先に結論:乳がんの所属リンパ節と腋窩リンパ節のレベル

  • 乳がんが最初に転移しやすいリンパ節(所属リンパ節)は、同じ側の腋窩(わきの下)リンパ節・内胸リンパ節(胸骨のわき)・鎖骨上リンパ節です。所属リンパ節とは「その臓器のがんが最初に流れ着くと決められているリンパ節」のことで、それ以外への転移は遠隔転移として扱われます
  • 腋窩リンパ節は小胸筋を目印に3つに分けます:レベルⅠ=小胸筋の外側縁より外側、レベルⅡ=小胸筋の裏側と胸筋の間、レベルⅢ(鎖骨下リンパ節)=小胸筋の内側縁より内側
  • 転移はふつうレベルⅠ→Ⅱ→Ⅲの順に進むため、CTではまずレベルⅠをよく確認します。丸い形・リンパ門の脂肪が見えない・大きさなどで転移を疑います
  • 鎖骨下リンパ節=腋窩リンパ節レベルⅢ(鎖骨の下・小胸筋より内側)、鎖骨上リンパ節=鎖骨の上のくぼみ(鎖骨上窩)のリンパ節で、CTでは鎖骨より頭側の、頸部の付け根の脂肪の中に見えます

乳腺からのリンパの流れ

  • 内側:内胸リンパ節(胸骨傍リンパ節)へ。
  • 外側:大胸筋を貫いて胸筋リンパ節→中心リンパ節→鎖骨下リンパ節へ。

乳癌の所属リンパ節

  • 同側腋窩リンパ節→下記のようにLevel Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに分けられる。
  • 内胸リンパ節(胸骨傍リンパ節)
  • 同側鎖骨上リンパ節

症例 50歳代女性 同側鎖骨下リンパ節

右鎖骨下リンパ節に転移を認めています。

 

さらに腋窩リンパ節はLevel Ⅰ、Ⅱ、Ⅲにわけられる。

  • Level Ⅰ:小胸筋外側縁より外側
  • Level Ⅱ:小胸筋背側および胸筋間
  • Level Ⅲ:小胸筋内側縁より内側

 

  • 乳房内リンパ節は腋窩リンパ節に分類される。ただし、リンパ節転移の程度の術後分類では、腋窩リンパ節として一括して扱う。
  • levelⅡ、Ⅲリンパ節転移は通常触診では診断されず、画像で判定される。
  • 超音波では、円形・皮質の肥厚・リンパ門(脂肪)の消失などの形態所見を転移の目安とし、大きさより形態が重要とされる(Ecanow 2013)。CT・MRIでは確立した大きさの基準はなく、形・リンパ門の脂肪の有無・左右差・造影のされ方などを総合して判断する。センチネルリンパ節生検の普及により、腋窩郭清を省略できる患者が増えており、腋窩画像の役割は転移の有無だけでなく、転移リンパ節の量(nodal burden)の推定へと移っている。術前化学療法を受けるリンパ節転移陽性例では、治療後に超音波・MRIで腋窩を再評価することが強く勧められている。
  • level Ⅱ、level Ⅲにあって、level Ⅰにリンパ節転移がないことは少ないので、まずは、level Ⅰにリンパ節転移がないかを入念にチェックすることが大事。ただし、飛び越し転移(skip metastasis)は浸潤性乳癌の約2.6%、転移例の約7%にみられ、行き先は鎖骨上リンパ節が最も多かったと報告されています。小葉癌で多い傾向があるため、レベルⅠに転移がなくても鎖骨上・レベルⅢ・内胸リンパ節まで確認しましょう。浸潤性乳癌1,300例の検討では、飛び越し転移34例の行き先は鎖骨上リンパ節21例、レベルⅢ 4例、反対側の腋窩2例、遠隔臓器7例で、小葉癌の割合は飛び越し転移のある群で23.5%、ない転移群で6.7%でした(Chung 2021)。
  • 内胸リンパ節は内胸動・静脈に沿う肋間のリンパ節で、乳癌取り扱い規約第18版(2018年5月)以前は胸骨傍リンパ節と呼ばれていた。乳癌や悪性リンパ腫のリンパ節転移で重要。

リンパ節の場所とCTでの目印(一覧)

