隠れ脳梗塞とは 脳ドックで言われた無症候性脳梗塞

脳ドックのMRIで「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)がある」と言われました。症状は何もないのに、脳梗塞になっていたんですか?
症状が出ないほど小さな梗塞が、MRIで見つかったという意味です。年齢とともに珍しくない所見ですが、将来の脳卒中を防ぐための大事な「黄色信号」なので、血圧の管理からしっかり始めましょう。

先に結論:隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)

  • 何か:まひなどの症状を起こさなかった小さな脳梗塞が、MRIで見つかったもの。多くは脳の深いところの小さな梗塞(ラクナ梗塞)です
  • 心配か:高齢者の約5人に1人にみられる一方、将来の脳卒中のリスクが約2倍、認知症のリスクも高くなります
  • 次にすること:血圧の管理を中心に、糖尿病・コレステロール・喫煙・飲酒を見直す。結果を持って脳神経内科・脳神経外科かかかりつけ医へ


隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)の要点の表

隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)とは

脳梗塞は、脳の血管が詰まって、その先の脳がダメージを受ける病気です。ふつうは手足のまひやしびれ、言葉が出にくいなどの症状が出ますが、梗塞がとても小さかったり、症状が出にくい場所だったりすると、本人も気づかないまま過ぎてしまいます。こうした梗塞があとからMRIで見つかったものを無症候性脳梗塞(いわゆる隠れ脳梗塞)と呼びます。

見つかるものの多くはラクナ梗塞(脳の深いところを走る細い血管が詰まってできる小さな梗塞)で、主な原因は高血圧による細い血管の傷み(脳小血管病)と考えられています(Vermeer 2007)。ラクナ梗塞については「ラクナ梗塞・陳旧性ラクナ梗塞とは?」で画像つきで説明しています。

MRIでどう見えるか

脳ドックのMRIでは、T2強調像やFLAIR(フレア)という撮り方で、梗塞のあとが白い点として写り、T1強調像では黒っぽく写ります。日本の脳ドック受診者を調べた研究では、T2で3mmより大きく白く、T1で黒く写るものを無症候性脳梗塞としていました(Kobayashi 1997)。

なお、CTでは小さな梗塞は写りにくく、MRIのほうが見つけやすい検査です。CTとMRIの違いは「脳梗塞はCTでわかる?MRIとの違い」をご覧ください。

よく似た所見との違い

脳ドックの結果には、隠れ脳梗塞のほかにも似た言葉が並びます。違いを表にまとめます。

所見 どういうもの 心配の度合い 次にすること
無症候性脳梗塞(隠れ脳梗塞) 症状のなかった小さな梗塞のあと 脳卒中のリスク約2倍・認知症のリスクも上がる 血圧など危険因子の管理。医師と相談
大脳白質病変(慢性虚血性変化) 細い血管の血流不足で、脳の白質が白っぽく写る 将来の脳卒中と関係する 同じく血圧の管理が中心
血管周囲腔(拡大した血管周囲腔) 血管のまわりのすき間に水がたまって見える それだけで脳梗塞を意味するものではない ほかの所見とあわせて医師が判断
  • 大脳白質病変は「点」ではなく、脳室のまわりなどにしみのように広がる白い変化です。T2で白くてもT1で黒くならないものは、梗塞とは別に扱われていました(Kobayashi 1997)。米国心臓協会/脳卒中協会の声明は、隠れ脳梗塞と同じく白質病変も将来の脳卒中と関係するとしています(Smith 2017)。詳しくは「慢性虚血性変化とは?」で解説しています
  • 血管周囲腔は、脳の中を走る血管のまわりのすき間です。T2で白く写るため小さな梗塞とまぎらわしいことがあり、形・場所・大きさが重なる場合もありますが、FLAIRやT1をあわせて見分けます(Hernández 2013)
自分の結果がどれなのか、よくわからないんですが…
結果の用紙に書かれた言葉をそのまま医師に見せるのがいちばんです。「梗塞」「白質病変」「血管周囲腔」のどれかで、話の重みが変わりますからね。

どれくらい多い?

