先に結論:胆嚢摘出後の胆管拡張

  • 胆嚢摘出後は総胆管が少し太くなることがあり、症状や肝胆道系酵素の異常がなければ10mm程度までは生理的範囲とされることが多いです
  • 胆嚢がある成人の総胆管はおおむね6〜7mm未満が正常で、年齢とともに少し太くなります。肝内胆管は2〜3mm未満が正常とされます
  • ただし数字だけで判断せず、黄疸・発熱・腹痛・ALPやビリルビンの上昇、肝内胆管の拡張、膵管の拡張があれば閉塞を考えます
  • 総胆管結石・胆管狭窄・膵頭部癌・乳頭部癌を除外するため、迷ったらMRCPで胆管の先(乳頭部)まで確認します

胆嚢摘出後のCTやMRIで、胆管拡張を認めることは少なくありません。

総胆管を中心とした肝外胆管拡張としてみられることが多いが、実際の画像診断では肝門部から中枢側肝内胆管にかけて軽度の拡張を伴うこともあります。

そこで今回は、胆嚢摘出後にみられる胆管拡張について、正常範囲、CT・MRIでの見方、閉塞性胆管拡張との鑑別、読影レポートの記載例を整理します。

胆嚢摘出後に胆管が拡張する理由

胆嚢は胆汁を一時的に貯留・濃縮する臓器である。胆嚢摘出後は、この貯留機能が失われるため、胆汁の流れや胆道内圧の変化に伴い、胆管が代償的に拡張することがある。

この変化は必ずしも病的ではない。胆嚢摘出後の患者では、症状がなく、肝胆道系酵素の上昇もなく、画像上明らかな閉塞機転がなければ、軽度の胆管拡張は術後変化として説明できることが多い。

特に、総胆管から総肝管、肝門部胆管にかけてなだらかに拡張し、下部胆管に急峻な狭窄や途絶を認めない場合は、胆嚢摘出後変化として矛盾しにくい。

胆嚢摘出後の胆管拡張はどこまで正常か

胆管径の正常上限は、検査方法、測定部位、年齢、胆嚢摘出歴の有無によって異なる。

胆嚢摘出後では、無症候性であれば総胆管径10mm程度までの拡張は生理的範囲として扱われうる。胆嚢摘出後1年間の前向き研究では、総胆管径は術前平均4.1mmから術後6か月で5.1mm、術後12か月で6.1mmへ軽度拡張し、10mmを超える症例は認めなかったと報告されている。一方で同研究では、術後12か月で約3割が7mmを超え、術前より3mm以上拡張した例もあったため、個々の症例では術前や過去画像との比較が有用である。EUSで647例を測定した検討では、総胆管径は70歳以降で有意に太くなるが、胆嚢がある高齢者でも正常例は7.6mmを超えず、年齢以外に拡張に関わる唯一の因子が胆嚢摘出であった。高齢かつ胆摘後の症例では、両方の影響を考えて評価する必要がある。

ただし、数値だけで正常・異常を判断すべきではない。たとえば総胆管径が10mm未満であっても、黄疸、発熱、右季肋部痛、ビリルビン上昇、ALP・γ-GTP上昇、主膵管拡張、胆管内結石、胆管狭窄などを伴う場合には、閉塞性病変を考慮する必要がある。

胆管拡張の基準:総胆管・肝内胆管は何mmから拡張?

胆嚢摘出後に限らず、拡張と判断する目安は測定方法・場所・年齢で異なります。代表的な報告をまとめます。

対象 正常の目安 報告
総胆管(60〜96歳、胆嚢あり) 98%が6〜7mm未満(超音波1018人) Perret 2000
総胆管(年齢の影響) 平均は50歳未満3.128mm、50歳以上4.19mm。高齢者の上限は8.5mmが提案 Bachar 2003
総胆管(EUS、胆嚢あり) 70歳以降で太くなるが7.6mmを超えない Benjaminov 2013
総胆管(胆嚢摘出後) 術後12か月の平均6.1mm、10mm超はなし Park 2012
総胆管(文献の幅) 報告されている基準値は5〜9mm Lucius 2025
肝内胆管 2〜3mm未満を正常と考えてよい Lucius 2025

超音波では、肝内で門脈と並走する胆管が門脈と同じくらいの太さになると拡張を疑い、2本の管が平行に並ぶshotgun signとして見えます(Weill 1978)。CTでは、門脈に沿う枝分かれした低吸収の管が肝臓の末梢まで追えるときに肝内胆管拡張を考えます。総胆管は測った場所と方法を記録しておくと、過去画像との比較がしやすくなります。

