先に結論:脳動脈瘤とは

  • 脳の動脈の壁の一部がコブのようにふくらんだものです。多くは無症状で、脳ドックのMRAなどで見つかります。破裂するとくも膜下出血を起こします
  • 破裂するのはほとんどが分かれ目にできる嚢状動脈瘤。ほかに動脈硬化・解離などによる紡錘状動脈瘤があります
好発部位 略語・呼び方
内頸動脈と後交通動脈の分岐部 IC-PC(内頸動脈瘤の代表)
前交通動脈 AcomA(前大脳動脈〜前交通動脈)
中大脳動脈の分岐部 MCA(M1の末梢の分岐部)
椎骨脳底動脈系 脳底動脈先端部など

動脈瘤とまちがえやすいものに、血管の根元がじょうごのように広がる漏斗状拡張(infundibular dilatation)があり、こちらは破裂の危険は低いとされます。※脳ドックで動脈瘤を指摘されたら、脳神経外科で大きさや形をもとに方針を相談してください。

脳動脈瘤の好発部位は?

  • 嚢状動脈瘤の大部分はWillis動脈輪の前半部(前方循環)の分岐部と中大脳動脈に好発する。日本の未破裂脳動脈瘤6697個の調査では、中大脳動脈が36%、内頸動脈が34%を占めていました(Morita 2012)。

すなわち

  1. 前大脳動脈A1-A2から前交通動脈分岐部(A-com)
  2. 内頚動脈C2-C1、特に内頚動脈と後交通動脈分岐部(IC-PC)
  3. 中大脳動脈M1末梢分岐部

aneurysm

  • その他、椎骨脳底動脈系(脳底動脈先端部など)にも発生する。
  • 破裂動脈瘤の術前診断には、空間分解能が高く血行力学的な情報がある脳動脈造影(DSA)がgold standardとなる。

脳動脈瘤の種類・形態学的鑑別は?

嚢状動脈瘤と紡錘状動脈瘤の図

動脈瘤は形状から、

  • 嚢状動脈瘤(saccular aneurysm)
  • 紡錘状動脈瘤(fusiform aneurysm)

に分類されます。

  • 嚢状動脈瘤の頻度が高く、破裂をきたすのはほとんど囊状動脈瘤。
  • 囊状動脈瘤はその成因として、分岐部に血行力学的な要因で生じる。
  • 紡錘状動脈瘤はその成因として動脈硬化性変化や血管炎、解離が原因となる。
  • また破裂の危険の高い仮性動脈瘤様の病変を形成することがある(blisterlike aneurysm。成因は動脈硬化による潰瘍・壁内出血、解離など諸説ある)。
破裂してくも膜下出血の原因となる動脈瘤は主に嚢状動脈瘤です。実際の症例の画像をみてみましょう。

嚢状動脈瘤(saccular aneurysm)のMRI/MRA画像診断

症例 70歳代女性

右のICAに2mm大の嚢状動脈瘤(saccular aneurysm)を認めています。

 

症例 70歳代女性

saccular aneurysm1

左のICA(内頚動脈)に4.5mm大の嚢状動脈瘤(saccular aneurysm)を認めています。

症例 60歳代女性

saccular aneurysm

左のIC-PCに4.5mm大の嚢状動脈瘤(saccular aneurysm)を認めています。

症例 70歳代男性

前交通動脈(A-com)に2.5mm大の嚢状動脈瘤を認めています。

動画でチェックする。

症例 60歳代男性

前大脳動脈(ACA)の遠位に複数の嚢状動脈瘤を認めています。

右側はT2強調画像の画像ですが、flow voidとして低信号の(黒い)動脈瘤を確認することができます。

症例   60歳代女性 スクリーニング

lt IC-PC aneurysm mra findings

左IC-PCに3mm大の嚢状動脈瘤を認めています。

動画でチェックする。

 

脳の血管の解剖についてはこちらを参考にしてください。→【動画解説】脳血管(動脈)の解剖を図と画像でわかりやすく!

