人間ドックや健康診断では必須の胸部レントゲン撮影ですが、肺が写っているということはわかっても、実際何がどのように見えるのかまではわかっていない方がほとんどだと思います。
そこでこのシリーズでは、胸部レントゲンでは何が写っていて、どのように見えるのか正常の解剖の基礎について解説しました。今回は、胸部レントゲン画像で見られる骨についてまとめました。
先に結論:正常な胸部レントゲンで見える骨と肋骨の数え方
- 正常な胸部レントゲン(正面)には、肋骨(左右12本)・鎖骨・胸椎・肩甲骨・上腕骨が写ります
- 肋骨の数え方:肺の上をほぼ水平に横切って見えるのは背中側(後方)の肋骨、外側から内側下へ斜めに下がるのが前側(前方)の肋骨です。背骨の横の付け根から第1肋骨、第2肋骨…と順にたどります
- しっかり息を吸った正常な写真では、右の横隔膜は下のほうの後肋骨の高さまで下がります。肋骨を上から数えて、ふだんより横隔膜が大きく下がっていれば肺の過膨張(気腫傾向)、上がっていれば吸気不足や肺が縮む病気を考えます。肋骨を数えて吸気の程度を確かめておくと、吸気不足で肺の容積が小さく写っているだけの所見を病気と見誤るのを防げます(Zouvani 2025)
- 胸部レントゲンの読み方は、毎回同じ順番(撮影条件→骨→軟部組織→縦隔・心臓→肺門→肺野→横隔膜)で見るのが基本です(Raoof 2012)。下に一覧にしました
胸部レントゲンの正常解剖〜骨はどう見える?〜

胸部レントゲンで見られる主な骨は以下の通りです。
- 肋骨(第1~12)
- 鎖骨
- 胸椎(第1~12)
- 肩甲骨
- 上腕骨
では、一つひとつ見ていきましょう。
胸部レントゲンの肋骨の解剖は?
肋骨は、胸部レントゲンにおける骨の中では最も重要な構造で、肋骨と肺の位置関係により、
- 肺の区分
- 肺が気腫傾向にある。
- 肺が収縮傾向にある。
と言ったことを判別することがあります。
全部で第12肋骨まであり、それぞれ対応する番号の胸椎から出ています。注意すべき点として、レントゲン画像で肺を横切るように見える肋骨はいずれも背中側の肋骨を見ているという点です。腹側の肋骨は斜めに走ります。
まず第1肋骨を見てみましょう。シェーマでは、第一肋骨はこのようになります。

実際の胸部レントゲンの写真にこの第一肋骨に色を塗るとこのようになります。

続いて、第2肋骨ですが、第1肋骨の下に存在して、シェーマではこのようになります。

そして実際の胸部レントゲン写真に色を塗ると次のようになります。

同じ要領で、第3肋骨、第4肋骨、、、、と最後の第12肋骨までシェーマすると次のようになります。

そして、これを実際のレントゲン写真に色をつけると次のようになります。

胸腔の形を肋骨が作っており、背部にも見えるので1つの肋骨が胸部レントゲン写真に占める範囲って思ったより多いのかもしれません。
実際の胸部X線(正常例)で、肋骨を1本おきに色分けすると、上から順に並んでいる様子がよくわかります。

胸部レントゲンの鎖骨の解剖は?
鎖骨は、左右それぞれ1本存在し、鎖骨より頭側の肺野を肺尖部と言い、胸椎の棘突起から両側の鎖骨との距離を見ることでそのレントゲン写真が本当に真正面での撮影かをチェックしたりするのに使われるため、鎖骨も重要な構造です。
鎖骨をシェーマすると次のようになります。

そして肋骨に加え、実際の胸部レントゲン写真に色を塗ると次のようになります。かなりごちゃごちゃしていますが。

この鎖骨よりも上側の肺野を肺尖部と言います。

胸部レントゲンの上腕骨、肩甲骨の解剖は?
胸部レントゲンでは肩関節を構成する上腕骨及び肩甲骨も写っています。
上腕骨は上腕骨頭の一部が写っており、シェーマすると下のようになります。

実際のレントゲン画像に色を塗るとこちらです。

上腕骨は肺野とは重ならないので、基本的に問題となることはありません。
一方で、次の肩甲骨は肺と重なるので、注意が必要です。上腕骨に加えて、肩甲骨をシェーマすると次のようになります。

実際のレントゲン写真に色を塗るとこのようになります。
この肩甲骨のラインがレントゲンでは見えるということを知っておき、腫瘍などと間違えないようにしましょう。
胸部レントゲンの胸椎の解剖は?
胸部レントゲンでは胸椎及び一部の腰椎を見ることができます。胸椎は全部で第12胸椎まで12個あります。特に、胸腰椎移行部の椎体は圧迫骨折の好発部位であり、圧迫骨折を観察することもできますし、腫瘍が椎弓根まで及んだ場合は、椎体への骨転移がわかることもあります。
第1胸椎をシェーマするとこのようになります。

