
先に結論:肝紫斑病(peliosis hepatis)は類洞(肝臓の細い血管)が広がって血液のたまった空間ができる良性の病態。多くは無症状で偶然見つかり、薬や悪性腫瘍などの背景をもつことが多い
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| どんな病気か | 類洞の拡張と、血液で満たされた嚢胞状の空間が肝臓にできる良性の病態 |
| 症状 | 多くは無症状で、ほかの検査で偶然見つかる |
| 背景 | 悪性腫瘍、薬(男性ホルモン・たんぱく同化ステロイドなど)、感染症(バルトネラ)など |
| 画像 | T2強調像で高信号、境界がはっきりしない、腫瘤による圧排が乏しい、造影パターンはさまざま |
| 次にすること | 原因となりうる薬や病気の確認。転移・肝細胞癌・膿瘍との区別が難しい場合は組織検査や経過観察 |
肝紫斑病(peliosis hepatis)とは
肝紫斑病は、肝臓の類洞が広がり、血液で満たされた嚢胞状の空間が多数できるまれな良性の病態です。多くは症状がなく、ほかの目的の検査で偶然見つかります(Calistri 2023)。
名前に「紫斑病」とつきますが、皮膚に紫斑(内出血のような斑点)が出るIgA血管炎(いわゆる紫斑病)とは別の病気です。IgA血管炎の腸の変化は小腸炎の原因と鑑別診断で触れています。
原因:薬・悪性腫瘍・感染症
12例の自験例と文献49例をまとめた報告では、何らかの関連する病気や薬の使用が約8割(自験例83%、文献80%)にあり、とくに悪性腫瘍と薬物への曝露が多くみられました(Calistri 2023)。
- 男性ホルモン・たんぱく同化ステロイド:9例の病理報告では5例が男性ホルモン(アンドロゲン)やたんぱく同化ステロイドの使用と関連し、1例は大量の黄体ホルモン製剤と関連していました(Karasawa 1979)。
- そのほかの薬:骨粗しょう症の薬ラロキシフェンが疑われた例で、中止後5か月のCTで病変が縮小した報告があります(Yamada 2024)。
- 悪性腫瘍:上記9例のうち5例は腫瘍をもっていました。消耗性の病気や男性ホルモン使用での類洞の血管障害に、肝臓のうっ血が加わることが成り立ちに関わると考察されています(Karasawa 1979)。
- 感染症:猫ひっかき病の原因菌の仲間であるバルトネラ属菌は、細菌性血管腫症とともに「細菌性peliosis」を起こします(Spach 1998)。
年齢層は幅広く、MRIの報告では平均48〜52歳(Calistri 2023)、造影エコーの24例では平均32.4歳でした(Dong 2021)。高齢者だけの病気ではありません。
エコー所見
組織で確認された24例(大きさ平均36.8mm、10〜80mm)の造影エコーの報告では、Bモード(ふつうのエコー)で全例が不均一な低エコー、境界は明瞭でも形は不整で、周囲を押しのける腫瘤効果(mass effect)はありませんでした。造影早期には軽い不均一な高エコー(83.3%)か等エコー(16.7%)を示し、87.5%で門脈相から後期相に軽いwashout(造影剤が抜けること)がみられました(Dong 2021)。
washoutは悪性腫瘍でもみられる所見なので、腫瘤効果がないこと・造影が軽いことを合わせて考えるのがポイントです(Dong 2021)。
CT・MRI所見
MRIの所見をまとめた報告(自験12例と文献49例の比較)では、次のような特徴がみられました(Calistri 2023)。
| シーケンス | 所見 | 頻度(自験/文献) |
|---|---|---|
| T1強調像 | 均一な低信号 | 58% / 65% |
| T2強調像 | 高信号 | 58% / 66% |
| 造影 | 不均一で特徴の乏しい造影 | 25% / 51% |
| 造影 | 中心から外へ広がる(遠心性)造影 | 34% / 8% |
| 造影 | リング状から内側へ広がる(求心性)造影 | 25% / 23% |
| 肝細胞相(EOB) | 低信号 | — |
| 拡散強調像 | 拡散制限なし | — |
まとめると、境界のはっきりしないT1低信号・T2高信号の病変で、造影はさまざま、肝細胞相で低信号、拡散制限がないことが診断の助けになるとされています(Calistri 2023)。
CTでも見え方は多彩で、原発性・転移性の肝腫瘍や膿瘍に似ることがあり、診断を難しくしています(Iannaccone 2006, Yamada 2024)。
症例 70歳代男性 肝紫斑病

引用:Radiopaedia(Hepatic peliosis)
