
先に結論:irAEは全身のどの臓器にも起こり、画像は「ほかの病気を除外しながら」診断を支える役割。治療開始前のCTと比べ、新しく出た変化を拾う
| 臓器 | 画像の手がかり | 主な鑑別 |
|---|---|---|
| 肺(肺臓炎) | 器質化肺炎・NSIP・過敏性肺炎・AIP/ARDS・細気管支炎・放射線リコールの6パターン | 感染症、癌性リンパ管症、腫瘍の進行 |
| 腸(腸炎) | 腸間膜血管の怒張+びまん性の軽い壁肥厚、または憩室のある区域の限局性壁肥厚 | 感染性腸炎、偽膜性腸炎、好中球減少性腸炎 |
| 腎(腎炎) | 腎の腫大(回復とともに縮小) | 腎盂腎炎、尿路閉塞 |
| 副腎(副腎炎) | FDG-PETでの集積など、症状より先に代謝変化が見えることがある | 副腎転移 |
| 大動脈(G-CSF関連) | 大動脈弓とその分枝に多い大動脈壁の炎症 | 感染性大動脈炎、大型血管炎 |
免疫関連有害事象(irAE)とは
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)はCTLA-4、PD-1、PD-L1を標的にして、T細胞による腫瘍への攻撃を強める薬です。その裏返しとして、正常の臓器にも炎症が起こることがあり、これを免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAE)と呼びます(Kalisz 2019)。薬の種類は免疫チェックポイント阻害剤と種類にまとめています。
画像のレビューでは、irAEは治療中のいつでも起こりうるものの最初の数か月に多く、皮膚炎や腸炎のように頻度が高く軽いことが多いものから、心筋炎のようにまれで重いものまであります(Pozzessere 2024)。診断は基本的に除外診断で、画像は異常の有無・範囲・性状を示し、鑑別疾患を挙げたり否定したりするために使われます。
肺:ICI関連肺臓炎
ICI関連肺臓炎は頻度は高くないものの重症化しうる合併症で、症状が非特異的なためCTが診断とトリアージの中心になります(Kalisz 2019)。CTでは次の6つのパターンが知られています。
- 器質化肺炎(organizing pneumonia)
- 非特異性間質性肺炎(NSIP)
- 過敏性肺炎(hypersensitivity pneumonitis)
- 急性間質性肺炎(AIP)・ARDS
- 細気管支炎
- 放射線リコール肺臓炎(過去の照射野に陰影が再び出る)
どのパターンも感染症や腫瘍の進行と似るため、投与歴と出現時期、前回CTとの比較が判断の土台になります。
放射線治療後の肺の変化は乳がん放射線治療の副作用|放射線肺臓炎・器質化肺炎のCT画像診断も参照してください。照射野に一致した新しい陰影は、ICI投与中なら放射線リコールも候補になります。治療は症状の重さに応じたガイドラインに沿って行われ、効果が得られることが多い一方、再発もありえます(Kalisz 2019)。
症例 30歳代女性 ニボルマブによる肺臓炎(細気管支炎型)

引用:Radiopaedia(Nivolumab-induced pneumonitis)
両肺の下葉を中心に、小葉中心性の細かい粒状影(tree-in-bud)が広がっています。症例ページでは気管支壁の肥厚、細気管支の拡張、少量の両側胸水も見られ、転移性悪性黒色腫に対するニボルマブ投与中の細気管支炎型の免疫関連肺臓炎として矛盾しないと記載されています。
腸:ICI関連腸炎
抗CTLA-4抗体による腸炎16例のCTでは、腸間膜血管の怒張が81.3%、腸管壁肥厚が75%、液体で満たされた結腸の拡張が25%にみられ、腸管気腫症やtarget signはありませんでした(Kim 2013)。CTの型は2つに分かれます。
- びまん性腸炎型(12例):腸間膜血管の怒張に、軽いびまん性の壁肥厚や液体で拡張した結腸を伴う。水様性下痢で受診することが多い。
- 憩室を伴う区域性腸炎型(4例):もともと憩室のある区域に限局した中等度の壁肥厚と周囲脂肪織の濃度上昇。
憩室炎と紛らわしい型があることを知っておくと、ICI投与歴の確認につながります。
腎:ICI関連腎炎
生検で確認されたICI関連腎炎25例の検討では、ICI投与前と比べて腎炎の診断時に腎の長径が増大し、腎機能の回復後に縮小していました(Anderson 2022)。両側の腎腫大が新たに出て、のちに戻るという経過が手がかりになります。治療前のCTと腎のサイズを比べる習慣が役に立ちます。
副腎:ICI関連副腎炎
ICIによる副腎炎と原発性副腎不全はまれですが、副腎クリーゼで命に関わることがあります(Shi 2021)。15例の症例報告のまとめでは、主にPD-1阻害薬単剤で起こり、ほかの内分泌障害と合併することが多く、ICIを中止しても副腎不全が続くことがありました。
