遊走胆嚢(移動性胆嚢)(wandering gallbladder)
- 胆嚢の肝臓側は肝臓の線維性被膜の結合組織により肝臓に固定されているのが正常。
- この固定されている範囲が短い場合を遊走胆嚢(移動性胆嚢)と言う。
- 遊走胆嚢(移動性胆嚢)は固定範囲が狭いために胆嚢捻転症を起こすことがある。
遊走胆嚢(移動性胆嚢)の分類(Gross)
Grossは
- Ⅰ型:胆嚢が肝と離れて間膜(胆嚢間膜)により固定されているもの
- Ⅱ型:胆嚢管のみがわずかに固定されているもの
の2つに分類した。
Ⅰ型では180度以下の不完全な捻転が多く、Ⅱ型では180度以上捻転する完全型の捻転が多い。
症例 20歳代女性 スクリーニング
胆嚢の肝臓側は肝臓の線維性被膜の結合組織により肝臓に固定されているのが正常。
症例 80歳代女性 スクリーニング
この症例では、胆嚢の先端部(底部〜体部)が右腎の腹側に存在しており、肝臓への固定が不良であることがわかります。
冠状断像でもその様子を確認することができます。
このような胆嚢が肝臓の固定が悪い遊走胆嚢です。
Gross分類のⅡ型と診断できます。
胆嚢捻転症(gallbladder torsion)
- 胆嚢捻転症は遊走胆嚢を認める人に、亀背、側弯、痩せ、腹部打撲などの後天的要因にて起こることがある。
- 急激な右季肋部痛、嘔気嘔吐などで発症する。
- 黄疸を来すことは稀。
- 好発年齢は70歳以上、男女比は1:3で女性に多い。高齢の痩せた女性に多い。
- 右季肋部に腫瘤として触知できることもある。
胆嚢捻転症の画像所見
- 胆嚢が胆嚢床と遊離、偏位
- 胆嚢の壁肥厚・腫大
- 胆嚢頚部に腫瘤状陰影、捻れを示唆する渦巻状の形態(whirl sign)
- 完全型では胆嚢の造影不良
- 不完全型では静脈系の閉塞、動脈系は開存し、うっ血所見
- 単純CTで胆嚢粘膜に高吸収を認めることがあり、微小出血を示唆すると考えられている。
参考文献:
- 腹部画像解剖 徹頭徹尾 P52
- 肝胆膵の画像診断 改訂第2版 P516-7
- 消化器 画像診断の勘ドコロNEO P167-8