  • MRIでみると、健康な高齢者の約20%に無症候性脳梗塞があり、選ばれた患者さんの集団では最大50%にのぼります(Vermeer 2007)
  • 大規模な住民研究をまとめた解析では、脳卒中の経験がない人の約18%にみられました(Gupta 2016)
  • 日本の脳ドック受診者(平均57.5歳、933人)では10.6%で、高血圧(約4倍)、糖尿病(約2.4倍)、1日58g以上の飲酒(約2.6倍)、年齢が関係していました(Kobayashi 1997)

将来の脳卒中・認知症との関係

  • 脳卒中:13の研究(約1万5千人)をまとめた解析で、無症候性脳梗塞がある人は、ほかの危険因子をそろえても将来の脳卒中が約2.1倍でした(Gupta 2016)
  • 認知症:オランダの60〜90歳の住民約1,000人の研究で、無症候性脳梗塞がある人は認知症のリスクが約2.3倍でした。また、物忘れなど認知機能の低下は、その後に新しい梗塞が増えた人に限ってみられました(Vermeer 2003)

つまり大切なのは、これ以上梗塞を増やさないことです。米国心臓協会/脳卒中協会の声明では、無症候性脳梗塞・白質病変・微小出血のある人には、脳卒中の予防(一次予防)を行うべきとしています。一方で、隠れ脳梗塞の人だけを対象にした治療の比較試験はまだありません(Smith 2017)。

次にすること

  1. 結果を持って受診:脳神経内科・脳神経外科、またはかかりつけ医に、結果の用紙と画像を見せて相談します
  2. 血圧の管理:いちばん大きな危険因子です。家庭で血圧を測り、記録を持っていきましょう
  3. ほかの危険因子の見直し:糖尿病、コレステロール、喫煙、お酒の量。不整脈(心房細動)の有無も医師が確認することがあります
  4. 自己判断で薬を始めない:血液をサラサラにする薬などを飲むかどうかは、出血のリスクもふまえて医師が決めます
  5. 急な症状はすぐ119番:顔のゆがみ、片側の手足のまひ・しびれ、言葉が出ないなどが出たら、すぐ救急へ

日本脳ドック学会は「脳ドックのガイドライン」を発行しており、現行版は2026年3月発行の「脳ドックのガイドライン2026」(改訂・第6版)です。

よくある疑問(Q&A)

Q. 隠れ脳梗塞は治りますか?
A. 一度できた梗塞のあとが消えるわけではありません。大切なのは新しい梗塞を増やさないことで、新しい梗塞が増えなかった人では認知機能の低下がみられなかったという報告もあります(Vermeer 2003)。

Q. 「多発性」と書かれていました。
A. 小さな梗塞がいくつかあるという意味です。数や場所、白質病変の程度などをあわせて医師が判断しますので、結果を持って相談してください。

Q. 次の脳ドックはいつ受ければいいですか?
A. 所見の内容や年齢、危険因子によって変わります。受診した医師や脳ドックの施設に確認してください。

まとめ

  • 隠れ脳梗塞は、症状のなかった小さな脳梗塞(多くはラクナ梗塞)がMRIで見つかったもの
  • 高齢者の約5人に1人にみられるが、将来の脳卒中は約2倍、認知症のリスクも上がる
  • 白質病変(慢性虚血性変化)・血管周囲腔とは別の所見
  • いちばん大切なのは血圧の管理。結果を持って医師に相談を

▶ ほかの所見も調べる:健診・人間ドックの画像検査で言われやすい所見一覧

参考文献

  1. Vermeer SE, Longstreth WT, Koudstaal PJ. Silent brain infarcts: a systematic review. Lancet Neurol. 2007;6(7):611-619. PubMed
  2. Gupta A, Giambrone AE, Gialdini G, et al. Silent Brain Infarction and Risk of Future Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. Stroke. 2016;47(3):719-725. PubMed
  3. Vermeer SE, Prins ND, den Heijer T, et al. Silent brain infarcts and the risk of dementia and cognitive decline. N Engl J Med. 2003;348(13):1215-1222. PubMed
  4. Kobayashi S, Okada K, Koide H, et al. Subcortical silent brain infarction as a risk factor for clinical stroke. Stroke. 1997;28(10):1932-1939. PubMed
  5. Smith EE, Saposnik G, Biessels GJ, et al. Prevention of Stroke in Patients With Silent Cerebrovascular Disease: A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2017;48(2):e44-e71. PubMed
  6. Hernández Mdel C, Piper RJ, Wang X, et al. Towards the automatic computational assessment of enlarged perivascular spaces on brain magnetic resonance images: a systematic review. J Magn Reson Imaging. 2013;38(4):774-785. PubMed
  7. 日本脳ドック学会 脳ドックのガイドライン2026改訂委員会. 脳ドックのガイドライン2026(改訂・第6版). 2026. 日本脳ドック学会

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