腹部CTで副腎の石灰化を認めた場合、その背景にはさまざまな疾患が存在します。
副腎石灰化の主な鑑別診断と、それぞれの画像所見・臨床背景についてまとめました。
副腎石灰化の主な鑑別疾患
- 副腎結核
- 副腎出血後の石灰化
- 神経芽腫(特に小児)
- 真菌感染(ヒストプラズマなど)
- 副腎皮質癌・褐色細胞腫
- 副腎嚢胞(石灰化した壁)
- 転移性腫瘍
各疾患の画像所見と臨床背景
1. 副腎結核
両側の副腎に不整で粗大な石灰化を認めることが特徴です。副腎自体は萎縮傾向を示し、副腎皮質機能低下症(Addison病)を伴うこともあります。肺結核やリンパ節石灰化を伴うことも。
参考文献: Lam KY, Lo CY. “A critical examination of adrenal tuberculosis and a 28-year autopsy experience of active tuberculosis.” Clin Endocrinol (Oxf). 2001.
2. 副腎出血後の石灰化
出血後の陳旧性変化として石灰化が生じます。片側性の副腎に境界明瞭な石灰化を認め、時に嚢胞状変化を伴います。敗血症、抗凝固療法、新生児期のストレスなどが原因となります。
参考文献: Rao PM, Rhea JT. “CT diagnosis of adrenal hemorrhage.” Radiographics. 1999.
3. 神経芽腫(小児)
副腎部に不整な腫瘤を形成し、内部にびまん性の細かな石灰化を認めます。腫瘤は隣接血管を巻き込むように浸潤し、境界不明瞭なことが多いです。VMA、HVAの上昇が診断の手がかりになります。
参考文献: Lonergan GJ, Schwab CM, et al. “Neuroblastoma, ganglioneuroblastoma, and ganglioneuroma: radiologic-pathologic correlation.” Radiographics. 2002.
4. 真菌感染症(ヒストプラズマ、コクシジオイデスなど)
両側副腎にびまん性または斑状の石灰化を認めることが多いです。免疫不全患者での発症が多く、肺や肝臓、脾臓への播種を伴うこともあります。
参考文献: Wheat LJ, et al. “Clinical practice guidelines for the management of patients with histoplasmosis.” Clin Infect Dis. 2007.
5. 副腎皮質癌・褐色細胞腫
石灰化は比較的まれですが、大型腫瘍で壊死や出血を伴う場合に不整な石灰化を認めることがあります。造影CTでの不均一な濃染や血管構造の変位が特徴です。
6. 副腎嚢胞
壁が石灰化した嚢胞として認められます。境界明瞭な低吸収域+壁面に輪状石灰化があれば、副腎嚢胞を疑います。無症状で偶発的に発見されることが多いです。
7. 転移性腫瘍
副腎に腫瘤性病変を形成し、まれに石灰化を伴います。石灰化は原発巣(例:甲状腺乳頭癌、卵巣癌など)に由来することが多く、経過や臨床情報との総合評価が必要です。
診断のポイント
- 両側 or 片側か:両側なら感染・内因性疾患を疑う
- 石灰化の形状:粗大か細小か、びまん性か限局性か
- 腫瘤形成の有無:腫瘤+石灰化なら腫瘍性疾患を考慮
- 臨床背景:結核既往、小児、免疫不全、出血素因など
まとめ
副腎石灰化は、感染、出血、腫瘍など多様な原因で生じます。CT画像所見と臨床背景を丁寧に突き合わせることで、適切な鑑別と追加検査の判断が可能となります。
特に副腎結核や神経芽腫など、見逃しやすい疾患を意識しておくことが画像診断の質を高めます。
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