胸部CT画像を読影していると胸膜肥厚を認めることがあります。
胸膜肥厚は,多くの日常診療で見られる非特異的所見ですが,その病態は多岐にわたり,良性から悪性まで多彩です。
- びまん性
- 限局性
にわけて、胸膜肥厚について鑑別診断を見ていきましょう。
先に結論:胸膜肥厚の見分け方
- 胸膜肥厚は昔の胸膜炎(結核など)・血胸・石綿(胸膜プラーク)などの良性のものが多いですが、胸膜中皮腫・がんの胸膜播種もあるため、形を見て判断します
- 悪性を疑うサインは、胸をぐるりと取り巻く肥厚・結節状でこぼこ・壁側胸膜の厚さ1cm以上・縦隔側の胸膜まで及ぶこと(Leungの基準)です。逆になめらかで均一・石灰化を伴うものは良性寄りです
- 胸膜プラークは石綿を吸った証拠で、両側・横隔膜の上や側胸壁の板状の肥厚(しばしば石灰化)が特徴です。経過中に胸水や急な肥厚が出たら中皮腫を考えて精査します
- 肺尖部の胸膜肥厚(apical cap)は健康な人にもみられる良性の変化が多い一方、肺尖部の癌(Pancoast腫瘍)は第1・第2肋骨への浸潤や肩・腕の痛みを伴う腫瘤として現れます。左右差・腫瘤状・骨破壊・増大があれば精査します
びまん性胸膜肥厚の鑑別診断
非腫瘍性
- 胸膜プラーク(石綿関連疾患)
- 胸膜炎(結核性や細菌性など感染性や、リウマチやSLEなど膠原病性)
- 陳旧性血胸、慢性出血性胸水
- 放射線照射後
- タルク胸膜癒着術後(Post-talc pleurodesis):悪性胸水などの治療として行われる胸膜癒着術後に見られる変化。
- アスベスト以外の原因による線維性胸膜炎
腫瘍性
- 転移性の胸膜播種。特に肺癌。
- 肺癌の直接浸潤(偽中皮腫肺癌)
- 悪性胸膜中皮腫
- 悪性リンパ腫
※びまん性の場合、均一であるものは炎症性が示唆され、凹凸不整や結節状の肥厚、10mm以上の肥厚は悪性(腫瘍性)が示唆される(Leung 1990)。Leungらの74例の検討では、全周性の胸膜肥厚・結節状の肥厚・1cmを超える壁側胸膜肥厚・縦隔胸膜への進展の特異度はそれぞれ100%・94%・94%・88%と高い一方、感度は36〜56%にとどまった。4所見のいずれか1つ以上で判定すると感度72%・特異度83%で、悪性胸膜中皮腫と胸膜転移はCTでは確実には区別できなかった(Leung 1990)。これらの所見がないからといって悪性は否定できない。
びまん性胸膜肥厚(石綿関連)とは
石綿(アスベスト)による良性の胸膜病変には、胸膜プラーク・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚があります(Jeebun 2012)。
- びまん性胸膜肥厚は肋骨横隔膜角の鈍化(消失)と、それに連続する3mm以上の胸膜肥厚で定義され(ILO 2000分類)、石綿によるびまん性胸膜肥厚75例の検討では、初回曝露から発症までの期間の中央値は34年でした(Jeebun 2012)。
- 同じ検討では、受診時に73%が片側性で、40%は胸水が先行していました。いったん生じた肥厚は91%で安定していました(Jeebun 2012)。
- 胸膜プラークとの違いは、プラークが壁側胸膜の限局した板状の肥厚であるのに対し、びまん性胸膜肥厚は肋骨横隔膜角を含む広い範囲に及ぶ点です。
70歳代女性 結核性胸膜炎

