先に結論:ILA(間質性肺異常)とは

  • ILAは、間質性肺炎を疑っていない人のCT(健診・他の病気の検査)で偶然見つかる軽い間質性の変化で、肺のどこかの領域の5%以上にすりガラス影・網状影などがあるものを指します(2020年Fleischner Societyの定義)
  • 胸膜直下優位で、牽引性気管支拡張や蜂巣肺などの線維化所見を伴う(subpleural fibrotic ILA)ものは、間質性肺炎へ進行しやすく、予後とも関係します
  • ILAがあると抗がん剤・免疫チェックポイント阻害薬による肺障害や、手術後の急性増悪のリスクが高まるため、報告書に記載し、呼吸機能検査や経過観察を検討します
  • ILD(間質性肺疾患)との違い:息切れ・咳などの症状、呼吸機能の低下、広い範囲の線維化、画像での進行のいずれかがあれば、ILAではなくILDとして扱います(2025年ATS臨床声明)
  • 経過:ILAの約半数は数年で画像上進行し、追跡期間が長いほど進行の割合が高く、線維化を伴うILAほど進行しやすいため、CTでの定期的な追跡と症状・呼吸機能の確認を組み合わせます

ILAとは?

  • ILA(interstitial lung abnormalities:間質性肺異常)はCTで偶然認められた軽微な間質性病変(肺間質の異常)。
  • 荷重部陰影ではない異常影で、すりガラス影、網状影、肺のひずみ(構造偏位)、牽引性気管支拡張、蜂巣肺を含む。
  • 左右上中下肺野の6つのうち、いずれかの領域の5%以上の面積を占めるものと定義される。
  • 胸膜直下優位の分布で線維化の確証(牽引性気管支拡張や蜂巣肺)があると間質性病変が進行しやすいと言われている。
  • 頻度は喫煙者で4-9%、非喫煙者では2-7%とされる。
  • 間質性肺炎が疑われていない個人が対象。2020年のFleischner Societyの定義では、例えば元々膠原病などがあって認めた場合にはILAという用語は用いないとされていた。ただし2025年の米国胸部学会(ATS)臨床声明では、この高リスク集団を除外する規定が外された(Podolanczuk 2025)。
  • ILAがあると抗癌剤や免疫チェックポイント阻害薬による薬剤性肺炎や手術侵襲による急性増悪のリスクが上がる。

ILAとILD(間質性肺疾患)の違い

ILAは「CTの所見」を表す言葉で、ILDは「病気」として扱う状態です。2025年ATS臨床声明では、次のいずれかがあればILAではなくILDと考えるとしています(Podolanczuk 2025)。

ILA(間質性肺異常) ILD(間質性肺疾患)
症状 間質の病変による症状はない 間質の病変による息切れ・咳がある
呼吸機能 保たれている 異常、または低下していく
CT所見 肺のいずれかの領域の5%以上の両側性の異常影 蜂巣肺や牽引性気管支拡張を伴う網状影が全肺の5%以上、画像の進行、または特定の線維化パターン

ILAの3つのsubtype

ILAのsubtypeは、実用上以下の3つに整理できる。

分類 対応する表現 主なCT所見 臨床的意義
type 1 non-subpleural ILA 胸膜下に限らず、すりガラス影や網状影を示すもの 3分類の中では比較的進行リスクが低い
type 2 subpleural non-fibrotic ILA 胸膜下優位のすりガラス影、網状影を示すが、明らかな線維化所見を伴わないもの type 1より進行に注意が必要である
type 3 subpleural fibrotic ILA 胸膜下優位に牽引性気管支拡張、構造改変、蜂巣肺などの線維化所見を伴うもの 最も進行リスク・予後不良との関連が強い

type 1:non-subpleural ILA

type 1は、胸膜下優位とは限らないすりガラス影や網状影を示すタイプである。
Fleischner Societyの分類では、non-subpleural ILAに相当する。

CTでは、すりガラス影や軽度の網状影がみられるが、胸膜直下優位の分布が明らかでない。
また、牽引性気管支拡張や蜂巣肺などの明らかな線維化所見を伴わないことが多い。

このタイプは、3つのsubtypeの中では比較的進行リスクが低いと考えられる。Fleischner Societyの声明でも、non-subpleural ILAは通常進行せず、死亡率の上昇とも関連しないとされる(Hatabu 2020)。
ただし、喫煙歴、年齢、家族歴、自己免疫疾患、粉じん曝露歴などの背景因子がある場合には、経過観察の必要性を検討する。

type 2:subpleural non-fibrotic ILA

type 2は、胸膜下優位にすりガラス影や網状影を認めるが、線維化所見を伴わないタイプである。
Fleischner Societyの分類では、subpleural non-fibrotic ILAに相当する。

CTでは、両側下肺野や背側胸膜下に軽度のすりガラス影、網状影を認める。
一方で、牽引性気管支拡張、明らかな肺構造改変、蜂巣肺は認めない。

type 2は、type 1よりも間質性肺疾患の初期像としての意味合いが強くなる。
特に下肺野優位、胸膜下優位、広範囲に分布する場合には、将来的に線維化を伴うtype 3へ進行する可能性を考慮する必要がある。

type 3:subpleural fibrotic ILA

type 3は、胸膜下優位に線維化所見を伴うILAである。
Fleischner Societyの分類では、subpleural fibrotic ILAに相当する。