肝内胆管拡張を伴う場合の考え方

胆嚢摘出後の胆管拡張では、肝外胆管が主体となることが多い。しかし、肝門部から中枢側肝内胆管にかけて軽度に目立つこともあり、肝内胆管拡張を伴うこと自体は珍しくない。

したがって、肝内胆管拡張を伴うという理由だけで、直ちに閉塞性胆管拡張と判断するのは適切ではない。胆嚢摘出後で、胆管が全体に軽度拡張しているものの、下部胆管に急峻な狭窄や途絶がなく、総胆管結石や腫瘍性病変、主膵管拡張を伴わない場合には、胆嚢摘出後変化として矛盾しないことがある。

一方で、末梢側肝内胆管まで明らかに拡張している場合、左右肝管から末梢に向かってびまん性に拡張している場合、過去画像と比較して増悪している場合、胆道系酵素上昇や黄疸を伴う場合には、胆摘後変化のみで説明すべきではない。

つまり、肝内胆管拡張の有無ではなく、「どの程度の拡張か」「どこまで拡張しているか」「閉塞点があるか」「進行性か」「臨床的に胆道閉塞を示唆するか」を見ることが重要である。

胆摘後変化として矛盾しにくい画像所見

以下のような条件がそろう場合、胆嚢摘出後の胆管拡張として説明しやすい。

  • 胆嚢摘出後である
  • 胆管拡張が軽度である
  • 総胆管から総肝管、肝門部胆管にかけてなだらかに拡張している
  • 中枢側肝内胆管が軽度に目立つ程度である
  • 末梢側肝内胆管まで強く拡張していない
  • 下部胆管に急峻な狭窄や途絶を認めない
  • 総胆管内に結石や腫瘍性病変を認めない
  • 主膵管拡張を伴わない
  • 過去画像と比較して大きな変化がない
  • 黄疸、発熱、胆道痛などの症状がない
  • ビリルビン、ALP、γ-GTPなどの明らかな上昇がない

このような場合、画像所見としては「胆嚢摘出後変化として矛盾しない」と記載できる。

症例 60歳代男性 

幽門側胃切除後。 開腹胃亜全摘出。胆嚢摘出術、RY再建後。術後のフォローCTが撮影された。肝胆道系酵素は横ばい。

肝内胆管〜総胆管に拡張を認めています。

その様子はMRIでより明瞭です。

胆摘後の影響による肝内胆管〜総胆管拡張

と診断されました。

追加評価を考慮すべき画像所見

一方で、以下の所見を伴う場合には、胆嚢摘出後変化だけで説明せず、追加評価を考慮する。

  • 胆管拡張が高度である
  • 以前の画像と比較して胆管拡張が進行している
  • 末梢側肝内胆管まで明らかに拡張している
  • 総胆管内に結石を疑う高吸収域や陰影欠損を認める
  • 下部胆管に急峻な狭窄や途絶を認める
  • 胆管壁肥厚や不整な造影効果を認める
  • 主膵管拡張を伴う
  • 膵頭部、乳頭部、下部胆管に腫瘤性病変を疑う
  • 黄疸、発熱、右季肋部痛を伴う
  • ビリルビン、ALP、γ-GTPなどが上昇している

特に、胆管拡張と主膵管拡張を同時に認めるdouble duct signでは、膵頭部癌、乳頭部癌、下部胆管癌などを考慮する必要がある。明らかな腫瘤が見えない場合でも、乳頭部病変や小さな膵頭部病変が隠れていることがあるため注意を要する。

CTで確認すべきポイント

胆嚢摘出後の胆管拡張をCTで見た場合、まず胆嚢摘出後であることを確認する。そのうえで、胆管拡張の範囲、程度、分布、閉塞点の有無を評価する。

  • 胆嚢摘出後であるか
  • 胆管拡張が軽度か高度か
  • 肝外胆管主体か、肝内胆管まで目立つか
  • 末梢側肝内胆管まで拡張しているか
  • 拡張がなだらかか、急峻な狭窄・途絶を伴うか
  • 総胆管内に高吸収の結石がないか
  • 胆管壁肥厚や不整がないか
  • 主膵管拡張を伴うか
  • 膵頭部、乳頭部、下部胆管に腫瘤性病変がないか
  • 過去画像と比較して増悪していないか

