肺は左右対称ではなく、
- 右:上葉、中葉、下葉の3葉
- 左:上葉、下葉の2葉
からなります。
肺葉の解剖についてはこちらの記事を参照ください。
関連:肺葉及び肺区域の解剖は?胸部CTやレントゲン読影の基礎!
今回はこの5つの肺葉が無気肺となった場合、胸部レントゲン(胸部XP)でどのように見えるのかシェーマを用いて解説しました。
右上葉無気肺の場合、胸部レントゲンでどのように見えるか?
右上葉の無気肺のレントゲンは上のように見える。
右は中葉があるため、左上葉の無気肺とはパターンが異なる。
不完全な虚脱が多く、虚脱肺は上のように内側で前の方に移動する。
正面像でS字の逆の屈曲を示すことから、Inverted S sign(逆S字兆候)と呼ばれる。
中葉無気肺の場合、胸部レントゲンでどのように見えるか?
中葉の無気肺のレントゲンは上のように見える。
正面像、側面像ともに小葉間裂(minor fissure)が落ちる。
正面像で(中葉は縦隔の前の方にあるため)心臓との境界線がはっきりしないシルエットサイン陽性となる。
右下葉無気肺の場合、胸部レントゲンでどのように見えるか?
右下葉の無気肺のレントゲンは上のように見える。
下葉は両側とも肺門(下葉気管支)と肺靱帯によって縦隔に固定されているため、それらに向かうように虚脱する。
中葉&右下葉無気肺の場合、胸部レントゲンでどのように見えるか?
右3葉のうち、2葉が無気肺となることがあるが、中間気管支幹が共通の気道となっている中葉と下葉の同時無気肺のパターンが最も多く上のようなシェーマとなる。
小葉間裂(minor fissure)も大葉間裂(major fissure)も下方へと変位する。
CP angleが見えなくなるため、右下葉の無気肺や胸水との鑑別が必要となる。
左上葉無気肺の場合、胸部レントゲンでどのように見えるか?
左上葉の無気肺のレントゲンは上のように見える。
左上葉は他の肺葉の無気肺と異なり、楔状の高吸収とならずに、左上肺野を中心に全体的に淡い吸収値上昇(透過性低下)となり、あたかも肺炎のように見えてしまうのが特徴。
また小葉間裂(minor fissure)がないため、虚脱肺は前胸壁側に移動する。
左下葉無気肺の場合、胸部レントゲンでどのように見えるか?
左下葉の無気肺のレントゲンは上のように見える。
右下葉無気肺と同様、下葉は両側とも肺門(下葉気管支)と肺靱帯によって縦隔に固定されているため、それらに向かうように虚脱し、心陰影に重なる三角形の陰影を形成する。
また下行大動脈と接するため、境界線がはっきりしないシルエットサインが陽性となる。
無気肺と紛らわしいピットフォール
胸部レントゲンであたかも無気肺のように見えてしまうピットフォールに漏斗胸がある。
この場合は側面像を撮影すると陥凹した肋骨を認識でき、無気肺ではなく漏斗胸だと判断することができる。
参考文献:新 胸部画像診断の勘ドコロ P69-77