急性腹症を起こしうる腹部内臓動脈解離には、
- 上腸間膜動脈解離
- 腹腔動脈解離
- 肝動脈解離
などがあります。
なかでも最も頻度が高い上腸間膜動脈解離についてまとめました。
上腸間膜動脈解離(superior mesenteric artery dissection)とは?
- 高血圧、動脈硬化、線維筋性異形成、中膜変性、外傷、炎症、医原性、Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群、分節性動脈中膜融解(SAM:segmental arterial mediolysis)などが原因となり起こります。
- 男性に多いとされます。
- 急性例と慢性例に分けられます。
- 無症状で偶発的にみつかることもありますが、急性例では突発的な腹痛や腹部膨満を認めます。
上腸間膜動脈解離の診断は?
- 造影CTによる解離腔の同定が最も有用とされます。
- 上腸間膜動脈の偽腔内の血栓あるいは壁在血栓、intimal flap、上腸間膜動脈の径の拡大、周囲の脂肪織濃度上昇などを認めます。
- 偽腔開存型の場合は、エコーで上腸間膜動脈のフラップが同定可能なことがあります。
症例 50歳代男性 急激な上腹部痛
造影CTで上腸間膜動脈(SMA)に血栓閉鎖型の解離腔を認めています。
周囲脂肪織濃度上昇あり。
冠状断像で解離が広範であることがわかります。
保存的に加療されました。
上腸間膜動脈解離の治療は?
- 血栓閉鎖型の場合は比較的予後が良いとされ、降圧治療、抗血小板療法などの保存的治療がなされます。
- しかし、偽腔の拡大、出血、腸管虚血などを伴っている場合は、バイパス術を含め外科的処置の適応となります。
参考文献:
画像診断 Vol.28 No.12 2008 P1324-1325
画像診断 Vol.28 No.13 2008 P1451