核医学の偽陽性 PSMA・MIBG・MIBIなどの生理的集積

PSMA-PETやソマトスタチン受容体シンチ、MIBGシンチで、転移かどうか迷う集積がありました。FDG以外の核医学検査にも「正常でも集まる場所」はありますか?
あります。薬剤ごとに集まりやすい正常な臓器や、転移に似る良性の集積が知られています。PSMA-PETの肋骨の集積や神経節、膵鈎部の集積などが代表です。検査ごとに整理しましょう。

先に結論:FDG以外の核医学検査にも、薬剤ごとの生理的集積と偽陽性がある。集積の形・強さ・場所をCTと合わせて確かめ、薬剤の特性(何に結合するか)から考える

検査 転移・腫瘍に似る集積 見分ける手がかり
PSMA-PET(18F-PSMA-1007) 骨の非特異的集積(UBU) 51.4%にみられ、肋骨に最多。SUVmaxは10未満の軽〜中等度
PSMA-PET(68Ga-PSMA) 交感神経節(頸部・腹腔・仙骨) 帯状の形が多く、リンパ節転移より集積が弱い
ソマトスタチン受容体シンチ/PET 膵頭部・鈎部 SPECT/CTで26%、糖尿病では50%
MIBGシンチ 薬による取り込みの低下(偽陰性) 取り込みを妨げる薬の確認
MIBIシンチ(副甲状腺) 甲状腺結節など 偽陽性の原因で最も多いのは充実性の甲状腺結節
131Iシンチ(甲状腺癌) 転移以外の取り込み・貯留 SPECT/CTで場所と形を確認

なぜ核医学検査で偽陽性が起こるのか

核医学検査の薬剤は、それぞれ特定の受容体・輸送体・細胞の性質に結合して集まります。そのため、がんでなくても同じ受容体や輸送体を持つ正常組織や、薬剤がたまりやすい場所に集積がみられます。FDG-PETの正常な集積はFDG-PETの生理的集積とアーチファクトにまとめています。

PSMA-PET:骨の非特異的集積と神経節

正常な分布

68Ga-PSMA-11 PET/CTの正常な分布を調べた研究では、腎臓、耳下腺・顎下腺、十二指腸・小腸、脾臓、肝臓、涙腺に集積がみられました。転移のない40例のうち24例で腹腔神経節にわずかな集積があり、石灰化した脈絡叢、甲状腺結節、副腎結節、骨棘などにもさまざまな程度の集積がありました(Demirci 2016)。

神経節をリンパ節転移と間違えない

68Ga-PSMA PETを受けた407例の研究では、98.5%で末梢の神経節に背景より高い集積があり、頸部神経節92%、腹腔神経節89%、仙骨神経節46%でした(Rischpler 2018)。

  • 神経節の平均SUVmaxは1.7〜2.9で、近くのリンパ節転移(13.4〜18.0)より明らかに低い
  • 神経節は帯状(71.2%)や涙滴状が多く、結節状は2.0%
  • リンパ節転移は結節状(58.6%)や涙滴状が多く、帯状は1.1%

18F-PSMA-1007の骨の非特異的集積(UBU)

4施設の348例の研究で、明らかな原因のない軽〜中等度(SUVmax 10未満)の限局した骨集積(unspecific bone uptake:UBU)が179例(51.4%)にみられました。場所は肋骨57.5%、骨盤24.8%が多く、デジタルPET/CTで多くみられました(Grünig 2021)。経過を追えた65例では、最終的に良性43%、不明43%、悪性14%でした(Grünig 2021)。

肋骨に1か所だけある弱い集積は、すぐに骨転移として病期を上げず、CTの骨の所見や他の検査と合わせて判断します。

ソマトスタチン受容体シンチ/PET:膵頭部・鈎部の集積

111In-オクトレオチドによるシンチのSPECT/CT 178例では、膵頭部(鈎部を含む)の集積が26%にみられ、糖尿病の患者では50%でした(Brabander 2017)。膵頭部に多い膵ポリペプチド(PP)細胞の過形成が原因として最も考えられています(Brabander 2017)。

膵鈎部の集積を神経内分泌腫瘍と判断する前に、CT・MRIで腫瘤がないか確かめます。

症例 50歳代男性 膵鈎部へのGa-68 DOTATATEの生理的集積

Ga-68 DOTATATE PET/CT 融合画像 横断像 膵鈎部の生理的集積
引用:Radiopaedia(Physiological uptake of Ga-68 DOTATATE at the uncinate process of pancreas)

