先に結論:肩鎖関節脱臼とRockwood(ロックウッド)分類
- 肩鎖関節は、鎖骨の外側の端と肩甲骨の肩峰をつなぐ関節で、肩鎖靱帯(水平方向の安定)と烏口鎖骨靱帯(菱形靱帯+円錐靱帯:上下方向の安定)が支えています。肩から転んだり、スポーツでぶつかったりして脱臼します
- Rockwood分類:Ⅰ型=捻挫(肩鎖靱帯の部分損傷)、Ⅱ型=亜脱臼(肩鎖靱帯断裂)、Ⅲ型=脱臼(肩鎖靱帯+烏口鎖骨靱帯の断裂、鎖骨が上へ)、Ⅳ型=後方脱臼、Ⅴ型=高度な上方脱臼、Ⅵ型=下方脱臼(まれ)。Ⅰ・Ⅱ型は保存療法、Ⅳ〜Ⅵ型は手術が原則、Ⅲ型は状況により判断します
- 鎖骨の端を押すとピアノの鍵盤のように沈んで戻るピアノキーサインが特徴で、レントゲン(両肩を比べる)で肩峰と鎖骨のずれ・烏口突起と鎖骨の距離を測って分類します。正面像(肩鎖関節向けのZanca撮影)を左右で撮り、後方脱臼(Ⅳ型)は腋窩撮影で確認します(He 2026)
肩鎖関節の解剖と周囲の靱帯

肩甲骨と鎖骨との間の靱帯には、
- 肩鎖靱帯
- 烏口鎖骨靱帯(菱形靱帯+円錐靱帯)
- 烏口肩峰靱帯 ←これは肩甲骨同士の靱帯
がある。
なかでも肩鎖関節脱臼に関与する肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯は以下の様。
肩鎖靱帯

肩鎖靱帯は、肩甲骨の肩峰と鎖骨遠位端の間の靱帯であり、肩鎖関節を構成し、関節の水平方向の安定性に寄与している。
烏口鎖骨靱帯

烏口鎖骨靱帯は、肩甲骨の烏口突起と鎖骨の遠位端の間の靱帯であり、菱形靱帯と円錐靱帯とからなる。
関節の垂直方向の安定性に寄与している。
これらの解剖を動画解説しました。
肩鎖関節脱臼と分類1)
- 交通外傷やスポーツでの受傷が多い。
- 転倒・転落時に上肢を内転した状態で肩峰の前上方を打ち付ける直達外傷での受傷が多い。
- 上方への脱臼がある場合は、浮き上がった鎖骨遠位端を下方へ圧迫すると動揺性が生じ、あたかもピアノのキーのように戻ってくることからPiano key signと呼ばれる。浮き上がった鎖骨は視診で皮下の突出として確認できる。
- 肩関節レントゲンを元に脱臼の程度・方向をtypeⅠ~Ⅵに分けたRockwood分類が広く用いられている。
- typeⅣ、Ⅵは稀なので、非整形外科医はtypeⅠ/ⅡとⅢ/Ⅴの区別だけできればOK2)。
- 一般にtypeⅠ、Ⅱは保存療法、Ⅳ〜Ⅵは原則手術。typeⅢは保存療法と手術で方針が分かれる(年齢・活動性などで判断)。2014年のISAKOS上肢委員会は、typeⅢを安定型のⅢA(cross-body adduction viewで鎖骨が肩峰に乗り上げず、肩甲骨機能障害がない)と不安定型のⅢB(治療抵抗性の肩甲骨機能障害と鎖骨の乗り上げあり)に細分することを提案している。
Rockwood分類
- typeⅠ(捻挫):肩鎖靱帯損傷・部分断裂でX線上の関節不安定性は認めない。
- typeⅡ(亜脱臼):肩鎖靱帯の断裂と烏口鎖骨靱帯の損傷・部分断裂が起こり、肩鎖関節の開大・水平方向の不安定性はあるが上方への転位はわずか。
- typeⅢ(上方脱臼):肩鎖靱帯の断裂と烏口鎖骨靱帯の完全断裂を起こし、垂直・水平方向の不安定性を来す。烏口鎖骨間距離は健側と比較して25-100%となる。
- typeⅣ(後方脱臼):肩鎖・烏口鎖骨靱帯の完全断裂で鎖骨遠位端が後方に脱臼している。
- typeⅤ(明らかな上方脱臼):typeⅢと同様の上方への脱臼だが、より重症で、烏口鎖骨間距離は健側と比較して100-300%となる。
- typeⅥ(下方脱臼):下方脱臼を起こし鎖骨遠位端が肩峰か烏口突起の下に転位する。


