びまん性胸膜肥厚の鑑別診断
非腫瘍性
- 胸膜炎(Tbなど感染やリウマチなど)
- 陳旧性血胸、慢性出血性胸水
- 石綿症
- 後腹膜線維症の進展
- アスベスト以外の原因による線維性胸膜炎
腫瘍性
- 転移性の胸膜播種。特に肺癌。
- 肺癌の直接浸潤(偽中皮腫肺癌)
- 悪性胸膜中皮腫
- 悪性リンパ腫
※びまん性の場合、均一であるものは炎症性が示唆され、凹凸不整や結節状の肥厚、10mm以上の肥厚は悪性(腫瘍性)が示唆される1)。
70歳代女性 結核性胸膜炎
左大量胸水。縦隔偏位あり。胸膜の一部に肥厚あり。
結核性胸膜炎では、活動性肺病変を認めず胸水貯留や胸膜肥厚のみを呈する場合もあり、片側性の大量胸水では、常に結核性胸膜炎の可能性も考慮する。
限局性胸膜肥厚の鑑別診断
- 厚い胸膜プラーク(石綿関連疾患)
- 悪性胸膜中皮腫
- 悪性リンパ腫
- 孤立性線維性腫瘍(SFT:solitary fibrous tumor)
- 被包化された胸水
- 転移(気管支原性肺癌または乳癌由来、しばしば多発性)
※RAや胸膜プラークなら両側が多い。
※胸膜プラークは横隔膜穹隆部や肋骨に接する部位に好発し、肋骨横隔膜角(CP angle)には生じないとされる。そのため同部にも認めた場合は、陳旧性結核性胸膜炎やアスベスト暴露による臓側胸膜病変であるびまん性胸膜肥厚を考慮する。
※また胸膜プラークは壁側胸膜由来であるため、葉間胸膜にも肥厚が認められる場合は、胸膜プラーク以外を考慮する必要がある。
※胸膜プラークで経過観察中に胸水の出現を認めた場合、良性石綿胸水の他、悪性胸膜中皮腫の可能性も考慮する必要がある。
※陳旧性結核性胸膜炎や陳旧性血胸ならば板状の石灰化であることが多い。
※陳旧性血胸ならば陳旧性の肋骨骨折があることが多い。
胸膜炎と胸膜腫瘍の鑑別のヒント
- 胸膜炎の場合は、胸膜肥厚の程度が軽度で整。
- 胸膜腫瘍の場合は、壁肥厚が厚く、不整なことが多い。(ただし結核性胸膜炎などでこのケースもあり)。さらに縦隔側の胸膜肥厚はより悪性の可能性を示唆(特に中皮腫)。造影効果があり、DWIで高信号となり、FDG集積があればより悪性を示唆。
胸壁腫瘍の鑑別のヒント
胸壁腫瘍は由来がどこかを考える2)。
- 肋骨
- 肋骨以外
でまず大別する。
肋骨由来の場合
良性腫瘍としては、
- 骨軟骨腫
- 線維性骨異形成症
- 動脈瘤様骨のう腫
悪性腫瘍としては、
- 軟骨肉腫
- 骨髄腫
などを鑑別に挙げる。
肋骨以外由来の場合
肋骨由来でない場合は、
- 胸膜由来
- 胸膜以外の胸壁由来
に分けて考える。
この際に重要なのが、胸膜外脂肪層の有無に着目すること。
胸膜・胸壁の解剖は以下のようになっている。
すなわち、臓側胸膜であれ、壁側胸膜であれ、胸膜由来ならば、胸壁との間に胸膜外脂肪層がある。
腫瘍が胸膜外脂肪層の内側に存在する場合(腫瘍と胸壁の間に脂肪層が確認できる場合)
→胸膜由来が疑われる。孤立性線維性腫瘍(SFT)が代表。増大速度が速いときは、悪性のSFTや滑膜肉腫も鑑別に挙げる。
上のシェーマのように腫瘍と胸壁との間に胸膜外脂肪層を示唆するCTでの低吸収の線状陰影を認めた場合は、胸膜由来が疑わしいと判断できます。
腫瘍が胸膜外脂肪層の外側に存在する場合(腫瘍と胸壁の間に脂肪層が確認できない場合)
- 軟部組織(筋肉や脂肪組織)由来の腫瘍
- 肋間神経由来の腫瘍→神経原性腫瘍(神経鞘腫、神経線維腫など)
関連:胸膜外脂肪(extrapleural fat)とは?画像所見のポイントは?
参考文献:
1)日本医放会誌,53:283-296,1993
2)臨床画像 Vol.33,No.10 増刊号、2017 P58-62
胸部CT診断90ステップ②縦隔、大血管 P106