鎖骨骨折は、転倒や交通事故、スポーツ外傷などで生じる頻度の高い骨折です。特に鎖骨骨幹部、すなわち中央部に多く、疼痛や腫脹、肩関節の運動制限を伴います。

診断の基本は単純X線検査ですが、骨片の重なり、粉砕、短縮、鎖骨遠位端や近位端の骨折を詳しく評価するため、CTが有用なことがあります。

この記事では、元記事に掲載している単純X線・CT・3D再構成画像と4症例を活用しながら、鎖骨骨折の画像診断、分類、読影ポイント、保存療法、手術適応について解説します。

鎖骨骨折とは?

鎖骨は、胸骨と肩甲骨を連結し、上肢を体幹から適切な位置に保つ役割を持つ骨です。その直下には鎖骨下動静脈や腕神経叢が走行しています。

鎖骨骨折の多くは、肩を下にして転倒した際に、肩から伝わった外力によって生じます。自転車事故、交通事故、コンタクトスポーツなども代表的な受傷機転です。

骨折部位は、一般に次の3つに分けて考えます。

  • 鎖骨骨幹部骨折:鎖骨中央部の骨折
  • 鎖骨遠位端骨折:肩鎖関節に近い外側部の骨折
  • 鎖骨近位端骨折:胸鎖関節に近い内側部の骨折

このうち骨幹部骨折が最も多く、鎖骨骨折全体の約80%を占めます[1]。

鎖骨骨折の好発部位と骨片の転位方向を示したイラスト

鎖骨骨折の好発部位と転位方向

鎖骨骨折は、鎖骨骨幹部、特に中央1/3付近に好発します。この部位は鎖骨の弯曲が変化し、靱帯による補強が比較的弱いため、外力が集中しやすいと考えられます。

転位を伴う骨幹部骨折では、典型的に次のような骨片偏位を示します。

  • 近位骨片:胸鎖乳突筋の牽引により上方へ偏位
  • 遠位骨片:上肢の重量などにより下方へ偏位
  • 肩甲帯:内側・前方へ偏位し、骨折部が短縮

単に「上方転位」「下方転位」と記載するだけでなく、骨皮質の接触、短縮、粉砕、中間骨片、皮膚への突出を併せて評価することが重要です。

鎖骨骨折の症状と緊急性を示す所見

鎖骨骨折では、一般に以下の症状を認めます。

  • 鎖骨部から肩にかけての疼痛
  • 局所の腫脹、皮下出血、圧痛
  • 肩関節の運動制限
  • 骨折部の変形や段差
  • 患側上肢を反対側の手で支える姿勢

診察では、骨折の確認だけでなく、以下の合併損傷を見落とさないことが重要です。

  • 開放骨折
  • 骨片による皮膚の緊張、蒼白化、皮膚壊死の危険
  • 鎖骨下動静脈損傷
  • 腕神経叢損傷
  • 気胸、血胸、肺挫傷
  • 肋骨骨折、肩甲骨骨折
  • 肩鎖関節脱臼、胸鎖関節脱臼

橈骨動脈の触知低下、上肢の冷感、しびれ、筋力低下、呼吸困難などがある場合は、神経血管損傷や胸部損傷を疑い、速やかな追加評価が必要です。

鎖骨骨折の画像診断

単純X線検査

鎖骨骨折の画像診断は、単純X線検査が基本です。鎖骨全体に加えて、肩鎖関節と胸鎖関節が評価範囲に含まれているかを確認します。

基本となるのは鎖骨正面像ですが、骨折線や転位が不明瞭な場合には、頭側へ角度をつけた撮影を追加すると、肋骨や肩甲骨との重なりを減らせることがあります。

読影では、次の項目を系統的に確認します。

  • 骨折部位:近位端、骨幹部、遠位端
  • 転位の方向と程度
  • 骨皮質の接触の有無
  • 短縮の程度
  • 粉砕、中間骨片の有無
  • 肩鎖関節・胸鎖関節への進展
  • 肋骨骨折、肩甲骨骨折、気胸などの合併

撮影体位にも注意が必要です。仰臥位では上肢重量による下方偏位が軽減され、骨折の転位や短縮が過小評価される可能性があります。立位または座位で撮影できる場合は、転位をより明瞭に評価できることがあります[2]。

CT検査

典型的な鎖骨骨幹部骨折では、すべての症例にCTが必要なわけではありません。一方、次のような状況ではCTが有用です。

  • 単純X線で骨折形態が明瞭でない
  • 粉砕や中間骨片を詳しく評価したい
  • 鎖骨遠位端骨折と肩鎖関節の位置関係を評価したい
  • 鎖骨近位端骨折や胸鎖関節損傷が疑われる
  • 手術計画のため、骨片の位置関係を把握したい
  • 多発外傷として胸部CTが撮影されている

