先に結論:一過性脳虚血発作(TIA)
- TIAは脳の虚血による局所神経症状が短時間ですべて消える状態で、多くは数分以内に回復します
- TIAの後は早期に脳梗塞を起こしやすいため、ABCD2スコアやDWI・MRAで評価し、すぐに原因検索と再発予防を始めます
- MRIで異常なし(DWIで梗塞なし)でもTIAは否定されません。専門医が確定したTIAでも、DWIで急性病変が見つかるのは統合で約3割(34.3%)で、多くはDWIで異常がありません(Brazzelli 2014)
- 現在の定義(組織ベース)では、DWIで急性梗塞が見つかれば症状が消えても脳梗塞として扱います(本文は従来の時間ベースの定義による説明です)
一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)
- 脳虚血による局所神経症状が短時間出現するが可逆的で神経症状を残さない。
- ひとつの動脈領域に限局。
- 持続が24時間以内(従来の時間ベースの定義)。ときに反復。
- 原因:頸動脈など大血管のアテローム硬化(動脈原性微小塞栓もしくは血行力学的機序)、心房細動などによる心原性塞栓、小血管病などがある。大血管のアテローム硬化を伴う例は1年以内の脳卒中リスクが高い(Amarenco 2016)。
- 診断にはくり返す数分間の片側の四肢の脱力といった典型的な病歴に加えて、高血圧、糖尿病、喫煙などの心血管危険因子の有無を確認することが重要。
関連記事)一過性脳虚血発作は脳梗塞になりやすいの?
ABCD2スコアとは?
TIA後の脳卒中発症のリスク予測。
- Age
- BP(血圧)
- Clinical feature(片麻痺、麻痺のない言語障害)
- Duration(持続時間)
- Diabetes(糖尿病)
をスコア化したもの。ABCD2スコア(0〜7点)は、年齢60歳以上1点、血圧140/90mmHg以上1点、片側の脱力2点・脱力のない言語障害1点、持続60分以上2点・10〜59分1点、糖尿病1点で、6〜7点の高リスク群の2日以内の脳卒中リスクは8.1%、0〜3点の低リスク群では1.0%でした。
この値が高値で、DWIで高信号、さらにはAfや頭蓋内動脈病変がある場合は、TIAの高リスクとなる。
TIAの画像所見
- 従来の時間ベースの定義では画像上の梗塞の有無を問わなかったが、2009年のAHA/ASAの組織ベースの定義では急性梗塞を伴わない一過性の神経症状をTIAとし、DWIで急性梗塞があれば症状が消えても脳梗塞として扱う。臨床的にTIAと診断された9078例を含む47研究のメタ解析では、DWIで急性病変を認めた割合は統合で34.3%で、約3分の2はDWIで異常を認めなかった(Brazzelli 2014)。専門施設で迅速に評価されたTIA・軽症脳梗塞4789例の国際登録(TIAregistry.org)では、脳卒中の発症率は2日で1.5%、90日で3.7%、1年で5.1%と従来の報告より低かった。画像上の多発梗塞、大血管のアテローム硬化、ABCD2スコア6〜7点は、それぞれ1年以内の脳卒中リスクを2倍以上に高めていた。
- DWIで小さな異常高信号やMRAにおいて血管狭窄を認めることがある。
- 狭窄は塞栓源など病因は持続存在しているので、再発・反復は→大きな梗塞に陥ることがある。
- 大血管のアテローム硬化(頸動脈・頭蓋内動脈の狭窄)がある場合は早期再発に特に注意する。
- TIA様の発作を来すものは脳血管障害とは限らない→TIAを除外診断する意味でも、画像診断(DWI)は必要。また、発症72時間以内でABCD2スコア3点以上、または外来で速やかに評価を終えられない場合は入院が妥当とされる。
TIAの検査(CT・MRI・血管・心臓)
AHA/ASAの声明(2009年)では、TIAが疑われたら発症24時間以内に脳の画像検査(できればDWIを含むMRI)を行い、頸部血管の画像検査、できるだけ早い心電図、必要に応じて長時間の心電図モニターや心エコーを行うことが勧められています(Easton 2009)。頭部CTは出血など別の病気の除外に役立ちますが、CTが正常だったTIA・軽症脳梗塞1048例でも、早期のMRIで31.5%に急性梗塞が見つかりました(Robitaille 2025)。
「MRIで異常なし」と言われたときの考え方
- TIAは画像に梗塞を残さないことが多く、MRIで異常がなくてもTIAは否定できません(Brazzelli 2014)。診断は症状の経過(どんな症状が、どのくらいの時間出たか)が中心です。
- 症状が消えていても、片側の手足の脱力やしびれ、言葉が出にくい、片目が見えにくいといった症状が出たときは、早めに医療機関を受診してください。
症状が続くとき・消えないときは「脳梗塞の急性期」として急ぐ
- TIAは症状が自然に消えた場合の診断名です。症状が続いている場合は急性期の脳梗塞として扱い、発症からの時間が治療の可否を左右します。脱力・言葉の出にくさなどがあるときは、様子を見ずに救急受診してください。
- 静脈からの血栓溶解療法(アルテプラーゼ)は、従来は発症3時間以内とされていましたが、発症3〜4.5時間の無作為化試験で転帰良好の割合がアルテプラーゼ群52.4%、プラセボ群45.2%と有効性が示され、4.5時間以内へ広がっています(Hacke 2008)。
- 主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法も、当初は発症から短い時間の患者が対象でしたが、発症から6時間を超えて画像で救える脳組織が残っていると判断された患者でも、血栓回収群で90日後の障害が少ないことが示されています(Jovin 2022)。適応の詳細は施設の基準・ガイドラインに従います(Powers 2019)。
ASPECTS(アスペクト)とは?頭部CTで梗塞の広がりを見る点数
- ASPECTSは、中大脳動脈領域を10の領域に分け、単純CTで早期の虚血変化がある領域を数えて点数化する方法です。10点から減点していくので、点数が低いほど早期虚血変化が広いことを表します(Barber 2000)。
- 血栓溶解療法の前に撮った頭部CTで、ASPECTSは入院時のNIHSS(神経症状の重症度)と逆相関し(r=-0.56)、3か月後の機能予後と症候性頭蓋内出血を予測しました(Barber 2000)。
- 「7点以上」「6点以下」という区切りの考え方:点数が低い(梗塞が広い)ほど回復が見込みにくく出血も増えると考えられ、従来はASPECTSの低い患者は血栓回収の対象から外されがちでした。しかし近年のランダム化試験の統合解析では、ASPECTS 5点以下または梗塞コアが大きい患者でも、発症24時間以内であれば血栓回収群で90日後の障害の分布が改善しました(Sarraj 2026)。点数だけでなく、症状・血管閉塞の部位・灌流画像などを合わせて判断します。
中心前回の「precentral knob」とは?
