胸部レントゲンや胸部CTで「葉間胸水あり」と記載されることがありますが、どういう状態なのでしょうか。
単なる胸水ではなく、葉間ですので肺葉の間に存在する胸水を葉間胸水といいます。
また、この葉間胸水はvanishing tumor(つまり、消失する腫瘤)と呼ばれることがあり、腫瘤と間違えないように注意が必要です。
今回はそんな葉間胸水(読み方は、ようかんきょうすい)の画像所見についてまとめました。
先に結論:葉間胸水(ようかんきょうすい)とは
- 肺の葉と葉のあいだのすき間(葉間裂=左右の大葉間裂と右の小葉間裂)にたまった胸水です。心不全で見られることが多いです
- 胸部レントゲンでは丸いかたまり(腫瘤)のように見えることがあり、心不全の治療で胸水が減ると消えるため「vanishing tumor(消える腫瘍)」と呼ばれます。肺がんなどとまちがえないことが大切です
- CTでは、葉間裂に沿ったレンズ状(紡錘形)の水と同じ濃度の影として見え、葉間裂の位置と一致することで診断できます。小葉間隔壁の肥厚など肺水腫の所見を伴うこともあります
胸水全体については胸水とは?原因と漏出性・滲出性の違いをどうぞ。
葉間胸水とは?
- 肺葉間裂(左右の大葉間裂および右の小葉間裂)に限局して貯留する胸水を葉間胸水と言います。

※肺葉、葉間裂って何だったっけという方はこちら→肺葉及び肺区域の解剖は?胸部CTやレントゲン読影の基礎!
ところで葉間である肺葉間裂は胸部CTでどう見える?
葉間胸水のCT画像を見る前にそもそも肺葉間裂はCTでどのように見えるのでしょうか?
大葉間裂は左右とも上のシェーマのように肺野を上から下に後ろから斜め前方向に走行しますので下の画像のように観察することができます。小葉間裂は向かって右の画像のように、しばしば横断像のスライスと平行に観察することができます。

葉間胸水のCT画像所見
- 裂状に沿うレンズ状濃度上昇:上中葉間裂や上下葉間裂に沿って、レンズのように凸状に拡がる濃度上昇がみられる。葉間裂に一致して存在することが特徴。これにより葉間胸水と診断されます。
- CT値による水濃度の確認:縦隔条件では水に近い低いCT値の均一な濃度(低吸収域)として描出される。胸水145例の検討では平均CT値は漏出性12.5 HU・滲出性17.1 HUで、66%が10〜20 HUの範囲に重なっており、CT値だけで胸水の性状は決められない(Nandalur 2005)。
症例 70歳代女性 心不全

左右の大葉間裂に沿って水濃度の陰影を認め、葉間胸水であることが分かります。

さらに尾側のスライスでは右の小葉間裂に沿っても認めており、全部(左右大葉間裂および右小葉間裂)の葉間胸水を認めていることが分かります。
葉間裂に沿って分布している様子は連続画像で見ていただくのが一番理解しやすいと思います。

上の画像では葉間胸水の他に、小葉間隔壁の肥厚など広義リンパ路の浮腫を認め、肺水腫を示唆する所見を認めています。
肺水腫の画像所見のポイントはこちら→肺水腫のCT画像診断、原因(心原性、左心不全)は?
また、ちなみに葉間胸水は胸部レントゲンでも確認することができることがあります。
葉間胸水のレントゲン所見
- 胸部単純写真では葉間胸水は肺葉間裂に沿った限局性の薄いレンズ状あるいは二重凸状の陰影として描出される。正面像では水平裂付近に半月状~楕円状の陰影を呈し、辺縁が比較的くっきり見えることが多い。そのため腫瘤と紛らわしいことがある。
- 胸部単純写真(正面像)で最も視認性が高いのは右肺の水平裂(つまり小葉間裂)である。右肺の中ほどを水平に走行し、薄いレンズ状の陰影として描出されやすい。一方、左右の斜裂(大葉間裂)は正面像では不明瞭になりがちで、側面像で確認することが望ましい。

今回の症例でも、胸部レントゲン(胸部単純X線)では小葉間裂の肥厚や液貯留を観察することができ、レンズ状の陰影として描出されています。(※この症例はあまりレンズ状ではないですが)。これは右側のCT冠状断像と対応していることが分かります。
vanishing tumor(消失する腫瘤)とは?
胸部レントゲンでこのような所見を認めたときに、「あたかも腫瘤がある!」ようにも見えますが、加療により胸水が消えればこの陰影も消えることから、葉間胸水による腫瘤状の陰影は安易に腫瘍としないように「vanishing tumor(消失する腫瘤)」と呼ばれます。
同義語として pseudotumor(偽腫瘤)や phantom tumor とも呼ばれます。治療によって葉間の胸水が速やかに減少し、レントゲン像上の“腫瘤”が消える点が名前の由来です。
あわせて読みたい:胸水を画像で見たときに考えるべき鑑別診断は?
参考文献・出典
- Feder BH, Wilk SP. Localized interlobar effusion in heart failure; phantom lung tumor. Dis Chest. 1956;30(3):289-97. PubMed
- Millard CE. Vanishing of phantom tumor of the lung; localized interlobar effusion in congestive heart failure. Chest. 1971;59(6):675-7. PubMed
- Raasch BN, Carsky EW, Lane EJ, et al. Pleural effusion: explanation of some typical appearances. AJR Am J Roentgenol. 1982;139(5):899-904. PubMed
- Nandalur KR, Hardie AH, Bollampally SR, et al. Accuracy of computed tomography attenuation values in the characterization of pleural fluid: an ROC study. Acad Radiol. 2005;12(8):987-91. PubMed
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