
先に結論:類洞閉塞症候群(SOS)は、肝臓の細い血管「類洞」の内側が傷んで血流が滞る状態。造血幹細胞移植後とオキサリプラチンを含む化学療法後の2つの場面が代表
| 造血幹細胞移植後のSOS(VOD) | オキサリプラチン関連のSOS | |
|---|---|---|
| 起こり方 | 移植後早期の合併症。重症化しうる | 化学療法を受けた肝臓に病理学的な類洞障害として見つかることが多い |
| 主な症状 | 右上腹部痛、黄疸、体重増加(腹水) | 症状に乏しいことが多い。脾腫・血小板減少で気づかれることがある |
| 画像の手がかり | 肝腫大、門脈周囲浮腫、腹水、細い肝静脈、エコーのドプラ所見、肝硬度の上昇 | 脾臓の体積増加、EOB-MRI肝細胞相の網目状低信号、局所的な結節状の変化 |
| 診断の中心 | 臨床基準(EBMT基準など)+画像 | 画像と経過、必要に応じて病理 |
類洞閉塞症候群(SOS)とは
肝臓の中では、門脈と肝動脈から入った血液が「類洞(るいどう)」という細い血管を通って肝細胞と物質をやりとりし、肝静脈へ流れ出ます。区域と肝静脈の位置関係は肝区域と肝静脈の見分け方を参照してください。
類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome: SOS)は、この類洞の内皮が傷つき、血液の出口側が詰まる状態で、肝中心静脈閉塞症(veno-occlusive disease: VOD)とも呼ばれます(Simpson 2024)。造血幹細胞移植の合併症として知られるほか、大腸癌肝転移などに対するオキサリプラチンを含む化学療法でも、同じような類洞の障害が起こります(Rubbia-Brandt 2004)。
造血幹細胞移植後のSOS/VOD
症状と診断基準
造血幹細胞移植後のSOS/VODは命に関わることがある合併症で、右上腹部痛、黄疸、体重増加、抱合型(直接)ビリルビンの上昇で発症します(Simpson 2024)。
診断は以前は修正Seattle基準やBaltimore基準という臨床基準で行われてきました(Simpson 2024)。欧州血液骨髄移植学会(EBMT)は成人の診断と重症度の基準を示しており、2023年の改訂では診断を「probable(疑い)」「clinical(臨床的)」「proven(確定)」に分け、多臓器障害の定義にSOFAスコアを用いることが提案されました(Mohty 2023)。
CT所見
移植後の患者で、生検で確認されたVODと肝の移植片対宿主病(GVHD)をCTで比べた研究では、次の違いがありました(Erturk 2006)。
| 所見 | VOD(5人) | 肝GVHD(6人) |
|---|---|---|
| 腹水 | 5人全員 | 2人 |
| 門脈周囲浮腫 | 5人全員 | 1人 |
| 右肝静脈の径(平均) | 0.27cm(細い) | 0.87cm |
| 小腸壁肥厚 | なし | 5人 |
「門脈周囲浮腫・腹水・細い右肝静脈」はVODを、「小腸壁肥厚」はGVHDを示唆するとまとめられています。移植後には肺の合併症も多く、造血幹細胞移植後の肺障害まとめもあわせて確認すると全体像がつかみやすくなります。
エコー・エラストグラフィ
臨床基準だけで診断していた時代から、現在はエコー(グレースケール、カラー・スペクトルドプラ)、エコーのエラストグラフィ(肝硬度測定)、CT、MRI、画像ガイド下の生検が診断と管理に用いられるようになっています(Simpson 2024)。
オキサリプラチン関連のSOS
どのくらい起こるか
大腸癌肝転移で切除された肝臓を調べた研究では、術前化学療法を受けた87人中44人(51%)に類洞拡張と出血がみられ、オキサリプラチンを受けた43人では34人(78%)に目立つ類洞の変化がありました(Rubbia-Brandt 2004)。類洞周囲や静脈閉塞性の線維化を伴うこともあり、変化は化学療法終了後も数か月続いていました。
脾腫と血小板減少
類洞が傷むと門脈圧が上がり、脾臓が大きくなります。FOLFOX療法の術後補助化学療法を受けた患者では86%で脾臓の体積が増え、24%では50%以上増加しました(Overman 2010)。
- 脾臓の増大はオキサリプラチンの累積投与量と相関
- 50%以上増大した人は治療後1年間の血小板減少が多い(27%対5%)
- 肝切除例では、脾臓の増大が類洞障害の病理学的な重さの予測因子
化学療法中のCTで脾臓が大きくなってきたことは、SOSを考える簡単な手がかりになります。
EOB-MRI(Gd-EOB-DTPA造影MRI)
EOB-MRIの肝細胞相で、背景肝にびまん性の網目状低信号がみられ、病理でSOSが確認された症例が報告されています(Yoneda 2015)。この症例ではダイナミックCTやEOB-MRIのほかの撮像では明らかな異常がなく、肝細胞相の低信号は、障害された小葉中心部(zone 3)の肝細胞でEOBの取り込みに関わるOATP1B3の発現が低下していたことを反映すると考えられています。
肝転移と紛らわしいことがある
SOSが局所的に起こると結節のように見え、肝転移と紛らわしい形をとることが報告されています(Arakawa 2013)。化学療法後に新しく出た肝病変を見たときは、SOSの可能性も頭に置いて、肝細胞相の所見や経過を確認します。
症例 10代女性 自家造血幹細胞移植後のSOS/VOD

引用:Bohte et al. Pediatr Radiol 2022(Figure 5)(CC BY 4.0)
神経芽腫で大量ブスルファン/メルファランと自家造血幹細胞移植を受けて1か月後の14歳女性。冠状断で肝腫大、門脈周囲の浮腫(矢印)、胆嚢壁肥厚(矢頭)、腹水(*)が見られ、横断像では肝静脈が細くなっています(矢印)。胆嚢壁肥厚は当初、急性胆嚢炎と解釈されていました。(出典:Bohte et al. Pediatr Radiol 2022, Figure 5, CC BY 4.0)
症例 大腸癌肝転移の術前化学療法後 EOB-MRI肝細胞相の網目状低信号

