先に結論:脊椎手術後の画像で見るポイント
- 使われる金属(インプラント):椎弓根スクリュー(背骨に打ち込むねじ)、ロッド(ねじどうしをつなぐ棒)、ケージ(椎間板の代わりに入れ、中に骨を詰める箱)
- 検査の使い分け:レントゲン=位置の確認・経過観察、CT=骨癒合と金属の位置・ゆるみの評価に最適、MRI=血腫・感染・神経の圧迫の評価
- 正常の経過:術後早期は浮腫・液体のたまり・空気が見えても多くは正常です。骨の癒合は時間をかけて進み、術後1年前後のCTで評価するのが目安です(Peng 2026)
- 注意すべき合併症:スクリューの位置異常(脊柱管・椎間孔へのはみ出し)、金属の折損・ゆるみ(スクリュー周囲の透亮像)、血腫、感染・膿瘍、髄液漏、骨がつかない(偽関節)、隣接椎間の障害など
※手術後に新しい痛み・しびれ・発熱が出たときは、手術を受けた病院に相談してください。
脊椎手術に用いられるハードウェアの名称

- ケージ(スペーサー、グラフトとも呼ばれることがある):内部に自家骨や人工骨などを充填させ、その領域を骨癒合させる目的で留置する。
- ロッド
- スクリュー
PLIF・TLIF・OLIF・XLIF(LLIF)・ALIFの違い
椎間板の部分にケージを入れて上下の椎体を骨でつなぐ手術(椎体間固定術)は、どの方向から椎間板に到達するかで名前が変わります。術後の画像では、ケージの数・大きさ・向きや、骨を削った場所が術式によって異なります(Mobbs 2015)。
| 術式 | 到達する方向 | 術後画像の特徴(目安) |
|---|---|---|
| PLIF(後方椎体間固定術) | 背中側の正中から、両側 | 椎弓の切除跡、左右に並ぶケージ |
| TLIF(経椎間孔椎体間固定術) | 背中側から片側の椎間孔を通って | 片側の椎間関節の切除跡、斜め〜横向きに入ったケージ |
| OLIF(斜位側方椎体間固定術) | 脇腹から斜めに、大腰筋の前を通って | 椎間板の幅いっぱいに横向きに入った大きなケージ |
| XLIF/LLIF(側方椎体間固定術) | 脇腹から真横に、大腰筋を通って | OLIFと同様の大きなケージ |
| ALIF(前方椎体間固定術) | お腹側から | 椎体前方からの大きなケージ |
多くは椎弓根スクリューとロッドによる後方固定を組み合わせます。PLIFとTLIFの違いは、両側から入るか、片側の椎間孔から入るかと覚えると整理しやすいです。後方からの到達は硬膜管・神経根の操作を伴い、前方は腹部・血管、側方・斜位は腰神経叢・大腰筋への影響が注意点とされます(Mobbs 2015)。
脊椎手術術後の画像評価
- 固定具が使用されている場合は定期的な経過観察がなされる。
- 新たな疼痛や神経症状などが出現した場合には原因精査のための画像検査が行われる。
各画像検査のメリット
- レントゲン:最も簡便にハードウェアの位置を確認できる。
- CT:ハードウェアの状態だけでなく、骨癒合を見るうえでも最も有用な検査。
- MRI:コントラスト分解能が高いので、血腫や感染などの診断能が高い。Hayashiらの総説でも、定期的な経過観察の基本はレントゲン、インプラントの最適な評価はMDCTが標準であり、感染や軟部組織病変の診断ではMRIが中心的な役割を担うとされている。
脊椎術後の生理的変化(術後変化)
- 正常の早期術後画像所見:術部の浮腫性変化、液体貯留、ガス像など。液貯留は被膜を伴う漿液腫(seroma)を形成することがあるが、経時的に消失し、無症候性であることが多い。
- 椎体間や椎間関節の癒合を目的とした手術では、それらの部位の骨癒合がゴールとなる。PLIFなどの椎間板腔にケージを挿入する手術では、上下椎体を癒合させることが重要である。
- 骨癒合の評価はCTが最も優れ、経過とともに骨梁による椎体間架橋が確認されるようになる。ケージ周囲から骨癒合が得られるため、ケージの周囲をよく観察する。
- 椎体間固定のCT評価をまとめた総説では、術後12か月の評価でうまくいく骨癒合の大部分をとらえられるが、15〜16%は癒合の進みが遅く、さらに経過を見る必要があるとされる(Peng 2026)。
脊椎術後の合併症
- ハードウェアの位置異常(スクリュー、ケージなど)
- ハードウェアの破損、弛み
- 髄液漏
- 血腫形成
- 感染/膿瘍形成
- 骨癒合遅延/偽関節
- 隣接椎体の退行性変化
- 椎間板ヘルニア再発
などがある。
ハードウェアの位置異常