 

嚢状動脈瘤と間違えやすいものに、漏斗状拡張があります。こちらは破裂の危険は低いと考えられています。

動脈瘤と間違えやすい漏斗状拡張(Infundibular dilatation)

  • またICAからP-com起始部がICA側に底部を持つ円錐状に拡張し、その頂点より連続してP-comに移行するパターンを漏斗状拡張 Infundibular dilatationといい、MRAでは嚢状と鑑別が難しいことがある。破裂の危険は低い。ただし、まれに嚢状動脈瘤へ進行したり破裂したりした報告があります(Chen 2016)。
  • 漏斗状拡張(infundibular dilatation)は入口部が最大径3mm以下であり、末梢につれて先細りする形態。文献では「直径3mm未満の三角形の拡張」とも定義されます(Chen 2016)。

Infundibular dilatation

※infundibular:漏斗状の

漏斗状拡張と嚢状動脈瘤の違い

見る点 漏斗状拡張 嚢状動脈瘤
形 円錐形・三角形で、先に行くほど細くなる 丸い袋状で、くびれ(neck)がある
先端の血管 頂点から後交通動脈などの血管が続く 袋の頂上から血管は続かない
大きさ 3mm以下(未満) さまざま
破裂の危険 低い 大きさ・部位・形(ブレブ)で高くなる

MRAの最大値投影(MIP)像だけでは区別しにくいので、元画像や3D画像で「頂点から血管が出ているか」を確認します。

漏斗状拡張の要点

Pool&PottsによるIC-PCの漏斗状拡張の定義
  • 最大径が3mm以下である。
  • 先端に後交通動脈を認める。
  • 形が円形または円錐形で嚢状や不整形を呈さない。
  • 動脈瘤としてのneckを有さない。
症例 30歳代女性 右IC-PCにinfundibular dilatation

Infundibular dilatation1

右のIC-PCに漏斗状拡張 Infundibular dilatationを認めています。

脳動脈瘤の大きさによる分類

  • 小型動脈瘤:10mm未満。
  • 大型動脈瘤:10mm以上25mm未満。
  • 巨大動脈瘤:25mm以上。日本の未破裂脳動脈瘤悉皆調査(UCAS Japan)では年間破裂率は0.95%で、3〜4mmに比べ7〜9mmで約3倍、10〜24mmで約9倍と大きさとともに上昇し、前交通動脈・後交通動脈(IC-PC)の瘤やブレブ(daughter sac)のある瘤は破裂しやすいと報告されています。6つの前向きコホート(8382人)をまとめた解析では、5年破裂率は3.4%で、年齢・高血圧・くも膜下出血の既往・大きさ・部位・地域が予測因子となり、PHASESスコアとしてまとめられました。北米・欧州(フィンランドを除く)と比べ、日本人の破裂リスクは2.8倍と報告されています。

脳動脈瘤に対するMRAの適応

  • 一般集団でのスクリーニングとしてMRAを施行することには議論あり。
  • 高リスク群(家族歴や多嚢胞性腎症など)におけるスクリーニング。
  • 脳神経症状を有する例での除外診断目的。
  • 動脈瘤があることが分かっているが、非治療例での経過観察目的。
  • 動脈瘤治療後の経過観察目的。
  • くも膜下出血例。

あわせて読みたい:動眼神経麻痺の原因とMRI・MRA、感染性脳動脈瘤のMRI(MRA)画像所見のポイント、脳動脈瘤破裂の危険因子は?(大きさ、部位、形状、Dome/Neck比など)

参考文献

  1. Morita A, Kirino T, Hashi K, et al. The natural course of unruptured cerebral aneurysms in a Japanese cohort. N Engl J Med. 2012;366(26):2474-82. PubMed
  2. Wiebers DO, Whisnant JP, Huston J, et al. Unruptured intracranial aneurysms: natural history, clinical outcome, and risks of surgical and endovascular treatment. Lancet. 2003;362(9378):103-10. PubMed
  3. Greving JP, Wermer MJ, Brown RD, et al. Development of the PHASES score for prediction of risk of rupture of intracranial aneurysms: a pooled analysis of six prospective cohort studies. Lancet Neurol. 2014;13(1):59-66. PubMed
  4. Thompson BG, Brown RD, Amin-Hanjani S, et al. Guidelines for the management of patients with unruptured intracranial aneurysms: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2015;46(8):2368-2400. PubMed
  5. Chen CJ, Moosa S, Ding D, et al. Infundibular dilations of the posterior communicating arteries: pathogenesis, anatomical variants, aneurysm formation, and subarachnoid hemorrhage. J Neurointerv Surg. 2016;8(8):791-5. PubMed

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