加齢により胸部のレントゲンやCT検査において様々な変化が出てきます。
その一つが胸椎に起こる変化です。加齢により胸椎に
- 骨棘(こつきょく)の形成
- 骨梁の減少
- 圧迫骨折
が起こる頻度が増えていきます。今回は中でも骨棘形成について取りあげ、それが肺野に及ぼす影響について実際のCT画像を見ながらまとめましたので参考にしてください。
胸椎の骨棘形成の特徴は?
この胸椎にできる骨棘ですが、変形性脊椎症により起こり、文字どおり骨の棘の形成を指します。
胸椎の右側にできることが多いとされています。
そしてこの胸椎に骨棘が形成されることにより、肺野に限局的なすりガラス影・索状影を生じることがあります。
肺野で限局的なすりガラス影を見たら・・・
限局的なすりガラス影を見た場合、
- 炎症性変化
- 腫瘍性病変
などがまず鑑別に上がります。純粋なすりガラス影の場合、腫瘍性病変としては
- 異型腺腫様過形成(AAH:atypical adenomatous hyperplasia)
- 上皮内癌(AIS:adenocarcinoma in situ)
が挙げられますが、少しでも充実部位を含む場合は、腺癌などの可能性が上がります。
骨棘形成によるすりガラス影は部位が決まっている。
しかし、この骨棘形成による限局的なすりガラス影・索状影は部位が特徴的であり、ほとんどはこれらの鑑別を挙げるまでもなく、一目瞭然で骨棘によるすりガラス影・線状索状影と診断されてしまいます。
骨棘のある人の100人中実に45人にこの変化が見られると言われています。
ですので、無駄な生検やフォローを増やさないためにも、典型的な部位と画像を覚えておく必要があります。
多いのは右の下葉、中でも椎体に接するS6-7に多いとされます。
実際の画像を見てみましょう。
症例 70歳代 女性
右の下葉の内側の胸膜(椎体)に沿って前後に伸びる線状索状影、周囲に淡いすりガラス影を認めています。
これを骨条件に変えて見てみましょう。
すると右側に特に強く椎体の横に骨の硬化=骨棘を生じていることがよくわかります。この影響で肺野に線状索状影、周囲に淡いすりガラス影を生じていたのです。
なぜこの部位に線状索状影、すりガラス影を生じるのか?
骨棘による肺実質の圧排による含気不良を見ていると考えられています。長い時間かけて骨棘が作られて、その間肺実質が押されることによる変化を見ているのでしょう。
最後に
実際はすりガラス影、線状索状影と言っても、ここにできるものは肺ガンなどとは画像所見が異なることが多く鑑別可能なことが多いです。
ただし、この場所に生じたすりガラス影が全てこの骨棘による変化ではなく、もちろんここにも肺ガンができることがありますので注意が必要です。
肺にできる偽病変の一つとして骨棘による陰影を覚えておきましょう。
参考文献)AJR 179:893-896,2002