左大量胸水。縦隔偏位あり。胸膜の一部に肥厚あり。
結核性胸膜炎では、活動性肺病変を認めず胸水貯留や胸膜肥厚のみを呈する場合もあり、片側性の大量胸水では、常に結核性胸膜炎の可能性も考慮する。
限局性胸膜肥厚の鑑別診断
- 肺尖部の胸膜肥厚(apical cap)
- 胸膜プラーク(石綿関連疾患)
- 陳旧性胸膜炎(陳旧性結核が最多)
- 悪性胸膜中皮腫
- 悪性リンパ腫
- 孤立性線維性腫瘍(SFT:solitary fibrous tumor)
- 被包化された胸水
- 転移(気管支原性肺癌または乳癌由来、しばしば多発性)
※胸膜プラークなら両側が多い。
※胸膜プラークは横隔膜穹隆部や肋骨に接する部位に好発し、肋骨横隔膜角(CP angle)には生じないとされる。そのため同部にも認めた場合は、陳旧性結核性胸膜炎やアスベスト曝露による臓側胸膜病変であるびまん性胸膜肥厚を考慮する。
※また胸膜プラークは壁側胸膜由来であるため、葉間胸膜にも肥厚が認められる場合は、胸膜プラーク以外を考慮する必要がある。
※胸膜プラークで経過観察中に胸水の出現を認めた場合、良性石綿胸水の他、胸膜中皮腫の可能性も考慮する必要がある。
※陳旧性結核性胸膜炎や陳旧性血胸ならば板状の石灰化であることが多い。
※陳旧性血胸ならば陳旧性の肋骨骨折があることが多い。
肺尖部の胸膜肥厚(apical cap)と肺尖部の癌の見分け方
肺尖部の胸膜肥厚は、検診のCTでもよく見つかります。健診で胸部CTを受けた2863人の検討では5.5%に肺尖部の瘢痕(apical scarring)があり、20〜39歳で1.6%、40〜59歳で3.9%、60歳以上で8.1%と年齢とともに増え、やせ型の人に多くみられました。4年間で少なくとも12.7%に進行がみられています(Fukada 2026)。
| 肺尖部の胸膜肥厚(apical cap) | 肺尖部の癌(Pancoast腫瘍) | |
|---|---|---|
| 形 | 肺尖を帽子のように覆う薄い肥厚 | 肺尖部の腫瘤・陰影 |
| 周囲の骨 | 通常は骨破壊なし | 第1・第2肋骨への浸潤を伴う |
| 症状 | 多くは無症状 | 肩から腕の内側に広がる痛み、ホルネル症候群、手の筋萎縮など |
| 追加の検査 | 以前の画像との比較 | 胸郭入口部のMRIで広がりを評価し、生検で組織診断 |
Pancoast腫瘍は気管支原性肺癌の5%未満で、肺尖部の癌が胸壁や胸郭入口部の構造に直接広がったものです(Foroulis 2013)。片側だけ厚い、腫瘤状、骨の破壊、以前より増大しているといった場合は、apical capと決めつけずに精査します。
胸膜炎と胸膜腫瘍の鑑別のヒント
- 胸膜炎の場合は、胸膜肥厚の程度が軽度で整。
- 胸膜腫瘍の場合は、壁肥厚が厚く、不整なことが多い。(ただし結核性胸膜炎などでこのケースもあり)。さらに縦隔側の胸膜肥厚はより悪性の可能性を示唆(特に中皮腫)。造影効果があり、DWIで高信号となり、FDG集積があればより悪性を示唆。
胸壁腫瘍の鑑別のヒント
胸壁腫瘍は由来がどこかを考える2)。
- 肋骨
- 肋骨以外
でまず大別する。
肋骨由来の場合
良性腫瘍としては、
- 骨軟骨腫
- 線維性骨異形成症
- 動脈瘤様骨のう腫
悪性腫瘍としては、
- 軟骨肉腫
- 骨髄腫
などを鑑別に挙げる。
肋骨以外由来の場合
肋骨由来でない場合は、
- 胸膜由来
- 胸膜以外の胸壁由来
に分けて考える。
この際に重要なのが、胸膜外脂肪層の有無に着目すること。
胸膜・胸壁の解剖は以下のようになっている。

すなわち、臓側胸膜であれ、壁側胸膜であれ、胸膜由来ならば、胸壁との間に胸膜外脂肪層がある。
腫瘍が胸膜外脂肪層の内側に存在する場合(腫瘍と胸壁の間に脂肪層が確認できる場合)
→胸膜由来が疑われる。孤立性線維性腫瘍(SFT)が代表。増大速度が速いときは、悪性のSFTや滑膜肉腫も鑑別に挙げる。

上のシェーマのように腫瘍と胸壁との間に胸膜外脂肪層を示唆するCTでの低吸収の線状陰影を認めた場合は、胸膜由来が疑わしいと判断できます。
腫瘍が胸膜外脂肪層の外側に存在する場合(腫瘍と胸壁の間に脂肪層が確認できない場合)
- 軟部組織(筋肉や脂肪組織)由来の腫瘍
- 肋間神経由来の腫瘍→神経原性腫瘍(神経鞘腫、神経線維腫など)
関連:胸膜外脂肪(extrapleural fat)とは?画像所見のポイントは?
あわせて読みたい:extrapleural sign・incomplete border signとは
あわせて読みたい:胸壁腫瘍のCT・MRI
参考文献:
2)臨床画像 Vol.33,No.10 増刊号、2017 P58-62
胸部CT診断90ステップ②縦隔、大血管 P106
- Leung AN, Müller NL, Miller RR. CT in differential diagnosis of diffuse pleural disease. AJR Am J Roentgenol. 1990;154(3):487-92. PubMed
- Mastromarino MG, Lenzini A, Aprile V, et al. New Insights in Pleural Mesothelioma Classification Update: Diagnostic Traps and Prognostic Implications. Diagnostics (Basel). 2022;12(12):2905. PubMed
- Jeebun V, Stenton SC. The presentation and natural history of asbestos-induced diffuse pleural thickening. Occup Med (Lond). 2012;62(4):266-8. PubMed
- Fukada A, Hozumi H, Fukuda T, et al. Clinical Characteristics and Prevalence of Apical Scarring at Chest CT in a Healthy Population. Radiol Cardiothorac Imaging. 2026;8(1):e250190. PubMed
- Foroulis CN, Zarogoulidis P, Darwiche K, et al. Superior sulcus (Pancoast) tumors: current evidence on diagnosis and radical treatment. J Thorac Dis. 2013;5 Suppl 4(Suppl 4):S342-58. PubMed
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