※上記イラストでは頻度の少ないtypeⅣ、Ⅵは掲載しておりません。
肩鎖関節のレントゲンの撮り方と見方
| 撮影法 | わかること |
| 両側のZanca撮影(正面像で管球を頭側へ10〜15°傾ける) | 肩鎖関節そのものが見やすい。烏口鎖骨間距離を健側と比べて、上方への転位の程度からRockwood分類を決める |
| 腋窩撮影(axillary view) | 鎖骨遠位端の後方への転位(Ⅳ型) |
| ストレス撮影(重りを持たせて左右を撮影) | 通常の撮影で上下の不安定性がはっきりしないときに追加。ルーチンで撮るかは意見が分かれる |
| Alexander撮影(側方ストレス像) | 鎖骨が肩峰に乗り上げるか(水平方向の不安定性)。ⅢA・ⅢBの区別に使う |
(He 2026)
- 正常の肩鎖関節や烏口鎖骨間距離には個人差があるため、健側と並べて比べるのが基本。「肩鎖関節のレントゲン2方向」では正面像に加えて腋窩撮影などで前後方向のずれも確認する。
実際の画像:左右を比べる正面像とAlexander撮影

引用:Radiopaedia(Acromioclavicular joint injury type III 4)
左肩の正面像です。鎖骨の外側の端が肩峰より明らかに上へ持ち上がり、肩鎖関節の上下の位置がずれています。

引用:Henssler L et al. JSES Int 2026(Figure 1)
急性の肩鎖関節損傷の両肩のパノラマ撮影の例で、烏口鎖骨間距離が健側より94.5%増えており、Rockwood Ⅲ型にあたります。(出典:Henssler L et al. JSES Int 2026, Figure 1, CC BY 4.0)
画像の左側(右肩)の烏口突起と鎖骨の間の距離が、反対側より広がっています。このように健側と並べて測るのが基本です。

引用:Henssler L et al. JSES Int 2026(Figure 2)
急性の肩鎖関節損傷のAlexander撮影で、上下方向と動的な水平方向の不安定性があります。鎖骨の外側の輪郭と肩峰の前内側にそれぞれ円を描き、2つの円の中心の距離を測っています。(出典:Henssler L et al. JSES Int 2026, Figure 2, CC BY 4.0)
急性の肩鎖関節損傷(Rockwood Ⅱ〜Ⅴ型)54例の検討では、Alexander撮影だけでも手術を考える群(ⅢB〜Ⅴ型)の判定は感度87.7%・特異度90.1%で、円の中心間距離18mmでⅢB型とⅤ型を感度92.9%で分けられました(Henssler et al. 2026)。
見逃しやすい点・まぎらわしいもの
- 烏口鎖骨間距離には個人差があるため、片側だけでは軽いずれを見逃します。左右で同じ条件で撮った画像で比べます。
- 後方脱臼(Ⅳ型)は正面像では上下のずれが目立たないことがあり、腋窩撮影で鎖骨の前後の位置を確かめます(He 2026)。
- 鎖骨の外側の端の骨折(鎖骨遠位端骨折)も肩を打って起こり、鎖骨が浮き上がって見えることがあります。肩鎖関節の脱臼か骨折かは、骨折線の有無で見分けます(Melenevsky et al. 2011、鎖骨遠位端骨折の画像診断)。
肩鎖関節脱臼のMRI・超音波検査
- MRIは、腱板や関節唇などほかの軟部組織の損傷が疑われるとき、肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯の状態を正確に知ることが治療方針に影響するとき、症状とレントゲン所見が合わないときに使う。レントゲンより損傷の程度を詳しく評価でき、治療の判断に役立つことがある(He 2026)。
- 超音波でも急性期の烏口鎖骨靱帯の損傷を評価できる。47例の検討で、MRIを基準とした超音波の感度は88.9%、特異度は90.0%で、超音波とMRIの一致はレントゲンとMRIより良好だった(Faruch Bilfeld 2017)。
症例 40歳代女性 右肩痛

