
先に結論:IgA血管炎の腹部CTは「多発する腸管壁肥厚+腸間膜の浮腫・血管の拡張」。腸重積・穿孔の合併を見逃さない
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | IgAが血管のまわりに沈着して起こる小血管炎。旧名ヘノッホ・シェーンライン紫斑病 |
| 症状 | 下腿の触知できる紫斑、関節痛、腹痛・消化管出血、腎炎 |
| CT所見 | 多発性(とびとび)の腸管壁肥厚、腸間膜の浮腫、血管の拡張、リンパ節腫大。空腸・回腸に多い |
| 合併症 | 腸重積(回腸-回腸、回腸-結腸)、穿孔、消化管出血 |
| 大人 | 子どもよりまれだが重くなりやすく、腎炎が長引きやすい |
IgA血管炎(紫斑病)とは
IgA血管炎(IgA vasculitis:IgAV)は、IgAが血管周囲に沈着し好中球が集まって起こる小血管の血管炎で、以前はヘノッホ・シェーンライン紫斑病と呼ばれていました。主な症状は下腿に多い触知できる紫斑、関節痛・関節炎、消化管の出血や腹痛、IgA沈着を伴う糸球体腎炎です(Pillebout 2021)。
小児で最も多い全身性血管炎で、診断基準では触知できる紫斑に加えて、腹痛・IgA沈着・関節炎または関節痛・腎病変のいずれかを伴うことが挙げられています(Ebert 2008)。
腹部の症状
腹痛は臍のまわりやみぞおちに多く、食事で悪化します。出血は便潜血程度のことが多く、黒色便を伴うこともあります(Ebert 2008)。
注意したいのは、紫斑より先に腹痛が出ることがある点です。腸炎・腸重積・虫垂炎などが疑われ、腹痛の10日後に紫斑が出てようやく診断された小児例が報告されています(Brozikova 2022)。強い腹痛がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
腹部CT所見
IgA血管炎の消化管病変7例のCTでは、次の所見がみられたときにこの病気を考えるべきとされています。特に急な腹部症状のある若い患者さんで重要です(Jeong 1997)。
- 多発する(とびとびの)腸管壁肥厚
- 腸間膜の浮腫
- 腸間膜血管の拡張(vascular engorgement)
- 非特異的なリンパ節腫大
エコーやCTでは、主に空腸と回腸の非対称な壁肥厚や腸重積がみられます。内視鏡では十二指腸球部より下行部(第2部)が侵されやすいのが特徴です(Ebert 2008)。小腸の壁肥厚をきたす他の病気との比較は小腸炎の原因と鑑別診断で解説しています。
症例 50歳代男性 IgA血管炎(Henoch-Schönlein紫斑病)

引用:Radiopaedia(Henoch-Schonlein purpura)
左上腹部の空腸の一部で腸管壁がむくんで厚くなり、周りの腸間膜にも炎症によるけば立ちが見られます。症例ページでは粘膜の造影増強とわずかな腹水を伴い、穿孔や虚血はなく、下肢の紫斑と発熱からIgA血管炎が最も考えられると記載されています。
合併症:腸重積と穿孔
腸重積は最も多い外科的合併症で、回腸-回腸型か回腸-結腸型が多く、穿孔は主に回腸に起こります(Ebert 2008)。
| 項目 | IgA血管炎に伴う小児の腸重積36例(Liu 2024) |
|---|---|
| 診断方法 | エコーで診断 88.9% |
| 部位 | 回腸 44.4%、回腸-結腸 30.6% |
| 治療 | 注腸整復 36.1%(うち整復できたのは13例中6例)、手術 72.2% |
| ポイント | 小腸型は手術になりやすく、空気注腸は小腸の腸重積には向かない |
このため最初の検査はエコーが勧められています(Ebert 2008、Liu 2024)。腸重積の一般的な画像は腸重積とは?子どもと大人の違いとCT・エコー画像所見をご覧ください。
大人のIgA血管炎
IgA血管炎は子どもに比べて大人ではずっと少ないものの、大人では重症になりやすく、消化管と腎臓の病変が主な合併症や死亡の原因になります(Audemard-Verger 2015)。大人では慢性腎臓病に進みやすいとされます(Pillebout 2021)。自然に治る割合は小児94%、成人89%と報告されていますが、腎病変は持続したり年単位で再燃することがあり、6か月程度の経過観察が勧められています(Reamy 2020)。
診断のための検査は、ほかの原因による紫斑の除外と腎病変の評価のために行い、画像検査や内視鏡は臓器の合併症を評価する必要があるときに行います。合併症には消化管出血のほか、精巣炎や中枢神経の病変もあります(Reamy 2020)。肺・心臓・神経などの病変はまれです(Pillebout 2021)。