CTでは軸位断だけでなく、冠状断・矢状断などの多断面再構成像を確認します。3D再構成画像は骨片の全体像を直感的に理解するのに役立ちますが、微細な骨折線や関節面の評価は元の断層像で行う必要があります。

鎖骨骨折の実症例

症例1:40歳代男性 外傷

転位を伴わない右鎖骨骨幹部骨折の単純X線画像

右鎖骨骨幹部に骨折線を認めます。提示された単純X線画像では、骨片間の明らかな転位や著明な短縮は認めません。

転位を伴わない右鎖骨骨幹部骨折のCT画像

CTでも右鎖骨骨幹部の骨折線が確認できます。軸位断および鎖骨長軸に沿った再構成像を組み合わせることで、骨折線の走行と転位の程度を評価できます。

転位を伴わない右鎖骨骨幹部骨折の3D CT画像

3D再構成画像でも、骨片の大きな偏位は認めません。本症例は保存的に治療されました。

症例2:50歳代女性 交通事故

転位を伴う左鎖骨骨幹部骨折の胸部および鎖骨単純X線画像

胸部単純X線および左鎖骨単純X線で、左鎖骨骨幹部に骨折を認めます。

近位骨片は上方へ、遠位骨片は下方へ偏位しています。骨片同士の重なりによる短縮も示唆されます。

粉砕と転位を伴う左鎖骨骨幹部骨折のCT画像

CTでは、単純な2骨片骨折ではなく、複数の骨片を伴う粉砕骨折であることがわかります。骨折部周囲には中間骨片を認めます。

転位と粉砕を伴う左鎖骨骨幹部骨折の3D CT画像

3D再構成画像では、近位骨片、遠位骨片、中間骨片の位置関係を把握しやすくなります。本症例は手術により治療されました。

症例3:10歳代男性 交通事故

転位を伴う10歳代男性の左鎖骨骨幹部骨折の単純X線画像

胸部単純X線で、左鎖骨骨幹部に骨折を認めます。近位骨片は上方、遠位骨片は下方へ偏位しています。

10歳代男性の左鎖骨骨幹部骨折のCTおよび3D CT画像

CTおよび3D再構成画像では、骨折部の転位と骨片の位置関係が明瞭です。本症例は手術療法で治療されました。

ただし、青少年の鎖骨骨折では、単純に「転位があるから手術」と判断するわけではありません。骨成熟度、皮膚の状態、開放骨折、神経血管損傷、骨折形態、競技レベルなどを含めて個別に判断します。

AAOSガイドラインでは、18歳以下の転位を伴う骨幹部骨折について、手術が保存療法を上回る利益は明確ではなく、手術後に抜釘を含む再手術が必要となる可能性も指摘されています[2]。

鎖骨遠位端骨折とNeer分類

鎖骨遠位端骨折では、骨折線と烏口鎖骨靱帯の位置関係が安定性を左右します。古典的なNeer分類では、主に次のように分類されます。

鎖骨遠位端骨折のNeer分類を示すイラスト

  • Neer I型:烏口鎖骨靱帯の外側に骨折があり、靱帯は保たれ、転位が少ない安定型
  • Neer II型:烏口鎖骨靱帯付近で骨折し、靱帯による支持が失われやすい不安定型
  • Neer III型:骨折線が肩鎖関節面に及ぶ関節内骨折

実際にはNeer II型は、骨折線と円錐靱帯・菱形靱帯との位置関係によって細分されます。また、現在は靱帯損傷や骨片の大きさをより詳しく反映した修正分類も用いられます。

「遠位端骨折=Neer II型」ではありません。単純X線やCTで、骨折線が烏口鎖骨靱帯付着部の内側・外側・靱帯間のどこを通るのかを評価することが重要です。

症例4:40歳代男性 交通事故

転位を伴う左鎖骨遠位端骨折の単純X線画像

左鎖骨遠位端に骨折線を認め、骨片の転位を伴っています。遠位骨片、肩峰、肩鎖関節の位置関係を確認します。

左鎖骨遠位端骨折の冠状断CT画像

冠状断CTでは、鎖骨遠位端の骨折形態と転位が単純X線より明瞭です。骨折線と烏口鎖骨靱帯付着部との位置関係を評価します。

左鎖骨遠位端骨折の3D CT再構成画像

3D再構成画像では、鎖骨、肩峰、烏口突起、骨折部の位置関係が把握しやすくなります。本症例は、転位を伴う不安定な鎖骨遠位端骨折と診断されました。

鎖骨骨折の読影ポイント

1.鎖骨全長を追う

鎖骨骨幹部だけでなく、胸鎖関節から肩鎖関節まで骨皮質を連続して追います。胸部単純X線では、鎖骨が肺尖部、肋骨、肩甲骨と重なるため、微細な骨折を見落とすことがあります。