鎖骨下端と肩峰下端は23mmと開大を認め、Rockwood分類のtypeⅢの肩鎖関節脱臼と診断されました。
実際の画像:肩鎖靱帯複合体の断裂(MRI)

引用:Cho YT et al. Clin Orthop Surg 2025(Fig. 3)
手術前のプロトン密度強調冠状断像で、肩鎖靱帯複合体の断裂を示しています。(A)鎖骨側の損傷:鎖骨の断裂部に付く組織がなく高信号、(B)中央部の損傷:骨の付着部に軟部組織が残り、中央に高信号のすき間、(C)肩峰側の損傷:肩峰側からのはがれ(白矢印)。(出典:Cho YT et al. Clin Orthop Surg 2025, Fig. 3, CC BY-NC 4.0)
MRIでは靱帯が切れている場所(鎖骨側・中央・肩峰側)がわかります。
肩鎖関節脱臼でよくある疑問(Q&A)
Q. 肩鎖関節のレントゲンは何方向撮りますか?
A. 左右の肩鎖関節の正面像(Zanca撮影)が基本で、後方へのずれを見るために腋窩撮影を加えます。不安定性がはっきりしないときはストレス撮影やAlexander撮影を追加します(He 2026)。
Q. 肩鎖関節脱臼はレントゲンだけで診断できますか?
A. 多くは左右を比べたレントゲンで診断・分類できます。靱帯の状態をくわしく知りたいとき、ほかのけがが疑われるときにMRIや超音波を追加します(He 2026)。
Q. Alexander撮影とは何を見る撮影ですか?
A. 反対側の肩のほうへ腕を寄せた姿勢で撮り、鎖骨が肩峰に乗り上げるか(水平方向の不安定性)を見ます。急性の肩鎖関節損傷の検討では、Alexander撮影だけでも手術を考える群をよく見分けられたと報告されています(Henssler et al. 2026)。
肩を打ったあとに痛みや腫れ、鎖骨の端の出っぱりがあるときは、整形外科を受診してください。
あわせて読みたい:肩関節脱臼の画像診断(バンカート損傷・ヒルサックス損傷)/鎖骨骨折の分類(Neer分類)とレントゲン・CT画像/見逃しやすい骨折まとめ
参考文献:
- 和田 知樹. 肩鎖関節脱臼. 臨床整形外科 56(5):446-449, 2021(本記事の参照: P446-449)
- 骨折ハンター P106-107
- Beitzel K, Mazzocca AD, Bak K, et al. ISAKOS upper extremity committee consensus statement on the need for diversification of the Rockwood classification for acromioclavicular joint injuries. Arthroscopy. 2014;30(2):271-278. PubMed
- Melenevsky Y, Yablon CM, Ramappa A, et al. Clavicle and acromioclavicular joint injuries: a review of imaging, treatment, and complications. Skeletal Radiol. 2011;40(7):831-842. PubMed
- He X, Kong D, Lu X, et al. Comprehensive review of acromioclavicular joint dislocation: anatomy, mechanism, imaging, treatment and rehabilitation-narrative review. J Orthop Surg Res. 2026;21(1). PubMed
- Faruch Bilfeld M, Lapègue F, Chiavassa Gandois H, et al. Ultrasound of the coracoclavicular ligaments in the acute phase of an acromioclavicular disjonction: Comparison of radiographic, ultrasound and MRI findings. Eur Radiol. 2017;27(2):483-490. PubMed
- Henssler L, Huber L, Klute L, et al. Alexander view as a stand-alone alternative to standard anteroposterior imaging for treatment decisions in acute acromioclavicular joint dislocation. JSES Int. 2026;10(4):101726. PubMed
- Cho YT, Lee S, Yang I, et al. Magnetic Resonance Imaging-Based Evaluation of Healing Status and Injury Sites of the Acromioclavicular Ligament Complex and Their Association with Reduction Loss after Hook Plate Fixation. Clin Orthop Surg. 2025;17(6):1025-1034. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
