先に結論:VI-RADS(膀胱癌のMRI評価)とは

  • VI-RADSは、膀胱がんが筋層まで入り込んでいるか(筋層浸潤性かどうか)をMRIで1〜5の5段階で評価する方法です。筋層浸潤がなければ内視鏡手術(TURBT)、あれば膀胱全摘や化学療法と治療が大きく変わるため重要です
  • T2強調像・拡散強調像(DWI)・造影のそれぞれで評価し、最終判定は主にDWIを重視します。目安は、1〜2:筋層浸潤の可能性が低い、3:判定困難、4:筋層浸潤の可能性が高い、5:膀胱の外の脂肪まで広がっている可能性が高い
  • TURBTや膀胱内注入療法のあとは炎症・浮腫で深達度を過大評価しやすいため、内視鏡手術の前、または少なくとも2週間あけて撮影したMRIで評価します

VI-RADSとは

  • Vesical Imaging-Reporting And Data Systemの頭文字を取った略語。
  • 膀胱癌のMRI撮影法・診断法の標準化を図るために作成された。
  • 目的は膀胱癌そのものの検出ではなく、MRI画像診断で重要な筋層浸潤性癌(MIBC:muscle invasive bladder cancer)かどうかの判定に用いられる。
  •  筋層に浸潤していない場合は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT:transurethral resection of bladder tumor)による根治が期待できるが、筋層に浸潤している場合はTURBTでの根治は期待できず、化学療法および膀胱全摘術の適応となるため、筋層に浸潤しているかどうかの判断は治療方針に関わり非常に重要。
  • TURBT・膀胱生検・膀胱内注入療法のあとは膀胱壁の浮腫・炎症で病期を過大評価しやすいため、MRIはこれらの前、または少なくとも2週間あけて撮影するのが望ましいとされる(Panebianco 2018)。
  • MRIはT2WI(2方向以上)、DWI、ダイナミック撮影のシークエンスでそれぞれカテゴリー分類し、DWIを中心として総合カテゴリー判定をして評価する。

関連記事:膀胱癌の画像診断(bladder cancer)

膀胱MRIの撮像のポイントと正常の膀胱壁

項目 ポイント
膀胱の充満 適度にふくらませる(検査の1〜2時間前から排尿を控えるなど)。ふくらみが足りないと壁が厚く不整に見え、癌と誤認したり深達度を過大評価したりする
T2強調像 脂肪抑制なしで少なくとも2方向、スライス厚3〜4mm。筋層(排尿筋)は低信号の線として見える
拡散強調像 高いb値(800〜1000s/mm2)で撮像。腫瘍は高信号、筋層は中等度信号の線として見える
ダイナミック造影 粘膜〜粘膜下層(内層)が早期に線状に造影され、筋層は低信号のまま遅れて徐々に造影される

VI-RADSカテゴリー分類

各シークエンスとカテゴリーの関係は以下の様。

Cat. T2WI DWI DCEI
1 <1cm、形態を問わない <1cm、形態を問わない <1cm、形態を問わない
  

2 

  • 非広基性で茎あるいは粘膜下層の高信号を伴う
  • 広基性で粘膜下層の高信号が保存
  • 非広基性で茎あるいは粘膜下層の低信号を伴う
  • 広基性で粘膜下層の低信号が保存
  • 非広基性で茎を伴う
  • 広基性でILE*が保存
3 茎/粘膜下層が消失
(筋層に異常信号なし)
茎/粘膜下層が消失
(筋層に異常信号なし)
茎/粘膜下層が消失
(筋層に異常造影効果なし)
4 筋層に腫瘍の中等度信号
(膀胱周囲脂肪織に異常信号なし)
筋層に腫瘍の高信号
(膀胱周囲脂肪織に異常信号なし)
筋層に腫瘍の造影効果
(膀胱周囲脂肪織に異常造影効果なし)
5 膀胱周囲脂肪織に腫瘍の中等度信号が及ぶ 膀胱周囲脂肪織に腫瘍の高信号が及ぶ 膀胱周囲脂肪織に腫瘍の造影効果が及ぶ

*ILE=inner layer enhancement(膀胱癌の腫瘍基部の粘膜下層の血管を反映した造影効果であり、submucosal linear enhancementと呼ばれるものと同義)

カテゴリー5

膀胱周囲脂肪織に腫瘍の浸潤が及ぶもので、膀胱癌のT病期分類でT3に相当するもの。

MRIでのイメージ図は以下の通り。

カテゴリー4

筋層内に腫瘍による異常信号や異常造影効果を認めるが、膀胱周囲には認めていないもので、膀胱癌のT病期分類でT2に相当するもの。

MRIでのイメージ図は以下の通り。

カテゴリー2

  • 非広基性の場合:茎(stalk)があり、粘膜下層が保たれている所見がある。
  • 広基性の場合:茎(stalk)はないが、粘膜下層が保たれている所見がある。

いずれにせよ粘膜下層が腫瘍により置換されておらず、保たれている所見が認められるもので膀胱癌のT病期分類でT1以下に相当するもの。

MRIでのイメージ図は以下の通り。

このうち、茎(stalk)や粘膜下層の造影効果に相当するILEは以下の部位となる。

カテゴリー3

カテゴリー2と4の間の所見を有するもので、粘膜下層が保たれている所見はないが、筋層に浸潤している所見もないもの。

MRIでのイメージ図は以下の通り。

カテゴリー1

形態を問わずにサイズが1cm未満の腫瘍。

MRIでのイメージ図は以下の通り。

VI-RADSの総合カテゴリー判定

  • T2WI、DWI、ダイナミックにおいてそれぞれカテゴリー判定を行い、それらが合致した場合はそれが総合カテゴリーとなる。
  • もし異なる場合は、DWIのカテゴリー判定を総合カテゴリー判定とする。
  • しかし、DWIが適当な画像でない場合はダイナミックのカテゴリー判定を用いる。6研究・1,770例のメタアナリシスでは、VI-RADSによる筋層浸潤の診断能は統合感度83%・特異度90%、AUC 0.94と良好であった。ただし研究間のばらつきが大きく、カットオフを3以上とするか4以上とするかで成績が変わるため、レポートでは閾値を意識して記載する。

VI-RADS・膀胱癌のMRIでよくある疑問(Q&A)

Q. 膀胱癌の深達度評価はCTではなくMRIなのはなぜですか?
A. MRIはCTより膀胱壁の層の区別がつきやすく、放射線被ばくもないためです(Panebianco 2018)。

Q. VI-RADS 3はどう扱いますか?
A. 筋層浸潤の有無を判定しにくいカテゴリーです。メタアナリシスでは、筋層浸潤ありとする閾値を3以上にするか4以上にするかが研究間の成績の違いの一因でした(Woo 2020)。レポートでは臨床医と閾値をすり合わせておくと誤解が減ります。

 

関連記事:前立腺癌のMRI画像診断におけるPI-RADS v2.1まとめ!

参考文献:画像診断 Vol.40 No.6 2020 P555-564

 

  1. Panebianco V, Narumi Y, Altun E, et al. Multiparametric Magnetic Resonance Imaging for Bladder Cancer: Development of VI-RADS (Vesical Imaging-Reporting And Data System). Eur Urol. 2018;74(3):294-306. PubMed
  2. Woo S, Panebianco V, Narumi Y, et al. Diagnostic Performance of Vesical Imaging Reporting and Data System for the Prediction of Muscle-invasive Bladder Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis. Eur Urol Oncol. 2020;3(3):306-315. PubMed

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