わせて判断します。
左右差の読み方
後面像では、患者さんの右が画像の右になります。次のように整理すると読みやすくなります。
| シンチの所見 | 考えること |
|---|---|
| 一側の集積が強く、反対側が抑制 | その側の腺腫が自律的にホルモンを作っている(サブクリニカルクッシング症候群を含むコルチゾール過剰や、アルドステロン産生腺腫) |
| 腫瘍側に集積、反対側の抑制なし | 非機能性腺腫を含め、ホルモン過剰とは言い切れない |
| 両側に強い集積 | ACTH依存性(下垂体性クッシング病など)の過形成、副腎の過形成性病変(ACTH非依存性大結節性副腎過形成など)を考える |
| 集積なし | ホルモンを作らない病変、あるいは描出されない腺腫。アルドステロン産生腺腫でも描出されないことがある |
肝臓や胆嚢、腸管にも薬が集まることがあり、副腎との重なりに注意が必要です。この点は、SPECT/CTや断層像で位置を確認します。
図 副腎皮質シンチの所見の違い

引用:Yokoyama K, Matsuki M, Isozaki T, et al. Advances in multimodal imaging for adrenal gland disorders: integrating CT, MRI, and nuclear medicine. Jpn J Radiol. 2025;43(6):903-926 (Figure 5). CC BY 4.0(PMC)。図は加工していません。
上段が131I-adosterol副腎皮質シンチ(後面像)、下段が対応するCTなどです。(A・B)サブクリニカルクッシング症候群では、右副腎の腫瘤に中等度の集積があり、反対側の副腎は軽く抑制されています(白矢印が反対側の抑制)。(C・D)クッシング症候群では、腺腫に強い集積があり、反対側の抑制がはっきりしています。(E・F)ACTH依存性のクッシング病では、両側の副腎に集積しています。(G・H)両側微小結節性の副腎皮質疾患では、CTでは片側の機能性腺腫と疑われましたが、シンチでは両側に左右対称な強い集積があり、手術を避けることにつながりました。(I・J)両側大結節性の副腎皮質疾患でも、両側に高い集積があります。
副腎静脈サンプリング(AVS)との関係
AVSは、副腎から出る静脈の血液を採って、左右のホルモン量を比べる検査で、原発性アルドステロン症の片側・両側を決める基準とされています(Spyridonidis 2013)。手順は副腎静脈サンプリング(AVS)とは?で解説しています。
ただしAVSは、コルチゾールを内部の目安として結果を補正するため、コルチゾールの産生に左右差があると結果がずれることが指摘されています。明らかな副腎腫瘤があるのにCTとAVSの結果が食い違った原発性アルドステロン症25人にNP-59シンチを行った研究では、19人でシンチの自律的な集積がCTの病変と同じ側に見られました。NP-59を参考に手術を受けた16人のうち、11人はコルチゾール産生腺腫と両側のアルドステロン症、5人はコルチゾール産生腺腫と片側のアルドステロン症が最終診断で、AVSは16人中10人でサブタイプまたは側を誤っていました(Grundy 2025)。
こうした結果から、AVSで側が決められないとき、またはCTとAVSが食い違うときに、シンチが「コルチゾールの自律分泌が混ざっていないか」を確かめる補助になりえます(Volpe 2008、Grundy 2025)。ただし、これは後ろ向きの検討であり、AVSとNP-59を直接比べて精度を示した研究が今後も必要とされています(Spyridonidis 2013)。
限界と注意点
- 感度が高くない:アルドステロン産生腺腫でも集積しないことがあります(Volpe 2008)。
- 日数がかかる:投与後数日してから撮像するため、結果が出るまで時間が必要です。
- 集積だけで診断を決めない:集積や対側抑制は、ホルモン検査と合わせて解釈します。腫瘍の良悪性はCT・MRIで評価します。
- 薬の影響:服用中の薬で結果が変わることがあります(Shapiro 1994)。
- 使われる頻度:近年は使われることが少なくなっていましたが、SPECT/CTの普及で見直されています(Spyridonidis 2013)。
- 副腎髄質の検査ではない:褐色細胞腫を調べるMIBGシンチとは対象が違います(Yokoyama 2025)。
- 放射性医薬品を使う検査です。妊娠の可能性など、気になる点は事前に伝えてください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 副腎シンチを受ければAVSは不要ですか?
A. 原発性アルドステロン症の片側・両側を決める基準はAVSで、シンチは補助です(Spyridonidis 2013)。AVSが難しいときや結果が食い違うときに、追加で検討されます(Volpe 2008、Grundy 2025)。
Q. 片側に集積があれば、手術になりますか?
A. 集積だけでは決まりません。ホルモンの検査、CT・MRI、AVSなどを合わせて、手術の適応を相談します(Grundy 2025)。
Q. 副腎偶発腫でも受けますか?
A. 副腎偶発腫のすべてに行う検査ではなく、サブクリニカルクッシング症候群の疑いなど、ホルモンの自律分泌を調べたいときに検討されます(Katabami 2016)。
Q. 検査前に気をつけることは?
A. 薬の扱いは施設ごとに違うため、主治医・検査施設の指示に従ってください。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
あわせて読みたい:核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめ
参考文献
- Volpe C, Enberg U, Sjögren A, et al. The role of adrenal scintigraphy in the preoperative management of primary aldosteronism. Scand J Surg. 2008;97(3):248-253. PubMed
- Spyridonidis TJ, Apostolopoulos DJ. Is there a role for Nuclear Medicine in diagnosis and management of patients with primary aldosteronism? Hell J Nucl Med. 2013;16(2):134-139. PubMed
- Grundy M, Leung AA, Hyrcza M, et al. Discordance between adrenal vein sampling and imaging: the role of unilateral cortisol excess. Eur J Endocrinol. 2025;192(3):191-201. PubMed
- Katabami T, Ishii S, Obi R, et al. Contralateral adrenal suppression on adrenocortical scintigraphy provides good evidence showing subclinical cortisol overproduction in patients with unilateral adrenal adenoma. Endocr J. 2016;63(12):1123-1132. PubMed
- Okada Y, Matsushita S, Yamaguchi K. Investigation of Cushing’s and subclinical Cushing’s syndromes using adrenocortical scintigraphy. Nucl Med Commun. 2021;42(6):619-624. PubMed
- Shapiro B, Grekin R, Gross MD, et al. Interference by spironolactone on adrenocortical scintigraphy and other pitfalls in the location of adrenal abnormalities in primary aldosteronism. Clin Nucl Med. 1994;19(5):441-445. PubMed
- Yokoyama K, Matsuki M, Isozaki T, et al. Advances in multimodal imaging for adrenal gland disorders: integrating CT, MRI, and nuclear medicine. Jpn J Radiol. 2025;43(6):903-926. PubMed
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