リンパ節 場所 CTでの目印
腋窩レベルⅠ わきの下の外側〜下側 小胸筋の外側縁より外側の脂肪の中
腋窩レベルⅡ 小胸筋の裏側 小胸筋の背側。大胸筋と小胸筋の間の胸筋間リンパ節(Rotterリンパ節)もレベルⅡに含めます
腋窩レベルⅢ(鎖骨下リンパ節) 鎖骨のすぐ下 小胸筋の内側縁より内側、鎖骨下動静脈の近く
鎖骨上リンパ節 鎖骨の上のくぼみ(鎖骨上窩) 鎖骨より頭側、内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部の外側の脂肪の中
内胸リンパ節 胸骨のすぐ横(左右) 胸骨の裏側の両わき、内胸動静脈に沿って肋間に並ぶ

CTでリンパ節転移を疑う所見

見るところ 正常〜反応性のリンパ節 転移を疑うリンパ節
形 そら豆形・楕円形 丸い(円形)
リンパ門の脂肪 中心に脂肪(低吸収)が見える 脂肪が見えない・押しつぶされている
皮質 薄く均一 厚い、片寄って厚い
左右差・数 左右差が目立たない がんのある側だけ大きい・数が多い、くっついて固まっている
経過 変わらない 前回のCTより大きくなっている

超音波でも大きさより形の変化が重要とされ(Ecanow 2013)、超音波と針の検査(穿刺吸引細胞診)を組み合わせた検討では、転移の感度86.0%・特異度100.0%でした(Chung 2021)。CTはおもに腋窩以外(鎖骨上・内胸・縦隔)のリンパ節や遠隔転移の確認に役立ちます。

乳がんのリンパ節でよくある疑問(Q&A)

Q. CTで腋窩リンパ節が腫れていると言われました。すべて転移ですか?
A. いいえ。腕や手のけが・感染、ワクチン接種のあとなどでも反応性に腫れることがあります。形やリンパ門の脂肪、経過を合わせて判断し、必要なら超音波や針の検査で確かめます。気になる場合は担当の医療機関に相談してください。

動画にまとめました。

※注意:乳癌取り扱い規約第18版(2018年5月)P8 では胸骨傍リンパ節ではなく内胸リンパ節となっています。

症例 40歳代女性 右乳癌 Level Ⅰリンパ節転移(小胸筋外側縁より外側)、縦隔リンパ節転移

level1

右乳癌+右Level Ⅰリンパ節転移(小胸筋外側縁より外側)、縦隔リンパ節転移を認めています。

症例 30歳代女性 左乳癌 Level Ⅰ-Ⅱリンパ節転移

MMKlympho1-2

左Level Ⅰ-Ⅱリンパ節転移を認めています。

症例 50歳代女性 右乳癌 レベルⅠ-Ⅲリンパ節転移

MMK2

MMK1

レベルⅠーⅢにリンパ節転移を認めています。

 

症例 40歳代女性 左乳癌術後

胸骨の左背側に結節を認めており、経時的に増大を認め、内胸リンパ節転移と診断されました。

症例 80歳代女性 左乳癌術後

左優位に両側内胸リンパ節転移を認めています。

左側は上下に連続しており、内胸動静脈に沿った分布を示していることを確認できます。

あわせて読みたい:胸骨傍リンパ節(内胸リンパ節)とは?場所と乳癌転移のCT画像診断のポイント

あわせて読みたい:センチネルリンパ節とは

参考文献

  1. Ecanow JS, Abe H, Newstead GM, et al. Axillary staging of breast cancer: what the radiologist should know. Radiographics. 2013;33(6):1589-612. PubMed
  2. Lloyd LR, Waits RK, Schroder D, et al. Axillary dissection for breast carcinoma. The myth of skip metastasis. Am Surg. 1989;55(6):381-4. PubMed
  3. Chung HL, Sun J, Leung JWT. Breast Cancer Skip Metastases: Frequency, Associated Tumor Characteristics, and Role of Staging Nodal Ultrasound in Detection. AJR Am J Roentgenol. 2021;217(4):835-844. PubMed
  4. Chang JM, Leung JWT, Moy L, et al. Axillary Nodal Evaluation in Breast Cancer: State of the Art. Radiology. 2020;295(3):500-515. PubMed
  5. Giuliano AE, Connolly JL, Edge SB, et al. Breast Cancer-Major changes in the American Joint Committee on Cancer eighth edition cancer staging manual. CA Cancer J Clin. 2017;67(4):290-303. PubMed

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