加齢により胸部のレントゲンやCT検査において様々な変化が出てきます。
その一つが胸椎に起こる変化です。加齢により胸椎に
- 骨棘(こつきょく)の形成
- 骨梁の減少
- 圧迫骨折
が起こる頻度が増えていきます。今回は中でも骨棘形成について取りあげ、それが肺野に及ぼす影響について実際のCT画像を見ながらまとめましたので参考にしてください。
先に結論:索状影(さくじょうえい)とは・骨棘による影
- 索状影とは、胸部レントゲンやCTで見えるひものように細長い線状の影のことです。多くは過去の肺炎・結核などが治ったあとの傷あと(瘢痕)や、肺の一部が小さくしぼんだ変化で、それだけで病気というわけではありません
- 高齢の人では、背骨(胸椎)の右側にできた骨のとげ(骨棘)が肺を押して、その近くの肺(右下葉の背骨に接する部分)に索状影や淡いすりガラス影ができることがよくあります
- 場所が典型的で、すぐそばに骨棘があれば、多くは心配のいらない変化と判断でき、余計な検査を避けられます。新しく出てきた・大きくなる・かたまりがある影は、ほかの病気を考えて詳しく調べます
※健診で「索状影」と書かれて「要精密検査」となっている場合は、呼吸器内科で過去の画像と比べてもらいましょう。
索状影とは?原因と見分け方の一覧
索状影(さくじょうえい)は、肺の中に見えるひも(索)のような細長い線状の影をさす言葉で、「線状影」とほぼ同じ意味で使われます。英語では linear opacity(線状影)や parenchymal band(肺実質帯:胸膜に届く帯状の影)とよばれます(Hansell 2008)。病名ではなく「見え方」を表す言葉なので、原因を考えることが大切です。
| 原因 | 特徴 | 考え方 |
|---|---|---|
| 過去の肺炎・結核などの瘢痕(傷あと) | どこにでも。石灰化を伴うことがある | 以前から変わらなければ経過観察でよいことが多い |
| 線状(板状)無気肺 | 下肺野・横隔膜の近くに多い。肺の一部が薄くしぼんだもの | 手術後や痰がたまったときなどにみられ、消えることもある |
| 胸膜の癒着・肥厚 | 胸膜(肺の外側の膜)につながる線 | 過去の胸膜炎などの名残のことが多い |
| 胸椎の骨棘による変化 | 右下葉の背骨に接する胸膜下に限局。すぐそばに骨棘がある | 典型的な場所なら心配のいらない変化(この記事の本題) |
| 間質性肺炎・肺線維症 | 両側の下肺野の胸膜直下に、網目状の影やすりガラス影とともに広がる | 呼吸器内科で詳しく調べる |
| 肺癌のまわりのひきつれ | かたまり(結節)から周囲へ放射状にのびる線、胸膜を引き込む線 | かたまりを伴う・新しく出てきた場合は精密検査 |
「右下肺野索状影」「下肺野索状影」とは
胸部レントゲンの報告では、肺を上から上肺野・中肺野・下肺野の3つに分けて場所を書きます。「右下肺野索状影」は、右の肺の下の方(横隔膜に近い側)に線状の影がある、という意味です。下肺野の索状影は、線状無気肺や過去の炎症の瘢痕によるものが多い一方、両側に広がる場合は間質性肺炎も考えるため、CTで確認されることがあります。
胸椎の骨棘形成の特徴は?
この胸椎にできる骨棘ですが、変形性脊椎症により起こり、文字どおり骨の棘の形成を指します。
胸椎の右側にできることが多いとされています。
そしてこの胸椎に骨棘が形成されることにより、肺野に限局的なすりガラス影・索状影を生じることがあります。
肺野で限局的なすりガラス影を見たら・・・
限局的なすりガラス影を見た場合、
- 炎症性変化
- 腫瘍性病変
などがまず鑑別に上がります。純粋なすりガラス影の場合、腫瘍性病変としては
- 異型腺腫様過形成(AAH:atypical adenomatous hyperplasia)
- 上皮内腺癌(AIS:adenocarcinoma in situ)
が挙げられますが、少しでも充実部位を含む場合は、腺癌などの可能性が上がります。
骨棘形成によるすりガラス影は部位が決まっている。
しかし、この骨棘形成による限局的なすりガラス影・索状影は部位が特徴的であり、ほとんどはこれらの鑑別を挙げるまでもなく、一目瞭然で骨棘によるすりガラス影・線状索状影と診断されてしまいます。
ですので、無駄な生検やフォローを増やさないためにも、典型的な部位と画像を覚えておく必要があります。
多いのは右の下葉、中でも椎体(背骨)に接する胸膜直下です(Otake 2002)。
実際の画像を見てみましょう。
症例 60歳代 女性