CTで重要となる所見は以下である。

  • 胸膜下優位の網状影
  • 牽引性気管支拡張または牽引性細気管支拡張
  • 肺構造改変
  • 蜂巣肺
  • 下肺野優位の線維化性変化

このtype 3は、ILAの中でも最も注意すべきカテゴリーである。
線維化を伴うILAは、画像上の進行、呼吸機能低下、間質性肺疾患への移行、死亡リスクとの関連が報告されている。

特に、胸膜下優位で線維化所見を伴うILAは、胸膜下非線維化性ILAと比較して進行しやすい。
報告によって表現は異なるが、AGES-Reykjavik研究では明らかな線維化パターンを示すILAで画像上の進行のオッズ比が約8倍と最も高く、type 2よりも明らかに予後不良なsubtypeと考えられる。同研究では死亡リスクも画像パターンで異なり、UIP判定困難パターンと比べてprobable UIPパターンでハザード比1.7、UIPパターンで3.9と高くなった。

症例1 70歳代男性(subpleural non-fibrotic ILA)

間質性肺異常(ILA) 胸膜下非線維化型 CT
引用:Ledda RE et al. Insights Imaging 2022 (Figure 2)

両肺の上葉・下葉の胸膜下にすりガラス影と網状影がみられます(矢印)。牽引性気管支拡張や蜂巣肺などの線維化所見はなく、胸膜下非線維化型ILAに当たります。(出典:Ledda RE et al. Insights Imaging 2022 (Figure 2), CC BY 4.0)

症例2 80歳代男性(subpleural fibrotic ILA)

間質性肺異常(ILA) 胸膜下線維化型 CT
引用:Ledda RE et al. Insights Imaging 2022 (Figure 5)

胸膜下に牽引性気管支拡張(白丸)とわずかな嚢胞状の気腔(黒矢印)がみられ、胸膜下線維化型ILAに当たります。dでは右下葉に原発性肺癌を強く疑う腫瘤もみられました(白矢印)。(出典:Ledda RE et al. Insights Imaging 2022 (Figure 5), CC BY 4.0)

数字が大きいほど予後不良である

ILAのsubtypeは、type 1からtype 3に進むほど臨床的な重要性が高くなる。

  • type 1:胸膜下優位ではない、または分布が非典型的な軽度異常
  • type 2:胸膜下優位だが、線維化所見を伴わない異常
  • type 3:胸膜下優位で、牽引性気管支拡張や蜂巣肺などの線維化所見を伴う異常

つまり、数字が大きいほど線維化性間質性肺疾患に近い画像所見であり、進行や予後不良との関連が強くなる。
読影では、単に「ILAあり」と記載するだけでは不十分であり、可能であればsubtypeまで記載することが望ましい。

読影レポートでの記載例

type 1の記載例

両肺に軽度のすりガラス影、網状影を認める。胸膜下優位の分布は明らかではなく、non-subpleural ILA相当の所見である。

type 2の記載例

両側下肺野胸膜下優位に軽度のすりガラス影、網状影を認める。明らかな牽引性気管支拡張や蜂巣肺は認めず、subpleural non-fibrotic ILA相当の所見である。

type 3の記載例

両側下肺野胸膜下優位に網状影を認め、一部に牽引性気管支拡張を伴う。subpleural fibrotic ILA相当の所見であり、線維化性間質性肺疾患の初期像として経過観察を要する。

鑑別・除外すべき所見

ILAと判断する際には、以下のような所見を除外する必要がある。

  • 荷重部無気肺
  • 椎体の骨棘による限局性線維化
  • 喫煙に伴う小葉中心性結節影
  • 軽度の限局性あるいは片側性の異常影
  • 間質性肺水腫
  • 誤嚥による陰影
  • 無気肺
  • 感染性肺炎後の一過性変化
  • 明らかな既知の間質性肺疾患

    特に仰臥位CTでは背側肺に重力依存性濃度上昇がみられることがあり、これをILAと誤認しないよう注意する。
    必要に応じて腹臥位CTや薄切HRCTで確認する。

    ILAの経過と追跡:どのくらい進み、何を見ていくか

    ILAは見つかった時点では軽い変化でも、時間とともに広がることがあります。複数の研究をまとめた解析から、進行の頻度と、進みやすい人の特徴が見えてきています。

    研究 対象 主な結果
    メタ解析(Hwang 2025) 有病率19研究(241,541人)、進行10研究(1,317人) 有病率9.7%。画像上の進行は全体で47.1%、追跡4.5年以上の研究では64.2%、4.5年未満では31.0%。線維化を伴うILAは進行と関連(オッズ比5.55)
    個人データのメタ解析(Chae 2026) 14研究・31,739人 有病率5.6%で、55歳未満2.5%から80歳以上14.6%へ年齢とともに上昇。進行は全体で34%で、線維化を伴うILAほど進行しやすく、ILAがある人の中では年齢は進行に影響しなかった。進行なしで経過した割合は3年で76%、5年で55%
    肺がん検診の受診者(Ahn 2026) 呼吸機能(FVC)が保たれたILA・境界的なILAの133人 CT上の進行はILAで81.8%、境界的なILAで67.2%(追跡の中央値61.0か月・76.0か月)。CT上の進行(ハザード比8.74)とFVCの相対的な10%以上の低下(ハザード比10.30)は、それぞれ死亡の独立した危険因子だった

