先に結論:大脳基底核の石灰化
- 基底核(特に淡蒼球)の石灰化は高齢者の生理的な変化として多く見られ、多くは問題ありません
- 若い人・広範囲(歯状核・視床・白質にも)の石灰化では、副甲状腺機能低下症・偽性副甲状腺機能低下症などのCa代謝異常、ミトコンドリア病・先天性感染・放射線/化学療法後、原発性家族性脳石灰化症(Fahr病)を考えます
- 血清Ca・P・PTHを確認するのが最初のステップです
大脳基底核に石灰化をきたす疾患

- 生理的石灰化:若年者でも見られることがある。
- 副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症
- ミトコンドリア脳筋症:MELASなど
- トキソプラズマ症:TORCH症候群
- ループス脳炎
- Fahr病
- 新生児無酸素症
- 放射線血管障害
大脳基底核についてはこちらにまとめました。→【保存版】大脳基底核とは?機能と障害されたときに起こることまとめ!
病的な石灰化かどうか:年齢に見合うかを判断する
Nicolasらは(Nicolas 2013)600例の対照CTで石灰化の程度をスコア化し、年齢層(40歳未満・40〜60歳・60歳超)ごとに正常上限(99パーセンタイル)を設定しました。石灰化のスコアは対照でも年齢とともに増えるため、「年齢の割に多いか」が病的な石灰化を疑う出発点になります。
原発性家族性脳石灰化症(PFBC、特発性基底核石灰化症、いわゆるFahr病)
特発性の基底核石灰化(Fahr病)は多くが常染色体優性遺伝で、原因遺伝子としてSLC20A2・PDGFRBが報告されています(Nicolas 2013)。その後PDGFB・XPR1・MYORG・JAM2・CMPK2を加えた7つの遺伝子が知られていますが、約半数の患者ではこれらの遺伝子に病的変異が見つかりません(Chen 2023)。診断には加齢による石灰化を含む他の原因の除外が必要です。Nicolasらの72例では71%が有症状で、症状は認知機能障害(58.8%)・精神症状(56.9%)・運動異常症(54.9%)が多くみられました。
なお、原因のない原発性のものをFahr病、副甲状腺機能低下症など原因のある二次性のものをFahr症候群と呼び分けることがあります。
- 石灰化スコアは患者でも年齢とともに増え、その増え方は対照より速い
- 有症状例は無症状例より石灰化が強い
- SLC20A2変異例はPDGFRB変異例より石灰化が強く、PDGFRB変異例では皮質・虫部の石灰化はみられなかった
- ただし石灰化の部位・程度だけでは症状の多様さは説明できない
MRIで見るときの注意:微小出血との区別
SWIなどの磁化率強調画像では、石灰化も微小出血も低信号の点として見えます。Luoらは定量的磁化率マッピング(QSM)を用い、CTで確認した石灰化と微小出血を磁化率の違いで区別できるかを検討し、磁化率の正負(符号)だけで両者を区別できたと報告しています(Luo 2025)。MRIで基底核の低信号を見たら、CTで石灰化かどうかを確かめることが大切です。
参考文献
- Nicolas G, Pottier C, Charbonnier C, et al. Phenotypic spectrum of probable and genetically-confirmed idiopathic basal ganglia calcification. Brain. 2013;136(Pt 11):3395-407. PubMed
- Luo Y, Gao K, Zhou Y, et al. Differentiating calcifications from cerebral microbleeds using quantitative susceptibility mapping. Eur Radiol. 2025;35(4):2043-2052. PubMed
- Chen SY, Ho CJ, Lu YT, et al. The Genetics of Primary Familial Brain Calcification: A Literature Review. Int J Mol Sci. 2023;24(13):10886. PubMed
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