FDG-PET/CTは、甲状腺炎・下垂体炎・副腎炎などの内分泌irAEを、症状や血液検査の異常より前に代謝変化として捉えうるとされます(Giovanella 2025)。担癌患者で両側副腎の変化を見たときは転移が第一に浮かびますが、ICI投与中であれば副腎炎も候補に挙げ、内分泌検査を主治医に提案する価値があります。中枢の下垂体炎については免疫チェックポイント阻害剤・抗体製剤による中枢神経合併症を参照してください。
大動脈:G-CSF関連大動脈炎
抗がん剤治療中の好中球減少の予防に使うG-CSF製剤でも、まれに大動脈炎が起こります。72例の症例報告のまとめでは、女性が58例と多く、基礎疾患は悪性腫瘍、とくに乳癌が中心でした(Zhao 2024)。CTでは大動脈弓とその分枝に最も多くみられ、多くは予後良好でしたが、合併症を起こした例もありました。無症状で見つかった例もあり、化学療法中のCTで大動脈壁の肥厚や周囲の濃度上昇に気づいたら、G-CSF投与歴を確認します。
よくある疑問(Q&A)
Q. irAEはいつ起こりますか?
治療中いつでも起こりえますが、最初の数か月に多いとされます(Pozzessere 2024)。画像に新しい変化を見たら、いつからICIを使っているかを確認します。
Q. 画像だけでirAEと診断できますか?
できません。irAEは基本的に除外診断で、感染症や腫瘍の進行などを否定しながら、臨床経過・検査・必要に応じて病理と合わせて判断します(Pozzessere 2024)。
Q. 読影で気をつけることは?
治療開始前のCTと比べて「新しく出た変化」を拾うことです。肺の陰影、腸間膜血管の怒張、腎の腫大、副腎の変化などは、前回画像との比較で気づきやすくなります。
治療中に咳・息切れ・下痢・発熱・だるさなど気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し、主治医に相談してください。
参考文献
- Pozzessere C, Mazini B, Omoumi P, et al. Immune-Related Adverse Events Induced by Immune Checkpoint Inhibitors and CAR-T Cell Therapy: A Comprehensive Imaging-Based Review. Cancers (Basel). 2024;16(14):2585. PubMed
- Kalisz KR, Ramaiya NH, Laukamp KR, et al. Immune Checkpoint Inhibitor Therapy-related Pneumonitis: Patterns and Management. Radiographics. 2019;39(7):1923-1937. PubMed
- Kim KW, Ramaiya NH, Krajewski KM, et al. Ipilimumab-associated colitis: CT findings. AJR Am J Roentgenol. 2013;200(5):W468-74. PubMed
- Anderson MA, Khauli MA, Furtado F, et al. Immunotherapy-related renal toxicity causes reversible renal enlargement. Abdom Radiol (NY). 2022;47(9):3301-3307. PubMed
- Shi Y, Shen M, Zheng X, et al. Immune Checkpoint Inhibitor-Induced Adrenalitis and Primary Adrenal Insufficiency: Systematic Review and Optimal Management. Endocr Pract. 2021;27(2):165-169. PubMed
- Giovanella L, Tuncel M, Campennì A, et al. Endocrine Adverse Events Induced by Cancer Treatments: The Role of 18F-Fluorodeoxyglucose Positron Emission Tomography. Cancers (Basel). 2025;17(16):2651. PubMed
- Zhao T, Xu H. Literature review analysis of aortitis induced by granulocyte-colony stimulating factor. Front Pharmacol. 2024;15:1487501. PubMed
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