肝移植後の肝臓の中に、白く光る小さな丸い点(液体に近い信号)がたくさん散らばっています。症例ページでは、門脈のまわりの信号変化とミリ単位の嚢胞状の病変があり、生検で血液のたまった類洞(肝臓の細い血管のすき間)の拡張と確かめられたと記載されています。
心配な場合とそうでない場合
肝紫斑病そのものは良性ですが、次の点に注意が必要です。
- がんの治療中の人では転移との区別が問題になります(Yamada 2024)。転移の見え方は転移性肝腫瘍のCT・MRI画像診断で解説しています。
- 肝紫斑病と診断されたあとに新しい腫瘤が出てきて、肝血管肉腫と診断された例があります(Kitsugi 2023)。経過中に新しい腫瘤が増える場合は再評価が必要です。
- 膿瘍との区別には発熱や炎症反応も手がかりになります。膿瘍の画像は肝膿瘍のCT・MRI画像診断を参考にしてください。
次にすること
原因となりうる薬を使っていないか、悪性腫瘍や感染症がないかを確認します。薬が疑われる場合は中止で縮小することがあります(Yamada 2024)。画像だけで決められないときは、組織検査や経過観察で確かめます。どの方法がよいかは主治医に相談してください。気になる症状があれば医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 肝紫斑病はがんになりますか?
肝紫斑病は良性の病態です(Calistri 2023)。ただし肝血管肉腫に伴っていた例の報告があるため(Kitsugi 2023)、経過で形が変わる場合は再評価が必要です。
Q2. 皮膚の紫斑病と関係がありますか?
名前が似ているだけで、別の病気です。肝紫斑病は肝臓の類洞の拡張による病態です(Calistri 2023)。
Q3. 治療は必要ですか?
症状のない人が自験例の92%、文献例の70%を占めました(Calistri 2023)。原因となる薬があれば中止で小さくなることがあります(Yamada 2024)。治療の要否は主治医に相談してください。
あわせて読みたい:類洞閉塞症候群(SOS)とは
参考文献
- Calistri L, Nardi C, Rastrelli V, et al. MRI of Peliosis Hepatis: A Case Series Presentation With a 2022 Systematic Literature Update. J Magn Reson Imaging. 2023;58(5):1386-1405. PubMed
- Iannaccone R, Federle MP, Brancatelli G, et al. Peliosis hepatis: spectrum of imaging findings. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(1):W43-52. PubMed
- Dong Y, Wang WP, Lim A, et al. Ultrasound findings in peliosis hepatis. Ultrasonography. 2021;40(4):546-554. PubMed
- Karasawa T, Shikata T, Smith RD. Peliosis hepatis. Report of nine cases. Acta Pathol Jpn. 1979;29(3):457-69. PubMed
- Spach DH, Koehler JE. Bartonella-associated infections. Infect Dis Clin North Am. 1998;12(1):137-55. PubMed
- Yamada Y, Kurokawa R, Kurokawa M, et al. Longitudinal CT, MRI, and 18F-FDG PET/CT Imaging Findings of Peliosis Hepatis: A Case Report. Cureus. 2024;16(6):e62997. PubMed
- Kitsugi K, Kawata K, Matsumoto M, et al. Hepatic Angiosarcoma with Peliosis Hepatis. Intern Med. 2023;62(8):1157-1166. PubMed
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