甲状腺の正常値
- 正常の甲状腺重量は15~35gで、個人差が非常に大きい。
- 女性では月経や妊娠中に甲状腺が腫大する。
- 一般的に、甲状腺片葉の前後径が30mm以下、幅が20mm以下を正常、これより大きい場合を腫大という。
- また、峡部が3mm以上肥厚している場合も腫大があるとされている。
- 甲状腺はヨードを含有しているために単純CTにて高吸収を示す。正常甲状腺の CT値は70~120HUであるといわれている。
臨床的意義
- 甲状腺疾患における第一選択の検査法は超音波検査で、CTやMRIは病変の浸潤範囲やリンパ節転移の評価目的に行われる。
- つまり、CTやMRIでは良悪性を判断できる確定的所見はない。偶発甲状腺腫を見つけたら、エコーをすすめる。(CTでの偶発甲状腺腫の発見率は16%、その中でも悪性の可能性が高い病変は10%前後。)
- 甲状腺のCT値は、ヨード含有量の減少や濾胞細胞の増加、または腫瘍細胞による置換により低下する。
- CTにて甲状腺がびまん性に腫大し、吸収値が低下する病態として橋本病やBasedow病があり、その他に悪性リンパ腫や甲状腺癌、甲状腺転移などがある。
症例 40歳代男性 正常例
単純CTの横断像です。
気管の前方・左右を取り囲むように甲状腺が存在しているのがわかります。
ヨードを含むため、甲状腺はこのように周囲の筋肉と比較して高吸収(白い)となります。
関連)抗不整脈薬であるアミオダロンはヨードを含むため、肝臓に沈着すると肝臓が通常よりも高吸収になります。→アミオダロン肝とは?CT画像診断は?
症例 40歳代女性 橋本病(腫大は目立たない)
甲状腺両葉は正常よりも低吸収化(黒い)しています。
甲状腺の腫大は目立ちませんが、甲状腺機能低下に矛盾しない所見です。
甲状腺のCT読影の注意点と限界
- 辺縁鮮明円滑なものは良性のことが多い。しかし例外も少なくない。
- 石灰巣の有無、造影剤増強の程度、嚢胞成分の混在などは、良性・悪性の鑑別点とならない。
- 完全な嚢胞(CT、超音波で)以外は、良性と断定できる画像診断法はない。つまり、CTでは完全な嚢胞以外は、良悪性について診断できない。
- Basedow病に伴う甲状腺腫のCT値は低い。
- 画像所見以外で、甲状腺腫瘤が悪性である可能性が高い因子としては、14歳以下、70歳以上、男性、頸部への放射線被ばく歴がある、甲状腺癌の既往、乳癌の既往、家族歴、家族性ポリポーシス、Cowden症候群、Gardener症候群などの遺伝性疾患がある場合。