PETの偶然の集積 甲状腺・耳下腺・腸に集積と言われたら

がんの検査でPET-CTを受けたら、「甲状腺(または耳下腺・大腸)にも集積があります」と言われました。転移やほかのがんなのでしょうか?
PETで光る(集積する)のは、がんだけではありません。ただ、場所によっては調べておいたほうがよいものもあります。甲状腺・耳下腺・腸に分けて、どのくらいの割合で何が見つかるのか、次に何の検査をするのかを整理しますね。

先に結論:「偶然の集積」は場所によって意味が違う。甲状腺と大腸の点状の集積は確認の検査を考える

場所 見つかる頻度 悪性などの割合 次の検査の例
甲状腺(点状・局所) 約2% 約3割が悪性(多くは乳頭癌) 甲状腺エコー、必要なら穿刺吸引細胞診
甲状腺(全体・びまん性) 約3%(健診受診者) 多くは慢性甲状腺炎(橋本病) 甲状腺機能・抗体の検査、エコー
耳下腺 約0.4% 悪性は少数(1報告で4%) 病歴に応じて主治医が判断
大腸(点状・局所) 約3〜4% がん・前がん病変が約7割 大腸内視鏡

PETの「集積」とは

FDG-PETは、ブドウ糖に似た薬(FDG)を注射して、糖をたくさん使う場所を光らせる検査です。がんは糖を多く使うため光りやすい一方、炎症や良性の腫瘍、正常な臓器の働きでも光ります。検査の流れや苦手ながんはPET-CT検査とは?わかること・苦手ながん、正常でも光る場所はFDG-PETの生理的集積とアーチファクトで解説しています。

ここで扱うのは、調べたかった病気とは別の場所に、偶然見つかった集積(incidentaloma、偶発的集積)です。

甲状腺に集積があると言われたら

点状(局所)の集積

61研究を統合したメタアナリシス(de Leijer 2021)では、もともと甲状腺の病気がない人のPET/CTで、甲状腺の局所的な偶発集積は2.22%に見られました。細胞診や組織で確かめられたもののうち悪性は30.8%で、悪性の83%が乳頭癌でした。一方で、穿刺吸引細胞診(FNA)の結果が「判定不能・はっきりしない」になる割合が20.8%あり、過剰な診断にならないよう、患者さん自身の病気の状況をふまえて検査を進めるべきとされています(de Leijer 2021)。

別のメタアナリシスでも、偶発集積はPET/CTの約2%、がんの割合は最大35〜40%とまとめられ、ガイドラインでは集積に一致する結節がエコーで1cmを超えればFNAを勧めると紹介されています(Scappaticcio 2021)。

がんの治療中の人で甲状腺に集積があっても、すぐに転移と決めつけず、甲状腺そのものの病気(乳頭癌や良性結節)も考えるのがポイントです。甲状腺のしこりのエコーでの見方は甲状腺結節の鑑別とエコー所見、CTで言われた場合は甲状腺の結節・LDAをCTで指摘されたら?をご覧ください。

甲状腺全体(びまん性)の集積

健診でPETを受けた1102人の検討では、甲状腺全体が光る(びまん性集積)人が36人(約3%)いて、ほとんどが女性でした。36人中27人で甲状腺の自己抗体が陽性で、多くはエコーで慢性甲状腺炎と診断されました。甲状腺の働きは35人で正常でした(Yasuda 1998)。点状の集積とは意味が異なります。

耳下腺に集積があると言われたら

耳下腺は耳の前下にある唾液を作る臓器です。がんの検査で行ったPET/CT 7252件の検討では、耳下腺の偶発集積は0.4%で、そのうち悪性は4%でした。SUVmax(集積の強さの数値)だけでは良性と悪性を見分けられず、多くは保存的に経過を見られる一方、リンパ腫の病歴がある人では悪性の割合が高く、精査が必要とされています(Makis 2015)。耳下腺にできる良性腫瘍(多形腺腫・ワルチン腫瘍など)のMRIでの見分け方は耳下腺腫瘍の画像診断で解説しています。

腸(大腸・消化管)に集積があると言われたら

腸はもともと動きや内容物のために光りやすい臓器で、長い範囲がうっすら光るのは正常のことも多くあります。注意したいのは点状(局所)の集積です。

報告 頻度 内視鏡・組織で確かめた結果
Treglia 2014(32研究の統合) 大腸の局所集積 3.6% 悪性または前がん病変が68%
Kamel 2004(3281人) 消化管の偶発集積(CTで壁の厚みなどを伴う) 3% 内視鏡を受けた69人で、がん19%、前がん病変42%(多くは進行した大腸腺腫)、炎症17%、良性8%、異常なし13%