実際の胸部X線写真に色を塗ると次のようになります。

胸椎からは番号に一致した肋骨が出ますので、第1胸椎からは次のように第1肋骨が出ることになります。

続いて第1胸椎に加えて第2胸椎をシェーマすると、次のようになり、
実際のレントゲンでは次のようになります。

引き続き、第3胸椎、第4胸椎・・・・、第12胸椎までをシェーマするとこのようになります。

さらに第1腰椎、第2腰椎までこの場合は見えますので、シェーマするとこのようになります。

これを実際のレントゲン写真で見てみると次のようになります。

正常な胸部レントゲンの読み方:チェックする順番(一覧)
胸部レントゲンは、正常な写真をたくさん見て、毎回同じ順番で見ることが見落としを減らすコツとされています(Raoof 2012)。
| 順番 | 見るところ | 正常な写り方・チェックのポイント |
|---|---|---|
| 1 | 撮影条件 | 名前・日付、正面性(胸椎の棘突起が左右の鎖骨の内側端のまん中にある)、息の吸い込み(肋骨を数えて横隔膜の高さを確認) |
| 2 | 骨 | 肋骨・鎖骨・胸椎・肩甲骨・上腕骨。骨折、骨の溶けた所(骨転移)、肋骨の欠け、胸椎の圧迫骨折がないか |
| 3 | 軟部組織 | 乳房の影、皮下の空気(皮下気腫)、首やわきの腫れ |
| 4 | 縦隔・心臓 | 気管がまん中を通るか、心臓の大きさと輪郭(右は右房、左は大動脈弓・肺動脈・左室) |
| 5 | 肺門 | 左の肺門が右よりやや高いのがふつう。左右差や腫れがないか |
| 6 | 肺野 | 左右を上・中・下で見比べる。血管の影は上より下が太い。白い影・黒すぎる所がないか |
| 7 | 横隔膜・肋骨横隔膜角 | 右がやや高い。肋骨横隔膜角が鋭く切れ込んでいるか(胸水で鈍くなる)、横隔膜の下に空気がないか |
| 8 | 見落としやすい場所 | 肺尖(鎖骨・第1肋骨と重なる)、心臓の裏、肺門、横隔膜より下に隠れた肺 |
正面像だけでは、心臓や横隔膜の後ろに隠れて見えにくい肺があり、側面像を見ると正面像で隠れている肺の15%ほどを確認できるとされます(Raoof 2012)。また、以前の写真があれば比べることが強く勧められています(Raoof 2012)。
胸部レントゲンの骨でよくある疑問(Q&A)
Q. 肋骨骨折は胸部レントゲンでわかりますか?
A. わかることも多いですが、見落とされやすい骨折です。胸部外傷207人の検討では、CTと比べた胸部レントゲンの肋骨骨折の感度は61.3%、特異度は98.5%でした(Awais 2019)。痛みが強いのにレントゲンで異常がない場合は、時間をおいて再検査したり、CTで確認したりすることがあります。胸を打ったあとに強い痛みや息苦しさがあるときは医療機関を受診してください。
最後に:胸部レントゲン写真で見える骨まとめ
ということでこれらを全てシェーマしてみると次のようになります。

そして、実際の胸部レントゲン写真に合わせてみると次のようになります。

これ以外に胸骨もありますが、正面像の胸部レントゲンでははっきりしませんね。胸骨は側面像ですとよくわかります。
胸部レントゲンで見える骨をCTで再構成してみるとこのようになります。これが1枚のレントゲンで見えているということです。
動画で見る。
いかがでしたでしょうか?こんなにたくさんの骨が胸部レントゲン写真には写っています。特に肋骨は立体的に存在していますので、これで立体的なイメージをつかんでいただけたらと思います。
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの胸部X線の正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。
あわせて読みたい:胸部レントゲンで見落としやすい場所
あわせて読みたい:胸部レントゲンで結節に見える肺外の影
参考文献
- Raoof S, Feigin D, Sung A, et al. Interpretation of plain chest roentgenogram. Chest. 2012;141(2):545-558. PubMed
- Zouvani A, Venkatakrishna SSB, Schoeman S, et al. Back to basics: lung volumes on pediatric chest X-rays-pitfalls and diagnostic implications. Pediatr Pulmonol. 2025;60 Suppl 1:S42-S47. PubMed
- de Groot PM, Carter BW, Abbott GF, et al. Pitfalls in chest radiographic interpretation: blind spots. Semin Roentgenol. 2015;50(3):197-209. PubMed
- Kurihara Y, Yakushiji YK, Nakajima Y, et al. The vertical displacement sign: a technique for differentiating between left and right ribs on the lateral chest radiograph. Clin Radiol. 1999;54(6):367-9. PubMed
- Awais M, Salam B, Nadeem N, et al. Diagnostic Accuracy of Computed Tomography Scout Film and Chest X-ray for Detection of Rib Fractures in Patients with Chest Trauma: A Cross-sectional Study. Cureus. 2019;11(1):e3875. PubMed
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