- 運動野の手の領域は、中心前回にあるprecentral knob(中心前回のこぶ)に対応します。軸位断で逆オメガ(Ω)またはイプシロン(ε)の形、矢状断でフック状に見える膨らみです(Yousry 1997)。
症例 60歳代男性 TIA。画像上は梗塞あり。

右頭頂葉皮質部にDWI(拡散強調像)で異常な高信号あり。
ADCでは信号低下を認めています。
ただし、臨床的に症状は一過性であり、最終的にTIAと診断されました(現在の組織ベースの定義では、DWIで急性梗塞があるため脳梗塞として扱われます)。
TIAのMRIでよくある疑問(Q&A)
Q. TIAの持続時間はどのくらいですか?
A. 従来の時間ベースの定義では24時間以内に症状が消えるものをTIAとしてきましたが、2009年のAHA/ASAの定義では時間ではなく「急性梗塞を伴わないこと」で区別します(Easton 2009)。
Q. TIAと診断されたあと、何時間以内に受診・検査すべきですか?
A. 症状が消えていても、AHA/ASAの声明では発症24時間以内に脳の画像検査(できればDWIを含むMRI)を行うことが勧められています(Easton 2009)。症状が再び出た場合や続いている場合は、すぐに救急を受診してください。
あわせて読みたい:一過性全健忘(TGA)とは?症状・原因と診断基準、MRI(DWI)で見られる海馬の高信号
参考文献
- Easton JD, Saver JL, Albers GW, et al. Definition and evaluation of transient ischemic attack: a scientific statement for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association Stroke Council. Stroke. 2009;40(6):2276-93. PubMed
- Johnston SC, Rothwell PM, Nguyen-Huynh MN, et al. Validation and refinement of scores to predict very early stroke risk after transient ischaemic attack. Lancet. 2007;369(9558):283-92. PubMed
- Amarenco P, Lavallée PC, Labreuche J, et al. One-Year Risk of Stroke after Transient Ischemic Attack or Minor Stroke. N Engl J Med. 2016;374(16):1533-42. PubMed
- Kleindorfer DO, Towfighi A, Chaturvedi S, et al. 2021 Guideline for the Prevention of Stroke in Patients With Stroke and Transient Ischemic Attack: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2021;52(7):e364-e467. PubMed
- Brazzelli M, Chappell FM, Miranda H, et al. Diffusion-weighted imaging and diagnosis of transient ischemic attack. Ann Neurol. 2014;75(1):67-76. PubMed
- Robitaille M, Émond M, Sharma M, et al. The value of MRI in transient ischemic attack/minor stroke following a negative CT for predicting subsequent stroke. CJEM. 2025;27(3):215-220. PubMed
- Barber PA, Demchuk AM, Zhang J, et al. Validity and reliability of a quantitative computed tomography score in predicting outcome of hyperacute stroke before thrombolytic therapy. ASPECTS Study Group. Alberta Stroke Programme Early CT Score. Lancet. 2000;355(9216):1670-4. PubMed
- Hacke W, Kaste M, Bluhmki E, et al. Thrombolysis with alteplase 3 to 4.5 hours after acute ischemic stroke. N Engl J Med. 2008;359(13):1317-29. PubMed
- Jovin TG, Nogueira RG, Lansberg MG, et al. Thrombectomy for anterior circulation stroke beyond 6 h from time last known well (AURORA): a systematic review and individual patient data meta-analysis. Lancet. 2022;399(10321):249-258. PubMed
- Sarraj A, Thomalla G, Yoshimura S, et al. Endovascular thrombectomy for patients with large-core ischaemic stroke presenting up to 24 h after onset (ATLAS): a systematic review and individual patient data meta-analysis with central imaging adjudication. Lancet. 2026;407(10543):2015-2026. PubMed
- Powers WJ, Rabinstein AA, Ackerson T, et al. Guidelines for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke: 2019 Update to the 2018 Guidelines for the Early Management of Acute Ischemic Stroke: A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2019;50(12):e344-e418. PubMed
- Yousry TA, Schmid UD, Alkadhi H, et al. Localization of the motor hand area to a knob on the precentral gyrus. A new landmark. Brain. 1997;120 ( Pt 1):141-57. PubMed
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