膵頭部から鈎部にあたる部分に、限局した集積があります(左右の腎臓と肝臓の集積は生理的なものです)。症例ページではCTで膵臓に異常はなく、膵鈎部の生理的集積として扱われており、偽陽性を避けるためにSUVを測って肝臓と比べることがすすめられています。

MIBGシンチ:薬による取り込みの低下

MIBGはノルアドレナリンに似た物質で、交感神経の終末などに取り込まれます。そのため、取り込みの経路に作用する薬が検査結果に影響します。総説では、コカイン、抗うつ薬、一部の抗精神病薬、トラマドール、ラベタロール、交感神経刺激薬、レセルピン、一部のカルシウム拮抗薬(ジルチアゼム・ベラパミル・ニフェジピン)が取り込みを妨げるとされています(Stefanelli 2013)。検査前に服用中の薬を確認することが大切です。

褐色細胞腫・傍神経節腫のMIBGシンチは褐色細胞腫・傍神経節腫のCT・MRI画像診断、心筋のMIBGシンチはMIBG心筋シンチとはをご覧ください。

MIBIシンチ(副甲状腺):甲状腺結節による偽陽性

99mTc-MIBI(セスタミビ)は副甲状腺の局在診断に使われ、甲状腺からは異常な副甲状腺より早く洗い出されることを利用します(Palestro 2005)。

  • 偽陽性の原因で最も多いのは充実性の甲状腺結節。ほかに甲状腺癌、リンパ腫、リンパ節腫大
  • サブトラクション画像やSPECTで、甲状腺の病変と副甲状腺の病変の区別、異所性副甲状腺の検出がしやすくなる

検査の詳細は副甲状腺シンチ(MIBIシンチ)とはにまとめています。

131Iシンチ(甲状腺癌):転移でない取り込み

放射性ヨウ素のシンチでは、ナトリウム・ヨウ素共輸送体を持つ組織への取り込み、放射性ヨウ素の貯留、甲状腺以外の腫瘍、炎症・感染、汚染などで偽陽性が起こります(Chudgar 2017)。とくに血中サイログロブリンが低いのに全身シンチで陽性という食い違いがあるときは、SPECT/CTで場所と形を確認することが役立ちます(Chudgar 2017)。

131Iのアーチファクトは131Iによる星型アーチファクトも参考にしてください。

よくある疑問(Q&A)

Q. PSMA-PETで肋骨に弱い集積が1つだけあります。骨転移ですか?

18F-PSMA-1007では約半数に非特異的な骨集積がみられ、肋骨に最も多いと報告されています(Grünig 2021)。CTで骨の変化がないか、ほかに転移がないか、PSAの値などを合わせて判断し、主治医と相談します。

Q. 膵鈎部にソマトスタチン受容体の集積があります。腫瘍ですか?

生理的な集積がSPECT/CTで約4分の1にみられ、糖尿病では半数にみられます(Brabander 2017)。CT・MRIで腫瘤がなければ、生理的な集積の可能性を考えます。

あわせて読みたい:核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめ

参考文献

  1. Demirci E, Sahin OE, Ocak M, et al. Normal distribution pattern and physiological variants of 68Ga-PSMA-11 PET/CT imaging. Nucl Med Commun. 2016;37(11):1169-79. PubMed
  2. Rischpler C, Beck TI, Okamoto S, et al. 68Ga-PSMA-HBED-CC Uptake in Cervical, Celiac, and Sacral Ganglia as an Important Pitfall in Prostate Cancer PET Imaging. J Nucl Med. 2018;59(9):1406-1411. PubMed
  3. Grünig H, Maurer A, Thali Y, et al. Focal unspecific bone uptake on [18F]-PSMA-1007 PET: a multicenter retrospective evaluation of the distribution, frequency, and quantitative parameters of a potential pitfall in prostate cancer imaging. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2021;48(13):4483-4494. PubMed
  4. Brabander T, Teunissen J, Kwekkeboom D. Physiological Uptake in the Pancreatic Head on Somatostatin Receptor Scintigraphy Using [111In-DTPA]Octreotide: Incidence and Mechanism. Clin Nucl Med. 2017;42(1):15-19. PubMed
  5. Stefanelli A, Treglia G, Bruno I, et al. Pharmacological interference with 123I-metaiodobenzylguanidine: a limitation to developing cardiac innervation imaging in clinical practice? Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2013;17(10):1326-33. PubMed
  6. Palestro CJ, Tomas MB, Tronco GG. Radionuclide imaging of the parathyroid glands. Semin Nucl Med. 2005;35(4):266-76. PubMed
  7. Chudgar AV, Shah JC. Pictorial Review of False-Positive Results on Radioiodine Scintigrams of Patients with Differentiated Thyroid Cancer. Radiographics. 2017;37(1):298-315. PubMed

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