腹部CTで胆嚢を見たときに、「胆嚢がぺしゃんこになっている」「胆嚢がほとんど見えない」「胆嚢壁が厚く見える」と感じることがあります。

このような所見を見ると、急性胆嚢炎、慢性胆嚢炎、胆嚢腺筋腫症、胆嚢癌などを心配したくなることもあります。

しかし、胆嚢が虚脱して見える原因として、まず確認したいのが食後撮影による生理的な胆嚢収縮です。

今回は、CTで胆嚢がぺしゃんこに見える理由、食後胆嚢収縮の生理、画像診断での注意点、鑑別診断について整理します。

食後の胆嚢収縮とは?

食後の胆嚢収縮とは、食事を摂取した後に胆嚢が収縮し、胆嚢内に貯留していた胆汁を十二指腸へ排出する生理的な現象です。

胆嚢は肝臓で作られた胆汁を一時的に貯留し、濃縮する働きを持っています。空腹時には胆嚢内に胆汁がたまり、胆嚢は比較的ふくらんだ状態になります。

一方、食後、とくに脂質を含む食事の後には、胆嚢が収縮して胆汁を排出します。そのため、CTや腹部エコーでは胆嚢が小さく、虚脱したように見えることがあります。

つまり、CTで胆嚢がぺしゃんこに見える場合、すぐに病変と考えるのではなく、食後撮影ではないかを確認することが重要です。

なぜ食後に胆嚢は収縮するのか

食事、とくに脂質を含む食物が十二指腸に到達すると、消化管ホルモンであるコレシストキニンが分泌されます。

コレシストキニンには、主に以下のような作用があります。

  • 胆嚢を収縮させる
  • Oddi括約筋を弛緩させる
  • 膵外分泌を促進する
  • 胃排出を調節する

胆嚢が収縮し、Oddi括約筋が弛緩することで、胆汁が胆管を通って十二指腸へ流れます。胆汁は脂肪の消化・吸収を助けるため、食後に胆嚢が小さくなるのは正常な生理反応です。

画像診断では、この生理的変化を理解しておくことで、食後の胆嚢収縮を病的な胆嚢壁肥厚や胆嚢萎縮と誤認しにくくなります。

CTで胆嚢がぺしゃんこに見えるときの画像所見

食後胆嚢収縮では、CTで以下のような所見を認めることがあります。

  • 胆嚢内腔が狭小化している
  • 胆嚢が虚脱している
  • 胆嚢壁が相対的に厚く見える
  • 胃内や十二指腸内に食物残渣を認める
  • 胆嚢周囲脂肪織濃度上昇を伴わない
  • 胆嚢周囲液体貯留を伴わない

特に重要なのは、胃内食物残渣の有無です。

胃内に食物が多く残っている場合、そのCTは食後に撮影された可能性があります。食後であれば、胆嚢が収縮して小さく見えても不自然ではありません。

胆嚢そのものだけを見るのではなく、胃や十二指腸の内容物もあわせて確認することが大切です。

症例 40歳代男性

胆嚢がぺしゃんこになっています(収縮しています)。

胃内に食物を認めており、食後であることがわかります。

食後胆嚢収縮と胆嚢炎の見分け方

胆嚢が小さく見えるだけであれば、食後の生理的収縮の可能性があります。

一方で、急性胆嚢炎では以下のような所見を伴うことがあります。

  • 胆嚢腫大
  • 胆嚢壁肥厚
  • 胆嚢周囲脂肪織濃度上昇
  • 胆嚢周囲液体貯留
  • 胆石や胆泥
  • 胆嚢壁の造影不良や壊疽性変化
  • 右上腹部痛、発熱、炎症反応上昇などの臨床所見

食後胆嚢収縮では、胆嚢は小さく見えますが、通常は胆嚢周囲の炎症所見を伴いません。

したがって、胆嚢がぺしゃんこに見える場合は、以下のように考えると整理しやすいです。

所見 食後胆嚢収縮 急性胆嚢炎
胆嚢サイズ 小さい、虚脱している 腫大することが多い
胃内食物残渣 認めることが多い 診断の主所見ではない
胆嚢周囲脂肪織濃度上昇 通常なし 認めることがある
胆嚢周囲液体貯留 通常なし 認めることがある
臨床症状 無症状のことが多い 右上腹部痛、発熱など

胆嚢の形だけで判断せず、食事歴、胃内残渣、炎症所見、臨床症状を総合して評価することが重要です。

胆嚢が見えにくいときの鑑別診断

胆嚢が小さい、見えにくい、虚脱している場合には、食後胆嚢収縮以外にもいくつかの鑑別があります。

1. 食後胆嚢収縮

最も日常的に遭遇する原因の一つです。胃内に食物残渣を認める場合は、食後撮影による胆嚢収縮を考えます。

2. 胆嚢摘出後

胆嚢が同定できない場合は、胆嚢摘出後の可能性があります。手術歴を確認し、胆嚢床に術後クリップを認めるかを確認します。

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3. 慢性胆嚢炎・萎縮胆嚢

慢性炎症により胆嚢が萎縮し、壁肥厚や結石を伴うことがあります。食後収縮と異なり、胃内食物残渣だけでは説明できない胆嚢壁の不整、石灰化、胆石、周囲変化などを伴う場合があります。

4. 胆嚢腺筋腫症

胆嚢壁肥厚として見えることがあります。CTでは限界がありますが、腹部エコーやMRIで胆嚢壁内の小嚢胞状構造、Rokitansky-Aschoff sinusを反映する所見が評価されます。

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5. 胆嚢癌

不整な壁肥厚、腫瘤形成、肝床浸潤、リンパ節腫大などを伴う場合は胆嚢癌も鑑別に入ります。単なる食後収縮と判断せず、壁肥厚の形状や周囲浸潤の有無を確認します。

6. 先天性胆嚢欠損

非常にまれですが、胆嚢が先天的に存在しないことがあります。ただし、日常診療ではまず胆嚢摘出後や食後収縮、萎縮胆嚢を考える方が実践的です。

腹部CT・腹部エコー前の絶食が重要な理由

胆嚢を評価したい検査では、絶食が重要です。

食後に検査を行うと、胆嚢が収縮してしまい、胆嚢内腔の評価が難しくなります。また、胆嚢壁が相対的に厚く見えることで、病的な壁肥厚と紛らわしくなることがあります。

腹部エコーでは、食後に胆嚢が収縮すると胆嚢結石、胆泥、胆嚢壁病変の評価が難しくなります。そのため、胆嚢評価を目的とする腹部エコーでは、一般に検査前の絶食が行われます。

腹部CTでも、胆嚢や膵胆道系をしっかり評価したい場合には、食後撮影であるかどうかが読影に影響します。ただし、救急CTや胸部CTの一部として撮影された上腹部では、必ずしも絶食条件で撮影されていないことがあります。

そのため、CTで胆嚢が小さく見えた場合には、その検査が胆嚢評価を目的にしたものか、食事制限があったのかを確認することが大切です。

 

出典

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  6. ACR–AIUM–SPR–SRU Practice Parameter for the Performance of an Ultrasound Examination of the Abdomen and/or Retroperitoneum.
  7. University of Washington Medicine. Ultrasound: Abdominal Exam patient preparation document.

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