2.転位・短縮・粉砕を分けて評価する

「転位あり」の一言で終わらせず、上下方向の偏位、前後方向の偏位、骨皮質の接触、骨片の重なり、短縮、中間骨片の有無を記載します。

3.皮膚障害の危険を考える

近位骨片が上方へ大きく突出している場合、皮膚が内側から圧迫されている可能性があります。画像だけで皮膚の状態を確定することはできないため、診察所見との対比が必要です。

4.鎖骨遠位端では烏口鎖骨靱帯との位置関係を見る

鎖骨遠位端骨折の安定性は、骨折線の位置だけでなく、烏口鎖骨靱帯複合体が機能しているかによって異なります。転位の大きい遠位端骨折では、不安定型の可能性を考えます。

5.近位端骨折では縦隔側を確認する

鎖骨近位端骨折や胸鎖関節後方脱臼では、気管、食道、腕頭血管などの縦隔構造との位置関係が問題になります。高エネルギー外傷や後方偏位が疑われる場合は、CTや造影CTを検討します。

6.胸部・肩甲帯の合併損傷を確認する

交通事故や高所転落では、肋骨骨折、肩甲骨骨折、肺挫傷、気胸、血胸を伴うことがあります。胸部CTが撮影されている場合、鎖骨だけに注目せず胸郭全体を確認します。

鎖骨骨折の治療

鎖骨骨折の治療は、大きく保存療法と手術療法に分けられます。治療方針は、骨折部位、転位、短縮、粉砕、皮膚状態、神経血管損傷、年齢、活動性などを総合して決定します。

保存療法

転位が少なく、安定している鎖骨骨折では、保存療法が選択されることが多くなります。

固定方法には三角巾やアームスリング、鎖骨バンドなどがあります。従来は8の字型の鎖骨バンドが広く使われてきましたが、AAOSガイドラインでは、明確な比較エビデンスは限定的であるものの、急性鎖骨骨折の固定には、一般に8の字型装具よりスリングが選択されるとしています[2]。

固定期間や運動開始時期は、年齢、疼痛、骨折の安定性、仮骨形成によって異なります。長期間の固定は肩関節拘縮につながる可能性があるため、整形外科医の指示に従って段階的に可動域訓練を開始します。

手術療法

以下は、手術を検討する代表的な状況です。

  • 開放骨折
  • 神経血管損傷を伴う骨折
  • 骨片による著明な皮膚圧迫、皮膚障害の危険
  • 浮遊肩など不安定な肩甲帯損傷
  • 著明な転位、短縮、粉砕を伴う成人の骨幹部骨折
  • 烏口鎖骨靱帯複合体の支持性が失われた不安定な遠位端骨折
  • 偽関節や症候性変形治癒

ただし、転位や短縮の数値のみで機械的に手術適応を決定することはできません。年齢、職業、利き手、スポーツ活動、合併症、患者の希望などを含めた共有意思決定が必要です。

成人の転位を伴う鎖骨骨幹部骨折では、手術療法は保存療法より骨癒合率が高く、早期の患者報告アウトカムが良好とされています。一方、長期的な機能や満足度は、両者で同程度となる可能性があります[2]。

手術には感染、神経血管損傷、創部周囲の知覚障害、インプラント刺激症状、固定材料の破損、抜釘を含む再手術などのリスクがあります。

代表的な手術方法

骨幹部骨折では、プレートとスクリューを用いた観血的整復固定術が代表的です。骨折形態によっては髄内固定が選択されることもあります。

鎖骨遠位端骨折では、遠位骨片の大きさや骨質、靱帯損傷の状態に応じて、遠位端用ロッキングプレート、烏口鎖骨間固定、フックプレートなどが選択されます。

プレートとスクリューで固定された左鎖骨骨幹部骨折の術後単純X線画像

症例2の術後単純X線画像です。プレートとスクリューによって骨折部が固定されています。術後画像では、整復位、スクリューの位置と長さ、インプラントの破損、骨癒合の進行を評価します。