CTでは石灰化を伴う結石や高吸収の総胆管結石は指摘しやすい。一方で、コレステロール結石、胆泥、小結石はCTで不明瞭なことがある。そのため、臨床的に胆道閉塞が疑われる場合には、CTで結石が見えないことだけで否定すべきではない。

MRI・MRCPで確認すべきポイント

MRCPは胆道全体の評価に有用である。胆管拡張の範囲、狭窄部位、胆管内結石、胆管の途絶、主膵管拡張の有無を非侵襲的に評価できる。

MRCPでは以下の所見を確認する。

  • 胆管内の陰影欠損の有無
  • 下部胆管の狭窄・途絶の有無
  • 胆管拡張がなだらかか、閉塞点を伴うか
  • 肝内胆管の拡張が中枢側に限局するか、末梢まで及ぶか
  • 主膵管拡張の有無
  • 膵頭部・乳頭部病変を疑う所見の有無

MRCPで明らかな結石や狭窄を認めず、胆管拡張が軽度で、臨床的にも胆道閉塞を示唆しない場合には、胆嚢摘出後変化として扱いやすい。

ただし、MRCPでも微小結石や胆泥は描出困難なことがある。胆道痛や肝胆道系酵素上昇があるにもかかわらずMRCPで原因がはっきりしない場合には、EUSが有用となることがある。

鑑別診断

1. 胆嚢摘出後の非閉塞性胆管拡張

胆嚢摘出後の軽度胆管拡張として最もよく遭遇する。総胆管を中心に、総肝管から肝門部胆管、中枢側肝内胆管が軽度に目立つことがある。閉塞点がなく、主膵管拡張もなく、症状や採血異常がなければ、胆嚢摘出後変化として矛盾しない。

2. 総胆管結石

胆嚢摘出後であっても総胆管結石は起こりうる。遺残結石、再発結石、胆管内で形成された原発性胆管結石などがある。CTで高吸収結石として見えることもあるが、小結石や胆泥はCTで指摘困難なことがある。

3. 胆管狭窄

炎症性狭窄、術後変化、慢性膵炎に伴う下部胆管狭窄などが原因となる。胆管拡張の末梢側に狭窄部位があるか、狭窄がなだらかか急峻か、胆管壁肥厚を伴うかを確認する。

4. 膵頭部癌・乳頭部癌・下部胆管癌

下部胆管閉塞の重要な原因である。胆管拡張に加えて主膵管拡張を伴う場合は特に注意する。CTで明らかな腫瘤がない場合でも、乳頭部病変や小さな膵頭部病変が隠れていることがある。

5. 乳頭部狭窄・乳頭機能不全

胆道痛、肝胆道系酵素上昇、胆管拡張を繰り返す場合に考慮される。画像だけで診断することは難しく、臨床症状、採血、内視鏡的評価を含めて総合的に判断する。

胆管拡張でよくある疑問(Q&A)

Q. 総胆管は何mmから拡張ですか?
A. 胆嚢がある成人ではおおむね6〜7mmを超えると拡張を疑いますが、高齢者や胆嚢摘出後ではもう少し太くても正常のことがあります。症状・採血・過去画像とあわせて判断します。

Q. 肝内胆管拡張と言われたら何を調べますか?
A. 胆管がつまっている場所(閉塞点)を探すため、MRCPや造影CT、必要に応じて超音波内視鏡が行われます。黄疸・発熱・腹痛を伴う場合は早めに医療機関を受診してください。

まとめ

胆嚢摘出後には、胆管の軽度拡張を認めることがある。総胆管を中心とした肝外胆管拡張としてみられることが多いが、肝門部から中枢側肝内胆管にかけて軽度に目立つこともある。

したがって、肝内胆管拡張を伴うかどうかだけで病的・非病的を判断すべきではない。胆管拡張の程度、分布、閉塞点の有無、主膵管拡張の有無、総胆管結石の有無、過去画像との比較、症状、肝胆道系酵素を総合して判断する必要がある。

無症候性で、肝胆道系酵素上昇がなく、胆管拡張が軽度で、明らかな閉塞機転や主膵管拡張を伴わない場合には、胆嚢摘出後変化として矛盾しない。一方、進行性の拡張、末梢側肝内胆管までの明らかな拡張、急峻な狭窄・途絶、胆管内結石、主膵管拡張、黄疸や採血異常を伴う場合には、MRCP、EUS、ERCPなどによる追加評価を検討する。

出典

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参考文献

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