
先に結論:CTEPHの画像診断は「肺血流シンチで拾い、CT・血管造影で血栓の分布を見る」
| 検査 | 役割 | メモ |
|---|---|---|
| 肺換気血流シンチ(V/Q) | スクリーニングの第一選択。区域性のミスマッチ(血流欠損)を拾う | CTEPHの検出ではCT肺動脈造影より優れるとされる(Moradi 2019) |
| 造影CT(CTPA) | 肺動脈の血栓性病変、肺高血圧の間接所見、肺野の所見を一度に評価 | 血栓の分布や手術可否の評価にも使う(Castañer 2009) |
| 肺動脈造影 | 病変の広がりを確認する役割が残る(Gopalan 2016) | 手術・治療方針の判断材料 |
| MRI | 被ばくなしで血流・形態を評価(補助的) | エビデンスは限られる(Tai 2026) |

CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)とは
CTEPHは、肺塞栓の血栓が器質化して肺動脈に残り、肺高血圧をきたす病態です。定義は「抗凝固療法を少なくとも3か月続けても残る器質化血栓を伴う肺高血圧」とされています(Gopalan 2016)。この論文は平均肺動脈圧25mmHg超を肺高血圧としていますが、近年の定義は変わっています。肺高血圧の定義と分類は肺高血圧症の画像診断を参照してください。
CTEPHは外科的血栓内膜摘除術で根治しうるため、見逃さないことが重要です(Gopalan 2016)。一方で、症状が非特異的なため診断が遅れやすく、過小診断が問題とされています(Moore 2024)。急性の肺塞栓の画像は肺血栓塞栓症(肺塞栓症)のCT画像診断にまとめています。
造影CTで見える所見
Castañerらは、慢性肺血栓塞栓症のCT所見を次のように整理しています(Castañer 2009)。
| 分類 | 所見 |
|---|---|
| 肺動脈の直接所見 | 完全閉塞、部分閉塞、偏心性(壁在)血栓、石灰化血栓、band、web、狭窄後拡張 |
| 肺高血圧に関連する所見 | 主肺動脈の拡大、動脈硬化性石灰化、血管の蛇行、右室拡大・肥大 |
| 体循環側副血行路 | 気管支動脈や非気管支系の体動脈の拡張 |
| 肺実質の所見 | 瘢痕、モザイク状の血流(mosaic perfusion)、局所のすりガラス影、気管支の異常 |
これらの所見が1つでもあれば疑いを持ち、診断に結びつけられるとされています(Castañer 2009)。ここでは各所見の呼称を原著の分類に沿って挙げています。画像の細かな形態は、個々の症例画像で確認してください。
肺高血圧を示す計測値
AIによる自動計測を用いた350例の検討では、右心カテーテルで確認したCTEPH、慢性血栓塞栓性疾患(CTED。肺高血圧を伴わない例を含む)、正常対照を比べ、自動計測した主肺動脈径(MPAd)、主肺動脈/上行大動脈径比(MPAd/AAd)、右室/左室容積比(RVv/LVv)は、平均肺動脈圧とそれぞれ r=0.952、0.904、0.815 で相関しました(Lin 2025)。ROC曲線下面積(AUC)は、CTEPHと正常対照で0.970、CTEPHとCTEDで0.939、CTEDと正常対照で0.782でした。CTEDの拾い上げは、CTEPHより難しいことがわかります。
症例 70歳代男性 労作時の息切れの悪化(約5年前に肺動脈血栓除去術)

引用:Radiopaedia(Chronic thromboembolic pulmonary hypertension)
CT肺動脈造影の軸位断です。主肺動脈が拡張しており、肺高血圧を示す所見です。この症例ではほかに、肺動脈の偏心性の壁在血栓(壁肥厚)や肺動脈webも報告されています。
肺血流シンチの役割
CTEPHは治療が他の肺高血圧と大きく異なるため、原因不明の肺高血圧の精査には肺換気血流シンチが推奨されます。CTEPHの検出ではV/Qシンチの方がCT肺動脈造影より優れるとされ、CTEPHの血流欠損の出方は急性肺塞栓と異なります(Moradi 2019)。V/Q-SPECTの感度・特異度は96〜98%、90〜95%と引用されており(Moeskes 2026)、スクリーニングとして有用です。Gopalanらも、V/Qシンチは感度が高いスクリーニング検査としています(Gopalan 2016)。
ただしV/Qシンチは、中枢側の非閉塞性の血栓や肺実質の形態は評価しにくいという限界があります(Moeskes 2026)。そのため、CTで血栓の分布や肺実質を併せて見ることが重要です。
新しい技術とMRI
フォトンカウンティングCT(PCCT)で作る灌流マップは、23例でV/Q-SPECTと強く相関しました(全肺 r=0.72、肺葉別 r=0.62〜0.85)。ただし少数例の単施設研究で、診断の同等性を示すものではありません(Moeskes 2026)。
