人間ドックや健康診断では必須の胸部レントゲン撮影ですが、肺が写っているということはわかっても、実際何がどのように見えるのかまではわかっていない方がほとんどだと思います。
そこでこのシリーズでは、胸部レントゲンでは何が写っていて、どのように見えるのか正常の解剖の基礎について解説しました。今回は、胸部レントゲン画像で見られる骨についてまとめました。
胸部レントゲンの正常解剖〜骨はどう見える?〜
胸部レントゲンで見られる主な骨は以下の通りです。
- 肋骨(第1~12)
- 鎖骨
- 胸椎(第1~12)
- 肩甲骨
- 上腕骨
では、一つひとつ見ていきましょう。
胸部レントゲンの肋骨の解剖は?
肋骨は、胸部レントゲンにおける骨の中では最も重要な構造で、肋骨と肺の位置関係により、
- 肺の区分
- 肺が気腫傾向にある。
- 肺が収縮傾向にある。
と言ったことを判別することがあります。
全部で第12肋骨まであり、それぞれ対応する番号の胸椎から出ています。注意すべき点として、レントゲン画像で肺を横切るように見える肋骨はいずれも背中側の肋骨を見ているという点です。腹側の肋骨は斜めに走ります。
まず第1肋骨を見てみましょう。シェーマでは、第一肋骨はこのようになります。
実際の胸部レントゲンの写真にこの第一肋骨に色を塗るとこのようになります。
続いて、第2肋骨ですが、第1肋骨の下に存在して、シェーマではこのようになります。
そして実際の胸部レントゲン写真に色を塗ると次のようになります。
同じ要領で、第3肋骨、第4肋骨、、、、と最後の第12肋骨までシェーマすると次のようになります。
そして、これを実際のレントゲン写真に色をつけると次のようになります。
胸腔の形を肋骨が作っており、背部にも見えるので1つの肋骨が胸部レントゲン写真に占める範囲って思ったより多いのかもしれません。
胸部レントゲンの鎖骨の解剖は?
鎖骨は、左右それぞれ1本存在し、鎖骨より頭側の肺野を肺尖部と言い、胸椎の棘突起から両側の鎖骨との距離を見ることでそのレントゲン写真が本当に真正面での撮影かをチェックしたりするのに使われるため、鎖骨も重要な構造です。
鎖骨をシェーマすると次のようになります。
そして肋骨に加え、実際の胸部レントゲン写真に色を塗ると次のようになります。かなりごちゃごちゃしていますが。
この鎖骨よりも上側の肺野を肺尖部と言います。
胸部レントゲンの上腕骨、肩甲骨の解剖は?
胸部レントゲンでは肩関節を構成する上腕骨及び肩甲骨も写っています。
上腕骨は上腕骨頭の一部が写っており、シェーマすると下のようになります。
実際のレントゲン画像に色を塗るとこちらです。
上腕骨は肺野とは重ならないので、基本的に問題となることはありません。
一方で、次の肩甲骨は肺と重なるので、注意が必要です。上腕骨に加えて、肩甲骨をシェーマすると次のようになります。
実際のレントゲン写真に色を塗るとこのようになります。
この肩甲骨のラインがレントゲンでは見えるということを知っておき、腫瘍などと間違えないようにしましょう。
胸部レントゲンの胸椎の解剖は?
胸部レントゲンでは胸椎及び一部の腰椎を見ることができます。胸椎は全部で第12胸椎まで12個あります。特に、胸腰椎移行部の椎体は圧迫骨折の好発部位であり、圧迫骨折を観察することもできますし、腫瘍が椎弓根まで及んだ場合は、椎体への骨転移がわかることもあります。
第1胸椎をシェーマするとこのようになります。
実際の胸部X線写真に色を塗ると次のようになります。
胸椎からは番号に一致した肋骨が出ますので、第1胸椎からは次のように第1肋骨が出ることになります。
続いて第1胸椎に加えて第2胸椎をシェーマすると、次のようになり、
実際のレントゲンでは次のようになります。
引き続き、第3胸椎、第4胸椎・・・・、第12胸椎までをシェーマするとこのようになります。
さらに第1腰椎、第2腰椎までこの場合は見えますので、シェーマするとこのようになります。
これを実際のレントゲン写真で見てみると次のようになります。
最後に:胸部レントゲン写真で見える骨まとめ
ということでこれらを全てシェーマしてみると次のようになります。
そして、実際の胸部レントゲン写真に合わせてみると次のようになります。
これ以外に胸骨もありますが、正面像の胸部レントゲンでははっきりしませんね。胸骨は側面像ですとよくわかります。
胸部レントゲンで見える骨をCTで再構成してみるとこのようになります。これが1枚のレントゲンで見えているということです。
動画で見る。
いかがでしたでしょうか?こんなにたくさんの骨が胸部レントゲン写真には写っています。特に肋骨は立体的に存在していますので、これで立体的なイメージをつかんでいただけたらと思います。