右の下葉の内側の胸膜(椎体)に沿って前後に伸びる線状索状影、周囲に淡いすりガラス影を認めています。
そして同部に椎体の骨棘形成を認めています。

骨条件にしてみると骨棘の様子がよくわかります。
そして胸椎の椎体間の骨棘は右側優位に認めていることがわかります。
今回の陰影は、胸椎の骨棘による限局性すりガラス影・索状影・間質性変化であることがわかります。
症例 80歳代 女性

右の下葉の内側の胸膜(椎体)に沿って前後に伸びる線状索状影、周囲に淡いすりガラス影を認めています。
同じように右優位に骨棘を認めています。

冠状断像で見ると骨棘が右優位であること、それに沿って肺野条件で索状影を認めていることがこの症例でも確認できます。
胸椎の骨棘による限局性すりガラス影・索状影・間質性変化であることがわかります。
症例 70歳代 女性

右の下葉の内側の胸膜(椎体)に沿って前後に伸びる線状索状影、周囲に淡いすりガラス影を認めています。
これを骨条件に変えて見てみましょう。

すると右側に特に強く椎体の横に骨の硬化=骨棘を生じていることがよくわかります。
この影響で肺野に線状索状影、周囲に淡いすりガラス影を生じていたのです。
なぜこの部位に線状索状影、すりガラス影を生じるのか?
骨棘による肺実質の圧排による含気不良を見ていると考えられています。右側大動脈弓の25例を調べた報告では、胸椎の骨棘はむしろ左側にみられることが多く、骨棘に接する肺野陰影の有無は骨棘の厚さと関連していました。つまり骨棘が右側に多いのは左側にある下行大動脈の影響と考えられ、この陰影は線維化を来す肺疾患の前段階とみなすべきではないとされています(Yoshida 2015)。この陰影は経過観察でも進行がみられず、組織を調べた例では局所的な線維化であったと報告されています(Otake 2002;Yoshida 2015)。長い時間かけて骨棘が作られて、その間肺実質が押されることによる変化を見ているのでしょう。
最後に
実際はすりガラス影、線状索状影と言っても、ここにできるものは肺ガンなどとは画像所見が異なることが多く鑑別可能なことが多いです。
ただし、この場所に生じたすりガラス影が全てこの骨棘による変化ではなく、もちろんここにも肺ガンができることがありますので注意が必要です。
肺にできる偽病変の一つとして骨棘による陰影を覚えておきましょう。
索状影でよくある疑問(Q&A)
Q. 健診で「索状影」と言われました。心配ですか?
A. 多くは過去の炎症の傷あとや小さな無気肺で、以前の画像と比べて変わっていなければ心配のいらないことがほとんどです。初めて指摘された・前より増えている・かたまりを伴う場合は、呼吸器内科でCTなどの確認を受けましょう。
Q. 索状影が肺癌のことはありますか?
A. 線だけの影が肺癌であることはまれですが、かたまり(結節)から線がのびている、胸膜を引き込んでいる、新しく出てきた、といった場合は肺癌も考えて詳しく調べます。
参考文献
- Otake S, Takahashi M, Ishigaki T. Focal pulmonary interstitial opacities adjacent to thoracic spine osteophytes. AJR Am J Roentgenol. 2002;179(4):893-6. PubMed
- Yoshida R, Katsube T, Yoshizako T, et al. Focal pulmonary interstitial opacities adjacent to the thoracic spine osteophytes among the cases with right-sided aortic arch. Springerplus. 2015;4:415. PubMed
- Hansell DM, Bankier AA, MacMahon H, et al. Fleischner Society: glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008;246(3):697-722. PubMed
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