MRIでは、9研究563例の系統的レビューで、MRI灌流の感度中央値97%・特異度92.5%、造影MRAは感度87.7%・特異度98.1%、非造影MRA単独は感度45%・特異度76%でした。ただしバイアスのリスクは中等度〜高く、診断フローのなかでの位置づけは定まっていません(Tai 2026)。
画像診断のあとの流れ
CTやV/Qシンチで疑わしければ、右心カテーテルと肺動脈造影を含めた専門施設での精査に進みます。手術可能な病変かどうかの判断は、肺高血圧症・血栓内膜摘除術を扱う専門チームが行います。治療法の選択は個別に異なるため、主治医とご相談ください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 造影CTが正常なら、CTEPHは否定できますか?
A. 否定できません。CTEPHの検出ではV/Qシンチの方が優れるとされています(Moradi 2019)。CTで血栓がはっきりしない場合でも、肺血流シンチで血流欠損があれば精査が必要です。
Q. 単純X線でCTEPHはわかりますか?
A. 胸部X線は肺高血圧を示唆することがありますが、感度も特異度も高くないとされます(Gopalan 2016)。
Q. モザイク状の血流とは何ですか?
A. 肺実質の濃度が部分的に高低となるパターンで、慢性の血栓性閉塞による血流の不均一を反映する所見の一つとして挙げられています(Castañer 2009)。血管所見と併せて判断します。
あわせて読みたい:肺血流シンチ・換気血流シンチ(V/Qスキャン)とは
参考文献
- Castañer E, Gallardo X, Ballesteros E, et al. CT diagnosis of chronic pulmonary thromboembolism. Radiographics. 2009;29(1):31-50. PubMed
- Moradi F, Morris TA, Hoh CK. Perfusion Scintigraphy in Diagnosis and Management of Thromboembolic Pulmonary Hypertension. Radiographics. 2019;39(1):169-185. PubMed
- Gopalan D, Blanchard D, Auger WR. Diagnostic Evaluation of Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension. Ann Am Thorac Soc. 2016;13 Suppl 3:S222-39. PubMed
- Moore J, Altschul E, Remy-Jardin M, et al. Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension: Clinical and Imaging Evaluation. Clin Chest Med. 2024;45(2):405-418. PubMed
- Lin Y, Li M, Xie S. Diagnostic value of fully automated CT pulmonary angiography in patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension and chronic thromboembolic disease. Eur Radiol. 2025;35(11):6983-6995. PubMed
- Moeskes MMV, Derlin T, Hunkemöller AM, et al. Photon-counting CT vs V/Q SPECT for lobar perfusion quantification in chronic thromboembolic pulmonary hypertension. Eur Radiol. 2026;36(9):7139-7151. PubMed
- Tai JYY, Hasdarngkul A, Khoo REY, et al. Diagnostic Performance of Magnetic Resonance Imaging in Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension: A Systematic Review. J Med Imaging Radiat Oncol. 2026;70(5):421-428. PubMed
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