    つまり、ILAは「見つけて終わり」ではなく、追跡期間が長くなるほど進行が見つかりやすく、線維化を伴うタイプほど進みやすい所見です。呼吸機能が保たれていても、CTでの進行そのものが予後と関係していました(Ahn 2026)。

    経過観察のCTで比べるポイント

    • 範囲:すりガラス影・網状影が及ぶ肺の領域が広がっていないか
    • 線維化所見の出現:前回なかった牽引性気管支拡張・構造のひずみ・蜂巣肺が出ていないか(type 1・2からtype 3への移行)
    • 分布:胸膜直下・下肺野優位の分布がはっきりしてきていないか
    • 撮影条件:薄いスライスで比べ、背側の濃度上昇は必要に応じて腹臥位で確認し、重力による影響と区別する

    CTでの進行に加えて、息切れ・咳などの症状や呼吸機能の低下が出てきた場合は、ILAではなくILDとして扱い、呼吸器内科での評価につなげます(Podolanczuk 2025)。健診などでILAと言われて息切れや咳が気になる場合は、医療機関に相談してください。

    ILAでよくある疑問(Q&A)

    Q. ILAはどのくらい進行する?
    A. 約6年あけてCTを2回撮ったFramingham研究の1,867人では、ILAが進行したのは118人(6%)、安定・改善は37人(2%)で、進行した人は呼吸機能(FVC)の低下が大きく、死亡リスクも高くなりました(Araki 2016)。AGES-Reykjavik研究では、ILAのある327人のうち73%が5年間で画像上進行しました(Putman 2019)。

    Q. ILAと言われたらどうする?
    A. 2025年ATS臨床声明では、ILAのある人は症状と呼吸機能を最初に評価し、胸部CTで2〜3年ごとに経過をみることが提案されています(Podolanczuk 2025)。症状が出たり、呼吸機能が下がったりした場合は、ILDとして呼吸器内科で評価を受けます。

    参考文献:

      1. Hatabu H, Hunninghake GM, Richeldi L, et al. Interstitial lung abnormalities detected incidentally on CT: a Position Paper from the Fleischner Society. Lancet Respir Med. 2020;8(7):726-737. PubMed
      2. Araki T, Putman RK, Hatabu H, et al. Development and Progression of Interstitial Lung Abnormalities in the Framingham Heart Study. Am J Respir Crit Care Med. 2016;194(12):1514-1522. PubMed
      3. Hata A, Schiebler ML, Lynch DA, et al. Interstitial Lung Abnormalities: State of the Art. Radiology. 2021;301(1):19-34. PubMed
      4. Chae KJ, Jin GY, Goo JM, et al. Interstitial Lung Abnormalities: What Radiologists Should Know. Korean J Radiol. 2021;22(3):454-463. PubMed
      5. Ichikado K, Ichiyasu H, Iyonaga K, et al. Predictive factors of fibrotic interstitial lung abnormality on high-resolution computed tomography scans: a prospective observational study. BMC Pulm Med. 2025;25:47. PubMed
      6. Gogali A, Kyriakopoulos C, Kostikas K. Interstitial Lung Abnormalities: Unraveling the Journey from Incidental Discovery to Clinical Significance. Diagnostics. 2025;15(4):509. PubMed
      7. Putman RK, Gudmundsson G, Axelsson GT, et al. Imaging Patterns Are Associated with Interstitial Lung Abnormality Progression and Mortality. Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(2):175-183. PubMed
      8. Putman RK, Hatabu H, Araki T, et al. Association Between Interstitial Lung Abnormalities and All-Cause Mortality. JAMA. 2016;315(7):672-81. PubMed
      9. Podolanczuk AJ, Hunninghake GM, Wilson KC, et al. Approach to the Evaluation and Management of Interstitial Lung Abnormalities: An Official American Thoracic Society Clinical Statement. Am J Respir Crit Care Med. 2025;211(7):1132-1155. PubMed
      10. Hwang J, You S, Lee YJ, et al. Prevalence and progression rate of interstitial lung abnormalities detected on thoracic CT: a systematic review and meta-analysis. Eur Radiol. 2025;35(1):276-288. PubMed
      11. Chae KJ, Hong H, Cutting CC, et al. Age-, sex-, and smoking-specific prevalence and progression in interstitial lung abnormality: patient-level meta-analysis. Ann Am Thorac Soc. 2026;23(8):1179-1189. PubMed
      12. Ahn Y, Lee SM, Choe J, et al. Interstitial lung abnormality with preserved pulmonary function in lung cancer screening-eligible individuals: long-term effects on function and prognosis. Eur Radiol. 2026;36(1):111-121. PubMed

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