先に結論:エルドハイム・チェスター病(Erdheim-Chester病)とは

  • 泡沫状の組織球(Touton型巨細胞を伴う)が全身のさまざまな臓器に入り込む、まれな組織球症(2016年改訂分類ではLCHと同じL群)です。中年の男性に多く、BRAF V600EをはじめとするMAPK経路の遺伝子変異が見つかることから、腫瘍性の病気と考えられています
  • 症状は足の骨の痛みが多く、尿崩症(下垂体)・眼球突出・腎障害・心不全などさまざまで、ゆっくり進みます
  • 特徴的な画像は、両足の長管骨の左右対称な骨硬化、腎臓のまわりを毛が生えたように覆う影(hairy kidney)、大動脈の周りを全周性に包む軟部影(coated aorta)、右心房の偽腫瘍など。生検で診断します
  • 余命(予後)は、中枢神経の病変があると悪くなります(Arnaud 2011)。BRAF阻害薬などの分子標的治療で、見通しは以前より改善しています

Erdheim-Chester病(Erdheim-Chester disease:ECD)

  • 従来は非ランゲルハンス細胞組織球症(non-Langerhans form of histiocytosis)とされてきたが、2016年の組織球症改訂分類ではLCHとともにL群(Langerhans-related)に分類される。組織球症の一つで泡沫状の組織球(Touton型巨細胞を伴う)浸潤が特徴。
  • まれな疾患である。MAPK経路(最も多いのはBRAF V600E)の遺伝子変異が見つかり、現在は炎症性疾患ではなく腫瘍性疾患と位置づけられている。
  • 中年男性に多い。
  • 骨、下垂体、肺、大動脈、後腹膜など多くの臓器に病変を認める。
  • 骨痛(下肢痛)を認めることが多い。
  • 他、肝脾腫、尿崩症、心不全、肺線維症、汎血球減少。
  • 一般に緩徐進行する。

Touton型巨細胞と病理診断

  • Touton型巨細胞は、脂質を取り込んだ多核巨細胞で、核が花輪状に並びます。黄色腫などでもみられ、ECDに特有ではありません。
  • ECDの組織球は一般にCD68陽性・CD1a陰性で、CD1a陽性のLCHと区別します。BRAF V600E変異はECDの54%(13/24)、LCHの38%に見つかり、ほかの組織球症には見つかりませんでした(Haroche 2012)。

Erdheim-Chester病の画像所見

  • 長管骨の骨幹〜骨幹端の左右対称な硬化影(骨端は通常保たれる)、hairy kidney(腎周囲脂肪織の浸潤影)、coated aorta(大動脈周囲の広汎な軟部影)、右房偽腫瘍を認めることがある。四肢病変の系統的レビュー(組織確定20例)では、下肢病変は全例にみられ、左右対称性は約84%、所見は純粋な骨硬化(53%)と皮質肥厚(43%)が多く、骨端が保たれる例は半数を超えていました。下肢長管骨の骨幹〜骨幹端の対称性骨硬化をみたらECDを想起することが大切です。
  • 脳では、脳実質外病変:単発/多発の髄膜腫瘤、腫瘤中心から放射状に伸びる帯状信号変化”stellate appearance”が特徴的。
  • 視床下部・下垂体病変:LCHと同様の所見。
  • 副鼻腔など顔面の骨硬化性病変や眼窩腫瘤。

症例 40歳代男性

引用:Radiopaedia

レントゲンで下肢にびまん性のほぼ対称的な骨硬化症を認めています。

また腹部CTで主要血管の周囲を含む広範な後腹膜の軟部影を認めています。

後腹膜の生検により、Erdheim-Chester病と診断されました。

治療と余命(予後)

余命は病変の広がりで大きく変わり、一律の数字では言えません。

  • 症状が軽く一つの臓器に限られる一部の例を除き、多くは治療が必要とされます(Goyal 2020)。
  • 生検で確かめた53例の検討では、中枢神経病変は死亡の独立した危険因子(ハザード比2.51)で、インターフェロンα治療は生存の改善と関連していました(Arnaud 2011)。
  • BRAF V600変異のあるECD・LCH 26例にベムラフェニブを使った試験では、ECDの奏効率は54.5%、全体の2年生存率は96%でした(Diamond 2018)。

骨の痛みや多尿・のどの渇きなど気になる症状が続くときは、医療機関を受診してください。

あわせて読みたい:びまん性の骨病変を見たときの鑑別疾患

参考文献:

  1. 新 骨軟部画像診断の勘ドコロ P304ー305
  2. 頭部画像診断の勘ドコロ P217ー221
  3. 画像診断に絶対強くなるワンポイントレッスン3 P46
  4. Goyal G, Heaney ML, Collin M, et al. Erdheim-Chester disease: consensus recommendations for evaluation, diagnosis, and treatment in the molecular era. Blood. 2020;135(22):1929-1945. PubMed
  5. Emile JF, Abla O, Fraitag S, et al. Revised classification of histiocytoses and neoplasms of the macrophage-dendritic cell lineages. Blood. 2016;127(22):2672-81. PubMed
  6. Haroche J, Charlotte F, Arnaud L, et al. High prevalence of BRAF V600E mutations in Erdheim-Chester disease but not in other non-Langerhans cell histiocytoses. Blood. 2012;120(13):2700-3. PubMed
  7. Arnaud L, Hervier B, Néel A, et al. CNS involvement and treatment with interferon-α are independent prognostic factors in Erdheim-Chester disease: a multicenter survival analysis of 53 patients. Blood. 2011;117(10):2778-82. PubMed
  8. Diamond EL, Subbiah V, Lockhart AC, et al. Vemurafenib for BRAF V600-Mutant Erdheim-Chester Disease and Langerhans Cell Histiocytosis: Analysis of Data From the Histology-Independent, Phase 2, Open-label VE-BASKET Study. JAMA Oncol. 2018;4(3):384-388. PubMed
  9. Azhideh A, Pouramini A, Haseli S, et al. Radiological assessment of extremity bone involvement in Erdheim-Chester disease: a systematic review of case reports. Skeletal Radiol. 2025;54(7):1441-1455. PubMed
  10. Aswani Y, Patel A, Zhan X, et al. Imaging in Erdheim-Chester Disease. Radiographics. 2024;44(9):e240011. PubMed

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