VI-RADSとは
- Vesical Imaging-Reporting And Data Systemの頭文字を取った略語。
- 膀胱癌のMRI撮影法・診断法の標準化を図るために作成された。
- 目的は膀胱癌そのものの検出ではなく、MRI画像診断で重要な筋層浸潤性癌(MIBC:muscle invasive bladder cancer)かどうかの判定に用られる。
- 筋層に浸潤していない場合は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT:transurethral resection of bladder tumor)による根治が期待できるが、筋層に浸潤している場合はTURBTでの根治は期待できず、化学療法および膀胱全摘術の適応となるため、筋層に浸潤しているかどうかの判断は治療方針に関わり非常に重要。
- 必ずTURBT前に撮影した画像で評価する。
- MRIはT2WI(2方向以上)、DWI、ダイナミック撮影のシークエンスでそれぞれカテゴリー分類し、DWIを中心として総合カテゴリー判定をして評価する。
VI-RADSカテゴリー分類
各シークエンスとカテゴリーの関係は以下の様。
Cat. | T2WI | DWI | DCEI |
1 | <1cm、形態を問わない | <1cm、形態を問わない | <1cm、形態を問わない |
2 |
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3 | 茎/粘膜下層が消失 (筋層に異常信号なし) |
茎/粘膜下層が消失 (筋層に異常信号なし) |
茎/粘膜下層が消失 (筋層に異常造影効果なし) |
4 | 筋層に腫瘍の中等度信号 (膀胱周囲脂肪織に異常信号なし) |
筋層に腫瘍の高信号 (膀胱周囲脂肪織に異常信号なし) |
筋層に腫瘍の造影効果 (膀胱周囲脂肪織に異常造影効果なし) |
5 | 膀胱周囲脂肪織に腫瘍の中等度信号が及ぶ | 膀胱周囲脂肪織に腫瘍の高信号が及ぶ | 膀胱周囲脂肪織に腫瘍の造影効果が及ぶ |
*ILE=inner layer enhancement(膀胱癌の腫瘍基部の粘膜下層の血管を反映した造影効果であり、submucosal linear enhancementと呼ばれるものと同義)
カテゴリー5
膀胱周囲脂肪織に腫瘍の浸潤が及ぶもので、膀胱癌のT病期分類でT3に相当するもの。
MRIでのイメージ図は以下の通り。
カテゴリー4
筋層内に腫瘍による異常信号や異常造影効果を認めるが、膀胱周囲には認めていないもので、膀胱癌のT病期分類でT2に相当するもの。
MRIでのイメージ図は以下の通り。
カテゴリー2
- 非広基性の場合:茎(stalk)があり、粘膜下層が保たれている所見がある。
- 広基性の場合:茎(stalk)はないが、粘膜下層が保たれている所見がある。
いずれにせよ粘膜下層が腫瘍により置換されておらず、保たれている所見が認められるもので膀胱癌のT病期分類でT1以下に相当するもの。
MRIでのイメージ図は以下の通り。
このうち、茎(stalk)や粘膜下層の造影効果に相当するILEは以下の部位となる。
カテゴリー3
カテゴリー2と4の間の所見を有するもので、粘膜下層が保たれている所見はないが、筋層に浸潤している所見もないもの。
MRIでのイメージ図は以下の通り。
カテゴリー1
形態を問わずにサイズが1cm未満の腫瘍。
MRIでのイメージ図は以下の通り。
VI-RADSの総合カテゴリー判定
- T2WI、DWI、ダイナミックにおいてそれぞれカテゴリー判定を行い、それらが合致した場合はそれが総合カテゴリーとなる。
- もし異なる場合は、DWIのカテゴリー判定を総合カテゴリー判定とする。
- しかし、DWIが適当な画像でない場合はダイナミックのカテゴリー判定を用いる。
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参考文献:画像診断 Vol.40 No.6 2020 P555-564