平山病(Hirayama disease)
- 若年男性に好発し、主に一側上肢の筋萎縮・脱力を主徴とする。
- 10歳代前半~20歳代前半の男性に好発する(男女比10:1以上)。
- 前腕尺側〜手指では斜め型の筋萎縮分布を呈する。
- 始めの2-3年は進行性であるが、数年後に進行は停止するのが特徴。
- 従って生命予後は良好。
- ただし、症状停止から10~30年後に、脱力の増悪、脱力や萎縮の範囲の拡大、感覚障害や下肢錐体路障害を認める場合がある。
- 日本を含めアジア諸国での報告が多い。
- 頸椎前屈時に硬膜後壁が脊柱管腔の後壁から離れて前方に移動し、C6レベルを中心に上下2~3椎体にわたり脊髄を圧迫し、一側下部頚髄前角の障害をきたす。繰り返されて、脊髄前角の壊死性病変をもたらす。
- 下部頸髄後部硬膜が前方移動する病理機序に関してはいまだ不明。福武による仮説では、Shinomiyaらにより提唱された「C6-7で乏しい後部硬膜外靭帯の存在」や、Chenらにより指摘された「”loss of attachment”による、中立位で硬膜管後壁が椎弓から遊離する所見」などから、本症の原因として硬膜と後部硬膜外靭帯の異常の存在が考えられるとしている。
- 頚椎症との鑑別:頚椎症では母指球筋に萎縮は来ない。萎縮を認めたら平山病。
- 治療は、頚椎カラーを使用する。カラー装着による前屈制限で進行が停止する。
平山病の画像所見
▶MR所見:
- 横断像にてC5-6の椎体を中心に頚髄が前後に扁平化する(最多の所見)。
- 脊髄前角には、虚血性変化を反映してT2強調像で高信号を認めることがある。
- 前屈による硬膜管の前方移動・硬膜管の狭小化・硬膜外静脈叢の拡張が見られる。
- 背側硬膜外腔の帯状のT2強調画像高信号構造の出現。
- 造影脂肪抑制T1強調像では同部位が静脈叢であることが明瞭となるが、単純MRI画像所見でも診断は可能である。
- 優位側により拡大の強いこともある。
- 脊髄背側硬膜の前方への偏位も認められることがある。
症例 20歳代男性 右上肢遠位筋の萎縮。
C5-7にかけて脊髄の扁平化および右前角優位に異常な高信号あり。
症状からも平山病を疑う所見。(前屈位での撮影はなし。)
症例 30歳代男性 両手の筋力低下
中間位による撮影では、C5-7に頸髄の扁平化および異常な高信号あり。
前屈位での撮影では、硬膜管の前方移動・狭小化を認め、硬膜外静脈叢の拡張および造影効果を認めています。
平山病を疑う所見です。
引用:radiopedia
関連記事:脊柱管内の硬膜の欠損や異常の原因(duropathies)とは?
参考)
- 臨床放射線Vol.67 No,3 2022 P332-333
- 画像診断コンパクトナビ第4版
- エキスパートのための脊椎脊髄疾患のMRI 第2版