傍卵巣嚢胞とは 卵巣嚢胞との見分け方と茎捻転・境界悪性

エコーで「卵巣の横に嚢胞がある、傍卵巣嚢胞かもしれない」と言われました。卵巣嚢腫とは違うんですか?
卵巣そのものではなく、卵巣のそばの卵管間膜(広間膜)にできる袋です。多くは良性ですが、ねじれ(茎捻転)を起こすことがあります。

先に結論:傍卵巣嚢胞は「卵巣とは別に見える薄い壁の単房性嚢胞」。乳頭状突起があれば要注意

項目 要点
何か 卵巣の外、子宮広間膜(卵管間膜)に生じる嚢胞。傍卵管嚢胞(paratubal cyst)とも
卵巣嚢胞との見分け 同じ側に正常な卵巣が別に見えるかが最大の手がかり
典型像 薄い壁・単房性・無エコー(水と同じ信号)
注意する所見 壁の乳頭状突起(境界悪性腫瘍が含まれる)、大きな嚢胞、急な痛み(茎捻転)
次にすること 典型的な単純嚢胞は多くが良性。痛み・乳頭状突起・増大があれば婦人科で評価

傍卵巣嚢胞とは

傍卵巣嚢胞(paraovarian cyst)は、子宮広間膜の中、卵巣と卵管の近くにできる嚢胞です(Stefanopol 2022)。卵管の近くにあるものは傍卵管嚢胞(paratubal cyst)とも呼ばれ、まとめて扱われることが多い病変です。病理では中腎傍管(paramesonephric)由来や中皮由来の良性漿液性嚢胞がみられます(Savelli 2006)。

卵巣から発生する嚢胞(卵胞嚢胞・黄体嚢胞などの機能性嚢胞や卵巣腫瘍)とは発生部位が異なり、画像では「卵巣の外にある」ことを示すことが診断の要になります。機能性嚢胞については正常卵巣の大きさとMRI画像|機能性嚢胞(卵胞嚢胞・黄体嚢胞)とはを参照してください。

超音波(エコー)での見え方

同じ側の卵巣が「別に」見えるか

手術で確認された傍卵巣嚢胞42例の検討では、嚢胞に接する卵巣41個のうち31個(76%)が経腹超音波で嚢胞とは別に描出され、描出された卵巣はすべて正常でした。嚢胞は1例を除いて薄い壁の単房性で、46個中43個が無エコーでした(Kim 1995)。同側に正常卵巣が別に見えることは、真の卵巣嚢胞との鑑別に役立ちます(Kim 1995)。

経腟超音波でみられる像のバリエーション

手術で確認された50例の経腟超音波と病理の比較では、全例が術前に傍卵巣嚢胞と正しく診断されました。像は次のように分かれました(Savelli 2006)。

超音波像 頻度 病理
単房性(simple) 33例(66%) 乳頭状突起のない嚢胞は良性の漿液性嚢胞
多房性 2例(4%)
乳頭状突起を伴う単房性(unilocular-solid) 15例(30%) 嚢胞腺線維腫8例、嚢胞腺腫5例、漿液性乳頭状境界悪性腫瘍2例。パワードプラで突起に血流があったのは4例(27%)

著者らは、乳頭状突起がなければ悪性のリスクは低いが、壁在の増殖があれば境界悪性腫瘍が見つかることがあるとしています(Savelli 2006)。卵巣腫瘍一般の良悪性の考え方は卵巣腫瘍の画像診断|単房性・多房性嚢胞と充実成分で見分ける良性・悪性にまとめています。

なお、米国放射線学会(ACR)のO-RADS US(2020年)は、付属器病変をO-RADS 0〜5の6カテゴリーでリスク層別化し、それぞれの管理を示す体系です(Andreotti 2020)。典型的な単純性の傍卵巣嚢胞は、ほぼ確実に良性の病変(classic benign lesion)として扱われます。

CT・MRIでの見え方

CT・MRIでは、卵巣とは別に存在する薄い壁の単房性嚢胞として見え、内容は水と同じ濃度・信号(T2強調像で高信号、T1強調像で低信号)を示すのが典型です。卵巣との関係は、嚢胞と卵巣の間に境界があるか、卵巣が嚢胞を包み込むように接していないかを複数の断面で確かめます。

大きな嚢胞では由来の判定が難しくなります。最大径150mmを超える巨大傍卵巣嚢胞の系統的レビューでは、超音波・CT・MRIを用いても臨床・画像で発生部位を決められないことが多く、手術で初めて由来がわかる例が多いとされています。このレビューでは境界悪性が25.9%と予想より多く含まれていました(Stefanopol 2022)。