ステロイドは合併症の予防目的には使わないことが系統的レビューで示されています(Reamy 2020)。重い消化管病変や腎炎の治療方針は主治医と相談してください。
内視鏡・病理との対応
内視鏡では胃炎・十二指腸炎・潰瘍・紫斑様の病変などがみられ、腸の生検では粘膜下の血管にIgAの沈着と白血球破砕性血管炎がみられます。浅い生検では、血管炎による粘膜虚血を反映した炎症・潰瘍・浮腫・出血・うっ血を示します。IgA血管炎は感染症・薬剤・腫瘍に関連して起こることがあり、クローン病と合併したり似た所見を示したりすることもあります(Ebert 2008)。回盲部の病変の鑑別は回盲部炎の鑑別とCT画像所見も参考になります。
読影のチェックポイント
- 腸管壁肥厚が多発・非連続(とびとび)か
- 空腸・回腸に目立つか、十二指腸にも及ぶか
- 腸間膜の浮腫・血管の拡張・リンパ節腫大を伴うか
- 腸重積(回腸-回腸型、回腸-結腸型)がないか
- 遊離ガスなど穿孔を示す所見がないか
- 腎の評価(尿検査)を臨床側に伝えるか
このほか、IgA血管炎には皮膚だけに限られる型があり、腎臓だけに限られる型がIgA腎症と考えられています(Pillebout 2021)。
よくある疑問(Q&A)
Q. 紫斑がないのにIgA血管炎と言われることはありますか?
A. 腹痛が紫斑より先に出ることがあり、そのときはCTやエコーの腸の所見で疑われることがあります(Brozikova 2022)。
Q. CTの腸の壁肥厚だけでIgA血管炎と診断できますか?
A. できません。感染性腸炎など他の原因でも腸の壁は厚くなるため、紫斑・尿所見などとあわせて判断します。
Q. 大人では何に気をつけますか?
A. 消化管の合併症に加え、腎炎の経過観察が大切です(Audemard-Verger 2015、Reamy 2020)。
参考文献
- Pillebout E, Sunderkötter C. IgA vasculitis. Semin Immunopathol. 2021;43(5):729-738. PubMed
- Ebert EC. Gastrointestinal manifestations of Henoch-Schonlein Purpura. Dig Dis Sci. 2008;53(8):2011-9. PubMed
- Jeong YK, Ha HK, Yoon CH, et al. Gastrointestinal involvement in Henoch-Schönlein syndrome: CT findings. AJR Am J Roentgenol. 1997;168(4):965-8. PubMed
- Brozikova H, Barochova L, Sykora J, et al. Severe abdominal pain: an atypical initial and leading symptom preceding skin rash in Henoch-Schönlein purpura. Sudan J Paediatr. 2022;22(2):179-184. PubMed
- Liu C, Du LN, Zhao Q, et al. Immunoglobulin A Vasculitis With Intussusception in Children. Am Surg. 2024;90(6):1298-1308. PubMed
- Audemard-Verger A, Pillebout E, Guillevin L, et al. IgA vasculitis (Henoch-Shönlein purpura) in adults: Diagnostic and therapeutic aspects. Autoimmun Rev. 2015;14(7):579-85. PubMed
- Reamy BV, Servey JT, Williams PM. Henoch-Schönlein Purpura (IgA Vasculitis): Rapid Evidence Review. Am Fam Physician. 2020;102(4):229-233. PubMed
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