- スクリュー(椎弓根スクリュー)は両側の椎弓根に挿入されていることが多く、椎弓根の中を通って椎体内に収まっていることが理想とされる。
- 椎弓根からはずれていたり、脊柱管や椎間孔にかかる走行や、スクリュー先端が椎体腹側の骨皮質を越えている場合は異常。
- ケージは椎間板腔の辺縁に留置されると椎間板腔から逸脱する場合がある。
- 特に背側は脊柱管や椎間孔があるため、ケージが椎体後縁を越えて背側に出ていないかを確認する。
ハードウェアの破損、弛み

- 金属のハードウェアは、折損することがある。
- スクリューの弛み(loosening)はスクリュー周囲の骨透亮像(骨が溶けて黒く抜けた縁取り)として見え、放置するとスクリューの抜け(back out)、破損、骨折、偽関節化といった再建術が必要となる可能性がある。
- 再手術で実際にゆるみを確かめた41例・159本のスクリューの検討では、ゆるみの検出の感度・特異度はCTで64.8%・96.7%、レントゲンで54.2%・83.5%、金属アーチファクト低減MRIで43.9%・92.1%で、CTが第一選択だが、CTでも見逃しがある(Spirig 2019)。
骨癒合遅延/偽関節

- 骨癒合が得られない場合は不安定性が残り、術後1年ごろの時点で骨癒合が得られないものは偽関節を疑う(ただし一部は癒合が遅れて進む)。無症候性の場合もあるが、今後、疼痛や神経圧排、ハードウェア損傷の原因となり、再手術に至る可能性がある。
- 骨癒合が得られない原因は糖尿病・肥満・喫煙なども関与していると考えられている。
- 偽関節を示唆するCT所見としては、椎体間の骨梁構造がないこと、椎体とケージの間に骨癒合がないこと、ケージの落ち込み(subsidence)、終板の嚢胞形成、椎間板腔のvacuum phenomenonなど。
- ケージの椎体内への落ち込みはsubsidenceとよばれる。癒合不全の副所見であると同時に、椎間孔狭窄の原因にもなりうるため、椎間孔の状態も評価する。
隣接椎体の退行性変化
- 手術した上下の隣接椎体の退行性変化が加速する現象が知られており、adjacent segment disease(ASD)などとよばれる。
- 15研究・6,253例のメタ解析では、高齢と肥満が危険因子で、椎体間固定は隣接椎間障害を起こしにくくする方向に働いていた(Cannizzaro 2023)。
脊椎術後の画像でよくある疑問(Q&A)
Q. 骨がついたかどうかは、いつ・何でわかりますか?
A. 骨癒合の評価はCTが基本で、術後12か月ごろの評価で多くの癒合が確認できますが、癒合が遅れて進む例もあります(Peng 2026)。ケージの中と周りで、上下の椎体が骨でつながっているかを見ます。
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参考文献:
- 臨床画像 Vol.38 No.7 増刊号2022 P88-96
- Young PM, Berquist TH, Bancroft LW, et al. Complications of spinal instrumentation. Radiographics. 2007;27(3):775-789. PubMed
- Hayashi D, Roemer FW, Mian A, et al. Imaging features of postoperative complications after spinal surgery and instrumentation. AJR Am J Roentgenol. 2012;199(1):W123-W129. PubMed
- Mobbs RJ, Phan K, Malham G, et al. Lumbar interbody fusion: techniques, indications and comparison of interbody fusion options including PLIF, TLIF, MI-TLIF, OLIF/ATP, LLIF and ALIF. J Spine Surg. 2015;1(1):2-18. PubMed
- Peng SH, Pao JL. CT Evaluation of Lumbar Interbody Fusion: A Comprehensive Review with an Integrated Framework for Principle-Based Interpretation. Diagnostics (Basel). 2026;16(1):140. PubMed
- Spirig JM, Sutter R, Götschi T, et al. Value of standard radiographs, computed tomography, and magnetic resonance imaging of the lumbar spine in detection of intraoperatively confirmed pedicle screw loosening-a prospective clinical trial. Spine J. 2019;19(3):461-468. PubMed
- Cannizzaro D, Anania CD, Safa A, et al. Lumbar adjacent segment degeneration after spinal fusion surgery: a systematic review and meta-analysis. J Neurosurg Sci. 2023;67(6):740-749. PubMed
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