救急外来などで脳のMRIのDWIを見ていると、つい高信号に目が行きがちですが、周りより低信号に見える場所に気づいたことはありますか?

周囲脳実質よりも相対的に低信号になる生理的な部位がいくつか知られています。

今回は脳MRIのDWIで「周りより低信号(黒く)」見えるのはどんな場所かについてまとめました。

DWIで黒く見えやすい代表的な場所

1)深部灰白質(生理的な鉄が多い)

  • 淡蒼球(globus pallidus):最も典型。左右対称に黒いことが多い
  • 被殻(putamen)
  • 尾状核(caudate nucleus)
  • 視床の一部(条件により目立つ)

これらは非ヘム鉄(フェリチンなど)が相対的に多く、加齢や個体差で低信号が強くなり得る。
鉄は磁化率効果でT2*/SWIでより強く低信号化し、結果としてDWI(T2成分を含む)でも低信号に見えやすい。

DWIでも低信号に見えることはあるが、鉄を最も低信号として捉えるのはSWIやT2*WIであることに注意。

関連:脳の生理的鉄沈着は?MRI画像のSWIやT2*WIでどのように見える?

症例 70歳代男性

淡蒼球は明瞭に周囲よりも低信号となっています。

被殻、尾状核はわずかに低信号となっています。

2)脳幹の核(鉄・メラニン・局所磁化率で黒く見えやすい)

  • 黒質(substantia nigra)
  • 赤核(red nucleus)
  • 青斑核(locus coeruleus)(小さいので撮像条件依存)

やや尾側では淡蒼球に加えて、黒質・赤核の低信号が見えます。

中脳レベルでは赤核の低信号が見えます。

3)小脳歯状核(dentate nucleus)

  • 歯状核:鉄・石灰化・一部薬剤/沈着など多要因で低信号になり得る。

小脳レベルでは歯状核の低信号が見えます。

4)強い白質束(構造が緻密で相対的に黒く見える)

  • 内包後脚(corticospinal tract)
  • 脳梁(特に膝・膨大部など)

白質束は髄鞘が密でT2が短めになりやすく、周囲との対比でDWIでも相対的に暗く見えることがある。
これは多くの場合「正常のコントラスト」に近い。

なぜDWIで低信号になるのか?2つの理由。

T2 black-out(T2 blackout):もともとT2WI/T2*WIが短い=DWIも黒くなる

DWIの信号は拡散だけでなくT2成分の影響を受ける。
そのため、鉄沈着・血腫・石灰化などでT2/T2*が強く短縮すると、
DWIが黒くなって拡散情報が“見えにくく/壊れやすく”なる(=T2 black-out)ことがある。

磁化率(susceptibility)由来:鉄・血液・石灰化で黒く見える

鉄(非ヘム鉄)、血液分解産物(デオキシHb、メトHb、ヘモジデリンなど)、石灰化は
局所磁場の不均一を作り、特にT2*SWIで低信号化しやすい。
この低信号がDWIにも持ち込まれて「黒さ」として見えることがある。

正常か異常か迷ったときの見分け方

チェック1:左右対称か、解剖に沿うか

  • 左右対称で、淡蒼球・被殻・黒質・歯状核など核の形に沿う → 生理的/慢性的要因が第一候補
  • 左右差が強い、形が崩れる、周囲に浮腫(T2高信号)を伴う → 病的要因も検討する

チェック2:ADCを必ず同時に見る

  • 真の拡散低下:DWI高信号+ADC低下
  • T2 black-out:DWI低信号になり、ADC評価も歪む/頼りないことがある(まずT2/T2*やSWIで説明できるか確認する)

チェック3:SWI(またはT2*)で“磁化率由来の黒さ”が増強するか

  • 鉄/血液/一部の沈着はSWIでより黒い(=磁化率で説明しやすい)
  • 石灰化はMRIだけでは紛らわしいことがあり、必要ならCTで確認する。

関連記事:DWIで高信号だから異常としないように注意が必要→脳MRIで中脳被蓋(上小脳脚交叉)に左右対称なDWI高信号は異常所見?

    参考文献

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    6. Silvera S, et al. T2-shine-through and T2-blackout effects. AJNR. 2005;26:236-240.
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