脳梗塞の画像診断において、脳梗塞が起こっている部位をどの血管(動脈)が支配する領域なのかを判断することは重要です。
脳梗塞が起こっている部位
→その領域を支配する血管を推測
→その原因を推測
とどうして脳梗塞になったのかの原因・脳梗塞の種類の追求、さらには治療につながり重要であるからです。
そこで今回は、脳の血管が支配する領域について動画を用いて各血管に分けてまとめました。
脳の血管支配領域まとめ
まず、脳の血管(動脈)は
- 前方循環系(内頸動脈系)
- 後方循環系(椎骨脳底動脈系)
に大きく分けられます。
以下の画像は実際の脳のMRAの画像を横から見たものです。
まずは前方循環系から見ていきます。
前方循環系(内頸動脈系)の血管支配域
内頸動脈は、前大脳動脈(ACA:anterior cerebral artery)、中大脳動脈(MCA:middle cerebral artery)といった皮質動脈を分枝します。
また、内頸動脈は前脈絡叢動脈という深部穿通動脈を分枝します。
なお脳の動脈のこのような解剖についてはこちらの記事にまとめました。→脳血管(動脈)の解剖を図と画像でわかりやすく!
前大脳動脈(ACA)領域
前大脳動脈の支配領域1)は、
- 皮質動脈〜表在穿通動脈
→両側大脳半球の内側の前2/3 を栄養 - 深部穿通動脈(A1,2から分枝する内側線条体動脈)
→尾状核頭部周囲を栄養
となります。
MRIのT2強調像の横断像にこれらの領域に色を塗ってみると次のようになります。
赤色が皮質動脈〜表在穿通動脈、ピンク色が深部穿通動脈である内側線条体動脈の支配域です。
中大脳動脈(MCA)領域
中大脳動脈の支配領域1)は、
- 皮質動脈〜表在穿通動脈
→両側大脳半球外側の大部分 を栄養 - 穿通動脈(M1から分枝する外側線条体動脈)
→基底核(被殻&淡蒼球)領域を栄養
となります。
MRIのT2強調像の横断像にこれらの領域に色を塗ってみると次のようになります。
黄色が皮質動脈〜表在穿通動脈、オレンジ色が深部穿通動脈である外側線条体動脈の支配域です。
内頸動脈(ICA)の深部穿通動脈(前脈絡叢動脈)領域
内頸動脈の支配領域1)は、穿通動脈だけです。
- 穿通動脈(前脈絡動脈)
→脈絡叢前半部、側頭葉内側、内包後脚を栄養
となります。
MRIのT2強調像の横断像にこれらの領域に色を塗ってみると次のようになります。
緑色が、深部穿通動脈である前脈絡動脈の支配域です。
続いて後方循環系を見ていきましょう。
後方循環系(椎骨脳底動脈系)の血管支配域
後方循環系である椎骨脳底動脈系からは、
- 後大脳動脈
- 後下小脳動脈
- 前下小脳動脈
- 上小脳動脈
が分岐します。
後大脳動脈(PCA)領域
後大脳動脈の支配領域1)は、
- 皮質動脈〜表在穿通動脈
→両側大脳半球側頭葉内側後半部〜後頭葉内側 を栄養 - 穿通動脈(中脳、視床への穿通動脈)
→中脳および視床を栄養
となります。
MRIのT2強調像の横断像にこれらの領域に色を塗ってみると次のようになります。
青色が皮質動脈〜表在穿通動脈、水色が深部穿通動脈である中脳、視床への穿通動脈の支配域です。
後下小脳動脈(PICA)領域
後下小脳動脈の支配領域1)は、
- 皮質動脈〜表在穿通動脈
→小脳底部内側 を栄養 - 穿通動脈(延髄枝(回旋枝))
→延髄を栄養
となります。
MRIのT2強調像の横断像にこれらの領域に色を塗ってみると次のようになります。
赤色が皮質動脈〜表在穿通動脈の支配域です。
前下小脳動脈(AICA)領域
前下小脳動脈の支配領域1)は、
- 皮質動脈〜表在穿通動脈
→小脳半球外側面、中小脳脚 を栄養 - 穿通動脈(橋枝(回旋枝))
→橋を栄養
MRIのT2強調像の横断像にこれらの領域に色を塗ってみると次のようになります。
茶色が皮質動脈〜表在穿通動脈の支配域です。
上小脳動脈(SCA)領域
上小脳動脈の支配領域1)は、
- 皮質動脈〜表在穿通動脈
→小脳上部、歯状核周囲 を栄養
となります。
MRIのT2強調像の横断像にこれらの領域に色を塗ってみると次のようになります。
緑色が皮質動脈〜表在穿通動脈の支配域です。
最後に
脳梗塞の診断で重要な脳の血管支配領域についてまとめました。
どこの動脈がどこを支配(栄養)するのかを知っておくことにより、脳梗塞の起こっている血管およびその原因を推測することができます。
深部穿通枝や小脳を支配する血管などはつい忘れがちですので、忘れたときはこのページに戻ってきていただければと思います。
参考になれば幸いですm(_ _)m
参考文献:1)よくわかる脳MRI 第3版 (画像診断別冊KEYBOOK) P265 表