先に結論:膝蓋軟骨軟化症
- 膝蓋軟骨軟化症は膝蓋骨の関節軟骨が軟らかくなり傷む状態で、若い女性・スポーツをする人に多く、膝の前の痛み(階段・しゃがみ動作で悪化)を起こします
- MRIでは軟骨の信号変化・腫れ→表面の不整・亀裂→全層の欠損と、程度に応じた所見が見られます
- 膝蓋骨の位置異常(高位・外側への傾き)などが背景にあることが多く、あわせて評価します
- 変化が軟骨だけなら膝蓋軟骨軟化症、骨棘・軟骨下骨の硬化や嚢胞を伴えば変形性膝関節症(膝蓋大腿関節症)として区別します
膝蓋骨軟骨軟化症(膝蓋軟骨軟化症)(chondromalacia patellae)
- 膝蓋骨の関節軟骨の変性・損傷。関節軟骨に限局した病変に用いる用語。(軟骨下嚢胞や軟骨下骨の骨硬化、骨棘形成や滑膜増殖を伴った場合は変形性関節症となり、軟骨軟化症とは区別する。)
- 膝蓋大腿関節の不安定性、膝蓋骨関節面への繰り返す小さな外傷による。
- 二次性変化であり、若年者はスポーツ障害、中高年は変形性膝関節症や外傷に続発する。
- 比較的若年女性に多い。
- 内側関節面に好発する。
- 膝前面部の痛みを認め、屈曲時に増悪する。
- 急性の膝蓋骨軟骨軟化症は膝蓋骨高位に多く発症する。一方で慢性のものは膝蓋骨亜脱臼、Q角の増大、後十字靱帯損傷後、膝関節炎後、滑膜炎後に生じる。
膝蓋骨軟骨軟化症の分類のMRI画像所見
- 軟骨の信号上昇
- 軟骨の菲薄化、表面不整
膝蓋骨軟骨軟化症の分類(shahriaree分類)(内視鏡的)とMRI所見の対応
- Grade1:軟骨の軟化(softening)→MRIでは軟骨の高信号
- Grade2:軟骨分断、裂溝、水疱様腫脹(blister like swelling)→MRIでは軟骨の高信号と腫脹
- Grade3:軟骨分断、裂溝、潰瘍→MRIでは軟骨の表面不整、亀裂、欠損
- Grade4:軟骨下骨に及ぶ欠損、軟骨下骨の露出→MRIでは軟骨の全層欠損。
関節鏡と対比した検討では、Grade1はどの撮像法でも検出が難しく、Grade4はほぼ検出できた。中間のGrade2・3の検出率はT2強調像で47%、MR関節造影で80%と差があり、T2強調像は偽陽性も多かった。脂肪抑制横断像では早期病変は軟骨内の信号上昇として描出され、特異度は早期で94%、進行例で98%と報告されている。
膝蓋軟骨軟化症と変形性膝関節症(膝蓋大腿関節症)の違い
- 変形性膝関節症では、軟骨のすり減りに加えて骨棘、軟骨下骨の硬化・嚢胞、骨髄の浮腫様変化(bone marrow lesion)を伴います。
- 膝蓋大腿関節は見落とされやすい部位です。メタ解析では、膝の痛みや症状のある人の43%にX線で膝蓋大腿関節の変形性関節症があり、膝の痛みのある人のMRIでは骨髄病変が32%、軟骨欠損が52%に見られました(Hart 2017)。
- 軟骨はX線に写らないため、早い段階の軟骨の変化はMRIで評価します。
膝前部痛のある288人のMRIでは58.7%に膝蓋軟骨軟化症があり、滑車溝が浅い、膝蓋骨の外側偏位、膝蓋骨高位といった位置異常が多く見られました(Özdemir 2019)。
膝の痛みが続くときは、整形外科などの医療機関に相談してください。
関連記事:膝関節MRIの正常構造と信号パターン
症例 20歳代女性 膝の痛み・階段を上りにくい

引用:Radiopaedia(Chondromalacia patellae – grade IV)
膝蓋骨の関節軟骨は不均一な高信号を示し、表面が不整で、軟骨の中に液体の高信号が入り込む亀裂が見られます。この症例では膝蓋骨の内側・外側の両関節面に部分〜全層の亀裂があり、軟骨下の骨髄浮腫や嚢胞を伴う高度の所見と報告されています。軽度の膝蓋骨外側亜脱臼が背景にある可能性が指摘されています。
参考文献:
- 骨軟部疾患の画像診断 第2版 P84-85
- 膝MRI 第3版 P242−244
- 画像診断 Vol.35 No.11 臨時増刊号 2015 P78-81
- Gagliardi JA, Chung EM, Chandnani VP, et al. Detection and staging of chondromalacia patellae: relative efficacies of conventional MR imaging, MR arthrography, and CT arthrography. AJR Am J Roentgenol. 1994;163(3):629-36. PubMed
- Rose PM, Demlow TA, Szumowski J, et al. Chondromalacia patellae: fat-suppressed MR imaging. Radiology. 1994;193(2):437-40. PubMed
- Hart HF, Stefanik JJ, Wyndow N, et al. The prevalence of radiographic and MRI-defined patellofemoral osteoarthritis and structural pathology: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2017;51(16):1195-1208. PubMed
- Özdemir M, Kavak RP. Chondromalacia Patella among Military Recruits with Anterior Knee Pain: Prevalence and Association with Patellofemoral Malalignment. Indian J Orthop. 2019;53(6):682-688. PubMed
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