先に結論:小脳橋角部の偽腫瘍(片葉・後四角小葉)
- 小脳橋角部には、小脳片葉(flocculus)や後四角小葉という正常の小脳の一部が前に張り出して、腫瘍のように見えることがあります
- 中小脳脚の高さで見えるのが後四角小葉、下小脳脚の高さで延髄の横に見えるのが片葉です
- 上下にスクロールして小脳とつながっていること・小脳と同じ信号/濃度であることを確認し、聴神経腫瘍などと間違えないようにします
- 小脳橋角部は小脳・橋・側頭骨(錐体部)に囲まれたすき間で、顔面神経・聴神経が内耳道へ向かう通り道です
小脳橋角部とは?どこにある?
小脳橋角部(cerebellopontine angle:CPA)は、後頭蓋窩の左右にあり、前外側を側頭骨錐体部の後面、内側を橋(脳幹)、後方を小脳に囲まれた三角形のすき間です。脳脊髄液で満たされた小脳橋角槽という脳槽になっていて、ちょうど内耳道の入口(内耳孔)の高さにあたります。
- 通る神経:中央を顔面神経と内耳神経(聴神経)が内耳道へ向かって走り、上方には三叉神経、下方には舌咽神経・迷走神経があります
- 通る血管:前下小脳動脈(AICA)がループをつくって走ることが多く、錐体静脈も見られます
- MRIでの見方:内耳道の高さの水平断で、T2強調像や脳槽の神経を細かく描くheavily T2強調像を使うと、脳脊髄液の中を走る神経や小さな腫瘍が見えやすくなります
この部位にできる腫瘍は聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)が最も多く、ほかに髄膜腫や類表皮嚢胞などがあります。また、このページで解説する小脳片葉や後四角小葉のように、正常の小脳の一部が腫瘍のように見えることもあります。片側の聞こえにくさ・耳鳴り・めまい・顔のしびれなど気になる症状があれば、医療機関を受診してください。
詳しくは小脳橋角部とは?どこにあるか・腫瘍の頻度(最多は聴神経腫瘍)と小脳橋角症候群で解説しています。
小脳橋角部の偽腫瘍である小脳片葉、後四角小葉(単小葉)とは?
- 頭部CTやMRIで小脳橋角部にあたかも腫瘍のように見えてしまう偽病変がある。
- いずれも小脳の構造の一部であり、小脳片葉(flocculus)、後四角小葉(単小葉)(posterior quadrangular lobule)と呼ばれる正常構造である。
- 中小脳脚レベルで橋と小脳の間に見られるのが後四角小葉(単小葉)であり、小脳片葉よりサイズが大きく上下にスクロールすると小脳と連続していることが分かる。
- 一方で、下小脳脚レベルで延髄との間に見られるのが小脳片葉である。
症例 50歳代女性

中小脳脚レベルで小脳と連続する前方への突出を認めています。
これが後四角小葉(単小葉)です。
(ちなみに右内耳道内に聴神経腫瘍を疑う結節を認めています。)

相当する部位をT2WIで観察するとT2WIでも同定できます。
T2WIの方が厚みがあるため、あたかも腫瘤のように見えます。
(右内耳道内の聴神経腫瘍を疑う結節はT2WIでも同定可能です。)

次に、下小脳脚レベルで延髄との間に前方外側に突出している構造があります。
これが小脳片葉です。

相当する部位をT2WIで観察するとT2WIでも同定できます。
これらを腫瘍としないように注意が必要です。
参考:
- 画像診断 Vol.34 No.5 2014 P422
- 頭部画像解剖 徹頭徹尾 P75
関連記事:小脳橋角部における腫瘍の頻度
参考文献
- Braun JP, Tournade A, Adynowski J. A comparative anatomical CT study of the vascular and nervous structures of the cerebello-pontine angle. Neuroradiology. 1984;26(1):3-7. PubMed
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