引用:Shimagaki et al. Ann Gastroenterol Surg 2026(Figure 2)(CC BY 4.0)
大腸癌肝転移の患者さんのEOB-MRI肝細胞相で、網目状の低信号の程度を5段階で示した図です。aは肝実質が均一な高信号でSOSなし、b〜dは網目状低信号(矢印)が淡く限られた範囲から全体へ広がり、eは肝全体に目立つ網目状低信号(高度のSOS)です。*の低信号結節は転移で、SOSの変化とは区別されます。(出典:Shimagaki et al. Ann Gastroenterol Surg 2026, Figure 2, CC BY 4.0)
見分けたい病気
- Budd-Chiari症候群:太い肝静脈や下大静脈が詰まる病気。SOSは名前のとおり類洞レベルの障害で、詰まる場所が違います。画像はBudd-Chiari症候群のCT・MRI・エコー所見で解説しています。
- 肝のGVHD:移植後に問題になります。小腸壁肥厚はGVHDを示唆します(Erturk 2006)。
- 肝転移:局所的なSOSは転移と紛らわしいことがあります(Arakawa 2013)。
次にすること
造血幹細胞移植後のSOS/VODは早期の診断と治療の開始が大事とされ(Simpson 2024)、血液内科のチームが臨床基準と画像を合わせて判断します。オキサリプラチン関連の変化は、化学療法の継続や肝切除の計画にかかわるため、腫瘍内科・外科と情報を共有します。
右上腹部の痛み、黄疸、急な体重増加やおなかの張りなど気になる症状があれば医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. オキサリプラチンでSOSと言われたら治療は中止ですか?
画像の変化の程度、血小板数、治療の効果などを合わせて主治医が判断します。ここで一律には言えません。
Q2. SOSの変化は元に戻りますか?
オキサリプラチンによる類洞の変化は治療終了後も数か月続き、線維化が進むこともあると報告されています(Rubbia-Brandt 2004)。経過は画像と血液検査で確認していきます。
Q3. 脾臓が大きくなったのはがんの悪化ですか?
オキサリプラチンを含む治療では、類洞障害に伴って脾臓が大きくなることが知られています(Overman 2010)。ほかの原因がないかも含めて画像で評価します。
検査結果の受け止め方や今後の治療については主治医に相談してください。
参考文献
- Simpson S, Breshears E, Basavalingu D, et al. Review of imaging findings in hepatic veno-occlusive disease. Eur J Radiol. 2024;177:111526. PubMed
- Mohty M, Malard F, Alaskar AS, et al. Diagnosis and severity criteria for sinusoidal obstruction syndrome/veno-occlusive disease in adult patients: a refined classification from the European society for blood and marrow transplantation (EBMT). Bone Marrow Transplant. 2023;58(7):749-754. PubMed
- Erturk SM, Mortelé KJ, Binkert CA, et al. CT features of hepatic venoocclusive disease and hepatic graft-versus-host disease in patients after hematopoietic stem cell transplantation. AJR Am J Roentgenol. 2006;186(6):1497-501. PubMed
- Rubbia-Brandt L, Audard V, Sartoretti P, et al. Severe hepatic sinusoidal obstruction associated with oxaliplatin-based chemotherapy in patients with metastatic colorectal cancer. Ann Oncol. 2004;15(3):460-6. PubMed
- Overman MJ, Maru DM, Charnsangavej C, et al. Oxaliplatin-mediated increase in spleen size as a biomarker for the development of hepatic sinusoidal injury. J Clin Oncol. 2010;28(15):2549-55. PubMed
- Yoneda N, Matsui O, Ikeno H, et al. Correlation between Gd-EOB-DTPA-enhanced MR imaging findings and OATP1B3 expression in chemotherapy-associated sinusoidal obstruction syndrome. Abdom Imaging. 2015;40(8):3099-103. PubMed
- Arakawa Y, Shimada M, Utsunomya T, et al. Oxaliplatin-related sinusoidal obstruction syndrome mimicking metastatic liver tumors. Hepatol Res. 2013;43(6):685-9. PubMed
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