集積の強さ(SUV)は、悪性・前がん病変・良性で大きく重なり、数値だけでは見分けられません。そのため大腸の局所集積が見つかったら、内視鏡などでの精査が勧められます(Treglia 2014)。Kamel 2004でも、偶発集積の評価が28%で治療方針に影響しました。

症例 60歳代女性 メトホルミンによる腸の集積

メトホルミン内服中の大腸へのFDG集積 PET MIP像
引用:Radiopaedia(Metformin bowel (FDG PET-CT))

糖尿病でメトホルミンを飲んでいる方のPETで、大腸の形に沿って黒く濃い集積が連なって見えます。症例ページでは、腸全体の広い集積は薬(メトホルミン)によるもので、ほかに異常はないと記載されています。

心配が少ない場合・確認が要る場合

心配が少ないことが多い 確認の検査を考える
甲状腺全体がうっすら光る(慢性甲状腺炎が多い) 甲状腺の一部が点状に光る
腸の長い範囲がうっすら光る 大腸の一か所が点状に光る、CTで壁が厚い
耳下腺の小さな集積で、リンパ腫の病歴がない リンパ腫の病歴がある人の耳下腺の集積

ただし最終的な判断は、PETを撮った理由(もともとの病気やその進み具合)によって変わります(de Leijer 2021)。

次にすること

  • 甲状腺の点状集積:甲状腺エコーで結節を確認し、大きさや所見に応じて細胞診を検討(Scappaticcio 2021)
  • 甲状腺のびまん性集積:甲状腺の働きと自己抗体の検査、エコー(Yasuda 1998)
  • 大腸の点状集積:大腸内視鏡での確認(Treglia 2014)
  • 耳下腺の集積:病歴(とくにリンパ腫)をふまえて追加検査の要否を判断(Makis 2015)

首のしこり、声のかすれ、血便、便通の変化など気になる症状があれば医療機関を受診してください。どの検査をいつ受けるかは、PETを依頼した主治医に相談しましょう。

よくある疑問(Q&A)

Q. 光る強さ(SUV)が高いほどがんですか?

A. SUVは目安のひとつですが、耳下腺でも大腸でも、数値だけでは良性と悪性を見分けられないと報告されています(Makis 2015、Treglia 2014)。

Q. がんの治療中です。甲状腺の集積は転移ですか?

A. 甲状腺の局所集積で悪性だったものの83%は甲状腺の乳頭癌で、転移は一部でした(de Leijer 2021)。すぐに転移と決めず、エコーなどで確かめます。

Q. 次のPETで消えていれば大丈夫ですか?

A. 集積の変化だけで判断せず、場所ごとに適した検査(甲状腺ならエコー、大腸なら内視鏡)で確かめるのが基本です。主治医と相談してください。

あわせて読みたい:PET以外の核医学の生理的集積と偽陽性

参考文献

  1. de Leijer JF, Metman MJH, van der Hoorn A, et al. Focal Thyroid Incidentalomas on 18F-FDG PET/CT: A Systematic Review and Meta-Analysis on Prevalence, Risk of Malignancy and Inconclusive Fine Needle Aspiration. Front Endocrinol (Lausanne). 2021;12:723394. PubMed
  2. Scappaticcio L, Piccardo A, Treglia G, et al. The dilemma of 18F-FDG PET/CT thyroid incidentaloma: what we should expect from FNA. A systematic review and meta-analysis. Endocrine. 2021;73(3):540-549. PubMed
  3. Yasuda S, Shohtsu A, Ide M, et al. Chronic thyroiditis: diffuse uptake of FDG at PET. Radiology. 1998;207(3):775-8. PubMed
  4. Makis W, Ciarallo A, Gotra A. Clinical significance of parotid gland incidentalomas on (18)F-FDG PET/CT. Clin Imaging. 2015;39(4):667-71. PubMed
  5. Treglia G, Taralli S, Salsano M, et al. Prevalence and malignancy risk of focal colorectal incidental uptake detected by (18)F-FDG-PET or PET/CT: a meta-analysis. Radiol Oncol. 2014;48(2):99-104. PubMed
  6. Kamel EM, Thumshirn M, Truninger K, et al. Significance of incidental 18F-FDG accumulations in the gastrointestinal tract in PET/CT: correlation with endoscopic and histopathologic results. J Nucl Med. 2004;45(11):1804-10. PubMed

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