鎖骨骨折の合併症と後遺症

鎖骨骨折は多くの場合、適切な治療により良好に治癒します。ただし、骨折形態や治療経過によっては、次の合併症が問題となります。

  • 偽関節:骨癒合が得られず、疼痛や異常可動性が残る状態
  • 変形治癒:短縮や角状変形を残して癒合する状態
  • 肩関節機能障害:疼痛、筋力低下、可動域制限
  • 神経症状:まれに腕神経叢刺激によるしびれなどを生じる
  • 整容上の問題:骨性隆起や左右差が残る
  • 手術関連合併症:感染、知覚障害、インプラント刺激症状、再手術

成人の骨幹部骨折を保存的に治療する場合、転位や粉砕が強いほど偽関節リスクが高くなる傾向があります[2、3]。経過観察では、単純X線上の仮骨だけでなく、疼痛の改善、骨折部の圧痛、異常可動性、上肢機能を総合して評価します。

鎖骨骨折で見落としやすいポイント

  • 胸部X線だけで「異常なし」と判断しない:鎖骨専用撮影や追加方向が必要なことがあります。
  • 仰臥位画像では転位を過小評価し得る:撮影体位を確認します。
  • 3D画像だけで判断しない:微細な骨折線や関節面は断層像で評価します。
  • 遠位端骨折では靱帯支持性を考える:転位の有無だけでなく骨折線の位置を確認します。
  • 近位端骨折では縦隔損傷に注意する:後方偏位が疑われる場合はCTが重要です。
  • 鎖骨以外の外傷を探す:気胸、肋骨骨折、肩甲骨骨折などを確認します。
  • 小児・青少年と成人を同じ基準で扱わない:骨癒合能とリモデリング能、手術後の再手術リスクが異なります。

よくある質問

鎖骨骨折では必ずCTを撮影しますか?

必ずしも必要ではありません。単純で明瞭な骨幹部骨折は単純X線で診断・治療方針を決められることがあります。遠位端・近位端骨折、粉砕骨折、複雑な転位、手術計画、合併損傷の評価ではCTが有用です。

転位があれば必ず手術になりますか?

必ずしも手術になるわけではありません。転位や短縮の程度、粉砕、皮膚の状態、神経血管損傷、年齢、活動性、患者の希望などを総合して判断します。

鎖骨バンドと三角巾はどちらがよいですか?

症例や施設方針によって異なりますが、現在のAAOSガイドラインでは、急性鎖骨骨折の多くで8の字型装具よりスリングを選択するという専門家意見が示されています。疼痛、装着感、皮膚障害の有無も考慮します。

3D CT画像があれば断層像は見なくてもよいですか?

3D画像だけでは不十分です。3D再構成は骨片の全体的な位置関係を理解するのに有用ですが、微細な骨折線、関節内進展、小骨片、神経血管との位置関係は軸位断や多断面再構成像で評価します。

まとめ

  • 鎖骨骨折は鎖骨骨幹部に最も多く、近位骨片の上方偏位と遠位骨片の下方偏位が典型的です。
  • 単純X線では骨折部位だけでなく、転位、短縮、粉砕、骨皮質の接触、関節進展を評価します。
  • CTは遠位端・近位端骨折、粉砕骨折、複雑な転位、手術計画、合併損傷の評価に有用です。
  • 手術適応は画像所見だけで決めず、皮膚・神経血管所見、年齢、活動性、患者背景を含めて判断します。
  • 鎖骨だけに注目せず、気胸、肋骨骨折、肩甲骨骨折などの胸部・肩甲帯損傷を確認することが重要です。

参考文献

  1. Postacchini F, Gumina S, De Santis P, Albo F. Epidemiology of clavicle fractures. J Shoulder Elbow Surg. 2002;11(5):452-456. PMID: 12378163.
  2. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Treatment of Clavicle Fractures: Evidence-Based Clinical Practice Guideline. Published 2022. AAOS Clinical Practice Guideline
  3. Robinson CM, Court-Brown CM, McQueen MM, Wakefield AE. Estimating the risk of nonunion following nonoperative treatment of a clavicular fracture. J Bone Joint Surg Am. 2004;86(7):1359-1365. doi:10.2106/00004623-200407000-00002. PMID: 15252081.
  4. Canadian Orthopaedic Trauma Society. Nonoperative treatment compared with plate fixation of displaced midshaft clavicular fractures: a multicenter, randomized clinical trial. J Bone Joint Surg Am. 2007;89(1):1-10. PMID: 17200303.
  5. Neer CS 2nd. Fractures of the distal third of the clavicle. Clin Orthop Relat Res. 1968;58:43-50. PMID: 5666866.

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