症例 20歳代女性 傍卵巣嚢胞

傍卵巣嚢胞 MRI 脂肪抑制T2強調像 冠状断像
引用:Radiopaedia(Paraovarian cyst)

膀胱の上に約11cmの大きな単房性の嚢胞があり、内部は水と同じ均一な高信号で、充実部分はありません。嚢胞の左上に小さな卵胞を持つ卵巣が別に見え、卵巣とは離れた嚢胞と考えられます。

茎捻転(ねじれ)に注意

傍卵巣嚢胞はねじれの原因になります。

  • 手術で確認された42例のうち、嚢胞の捻転は3例(捻転のみ2例、捻転+乳頭状漿液性嚢胞腺腫1例)にみられました(Kim 1995)
  • 巨大傍卵巣嚢胞の系統的レビューでは、捻転のリスクは11.1%でした(Stefanopol 2022)
  • 小児ではまれな病変で術前診断が難しく、捻転を合併症として意識することが大切とされています(Okada 2002)
  • 卵巣を伴わない卵管単独の捻転(isolated fallopian tube torsion)の危険因子にも嚢胞が挙げられています。超音波が最適な画像検査ですが画像の感度は全体に低く、専門的な目で見ることで同定できるとされています(Varghese 2024)

捻転のCT・MRI所見(whirlpool signなど)は卵巣腫瘍茎捻転のCT・MRI画像診断を参照してください。

鑑別のポイント

鑑別 手がかり
卵巣の機能性嚢胞・卵巣嚢腫 嚢胞の周りに卵巣実質が接して包む。同側の卵巣が別に見えない
卵管留水症 管状・ソーセージ状で、ひだや途切れた隔壁(incomplete septum)を伴う
腹膜封入嚢胞 骨盤の形に沿って広がり、卵巣を取り囲む
Nuck管水腫 鼠径管に沿った嚢胞

次にすること

  • 心配が少ない:卵巣と別に見える、薄い壁・単房性・無エコーで症状がない嚢胞
  • 相談したい:急な下腹部痛や吐き気(捻転を疑う)、乳頭状突起や充実部分、大きい・増大する嚢胞

気になる症状があれば婦人科を受診してください。特に急な強い下腹部痛は早めの受診が必要です。経過観察か手術かの判断は主治医に相談しましょう。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 卵巣嚢腫と傍卵巣嚢胞はエコーで区別できますか?
A. 同じ側の正常卵巣が嚢胞とは別に見えれば、傍卵巣嚢胞を強く疑えます。42例の検討では76%で同側卵巣が別に描出されました(Kim 1995)。

Q2. 傍卵巣嚢胞はがんになりますか?
A. 乳頭状突起のない嚢胞は良性の漿液性嚢胞でしたが、乳頭状突起を伴うものには境界悪性腫瘍が含まれていました(Savelli 2006)。

Q3. 小さければ放っておいてよいですか?
A. 症状がなく典型的な単純嚢胞であれば良性が多い一方、捻転の原因になることがあります(Kim 1995, Okada 2002)。急な痛みが出たら受診してください。

参考文献

  1. Kim JS, Woo SK, Suh SJ, et al. Sonographic diagnosis of paraovarian cysts: value of detecting a separate ipsilateral ovary. AJR Am J Roentgenol. 1995;164(6):1441-4. PubMed
  2. Savelli L, Ghi T, De Iaco P, et al. Paraovarian/paratubal cysts: comparison of transvaginal sonographic and pathological findings to establish diagnostic criteria. Ultrasound Obstet Gynecol. 2006;28(3):330-4. PubMed
  3. Stefanopol IA, Baroiu L, Neagu AI, et al. Clinical, Imaging, Histological and Surgical Aspects Regarding Giant Paraovarian Cysts: A Systematic Review. Ther Clin Risk Manag. 2022;18:513-522. PubMed
  4. Okada T, Yoshida H, Matsunaga T, et al. Paraovarian cyst with torsion in children. J Pediatr Surg. 2002;37(6):937-40. PubMed
  5. Varghese S, Seldon Y, Raperport C, et al. Isolated fallopian tube torsion: A systematic review of case reports. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2024;296:140-147. PubMed
  6. Andreotti RF, Timmerman D, Strachowski LM, et al. O-RADS US Risk Stratification and Management System: A Consensus Guideline from the ACR Ovarian-Adnexal Reporting and Data System Committee. Radiology. 2020;294(1):168-185. PubMed

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