脊椎手術に用いられるハードウェアの名称
- ケージ(スペーサー、グラフトとも呼ばれることがある):内部に自家骨や人工骨などを充填させ、その領域を骨癒合させる目的で留置する。
- ロッド
- スクリュー
脊椎手術術後の画像評価
- 固定具が使用されている場合は定期的な経過観察がなされる。
- 新たな疼痛や神経症状などが出現した場合には原因精査のための画像検査が行われる。
各画像検査のメリット
- レントゲン:最も簡便にハードウェアの位置を確認できる。
- CT:ハードウェアの状態だけでなく、骨癒合を見るうえでも最も有用な検査。
- MRI:コントラスト分解能が高いので、血腫や感染などの診断能が高い。
脊椎術後の生理的変化(術後変化)
- 正常の早期術後画像所見:術部の浮腫性変化、液体貯留、ガス像など。液貯留は被膜を伴う漿液腫(seroma)を形成することがあるが、経時的に消失し、無症候性であることが多い。。
- 椎体間や椎間関節の癒合を目的とした手術では、それらの部位の骨癒合がゴールとなる。PLIFなどの椎間板腔にケージを挿入する手術では、上下椎体を癒合させることが重要である。
- 骨癒合の評価はCTが最も優れ、一般的には術後6ヶ月ごろから骨梁による椎体間架橋が確認される。ケージ周囲から骨癒合が得られるため、ケージの周囲をよく観察する。
- およそ1年で上下終板を架橋する成熟した骨癒合が完了する。
脊椎術後の合併症
- ハードウェアの位置異常(スクリュー、ケージなど)
- ハードウェアの破損、弛み
- 髄液漏
- 血腫形成
- 感染/膿瘍形成
- 骨癒合遅延/偽関節
- 隣接椎体の退行性変化
- 椎間板ヘルニア再発
などがある。
ハードウェアの位置異常
- スクリューは両側椎弓に挿入されていることが多く、椎弓に平行に挿入される椎体内の外側に位置していることが理想とされる。
- 椎弓からはずれていたり、脊柱管や椎間孔にかかる走行や、スクリュー先端が椎体腹側の骨皮質を越えている場合は異常。
- ケージは椎間板腔の辺縁に留置されると椎間板腔から逸脱する場合がある。
- 特に背側は脊柱管や椎間孔があるため、椎体後方の皮質骨から2mm上腹側に留置されることが推奨されている。
ハードウェアの破損、弛み
- 金属のハードウェアは、折損することがある。
- スクリューの弛み(loosening)はスクリュー周囲に2mm以上の骨透亮像が存在する場合に有意とされ、放置するとスクリューの抜け(back out)、破損、骨折、偽関節化といった再建術が必要となる可能性がある。
骨癒合遅延/偽関節
- 骨癒合が得られない場合は不安定性が残り、術後1年を経過して骨癒合が得られないものは偽関節と考えられる。無症候性の場合もあるが、今後、疼痛や神経圧排、ハードウェア損傷の原因となり、再手術に至る可能性がある。
- 骨癒合が得られない原因は糖尿病・肥満・喫煙なども関与していると考えられている。
- 偽関節を示唆するCT所見としては、椎体間の骨梁構造がないこと、椎体とケージの間に骨癒合がないこと、ケージの落ち込み(subsidence)、終板の嚢胞形成、椎間板腔のvacuum phenomenonなど。
- ケージの尾側椎体への落ち込みはsubsidenceとよばれ、2~3mm程度尾側椎体内に落ち込んだものを呼ぶことが多い。癒合不全の副所見であると同時に、椎間孔狭窄の原因にもなりうるため、椎間孔の状態も評価する。
隣接椎体の退行性変化
- 手術した上下の隣接椎体の退行性変化が加速する現象が知られており、adjacent segment disease(ASD)などとよばれる。
- 一般的には直上で生じやすい。
- 腰仙椎レベルの固定で頻度が高い。
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参考文献:
- 臨床画像 Vol.38 No.7 増刊号2022 P88-96